概要
市販されてい汎用規格の部品を組み合わせて自作したパソコンのこと。
よほど重症の人以外は、大体デスクトップパソコンを自作することとなる。
昔は「パソコンは自作した方が安い」という時代があったが、市販のパソコンそのものの価格が下がったうえに、モバイル機器の性能が大きく向上して相対的にパソコンの需要(特に普及機)が下がりつつある現在では価格的なメリットは薄れており、完全な趣味、もしくは実益を兼ねた趣味として自作する人がほとんど。パーツ構成の自由度が高いので、市販のパソコンより高性能で自分のニーズに合ったパソコンを作ったり、高品質・高耐久なPCを作ったりできる。
一方で、部品の選択には種類と数が非常に多いのでかなりの知識を要する。また購入した個々の部品はともかく、完成したパソコンは「ユーザー以外修理が出来ない」代物になるのであらゆるトラブルを自力で解決しなければならない(有償でトラブルシューティングや修復を行うショップもある)。
そのため、特に拘りがない場合は既製品を買ったほうが無難である。
現在では、大手メーカー製でもインターネット販売に絞った上で細かいカスタマイズに対応した機種や、自作PCに強みがあるパソコンショップが汎用部品を組み立てて大手メーカーの同等機種より安価に販売する「BTO機」、ショップ店頭で店員と任意の部品を選択・購入したうえで組み立てと動作チェックをショップの店員に任せる「組み立て代行」など、幅広い選択肢がある。このため、「自分でパーツを選びたい」という向きでも敢えて自作はせず、後付けでカスタムする人もいる。
特色
高い性能が要求されるゲームやCAD、3DCGの制作などのパソコンに高い負荷やそれが長時間掛かる作業を行う場合は、それらに最適化した構成とすることで市販パソコンに大きく差をつけることができる。
最近では実用性から離れ、カラフルなLED照明などを内蔵させたドレスアップ仕様(今ではクリエイター仕様以外標準化している)や、水冷CPUクーラーなど個性的なマシンを自作するユーザーが増えている。
また、動画の再生や事務作業などパソコンにさほど負荷を掛けない作業をメインとする場合でも、例えばフロッピーディスクドライブなどの古い規格のインターフェイスを追加したり、サウンドカードの追加で高音質化したり、ファンを省略して静音性に特化した構成にしたりと、既製品には無いPCを仕上げることが可能である。
初めての自作は…
初めての自作で大切なことは、知識もさることながら経験者とのコミュニケーションである。
つまり、まず信頼できるショップなり経験豊富で良識がある自作経験者(※1)を味方に付けて積極的に相談するというプロセスが外せない。
説教臭いことと、地方在住で周りにショップも自作経験者も居ない人には厳しい条件であることは百も承知であるが、
- 人によって求める性能が違う
- 決して安い買い物ではない
- 組立作業で細心の注意を要する工程がある(※2)
- 必要な知識を得る上での疑問点や、組み立てや実際に動作させた時に発生する(かもしれない)トラブルは人によって違う
ため、まずはこれが第一である。
どうしてもこの条件をクリアできない人は充分なリサーチ(当然最新の情報が必要である)を行った上で人柱覚悟で挑む(※3)なり、既製品(BTO機がよい)を買って徐々にカスタムした上で自作経験者並みのスキルを積むなり、といった手段も無くはない。
どちらにせよお金と時間が掛かるけどしかたないね。一応、自作PC専門誌も季刊誌で販売しており、Web上でも情報発信はなされているため、それを見て作ればその時の一般的なPCは作れる。
- ※1:ただし、どんなに温厚そうな自作経験者でも原則、Intel派とAMD派に分かれており、経験者に教わる時は(自身で判断できるようになるまでは)その人の流儀を呑むことは覚悟しておくこと。特にAMD派に「Intel入ってないんですか?」とか言った時点で相手は内心かなりムッとしながらIntelのダメさを長時間説教される事を覚悟しておくこと。
- ※2:慣れたジサッカーは割りとテキトーにパーツを扱うことも多いが、押さえるべきところを理解してやっているので初心者はそれが掴めるまで真似しないように。
- ※3:予備のパソコンが1台あれば、万が一故障したときのデータの救出や修復作業が行いやすくなる。また、ある程度部品の互換性がある機種の場合は故障部品の特定にも使える。
かつては、入り辛い雰囲気のショップにマニアが屯してパーツの品番と値段しか書いていない価格表を睨みつつ部品を一個づつ購入… といった具合に初見殺しの風潮が強かったものの、いわゆる半完成品である『ベアボーンキット』の普及や、必要な部品一式を「自作キット」の体裁で販売する(自力で完成できなかった場合、前出の「組み立て代行」料金を追加で払うことで店舗スタッフが組み上げてくれるオプションサービスがある場合も)ショップが増えたこと、自作初心者に向けたわかり易い情報発信を積極的に行うメディアが増えたことなどから、以前より敷居は大きく下がっている。
また、事前に規格上の組み合わせをシミュレートする時は価格.comの検索機能を利用すると良い。
とは云え、基本的にあらゆるトラブルを自力で解決できる能力と根気がある人以外には薦められない趣味(行為)である。特に買ったパーツに初期不良品などが混ざっているとかなり面倒なことになる。
技術的解説
基本構成
情報工学を学ぶものが最初に勉強する内容だが、PCは五大装置によって構成されており『制御処理装置』『主記憶装置』『副記憶装置』『入力装置』『出力装置』によって構成される。
自作PCの場合『PCケース』(厳密には無くても可能)・『マザーボード(主基板)』・『制御処理装置(CPU)』『主記憶装置(メインメモリ)』・『グラフィックプロセッサボード』・『電源ユニット』・が最低構成となる。
だが、このままでは何にも使えない為、補助記憶装置(ストレージ)という情報を保存する装置(SSDやHDDなど、厳密にはCD・DVD・BDなどの光学ディスクドライブもこれに含まれる)を追加し、モニターやキーボードなどの周辺機器を接続、USBメモリもしくは光学ディスクドライブからOS(主にWindows)をインストールする作業を経て初めて使い物になる。
グラフィックプロセッサボードについて
本来CPUの機能ではなく、独立して搭載するものだが、マザーボードやCPUに内蔵されている場合もある。もともとは、事務用やセカンド機などでそれほど描画性能が必要ない場合用として、オンボードグラフィックとして、後述するチップセットに内蔵されたり、安価なグラフィックプロセッサをマザーボード上に搭載していたりした。
ただ、グラフィックボードを搭載する場合でも、トラブル時にグラフィックボードも外した状態で起動試験ができることから、敢えてオンボードグラフィックを持つマザーボードを使用する場合もあった。
現在は、複数コアの搭載により同じCPUダイに主演算コアとグラフィックコアが搭載されている商品がある。AMDはこれをAPU(Accelerated Processing Unit)と呼称している。
特にAMDの方は、ATi買収によって得た技術と開発能力をそれに投入しており、Ryzenシリーズの統合グラフィックは下手に安いグラフィックボードより高性能だったりする。
(メーカー機のメインストリームのデスクトップからノートパソコンへの移行もこれに由来している)
ただし、オンボードグラフィックやAPUは、初期に小容量の専用VRAMを搭載したものもあったが、Pentium III・初代Athlonの中盤期からはメインメモリの一部をVRAMとして「間借り」するメモリシェアードが採用されており、この為、
- OSが使えるメインメモリが減る
- メモリとCPUがやり取りする情報量の幅(帯域)が減る
と、少なからずCPUの性能をスポイルするデメリットが有る。
マザーボードの規格
ほとんどの自作PC向け部品は主にATX規格を基に設計される。
これは主たる基板(マザーボード)のサイズとレイアウトや、電源装置およびピンアサインなどを定めたもので、メーカーが異なっていてもマザーボード-ケース-電源などについては互換性が確保される。これが「ある程度」じゃ話にならないんだよ。
基本的に下位互換性は維持されるので、大きなマザーボードに対応したケースは小さいマザーボード用のねじ穴もあり取り付けは可能。
これらの規格はもともとIBM PC/ATの標準構成に基づいたもので、現在のATX規格はその電源系統の強化と単純化・多機能化を主軸にIntelが提唱したものである。その後はIBMが撤退したことにより、バックボーンを保証できるオピニオンリーダーがいないため、20年以上大きな変更はなされていない。ただし、消費電力は年々上がっているため、電源については適宜変更されているが、これも基本的には後方互換を保持して追加する形になっている。
少し小型機向けのMicro-ATXは、当初PCIもしくはISAスロットを合計最大(物理)7レーンで設計されていたものを、4レーンに減らすことで小型化したもの。ネジ位置は互換しているので、ATXマザーボード用のケースにMicro-ATXマザーボードを取り付けることは可能。当然だが逆は無理。
なお、電機メーカー製のPCのほとんどはこれを採用している。晩年のNEC PC-9800や、高コスト体質の改善に追われていた一時期のMacintoshもこれを準用していた。
2003年にはIntelは後継規格としてBTXを発表したが、
- デカすぎ(Micro-BTXがフルATX並のデカさ)。
- あからさまなAMD潰し。
- 同時期にAMDが開発していたK8(Athlon64)では、メモリコントローラーがチップセット(後述)からCPUに移ったのだが、BTXの標準メモリスロットの位置はK8に不利なようになっていた。それがもともと反骨気質のある重度の自作屋どもを怒らせてしまった。
- つうかAMDのCPUにこんなの要らねぇ。
- 早い話が、発熱量のでかいPentium 4に対して、ATX用ケースでは熱の許容量が小さいため、デカくしようと企んだのである。
- でもものの見事に主に台湾の変態企業何社かがK8用BTXマザーボード出しやがった。
……などの理由に加えてNetBurstアーキテクチャ(Pentium4及び同世代のCeleron)が設計の破綻とMicrosoftの方針決定で文字通りバーストしたため、存在意義がなくなりほとんど出回っていない。
他に超小型機向けのMini-ITXがある。これも一応、フルATXやM-ATXのケースにも取り付けられるが、拡張スロットがスッカスカ・背面パネルも寂しいことになるなど見た目にもったいないだけでメリットはない。
相性問題
一方で、CPUやメモリーといった主要部品、またはグラフィックカードなどの増設カードは、組み立てにあたって完全に規定通りに組み立てをしている(つまり規格上・理論上作動する)にもかかわらず、ごく稀に全く作動しなかったり、或いは所定の性能を発揮できない場合もあるという。
いわゆる相性問題(=原因不明)で、基本的に同メーカーの部品で揃えると相性問題が出にくいとされ、動作確認部品リストをメーカーが公表していることもあった。
割と過去形。というのも、これはCPUが純粋に演算ユニットで、CPUとその他の装置の橋渡しをするチップセットが多くの役割を果たしていた頃は、これとぶつかるパーツが多かった。自作PC全盛期はIntel純正以外にVIA、SiSなどが参入しており、またAMDは自社でチップセットを作っていなかった。
より気合を入れて説明すると、各部品間もまた特定の周期で動作してるのだが、そのために水晶発振子(クォーツ)でベースクロックが流れている。
IBMの規格とその延長線であるATXは、オンボード以外のパーツはそれぞれ別に水晶発信子を搭載してベースクロックを得ており、起動時に同期して接続するためにネゴシエートするのだが、それがうまくいかない関係がそれなりに存在していたのである。
ちなみに、PC-9800の拡張スロット(晩年のPCIは除く)は本体側からベースクロックを供給していた。
(ただしこっちはこっちで、それを2.5MHz、その倍数の5MHzから突然8MHzに変更したため、新しい機種で旧いパーツが動かなくなることが多かった。なおEPSONの互換機は別に5MHzを別に発生させて本体内で同期させた上で供給していた。これは同社がクォーツの世界最高峰セイコーグループだからできたことだと言われている)
ちなみにかっちり動こうとする部品同士が基本的に相性問題を出すことが多く、逆にボケーッと動いていたSiS製チップセットは割りと相手部品のクロック同期ネゴシエートをやんわり受け入れて相性問題を吐き出しにくかった。
なので、性能的にはSiS製チップセットはカタログスペック上の性能より、これに加えて低発熱、低消費電力、そこそこ安価、が売りで可愛い妹さん(英単語“Sistar”に由来)と言われていた一方で、大人しく動いてくれることからマザーボードメーカーの「セカンド機にピッタリ!」という開発の方向性をガッツリ無視して発売されたばかりのAthlon64あたりと大量のメモリを搭載した高性能機にブチ込むSiS愛好者が少なからずいた。
しかし、後にATiがK7・K8用統合型チップセットに参入(この時点でAMDの出資比率がかなり高かった)、後に同社がAMDに買収されAMD純正品となった。また、K8でメモリコントローラがCPU側に移ったことを皮切りに、チップセットが果たしていた機能を順次CPUが直接持つようになり、社外製チップセットの開発・製造事業は利益に旨味がなくなり、ほぼ撤退済みとなっている。
この為、現在のマザーボードの大半はIntelかAMDの純正チップセットを使っている。
なので、現在これが出た場合は、規格違いの見落としやマザーボードの設定ミス、パーツそのものが地雷(設計上不良とまでは言わないがクセが強すぎて実用上問題が大きい)。初期不良、などが原因である可能性が高い。
特にIntel・AMD問わず、無難な設計をされているASUSやGIGABYTEのマザーボードで動かないものはそもそも商品価値がない。
アップグレード
現在、ほとんどの内部信号はPCI-expressという信号形式でやり取りされており、下位互換性が保たれているためほぼ互換性があるため中古PC、中古サーバーを購入しレストア・改造する豪の者もたまに存在する(ただし、マザーボードとCPUに関してはコロコロ規格が変わるため、これこそ交換はあきらめたほうがいい)。
この場合、UEFIとBIOSというファームウエア形式の違いやメモリ規格への注意が必要。また、古いパーツは最新OS用ドライバが無いこともあり使えないケースもあるが、Windowsに関してはMicrosoft自身がWindows95のUSB対応の際にさんざん梃子摺った経験から、WindowsXp以降(Xp発売以降のWindows2000にもマイナーアップデートで)Microsoftが規格化されたドライバで動くようにしてある。
極論すると、変換ブリッジ2つかましてISA(16Bit時代のIBM PCの拡張スロット。MacのNuBus、98のCバスに相当)のSCSIボードを接続しても認識したりする。
また、PCI-express用コネクタはM.2(X1・X2・X4)、拡張スロットX1・X2・X4・X8・X16、U2コネクタ(X4)、SATA-expressと複数種類があるので確認が必要、Xxの数字はPCI-expressの信号経路が何本繋がっているか、である。多い程情報の転送経路が増えるので高速になる。
特にM2と拡張スロットは最大レーン数は決まっているが何レーン分の配線が来ているかは目視で確認は難しいのでメーカーなどの解説を良く読もう。
尚、X16にX1やX4用と言ったレーン数の多いコネクタへのレーン数の少ないパーツの取り付けは問題ない(せっかくの物理レーンが無駄にはなるが)。
信号プロトコルは全て同一であるため変換ケーブル・変換コネクタを解することでここら辺は自由に接続できる。(これを利用して変則的な構成が出来るのも自作PCの醍醐味である)
ダウングレード
歴戦のジサッカーは、新しいマザーボードとCPUで1台組み上げると、余ったパーツに安いケースでセカンド機として組み上げて、セカンド機として1台でっち上げたりするのだが、CPUやGPUが高性能なままだと電力を食いすぎるため、性能はあまり高くない省電力CPUやグラフィックボードに載せ替える事がある。