概要
MARVEL作品のキャラクター。
コミック版
本名:グウェンドリン・ステイシー(Gwendolyn Stacy)。
1965年の『The Amazing Spider-Man #31』で初登場。ピーターにとっては3人目の彼女で、人生で初めて真剣に愛した女性。ただし彼の正体は知らない。
活躍
ピーターやMJたちとは別の高校の出身で、ビューティークイーンに選ばれたほどの美人。
ピーターとは大学に進学した時に出会った。グウェンはスーパーヴィランが現れるとすぐに姿を消すピーターを臆病者と思っており、第一印象は良くなかった。美女のグウェンに言い寄ってくる男は大勢いたが、当時のピーターはメイ叔母さんの病気などでそれどころではなく、無関心だった事が逆に興味を惹いた。
グウェンはうつ病になりかけていたピーターを助けたこともあり、2人は付き合うようになるが、ピーターはヒーロー活動を優先させてデートをすっぽかすなど必ずしも順風満帆だった訳では無かった。
またニューヨーク市警の警部である父ジョージがキングピンに洗脳され、やむなくピーターが戦ったため誤解が生じ別れようとしたこともある。
ドクター・オクトパスとの戦いでは、父ジョージが瓦礫から子供を助けようとして死亡してしまう。死の間際にジョージはスパイダーマンにグウェンの事を頼むと告げて息を引き取るが、グウェンは父親の死はスパイダーマンのせいだと考えていた。
叔父のアーサーは父親を失い悲しむグウェンを心配して、「イギリスに来ないか?」と誘う。
グウェンはピーターにイギリス行きを相談するが、スパイダーマンを憎んでいるグウェンに対してピーターは引き止める事が出来なかった。内心ではピーターに引き止めてほしかったグウェンは傷ついてしまう。
ようやく一緒にいるべきだったと気づいたピーターは自らもイギリス行きを決意。カメラマンとしての報酬を貰っているデイリービューグル社から、報道写真を送ることを条件にイギリス行きを認めてもらうが、スパイダーマンとしての活動を優先させたために結局グウェンに会えずに帰国してしまう。
ピーターを置いてイギリスに行ったのは間違いだったと思い直したグウェンはニューヨークへ帰り、ピーターの家で再会する。ピーターはガールフレンドをどこにも連れていけない自分の貧乏が嫌になり、安定した職業に就こうと決心する。
グウェンはアパートでピーターを待っていたが、スパイダーマンの正体を知るノーマン・オズボーン / グリーンゴブリンに誘拐され、ゴブリンから「ピーターこそがスパイダーマンである」という衝撃的な事実を知らされる。
すぐにスパイダーマンも救出に駆けつけるが、グウェンはショックから何も話す事が出来なかった。
戦いが始まると、ゴブリンはグウェンを橋から落とすという凶行に及ぶ。スパイダーマンはクモ糸を伸ばし、彼女を助けようとするが、糸がグウェンを捕らえた時の衝撃で首が折れてしまっており、橋からグウェンを引き上げた際に彼女が亡くなってしまった事を知る。
激怒したスパイダーマンはゴブリンを殺そうとするが、怒りを抑えてゴブリンにとどめを刺さない事にした。だが、ゴブリンがスパイダーマンを殺そうと飛ばしたゴブリングライダーがゴブリンの体に突き刺さり、戦いはゴブリンの自滅という形で決着する。
彼女の死は恋人のピーターをはじめ、彼女の親友だったMJなど多数の関係者に深い喪失感を与えた。
その後
アメコミでは逆に珍しく、これまで本人が再登場したことはない(回想を除く)。
従姉妹のジルは香港からニューヨークに引っ越し、ピーターと恋愛に発展しかけたが、MJの生存が明らかとなり身を引いている。
大学の先生で密かに彼女に思いを寄せていたマイルズ・ウォーレンは狂気に取り憑かれるようになり、スーパーヴィラン「ジャッカル」に変貌。専門を活かして彼女やピーターのクローンを作るなど、一騒動を起こした。
2005年の一大イベント『ハウス・オブ・M』では「ピーターが心の中で望んでいた世界」が魔法によって実現。
そこではベンおじさんと共に生存しており、ピーターと結婚して子供まで出来ているなど、ピーターにとって未だに大切な人であった事が綴られていた。
だが2004年の『シンズ・パスト』にて、ノーマンと関係を持っており、死ぬ前に双子を出産していたという衝撃的な展開が発表された。
兄のガブリエルと妹のサラはノーマンの特殊な血液によって成長が極端に早まり、成人した状態でピーターと対面したが、代わりに老化も早くなっている。
特にサラは生前のグウェンと瓜二つなことからピーターを驚かせ、ガブリエルはゴブリン血清を投与し「グレイ・ゴブリン」となってピーターと敵対したが、2人とも遺伝的な欠陥のせいで早逝している。
元々、清純の象徴のような存在の彼女がよりにもよって宿敵のノーマンと浮気というキツすぎる内容は彼女が死んだ時と同様、ファンの間で大きな衝撃となった。
2007年には『ワン・モア・デイ』というスパイダーマン関係の設定を一新・リセットするイベントが行われたが、この設定はそのまま残りファンを落胆させた。
しかし2020年のストーリーで「ノーマンの息子のハリー・オズボーンがピーターを苦しめるために、ノーマンとグウェンの遺体からDNAを採取して双子を誕生させた」と設定が変更された。また生前の2人が口論している様子をMJが目撃していたのも裏付けとなっていたのだが、それも「ミステリオがMJとノーマンに催眠術を施していた」事になった。
その後復活したノーマンと違って死亡したままではあるが、やや強引でも変更されたことで、ファンやグウェン本人も少しは救われた事だろう。
別アース
- 【アース1610】アルティメットユニバース
パンクファッションに身を包んだ気の強い女性となっている。モデルは初期のマドンナ。
一度はカーネイジに殺されてしまうが、その細胞を利用して復活し、ピーターの恋人となった。
- 【アース65】
ピーターの代わりに蜘蛛に噛まれ「スパイダーウーマン」として活動している。
詳しくは⇒スパイダーグウェンを参照。
2015年の「グウェンと他キャラクターを組み合わせた」というテーマでデッドプールと合わせたカバーアートが初出。
その人気から別個のキャラとなり、2018年に本誌デビューした。
他メディア
アニメ
原語版:レイシー・シャベール、日本語版:東條加那子
内気な少女。親友のピーターに想いを寄せるが、進展する前に番組自体が終了となった。
映画
演:ブライス・ダラス・ハワード、吹替:小笠原亜里沙
シリーズ通してメインヒロインがMJであるため、どちらかというとコミックのアン・ウェイングに近いポジション。
登場も第3作だけで、当初はエディ・ブロックのガールフレンドであったが、当の彼女は一方的にアプローチしてくるエディを内心鬱陶しく思っていた。クレーン事故から助けられたことをきっかけにスパイダーマンと親しくなり、MJと食い違いを起こしたピーターの新たな恋人候補となるも、最終的には結ばれなかったが、そのおかげで父共々生還している。
なお第1作におけるノーマンの死亡シーンは上記と似たような自滅だったりする。
逆にMJが登場しないため、シリーズ通したメインヒロイン。高校の同級生としてピーターと交流を深め、やがて恋人関係になり、スパイダーマンという正体を知った上で彼をサポートする。
だがリザードマンとの戦闘によって父が死亡、その際に「娘を巻き込むな(交際をあきらめろ)」と遺言されたピーターが苦悩するようになったのを見かねて別れを告げ、やがてイギリスへの留学を決意するが、ピーターと橋の上で和解。共にエレクトロを撃破する。
しかしそこにスパイダーマンの正体を知りグリーンゴブリンと化したハリーが現れ、時計塔から落下。コミック通りの最期を遂げた。
ちなみにエマとピーター役のアンドリュー・ガーフィールドは実際に交際しており、そうでなければできないパロディや、こんな場面やこんな場面もあった。
未登場。
シリーズ3作目『ノー・ウェイ・ホーム』ではMCUの世界に転移したマーク・ウェブ版ピーターの口から死を未だに引きずっている事が言及されている。
そして終盤、彼は高所から落下したこの世界のMJを今度は助け、涙を流すのだった。
余談
邦訳コミック
日本語版では光文社の『スパイダーマン』がまさにグウェンがヒロイン時代のエピソードが集中しており、まとまった量を読むことができる。出版されたのが相当古い時期のため、当然ながら絶版で入手は困難。また本のサイズが日本の小版コミックと同じのためか、セリフの文量が少なく、本来フルカラーのコミックが白黒と色々難点もある。
小プロの『スパイダーマン:ステイシーの悲劇』ではグウェンが死亡した時のエピソードなど6話分を収録している。入手難度が低く、カラーはきちんと再現され翻訳などもしっかりしているので、まずはこちらを読む方が良いだろう。
また同じく小プロの『Marvels』では一般市民の目線でグウェンや、スパイダーマンとゴブリンの戦いなどが描かれている。グウェンが清純の象徴と綴った理由が分かるはずである。単純にアメリカンコミックの名作中の名作と言える本なので、手にとって損はない。
事情
本来ならば彼女がメインヒロインとなる予定だったが、原作者のスタン・リーが代筆者を立てて休暇をとったところ、当時の脚本家のゲリー・コンウェイが彼の意図を知らずに彼女を殺してしまい、彼女の死には、読者どころかスタン本人さえもが大きなショックを受けた。
と、日本随一のアメコミ識者である小野構世の著書などに記されているが、『スパイダーマン:ステイシーの悲劇』に拠れば、実際にはスタンもグウェンが死亡する事は既知だったと明かされている。
ゲリー曰く、グウェンはヒロインとしては欠点がなさすぎて魅力がないらしい。スタンもMJがヒロインとなってから物語がより面白くなったとヒロイン変更を認める発言を残している。
主要キャラクターが前触れもなく死亡する事は当時のアメコミ界隈では異例中の異例と言える出来事であり、彼女の死を一つの時代(シルバーエイジ)の終焉として見る事もある。
死亡キャラの復活が頻繁に行われるMARVELにおいて、ベンおじさんと並んで今日まで復活していないキャラクターとしても有名。
グウェンのクローンが登場した脚本は、グウェンの死を描いたゲリーの手による物であり、復活を匂わせるような脚本ではあったが実際はただのミスリードであった。この時のクローンの大量登場と混乱は、後にさらなる混乱を招いた『クローンサーガ』に繋がっている。
ただ、グウェン本人の復活こそないが、グウェンのクローンは時折登場しており、ピーターを大いに悩ませている。
ゲリーが娘と共にマーク・ウェブ版の映画を鑑賞した際に、娘から「パパはこんな良い娘を殺しちゃったの?」と問い詰められたという。
『シンズ・パスト』において双子が登場した際には当時の脚本家のJ・マイケル・ストラジンスキーはグウェンとピーターの子供という事にしようとしていたが、ヒーロー活動に支障が出ると編集陣から反発を受け、設定変更となったという。だからと言ってゴブリンの子供というのは酷すぎであり、スパイダーマンの歴史の中では悪名高い『クローンサーガ』レベルの黒歴史となってしまった。