概要
Windows XP(ウィンドウズ エックスピー)とはMicrosoftが2001年に発表したWindowsシリーズのOS。Windows2000/WindowsMeの後継。
「XP」は商標名で、内部バージョンはNT5.1(64ビット版はNT5.2)。
機能拡張ソフトのMicrosoft Plus!が発売された最後のバージョンでもある。
以前は、業務用であるWindowsNTと家庭用であるWindows9xが並行開発・販売される状態が続いていたが、Microsoftにとっては大きな負担であった。
さらに家庭用の9x系はMS-DOS時代の構造を受け継いでいるため、多機能化と共に限界が見え始めていた。特に最終バージョンのMeはシステムリソース(NT系におけるデスクトップヒープに相当)が不足しやすくクラッシュが多発し、最も不安定なWindowsという烙印を押されていた。
かつてNT系と9x系の統合を試みたWindows2000をベースに、Meの機能を取り込む形で拡張されたのがWindowsXPである。このOSの成功によりNT系と9x系の統合がなされ、マイクロソフトは長年の懸案であった9x系の終息をなすことができた。
XP発売後は後継製品が中々発売されず、サポート期間も長かったため、長寿で有名だった先代のWindows2000と比べても、かなりの長い間Microsoftの主力製品として活躍した。
実は2003年にマイナーアップグレードとしてLonghornを発売させる計画だったが、2002年に計画が修正され、Longhornはメジャーアップグレードとなり2004年までリリースされないように変更された。
その後、コンピュータウイルスの大規模感染による開発中断や2004年の開発リセット等が重なり、次世代OSWindowsVistaの発売は2006年までずれ込んだ。
ようやく登場したVistaは、高機能なGPUを要求し当時のローエンドのパソコンでは満足に動作しなかった。後継のWindows7が登場するまでXPが実に10年近くもの間パソコンOSの事実上の主力として君臨。この影響で延長サポートの対象外だったHomeEdition・MediaCenterEditionも延長サポートの対象とされ、XPのサポートは2014年4月9日まで継続された(それまでのMicrosoftは上位エディションのみに延長サポートを適用する方針だったが、この変更によってVista以降のOSも全エディションが最後までサポートされるようになった)。
一般消費者のPC向けOSのサポートが12年半も続くのは極めて異例のことであり、Windowsの中では4番目に長いサポート期間となった(1番長いのはWindows1.0で16年、2番目に長いのはWindows2.0で14年、3番目は有償サポート適用のWindows7で13年半である)。
Microsoftの公式サポート終了後も、スタンドアローン(ネットに接続しない)で使用されていることがある。但し、たとえネット接続していなくとも、USBメモリ経由などで感染する可能性があるので注意(これはウィルス防護の仕組みが後発のOSよりも根本的に劣るのが大きな理由)。
XPは「経験、体験」を意味する eXPerience に由来する。
開発時のコードネームはWhistler(ウィスラー)と呼ばれていた。
エディション
- Home Edition
一般家庭での使用を前提とした物で基本的な機能を使用可能。イメージカラーはグリーン。
ネットブック等の超廉価版向けのHome Edition ULCPCというのもある。
- Professional
上級ユーザーあるいはビジネスでの利用を想定したHome Editionの上位に位置するタイプ。ファイルシステムの暗号化など高度なセキュリティ機能を備えている他、リモートデスクトップのホスト機能などを備える。イメージカラーはブルー。
- Media Center Edition
ProfessionalにテレビやオーディオなどのAV機能を追加したエディション。
日本では低コストのHome Editionを採用するケースが多かったため、あまり普及していない。
- Tablet PC Edition
Professionalにペンタッチ機能を付加させたエディション。
タブレットPCでの操作を想定したエディションであり、後のWindows8に通ずるものがある。
- Windows Fundamentals for Legacy PCs
シンクライアント版としてソフトウェア アシュアランス契約者向けに提供された。
- Embedded
組み込み用途向けエディション。専用の構築ツールを利用することで必要なOSの機能をカスタマイズでき、搭載製品の構成や用途に応じたOSパッケージの作成が可能。なお通常のパソコンにインストールすることも出来ないわけではないが、非常に手間がかかる上、入手も難しいので個人用パソコンで使うことはまず無い。但しOSのファイルサイズは非常に小さい。
アーケードゲームの基板、POSシステム、ワンマン運転用運賃表示モニターなどで今も広く使われている。
上記のコンシュマー向けとは違いかなり長い間サポートされ、2019年まで続いた。
64ビット版
- 64-bit Itanium Edition
コンシュマー向け初の64ビット版であり、Intelの64ビットCPUItanium用のエディションで、IA-64をサポート。
後述するProfessional x64 Editionが発売されるまで64ビット版XPとして活躍した。
- Professional x64 Edition
上記のItanium Editionに代わる64ビットエディションであり、AMDのAMD64およびIntelのIntel64に対応したエディション。
64ビットアーキテクチャはこちらが普及していったため、以後の64ビットOSの標準的存在となった。
日本未発売
- Starter Edition
最下位エディションであり、発展途上国向け。
これらの国は低所得の影響で海賊版が横行しており、それの対抗策として廉価版XPを安価で提供することになった。
同時に開けるウィンドウ数や最大解像度などが制限されている。
- Edition N
こちらは欧州向けのエディション。
Windows Media Playerが競争法違反に問われたため、非搭載となっている。
- Edition K/KN
こちらは韓国向けのエディション。
Windows Media PlayerおよびWindows Messengerが独占禁止法違反に問われたため、非搭載となっている。
旧OSからのアップグレード
WindowsXPのアップグレード対象は、WindowsNT4.0・Windows98(SE含む)・WindowsMe・Windows2000である。
但し、HomeEditionへは98・Meからしか出来ない。
また、Windows95は対象外なのでセットアップすら起動せず、CDから起動する必要があるが、パッケージによっては95からセットアップを起動し、新規インストール出来るものもある。
98・Meからアップグレードした場合、アンインストールして旧OSに戻すことが出来る。
アップグレード版を使用して新規インストールする場合、途中でアップグレード認証が必要なので、上記のアップグレード対象のCD(通常版・アップグレード版問わず)を用意する必要がある。
上記の対象OS以外にも、WindowsNT3.51・Windows95のCDも使える(アップグレード認証とはなんだったのか…)。
この他、アップグレード認証には、Windows95CompanionCDやWindows98SecondEditionUpdateCDなどといった格安CDも使用できる。
新OSへのアップグレード
WindowsXPからは、WindowsVista※1・Windows7※1・Windows8※2にアップグレードすることが出来る。
但し、7へは新規インストールしか出来ないので注意。
※1…SP2を適用する必要がある。
※2…SP3を適用する必要がある。
9x系からXPアップグレードした環境をVista以降にアップグレードすると、9x系の環境は削除されるので注意(システムファイルを強制的に9x系非対応のNTFSに変換されるため)。
どのOSにアップグレードしてもアンインストールしてXPに戻すことは出来ないので注意。
余談
- 今回からロゴマークが変更され、旗をイメージしたロゴマークになった。このロゴはWindows7まで使われた。
- デフォルトで設定されている壁紙の「草原」(英語名Bliss)は、カリフォルニア州ソノマ郡のカリフォルニアワイン産地としても知られるソノマ・ヴァレーという場所で、実在する風景である。
- 当初はサーバー向けエディションも家庭向けとの同時発売が計画されていたが、コンピュータウイルス問題によって完成が延期となってしまい、XP発売から約2年遅れとなった。名称もWindowsServer2003に変更された。
- XPは2014年4月9日にサポートが終了したが、その後も利用者が多いためか、深刻な脆弱性が見つかると例外的に更新プログラムが提供されることがある。今のところ例外的に提供されたのは、2014年4月26日・2017年5月15日・2019年5月14日の3回。なお、WindowsXPと基本的に同じ構造の組み込みOS、Windows Embedded POSReady 2009のサポートは2019年まで続いていたため、こちらのパッチを適用する(当然自己責任で、レジストリを編集する必要がある)、というテクニックで延命するユーザーもいたようだ。
- このOSが登場した後、「XP」をつけるのが流行った。AMDのCPUにAthlon XPというものがあったり、将棋の戦法に中田功XPなんていうのもある。
- 問題になったWindows Media Playerにサンプルミュージックとして入れられた「LikeHumansDo」という楽曲はPC界隈の一部では(特に学生時代にXPを使っていた人達にとっては)懐メロ扱いされている。
擬人化
詳しくは→XPたん
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