経歴
フルネーム:エドワード・チャールズ・アラン・ブロック(Edward Charles Allan "Eddie" Brock)。
サンフランシスコ郊外の裕福な家庭に産まれたが、出産時に母親が死んだ事で父親からは冷遇される事になり、認めてもらおうと文武両道に励んだが、それでも関心を抱かれるまでには至らなかったという孤独な生い立ちの持ち主である。
成人後は記者として成功を収めたが、スパイダーマンの活躍で自身の書いた記事が誤報だったことが判明して社会的信用を失ってしまい、逆恨みであるが、スパイダーマンに強い憎しみを抱くようになる。
その後、偶然にもスパイダーマンことピーター・パーカーがエイリアン・コスチューム、もとい共生体シンビオートを捨てた際に居合わせ、それと合体。ヴェノムとしてスパイダーマンの前に立ちはだかった。
もとがひ弱なオタクだったピーターと比べると、エディはストレス解消のためにボディビルで鍛えていた事により総合的な身体能力で勝り、非常にやっかいな敵となっている。
ただし一見すると悪辣な人物に見えるが、ヴェノムとなったエディが仇と付け狙っているのはあくまでスパイダーマンだけであり、他に悪行らしい悪行はしない。むしろ彼と戦う際には他人を巻き込むことを好まず、子供や一般市民が戦いに巻き込まれそうになると思わず助けたりする等、紳士的とさえ言っていい良心に満ちた一面も持っている。
またそのスパイダーマンとも、自分が原因で誕生してしまったカーネイジを倒すべく恨みを飲んで共闘するなど、器量も持ちあわせている。 逆に、同じ共生体から生まれたカーネイジとは、互いの思想が相容れない事もあって不仲であり、スパイダーマンと組む形で何度も投獄に追い込んでいる。
末期ガンに侵されてしまいヴェノムとしての活動に耐える体力を失ったため過去の罪滅ぼしも兼ね、チャリティーオークションにシンビオートを出品する。 彼によって手放されたのを機に、ヴェノムのシンビオートは何人もの人間の手に渡るようになったが、対ヴェノム抗体によって命をとりとめ、さらにはわずかに体内に残存していたシンビオートが変異を起こして、新たな白い共生体「アンチヴェノム」と化した。
そのアンチヴェノムの力も後に失われ、カーネイジのシンビオートから生まれた別シンビオート(いわばヴェノムの孫にあたる)「トキシン」の2代目宿主だった時期を経て、紆余曲折あってエージェント・ヴェノムのシンビオートを取り返しヴェノムとして復帰。スパイダーマンへの憎しみは無いためヒーロー活動に勤しんでいる。
(しかし、パートナーのアン・ウェイングはエディを救おうとして重傷を負った際にシー・ヴェノムになったが、それが原因となって後に自殺してしまった。)
だが息子である「ディラン」の存在が発覚して、しかもその子供が人間とシンビオートのハーフであり父親としてヒーローとして試行錯誤しながら成長していく。
そんな中、シンビオートの創造主ヌルが地球に攻めこみ多数のヒーロー達と共にこれを撃破したことでシンビオートの王「キング・イン・ブラック」となった。
そして息子を地球へと残し、他のシンビオートと共に宇宙へと旅立った。
その後はシンビオートの力の使いすぎにより、地球に戻ってきた際には老人の肉体と化しており、ディランが危機に遭った際にはヴェノムシンビオートは呪いとしてでなく新たな祝福として息子に受け渡し、自身は宇宙の平穏と家族を守るため、新たに手に入れた強大な力を用いて、宇宙を股にかける神と家庭を支える父親の両立を続けていくために再び宇宙へと戻っていった。
そんな中未来の自分自身の運命に絶望してフィネガンというシンビオートと結合し、ベドラム・ワイルド・タイロ・メリディウスと人格が分裂してしまう。
そして様々な時間軸に飛び込む中ヴェノムシンビオートが地球を飲み込みヴェノムワールドにする未来を見てしまい取り返そうとヴェノム・ウォーを勃発。
自身は様々なシンビオートと結合し最終的にアンチヴェノムへと返り咲いた。
実写版
サム・ライミ版
演:トファー・グレイス / 吹替:森川智之
『3』にて、デイリー・ビューグル社の新人カメラマン「エディ・ブロックJr.」として登場。
野心家でスパイダーマンの特ダネ写真を撮ろうと躍起になっており、ピーターに対抗意識を燃やす。グウェン・ステイシーとは恋仲だが、それはエディの一方的な思い込みである節があり、当の彼女からの対応はイマイチであった。
中盤でブラックスパイダーマンに邪険に扱われたことに腹を立て、捏造写真を使って彼の犯行をでっち上げた特ダネで称賛されるが、スパイダーマンの名誉を汚された事に激怒したピーターに捏造写真を暴かれてしまい、ほどなくクビになってしまう。
さらにグウェンと親しいピーターを目撃し、彼に殺意まで抱くようになる。
ちなみに劇中では描かれていないが、小説版では捏造写真の件でピーターだけでなくグウェンをも激怒させてしまい、トドメと言わんばかりに絶交を切り出されている。
全てを失った後は教会でピーターへの天誅を願いに来たところ、丁度落下してきたシンビオートに寄生され、元々の性根の悪さも相まってシンビオートと見事に融合させられてヴェノムとなった。
そして、自分と同じくスパイダーマンを恨んでいたフリント・マルコ / サンドマンに接触し、味方に抱き込んだ上でスパイダーマン=ピーターの抹殺に乗り出す。
最終決戦ではピーターを庇ったハリー・オズボーン / ニューゴブリンに致命傷を負わせたが、シンビオートの弱点が金属音であることに気付いたピーターによって鉄パイプで囲まれるように閉じ込められ、その音でシンビオートが弱ったところを引き剥がされるも、既にシンビオートの力に魅入られてしまっていたためハリーのパンプキンボムからシンビオートを庇おうとして共に爆死。骨まで砕け散り、遺体は残らなかった。
本編では事故という形で命を落としたものの、当初の案では「ピーターに敗北した後にシンビオートからは用済みと見なされて肉体を喰い尽くされて白骨化する」という悲惨な最期になる予定であった。
コミックではダークヒーローとして人気のキャラクター・ヴェノムだが、本作ではサム・ライミ監督があまり好きでなかったこと、大人の事情で無理矢理登場させられたこともあり、オリジンこそほぼ同じだが徹底して凶悪で小者な人物として描かれた。
どちらかというと体格も人物像もカーネイジに近く、あまりにもかけ離れた人物像や容姿であったため、コミックファンからの評価は低い。
本編を原作としたゲーム版では当初から捏造の特ダネ写真を撮るために偽者のスパイダーマンを雇ったり、非協力的なマルコを仲間に引き入れるために彼の娘ペニーを人質にしたりする等、同情の余地が薄い悪党として描かれていた。
スパイダーマン・ユニバース版
演:トム・ハーディ / 吹替:諏訪部順一(ヴェノムは中村獅童が担当)
映画『ヴェノム』シリーズに主役として登場。
この世界には(ピーター・パーカーと思われる人物はいるが)スパイダーマンは存在していないため、自身はスパイダーマンとは何の因縁も持っていない。しかし彼に寄生しているヴェノムは何やら見覚えがあるらしく、恐らくそれがシンビオートたちがスパイダーマンと酷似した姿を取っている理由とも深くかかわっているものと考えられる。
演者もファーストネームが「エドワード」で、息子を介してヴェノムを知り、以降は大ファンになったと語っている。
ヴェノム
元々テレビ局に勤務するジャーナリストであり、自己中心的な一面もあるが、強い正義感の持ち主で、徹底的な取材で人気を博した記者だった。
だが勤務しているテレビ局のスポンサーであるライフ財団のCEO、カールトン・ドレイクへの取材の直前、弁護士である婚約者アン・ウェイングのメールを盗み見し、ライフ財団が非道な人体実験を行っていたことを知り、義憤に駆られるままにインタビューでそのことを追求した結果、テレビ局を解雇されてしまった。更にはとばっちりを受けて事務所を解雇されたアンからも婚約を解消されてしまう。
半年後、まともな仕事もなく零落した生活を送っていたが、ライフ財団の女性科学者ドーラ・スカースからの内部告発を受ける。アンに新しい恋人もできたこともあってやけっぱちになり、ドレイクへの復讐も兼ねて潜入取材に乗り出したが、そこでシンビオートとの融合実験の実験台にされていた人々の中に女友達マリアがいることに気付き、助けようとして正気を失った彼女に襲われ、更には彼女の中にいたシンビオートに寄生されてしまう。
命からがら脱出を果たすが、エディに寄生したシンビオートによって「生きた肉を食べたい」という衝動のままに奇行に走るなど、目に見えて異常な行動を取り始める。またシンビオートはエディの肉体からも栄養を奪うため、多臓器不全の一歩手前まで追い込まれる一幕もあった。
ライフ財団の刺客によって絶体絶命の危機に陥るも、シンビオートの絶大な戦闘能力によって命を救われたエディは、自らの信念に準じて対決を決意。シンビオートも当初はエディを単なる「乗り物」と見なしていたが、「負け犬」であった自身を受け入れたエディに影響されたか、以降は最も「共生」に成功したケースとなった。これによりドレイクに狙われるようになり、「ヴェノム」として彼らと戦うことになる。
ヴェノムとなったエディはそのパワーで縦横無尽に駆け回ることができるようになるが、本人は実は高所恐怖症である。その為ビルを駆け登って最上階に侵入、目的を果たした後はエレベーターを使って帰ろうとし、シンビオートから「ヘタレ」(吹き替え版では「腰抜け」)と評された。
降りてきた所を財団の特殊部隊に囲まれるも、戦闘態勢に入った彼らを真似た「装面!(Mask!)」に「了解!(Copy!)」とシンビオートが応じて即座に変身。一方的な暴力を振るうのは名場面のひとつに挙げられる。
ドレイクと彼に寄生したライオットを死闘の末に倒した後は、アンの活躍でライフ財団の悪事が暴かれたこともあり名誉を回復。勤め先だったテレビ局からの復帰の誘いを断り、フリーのジャーナリストとして活動することを決意する。
最終的に「悪いやつなら食っていい(判断基準は「見たらわかる」)」という結論に至り、「最悪」のコンビは「最強」の相棒となって戦いを続ける事となる。
ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
一度ヴェノムと喧嘩別れしてしまうものの、最凶・最悪の敵:カーネイジの登場もあり、アンに仲介される形で再びバディを組むことになる。
最終的に、死闘の末にカーネイジとその宿主であるクレタス・キャサディを倒すことには成功するものの、同時に警察に追われる身にもなってしまい、追跡の手を逃れるためにとある離れ小島に滞在していたところ、謎の次元転移現象に巻き込まれてしまう。
ちなみにコミックでも島に滞在したことがあり、スパイダーマンを倒し(たと思い)余生を過ごすためであったが、本作とは逆にカーネイジ誕生の責任を取るために戻っている。
なお、結局アンと寄りを戻すことはできなかったことが本作で明らかとなった。
しかしアンは引き続き良き協力者・理解者として2人を支え続けており、彼女の存在がなければカーネイジによる被害はもっと深刻なものになっていたことは間違いない。
上記『3』で吹替を担当した森川智之は、本作からパトリック・マリガン役で参加している。
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
ポストクレジットシーンに登場。
迷い込んだMCU世界【アース199999】について聞き込みを行い、最終的にピーター・パーカー / スパイダーマンに会いにニューヨークへ行こうと決意するが、その直後にドクター・ストレンジの手によって元の世界へと戻されてしまった。
しかし、その場に剥がれ落ちたシンビオートの一部が残されてしまった…
ヴェノム:ザ・ラストダンス
2024年10月公開予定のシリーズ最終作。
『NWH』の後、元の世界に帰還したものの変わらず逃亡生活を続けている。
メキシコのバーでヴェノムの思うがままに暴れて荒らしてしまった後、「自由の女神像が見たい」というヴェノムの提案でニューヨークに戻ることに。
まず腹ごしらえとして闘犬用の犬を飼い慣らしていた悪党4人をとっちめて捕食。
その後、飛行機にしがみついてニューヨークに向かおうとするがそこでゼノファージの襲撃を受けて地上に降りざるを得なくなってしまう。
結果、荒野の中を進む羽目になり、途中馬を見つけたためヴェノムが馬に寄生するものの相変わらずのじゃじゃ馬っぷりでダウンしてしまう。
だが、そこにレックス率いる軍の部隊と鉢合わせとなり、交戦。自分の身を守るためとはいえ人を殺したことを後悔していた。
その後、乱入したゼノファージの手から逃れ、マーティン一家と出会い、ラスベガスまで連れて行ってもらうことになり、一家との交流を経て疲れを癒すことができた。
その後、ラスベガスで一家と別れ、マーティンから貰った資金20ドルを更なる逃亡資金へと増やすためにヴェノムの提案でカジノに行くことに。ドレスコードに引っかかったため、近くで立ちションしていた客を殴り彼からスーツ一式を強奪。
しかし、ヴェノムがパチンコに全財産を投入した挙句負けたため資金はすっからからんになっただけでなくヴェノムがムカついて台を蹴ったため足を負傷してしまう。
とはいえ、そこでチェンと再会。彼女に誘われる形で彼女が滞在しているホテルの部屋に行くことになり、ダンスする羽目に。(エディはゼノファージを警戒して反対していたが、ヴェノムはそんなことお構い無しにノリノリ)
結果、エディの危惧した通りゼノファージが襲来。何とか誤魔化して退けることはできたものの、今度は軍に見つかり捕縛されてしまう。
その後、投獄されてしまうがそこでパトリックと再会。パトリックに寄生していたトキシンから更なる詳細を聞かされ、強制的に分離されていたヴェノムが密かにセイディに寄生していたことで再びエディに寄生。
それと同じ瞬間に気配を察知したゼノファージが襲来。
研究員を守るため、研究所内のシンビオート達と共に撃退を試みるも全く歯が立たず劣勢に陥る。
更にはこっそり基地に侵入していたマーティン一家と再会。
彼らを逃がし、自分が囮になってバイクで疾走し援軍として来たもう一体のゼノファージを一箇所に集めて一掃することを提案。見事作戦は上手くいき、軍により武装でゼノファージの爆破には成功。しかし、一体撃破したのみでもう一体は健在だった上、更なる援軍で大量のゼノファージが襲来してしまう。
死期を悟った2人は一か八か施設にある溶解液で全て消し去ろうと試み、全てのゼノファージを自らに寄生させる。
だが、ここでヴェノムがエディを切り離し、自分一人だけがゼノファージとともに犠牲になる道を選んでしまう。
その後、目覚めた頃にはヴェノムは居らずとある軍人からシンビオートの件は他言無用にしろと言われ、煮え切らないまま第二の人生を歩むことになる。
エンドロールでは、ニューヨークに戻ってヴェノムの望みであった自由の女神を眺めて、ヴェノムとの思い出を噛み締めて決して忘れないことを誓った。