概要
『X−MEN』シリーズ、MCUに続くMARVELコミックの第三の実写作品群。
ソニーが実写化権を有する、マーベル・コミックのスーパーヒーロー「スパイダーマン」の関連キャラクターを主人公とした、複数の映画作品から成る。
ややこしいが、スパイダーマンは(キーキャラクターとしては)登場していない。
本記事タイトルの「スパイダーマン・ユニバース」は、正式な名称ではない。
正式名称は何度か変更されており、ファンからはMCUと同じアルファベット3文字であるためか、都合4番目の正式名称の略称である「SSU」と呼ばれることが多い。
沿革
1998年、経営危機に陥ったMARVELは、自社のキャラクターの映画化権を売却することを決定(詳細は、MCUの「権利関係」の項を参照)。
その中でソニーは、人気キャラクターであるスパイダーマンとその関連キャラクターの権利のみを1000万ドルで購入した。
ちなみにMARVEL側は、アイアンマンなど他のキャラクターもソニーに売却するつもりだったが、ソニーは「他のは要らない」と拒否した。
スパイダーマン関連の映画化権を獲得したソニーは、これまでサム・ライミ監督による3部作(2002~2007年)やそれのリブートにあたる『アメイジング・スパイダーマン』(2012年)が制作・公開してきたが、『アメイジング・スパイダーマン2』(2014年)の興行・批評の評価が芳しくなかったために、シリーズは打ち切りとなってしまう。
それに伴い『アメイジング・スパイダーマン3(仮題)』や『シニスター・シックス(仮題)』といった企画が消滅しており、後述の『ヴェノム』もそのあおりを受けてお蔵入り状態だった。
その後ソニーはマーベル・スタジオと提携し、スパイダーマン自身は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)でMCUに参入。単独作品となった『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)は批評・興行の両面で高い成功を収め、監督を務めたジョン・ワッツは、続編及び第3作でも続投した。
その一方で『ホームカミング』の公開前後から、ソニーは独自のユニバースを構築する計画を始めた。これが本項で述べる作品群である。
いわば『アメイジング・スパイダーマン』シリーズで頓挫した先述の企画のリベンジに当たる。
2016年6月(『ホームカミング』公開直後)、ソニー・ピクチャーズ映画製作部門会長のトム・ロスマンはTheHollywoodReporter誌に対して、「スパイダーマン・ユニバース(=『スパイダーマン』の世界を複数の作品に拡大する)の計画がある」と答えた。
2017年3月、ソニーは『ヴェノム』を2018年10月に公開すると発表。5月には、第2弾としてシルバー・セーブルとブラックキャットを主人公にした映画を制作することも明かした(後にとん挫)。6月にはクレイヴン・ザ・ハンターやミステリオの主役映画の可能性も報じられた(後者はトムホ版スパイダーマン2に登場した)。11月には『モービウス』の制作決定が発表された。
2018年10月、『ヴェノム』が公開。世界興収8億ドル越えという興行的成功を受け、続編や新規キャラを主役とした作品の製作が決定し、ユニバースの更なる拡張に期待が高まった。
2019年9月、『マダム・ウェブ』の製作決定が発表された。
2021年10月、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』公開。第1作には及ばなかったが、世界興収5億ドルを達成した。
2022年4月、『モービウス』公開。ポストクレジットシーンにて、『ホームカミング』に登場したマイケル・キートン演じるヴァルチャーが登場するというユニバース拡大を思わせる演出が見られたが、世界興収は1億ドル超と、『ヴェノム』2作の半分にも及ばず、徐々に暗雲が立ち込める。
2024年2月、『マダム・ウェブ』公開。こちらも世界興収1億ドルと、製作費をギリギリ回収する程度の成績となった。
2024年10月、『ヴェノム』シリーズの最終作となる『ヴェノム:ザ・ラストダンス』公開。世界興収は4億ドルを超えた。
2024年12月、第6作『クレイヴン・ザ・ハンター』公開直前に、米国のエンタテイメント情報サイトTHE WRAPが、「有力タレントエージェントが、『ソニーが「今のところ進めたい企画は進めた」として、代わりにマーベル・スタジオの「スパイダーマン」次回作に注力している』と語った」と報道した。要するに、スパイダーマン・ユニバースとしての展開は終了し、先に制作決定が報じられたトムホ版『スパイダーマン4』に注力する、という意味である。
他にも、第3作公開が待望されている『スパイダーバース』や、元々本ユニバースの作品として予定していた『スパイダーマン・ノワール』の製作に関しては継続する模様。
ただし、現時点でソニーから正式な表明は出ておらず、あくまで噂レベルの話である(参考)。
名称の変化
先述のとおり、本シリーズ(ユニバース)は数度のタイトル変更が行われている。
2017年5月、ソニーは本シリーズを「ソニーズ・マーベル・ユニバース(SMU)」と発表。
2018年8月、『ヴェノム』が公開されてすこし後、同社内の社員達からはソニーズ・ユニバース・オブ・マーベルキャラクター(SUMC)と呼ばれるようになった。
2019年3月、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのプレゼンテーションで「ソニー・ピクチャーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター(SPUMC)」と言及され、後にソニーはこれが正式名称であることを確認した。
2021年8月、『ヴェノム2』とMCUの『スパイダーマン3』(当時の仮題)が発表されたのを機に、ソニーはユニバース名を「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)」へと改名した。
2022年3月、『モービウス』の監督を務めたダニエル・エスピノーサは、一連のユニバースを“ヴェノム・ユニバース”と呼称しており、関係者の間でも呼び名の統一が徹底されていないことが窺える。
ちなみに、本記事タイトルである「スパイダーマン・ユニバース」という単語は、2016年1月に当時のソニー・ピクチャーズ映画製作部門会長のトム・ロスマンへのインタビューでTheHollywoodReporterがした「スパイダーマン・ユニバースの計画はある?」という質問の中で登場した。
特徴
タイトルロール(主人公)は、ソニーが実写化権を持つ『スパイダーマン』関連のキャラクターとなっている。
第1作『ヴェノム』からもわかるように、いわゆるヴィランやダークヒーローが主人公を務める作品が現状ほとんどである。
作風としては、『ヴェノム』はユーモアも交えたホラー・サスペンス調、『モービウス』はダークなヴァンパイア・ムービー、『マダム・ウェブ』は特殊な能力に完全に目覚めていない人物たちの決死の逃避行、『クレイヴン・ザ・ハンター』は人体の損壊等の過激な描写を含むバイオレンス・アクションといった具合に、同じマーベル原作のMCUや『X−MEN』シリーズとの明確な差別化を図っており、X-MENユニバースのスピンオフ作品のような「このシリーズだからこそ作れる映画」像を模索しているようだ。
MCUの「アベンジャーズ」やライバル会社のコレのような、主役達が一堂に集結する作品は作られていない。
ファンからは、『スパイダーマン』関連のヴィランが多数登場することから、コミックに登場するヴィランチーム「シニスター・シックス」の結成が期待されており、実際第3作にて言及されてする。
MCUに出演した俳優を、別のキャラクターで起用するというパターンも多い。
- アーロン・テイラー=ジョンソン:クイックシルバー→クレイヴン・ザ・ハンター
- リス・エヴァンス:リザード→マーティン・ムーン
- キウェテル・イジョフォー:モルド→レックス・ストリックランド
- アンディ・サーキス:ユリシーズ・クロウ→ヌル
- ラッセル・クロウ:ゼウス→ニコライ・クラヴィノフ
MCUとの関わり
後にディズニーとソニーの間で新契約が結ばれ、マーベル・スタジオのプロデューサーであるケヴィン・ファイギ氏が言うには「スパイダーマンは複数のユニバースを行き来する唯一無二のヒーローとなる」と述べており、トム・ホランド演じるスパイダーマンがこちらのユニバースに出演する可能性が高まった。
そして、『レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のポストクレジットシーンではMCUにおけるある出来事とリンクするシーンが挿入され、ピーター・パーカー/スパイダーマンもカメオ出演。MCUとのクロスオーバーが本格的に始まることが示されていた(『ヴェノム』に関して、ソニー側は以前からホーム三部作と世界を共有した作品と独自に位置付けており、同作のプロデューサーであるエイミー・パスカルも「MCUの付属物」と表現していたため、それがようやく実現することになったと言える)。
また、3作目である『モービウス』も「MCUと直接繋がる作品となる」と報じられており、ポストクレジットシーンで『スパイダーマン:ホームカミング』でヴァルチャーを演じたマイケル・キートンが登場する(『ヴェノム』でもMCUからのカメオ出演が希望されていたが、最終的にマーベル・スタジオの要望で断念された)。
こうしたこともあり、スパイダーマン単独作品(ホーム三部作)については、MCU作品でもあり、SPUMC作品でもあるという状態になっていると言える。
いずれにせよ、新契約によってMCUとの権利関係の壁がかなり薄くなっている事が窺え、マルチバースが本格的にMCUに導入されたことにより、SPUMC作品群とMCUスパイダーマンの今後のクロスオーバー展開に期待が寄せられている。
一応、MCUで新たに始まるスパイダーマンの三部作にSPUMCのキャラクターが登場する事がリークされたり、その情報を信じるファンからも期待されているが果たして……。
作品一覧
No. | タイトル | 全米公開日 | 日本公開日 |
---|---|---|---|
1 | ヴェノム | 2018年10月5日 | 11月2日 |
2 | ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ | 2021年10月15日 | 12月3日 |
3 | モービウス | 2022年4月1日 | (同日) |
4 | マダム・ウェブ | 2024年2月14日 | 2月23日 |
5 | ヴェノム:ザ・ラストダンス | 2024年10月25日 | 11月1日(一部劇場で先行あり) |
6 | クレイヴン・ザ・ハンター | 2024年12月13日 | (同日) |
(以下制作中) | |||
Spider-Man Noir(仮) | |||
(以下制作中止) | |||
Hypno-Hustler | なし | ||
El Muerto | なし |
『ノワール』は初のドラマ作品で、他にも
シルバー・セーブルやブラックキャットもドラマの企画があったらしい。
シルクの企画は頓挫が発表された。
成績
作品名 | 世界興収 | 北米興収 | 日本興収 |
---|---|---|---|
ヴェノム | 856,085,151ドル | 213,515,506ドル | 22.5億円 |
ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ | 506,863,592ドル | 213,550,366ドル | 19億1000万円 |
モービウス | 167,460,961ドル | 73,865,530ドル | 5億6000万円 |
マダム・ウェブ | 100,498,764ドル | 43,817,106ドル | 2億9000万円 |
ヴェノム:ザ・ラストダンス | 468,849,654ドル | 138,437,629ドル | 14億4000万円 |
ちなみに
MARVELコミックの大型イベントの1つに『スパイダーバース』があるが、あちらはあくまで色々なスパイダーマンが集結する話であり、現時点ではそのアニメ版といえる『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズも含めて、このシリーズとの関連性はない。
ただし、ソニーが独自のユニバースの構築を始める上で、これらが念頭にあった可能性はある。
また
- Amazon Prime及びディズニープラス配信での『ヴェノム』のポストクレジットでアニメ版と関係のあるシーンが描かれていること
- アニメ第2作『アクロス・ザ・スパイダーバース』にチェンが実写で登場したこと
- その際にアース番号が【688】であることが判明した。
- ドラマ『ノワール』の主演がアニメで声を担当したニコラス・ケイジであること
から、ファンの間ではさらなる繋がりを期待する声もある。
なおこのアース番号は1996年6月に発売された『What If...? #88』と重複しており、FANDOMでは【688B】と表記されている。
副題は『Starring Spider-Man: Arachnamorphosis』で、ピーター・パーカーがスパイダーマンの力をモンスターのように変化させた世界を描いており、単なる製作陣のミスの可能性もあるが、関連性は現状不明である。
関連タグ
ヴェノム モービウス マダム・ウェブ クレイヴン・ザ・ハンター
???(『モービウス』ネタバレ注意)