運命を受け入れろ。
全く新しい世代の物語がスパイダーマン映画史の新たな扉を開く。
概要
MARVELコミックのスーパーヒーロー「スパイダーマン」、およびマルチバースを超えて彼らが集結する一大イベント『スパイダーバース』を基にしたアニメーション映画。
本国アメリカでは2018年12月14日に、日本では2019年3月9日に公開された。
配給はソニー・ピクチャーズ。
3DCGアニメーションでありながら手書きのタッチも出す特殊で革新的な手法が用いられており、この技術を特許出願している。
公開されるや否や、コミックファンからもライト層からも多大な高評価を受けるという異例の事態が発生し、2019年2月24日にはディズニー、ピクサー作品などを抑えてアカデミー賞を受賞した。その他にも、ゴールデングローブ賞をはじめとする多数の賞を受賞またはノミネートされるという成功を納め、ゴールデンラズベリー賞の名誉挽回賞にもノミネート。
興行収入は最終的に400億円以上を記録、続編の制作も決定した。
なお、上記の本国と日本の公開日を見て気付く人も居ると思われるが……クリスマス映画としての一面も有るのに、日本では春に公開される事になった。
コミック版との違い
タイトルこそ『スパイダーバース』を冠しており、マルチバースを題材にスパイディたちが集結するという大筋も共通しているものの、ストーリーや各キャラクターの設定や活躍が全く異なっており完全に別物である(だからこそ割り切って見る事が出来るコミックファンも多かったのかもしれない)。
本作の原題は「Spider-Man: Into the Spider-Verse」となっており、厳密には異なることが窺える。
またコミック版ではメインだった、正史世界である【アース616】のスパイダーマンやシルク、スパイダーウーマンなど、また敵であるインヘリターズも本作には登場せず、逆にマイルス・モラレスやペニー・パーカーなど、決してメインのスポットライトを浴びていなかったと言えるだろうメンバーが抜擢。
マイルスを主役とした別の物語となっている。
公開後に制作陣から明かされたところによると、本作はコミック版『スパイダーバース』ではなく【アース1610】が舞台の『アルティメットスパイダーマン』を基に、そこに追加する形で『スパイダーバース』や他のカッコいいキャラクターを紹介しようと考えられたものとなっている。
さらに『アルティメット』をコミックス版そのままではなく“2019年における世界”として表現したいという思いから、マイルスを主人公に作られたらしい。
『アルティメット』のクリエイターの1人、ブライアン・マイケル・ベンディスも顧問に入り、マイルスのユニバースについて細かくアドバイスがもらえたとのこと。
つまり直接的な原作は存在しない、スパイダーマンを良く知らなくても楽しめるマイルスを主人公とした全く新しい「スパイダーマン」となっている。
『アルティメット』がテレビアニメとして認知されていることも、商業的に成功した理由となったという指摘もある(参照)。
主人公と師匠役とヒロイン以外のスパイダーマンについては、時代と次元の独特感を重視したものとなっている。
あらすじ
「スパイダーマン、死す」
キングピンが時空を歪める装置を開発。その危険性から装置を止めようするスパイダーマンことピーターだったが殺されてしまう。
「彼に替わって“守る”」
その“思い”と“責任”を引き継ごうとするマイルスだったが、13歳の若き彼にそんな力はない……。不安に暮れるマイルスだったが、そこに現れたのはーー死んだはずのピーターだった!しかしどこか…おかしい?
「俺達しかできないー世界を救えるのは」
少々おかしくても彼もスパイダーマン。マイルスはピーターを師にして彼と共に戦う決意をする。
そんな2人の元に他のスパイダーマン達も集結し、全てのユニバースを元に戻す戦いに挑む。
登場人物
括弧内は原語版 / 日本語版CV。
ヒーローサイド
本作の主人公にして、スパイダーマンを受け継いだ少年。
頭はいいが新しい学校に上手く馴染めず女の子とも上手く話せず親とも上手くいかない、どこにでもいるような少年だったが、叔父に連れられていった場所で放射性の蜘蛛に噛まれスパイダーマンの能力を得てしまい、更にはスパイダーマンとキングピンとの戦いに巻き込まれ否が応でもスパイダーマンの責任を引き継ぐことになる。
「なぜって?スパイダーマンがいなくなったからさ。」
「僕1人だけだと思っていたけど、『君』もそうか?」
マイルスの世界のスパイダーマン。26歳の金髪の好青年。
品行方正で理想的なヒーローで人々から慕われており、最愛の妻メリー・ジェーンとの仲も良好で、タイアップCMや音楽も出したりと、若くして才気溢れる彼は色々と上手くやっていた。
実写のトビー・マグワイア版に似た経歴。
キングピンの野望を打ち砕くために次元転移装置を破壊しようと激戦を繰り広げていたが、その最中に偶然巻き込まれたマイルスと邂逅。
彼が自分と同類であることを即座に見抜き、戦いの後に師匠となることを約束。だが戦いの最中で瀕死となり、装置破壊のキーと遺志をマイルスに託し、この世を去った。
キャスト表記では後述のピーターとの区別のため「RIピーター・パーカー」と呼称されている。
- ピーター・B・パーカー / スパイダーマン(ジェイク・ジョンソン / 宮野真守)
「普段会うのが『俺を殺したい奴』ばっかりだったから……味方って良いな」
マイルスとは別アースから来たピーター。
数々の事件を解決し活躍、何だかんだでもう40歳過ぎ。下腹もポッコリ。その過程で腰をやってたり、考え過ぎてMJと別れてたりで色々と擦れちゃってる。とはいえ良く言えばベテランヒーローである彼はマイルスに頼まれ、しぶしぶながらも師匠役に就くことになる。
経歴はコミックやアンドリュー・ガーフィールド版へのオマージュも含まれている。
「別の次元から来た。貴方とはまた別の…別の次元からね」
別アースからやってきた有能スパイダーウーマン。センスがありタフで頭が良く美人な彼女だが、ピーターを失ったショックから基本1人でいるようになる。
コミックでは『スパイダーバース』で初登場、後に主役タイトルも刊行された。ピーターの代わりに蜘蛛に噛まれ、変異している。
- ピーター・パーカー / スパイダーマン・ノワール(ニコラス・ケイジ / 大塚明夫)
「俺のいるところに風は吹く。その風は雨の匂いがする」
1933年からやってきた自警団。出身が過激派でモノクロな過去世界なため、カラフルな現代とイマイチ合わない。
デビューは2009年に刊行された4部作のミニシリーズ。ちなみにモデルは当時の典型的警察官。
「さっき手を洗ったばっかりだから濡れてるの。……ホントだよ?」
お調子もののブタ。カートゥーン次元から来たので少し平たく、3次元とは微妙に馴染まない。
コミックではキャラを動物化した「ラーバルアース」の出身で、放射性のブタに噛まれてブタ化した蜘蛛。
「ハロー!こんにちわ!初めまして、よろしく!」
未来から来た日系スクールガール。スパイダーマンとほぼ同じ能力を持つパワードスーツ「SP//dr(スパィダー)」と超能力で繋がっている。
彼女も『スパイダーバース』が初登場。SP//drの稼働実験中に父親が事故で死亡、乗るには遺伝的素質が必要なため彼女が受け継いだ。
コミック版とはほぼ別人とも言える容姿と性格にアレンジされており、映画オリジナルのペニー・パーカーである。
ヴィランサイド
- ウィルソン・フィスク / キングピン(リーブ・シュレイバー / 玄田哲章)
ニューヨークの犯罪を仕切ってるボス。表向きは巨大で権力ある人物だが、裏ではヴィランたちを束ね、ギャングに武装させてニューヨークの犯罪界の王として君臨している。
スパイダーマンに個人的な恨みがあり、それは今回起こした事件とも関係がある。
日本語版を担当した玄田は、後にMCUでも同役を演じている。
- オリヴィア・オクタビアス / ドック・オク(キャスリン・ハーン / 渡辺明乃)
マイルスの世界におけるドクター・オクトパス。本家と違い女性。
キングピンの手下として登場。
関係者
- ジェファーソン・デイビス(ブライアン・タイリー・ヘンリー / 乃村健次)
厳しいが愛のあるマイルスの父。マイルスが名門中学校に入れたことを誇りに思っている。
職業は警察官だが、自分たちより犯罪の取り締まりに信頼のあるスパイダーマンを敵視しており、そのためマイルスは父に秘密を打ち明けられないでいる。
- リオ・モラレス(ルナ・ローレン・ベレス / 小島幸子)
マイルスの強い母。彼を励ましてくれる一番親身な味方。
ジェファーソンの弟で、マイルスの叔父。兄とともに荒れた環境で育ったが、家庭を持った兄とは少し疎遠になっている。
マイルスからは好かれており、新しい学校のことで落ち込むと彼の元へ来ている。
マイルスの世界におけるピーター・パーカーの叔母。ピーターから残されたものをマイルスへと渡す。
物置の地下は超ハイテクなガジェット倉庫に改造されており、様々なスーツが収められている。
家の中でスパイダーマン達とヴィランが戦闘を始めても物怖じせず、それどころか箒でブッ叩いてヴィランを追い出すなどパワフルな一面も。
マイルスの世界ではピーターが死亡したため未亡人。
ピーター・B・パーカーの世界では前述の通り離婚している。
その他
- ミゲル・オハラ / スパイダーマン2099(オスカー・アイザック / 関智一)
- アース67のスパイダーマン(ヨーマ・タコンヌ / 稲田徹)
- ライラ(グレタ・リー / 坂本真綾)
エンドクレジットに登場。
シリーズ展開
続編の制作発表もされており、2部作予定。
前編の『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は2023年6月、後編の『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』は2024年3月にそれぞれ公開予定。
また女性メンバーによるスピンオフの制作が発表され、ようやくシルクやスパイダーウーマンが登場することになる。
さらにアニメシリーズ化の話も持ち上がっている。
余談
- 監督の1人ピーター・ラムジーより「これは、自分だけだと思って、辛い時間を過ごしていたら、他にも自分と同じような人がたくさんいることを発見する若者についての映画なんだ」
- 今作の収益次第では、かの東映版スパイダーマンとレオパルドンの登場も検討する模様。
- 実写スパイダーメンが全員揃う案もあったらしい。後にこれは実現している(後述)。
スタッフ
- 製作:フィル・ロード&クリストファー・ミラー
- 監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
- 脚本:フィル・ロード、ロドニー・ロスマン
関連動画
日本語版
全員本職の豪華声優陣は伊達じゃない。
英語版
実力派俳優の英語の語感からくるキャラクター性のリアル感。
しょーもない替え歌「スパイディベル」
途中から無駄に辛くなる歌詞をご堪能下さい。(ただし英語)
日本語吹き替え版主題歌「P.S. RED I」
タイトルや歌詞からも分かるようにスパイダーマンのための一曲。
劇中歌「Sunflower」
Post Malone,Swae Lee
マイルス君のリラックスタイム。
劇中歌「What’s Up Danger」
Blackway & Black Caviar
険しき路を行くその心は。
関連イラスト
関連項目
グウェペニ:カップリングタグ。
・・・2022年公開。
本作とは逆に様々なヴィラン達が次元を超えて集結する、だけでなく3人のスパイダーマンがそれに協力して対抗するという、実写版本作のような映画。