運命なんてブッつぶせ。
敵は、全て(マルチバース)のスパイダーマン
概要
ソニー・ピクチャーズによるアニメーション映画。
2018年に公開された『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編であり、二部構成の前編。
当初2022年に公開予定だったが、2023年6月2日に延期。
後編の『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』は2024年3月に公開予定。
なお日本では6月16日の公開だが、奇しくもコミックの正史世界【アース616】と一致している。
(ただし、主人公マイルスの出身世界はコミック・本作とも【アース1610】とされており、コミック版の【1610】は2000年代に別の平行世界という設定で始まった現代的リブート版の舞台となる世界)
日本版主題歌はLiSAの「REALiZE」。
奇しくも、前作の日本版キャッチコピーが「運命を受け入れろ」であるのに対し、本作の日本版キャッチコピーは前作とは正反対の「運命なんてブッつぶせ」になった。
2024年には第55回『星雲賞』のメディア部門にノミネートされた。メディア部門には妖怪やゴジラもいるため、受賞レースがどうなるかも注目されるだろうか。
キャラクター
宣伝によるとなんと240体のスパイダーマンが登場すると言われており、実際、予告やポスターでは前作のメインとなった6人を大幅に超える数が確認できる。
※括弧内は原語版 / 日本語版CV。
スパイディたち
(前作から続投)
- マイルス・モラレス / スパイダーマン(シャメイク・ムーア / 小野賢章)
- グウェン・ステイシー / スパイダーグウェン(ヘイリー・スタインフェルド / 悠木碧)
- ピーター・B・パーカー / スパイダーマン(ジェイク・ジョンソン / 宮野真守)
スーツは着るもののマスクを被るシーンは一切無く、全編通して顔を出した状態。
ロボットスーツを新調。細部は違うもののコミックに近いデザインとなった。
- ピーター・ポーカー / スパイダーハム(ジョン・ムレイニー / 吉野裕行)
- ピーター・パーカー / スパイダーマン・ノワール
終盤グウェンに招集される形で登場。ポーカーのみ回想という形で台詞がある。
スパイダー・ソサエティ
マルチバースのスパイディたちで結成されたグループ。
次元を超えて出現したヴィランを捕まえて元の世界に送り返したり、次元の穴を修復する活動を協力して行う、いわば互助組織。
- ミゲル・オハラ / スパイダーマン2099(オスカー・アイザック / 関智一)
「スパイダー・ソサエティ」の発起人にしてリーダー格。
前作のポストクレジット時点でのコミカルな性格は、リーダーという立場のためか一変して厳格なものへと変化している。が、ヴァルチャー戦では若干地の性格が出ている。
(以下、新規登場)
バイクを駆る女性。グウェンのメンター的存在。
現在妊娠8ヶ月程の妊婦でありながら、グウェンを含む次世代のスパイダーマン達を指導している。
- パヴィトラ・プラバカール / スパイダーマン・インディア(カラン・ソーニ / 佐藤せつじ)
インドのムンバッタンで日夜戦い続けるスパイダーマン。
超が付くほど陽気で気さくな性格で物語中盤に登場し、マイルスとグウェンの協力によりザ・スポットが故郷で引き起こした人的被害を食い止めたのだが…
グウェン達の助っ人として登場。パンクロッカースタイルのスパイダーマン。
反骨心に溢れた性格で、反体制主義者であるためミゲルら「スパイダー・ソサエティ」自体と反りが合わない。
- ベン・ライリー / スカーレット・スパイダー(アンディ・サムバーグ / 江口拓也)
ピーター・パーカーのクローンとして生み出されたスパイダーマン。
ソサエティのメンバーとしてミゲル達から信頼されていたが、終盤グウェンの手で真っ先に排除されてしまった。
- マーゴ・ケス / スパイダーバイト(アマンドラ・ステンバーグ / 高垣彩陽)
バーチャルリアリティのスパイダーウーマン。
- スパイダーキャット
- ピーター・パーカー / スペクタキュラー・スパイダーマン(ジョシュ・キートン / 猪野学)
- ピーター・パーカー / インソムニアック・スパイダーマン(ユーリ・ローエンタール / 興津和幸)
- ピーター・パーカー / スパイダーマン(アンドリュー・ガーフィールド / 前野智昭)
実写映画『アメイジング・スパイダーマン』シリーズの主人公。
2つの意味でのアーカイブ出演となった。
その他、今回はちゃんとしたアース67のスパイダーマン本人の他にもティラノサウルス、カウボーイ&馬、小型トラック、レゴといった、枠に囚われないバラエティ溢れる様々なスパイダーマンが登場する。
関係者
- ジェファーソン・デイヴィス(ブライアン・タイリー・ヘンリー / 乃村健次)
- リオ・モラレス(ルナ・ローレン・ベレス / 小島幸子)
マイルスの両親。
- ジョージ・ステイシー(シェー・ウィガム / 上田燿司)
グウェンの父。他アースと同じく警察官で、娘の正体を知らずにスパイダーマンを追っている。
※ジェファーソン・デイヴィス、ジョージ・ステイシーともに日本語字幕では「もうすぐ警察署長になる」「警察署長」と言われているが、英語では「Captain」。
アメリカの地方警察のシステムは州・郡・市で異なるので、日本の警察におけるどの階級・役職に相当するかは適切な訳は困難だが、ニューヨーク市警であれば軍隊における大尉に相当し、分署長の役職につける階級となる。
つまり、本作の日本語字幕での「(警察)署長」は、軍隊で喩えるなら「(陸軍)大尉」(≒階級)を「(陸軍)大隊長」(≒役職)と訳するような意訳である。
- ライラ(グレタ・リー / 坂本真綾)
ミゲルと同じく前作ポストクレジットから登場する女性科学者。
マーゴとともに、主にメカニックを担当している。
映画『ヴェノム』シリーズに登場する、エディ・ブロックが行きつけのコンビニエンスストア店主。実写で登場。
スポットの出現も何時もの事と慣れきって無反応だった。
ヴィラン
本作のメインヴィラン。身体に空いた異空間へ通じる穴が最大の武器で、スパイダーマン達を翻弄する。
序盤に登場。絵画のような別アースからグウェンのアースに現れる。
- アーロン・デイヴィス(ドナルド・グローヴァー /渡邉隼人)
前作に登場したマイルスの叔父ではなく、『スパイダーマン:ホームカミング』に登場した彼がプラウラーとなった存在。実写で登場。
クライマックスに登場。
関連動画
特報1
特報2
予告
冒頭には実写版の3人の胸部のマークが登場。
またミゲル・オハラが『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の出来事について言及しており、MCUのアース番号が初めて作品内で【199999】と明言された。
なおこれは日本向けで(吹き替え版は⇒こちら)、オリジナル版の冒頭はマイルスの家族との会話やザ・スポットとの遭遇が描かれている。
日本語吹替版主題歌「REALiZE」
歌:LiSA
明記はされていないものの、曲中にWith great power comes great responsibility.という文言が登場する。
余談
- 主人公であるマイルスは「父はアフリカ系、母はヒスパニック系」だが、何らかの敵対関係となる可能性が高いミゲル・オハラはコミック版史上での「最初のヒスパニック系スパイダーマン」である。
- アメリカ国内向けの予告では、マイルスのスペイン語の成績が「B」(平均よりは上だが凄くいい訳じゃない微妙な成績)であるシーンが映し出されたが……マイルスが名乗っている「モラレス」という名字はヒスパニック系のもの。
- 喩えるなら「片親が日系で、日系の名字を名乗っているアメリカ人が、学校の日本語の授業の成績が悪くもないが良くもない微妙なもの」のような状態である。
- 前作から続投も含めて、MARVELの実写作品との共通出演者が多い。
- MCUでスタインフェルドはケイト・ビショップを、ダニエル・カルーヤはウカビを、ブライアン・タイリー・ヘンリーはファストスを、『デッドプール』シリーズでカラン・ソーニはドーピンダーをそれぞれ演じている。
- MCUで悠木はコスモを、田村はダーシー・ルイスとエレーナ・ベロワを、高橋はキャシー・ラングを、木村はMCUのエムバクと2015年版のミスター・ファンタスティックを、宮野は『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』でサイクロップスを、佐藤は『デッドプール』シリーズのウィーゼルと『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』の単独アニメ版でロケットラクーンを、それぞれ担当。
- オスカー・アイザックは『X-MEN:アポカリプス』でアポカリプスを、MCUでムーンナイトを演じており、後者の吹き替えも関が担当。
- 本作の編集スタッフのアンドリュー・レヴィトンがTwitter上で、なんと「本作は複数の違うバージョンが劇場公開されている」事を明かした。
- 前作と同様、冒頭に「コミックス・コードをパスした」と云う表示が出るが、勿論これはギャグであり、本作はコミックス・コードの基準(一番厳しかった頃)では主人公が非白人という時点でアウトである。
- ちなみにMARVELコミック社は、1970年代に非白人が主人公のヒーローコミックを出そうとして、コミックス・コードの方を変えさせた事が有る。
- ある意味で、このギャグは「表現規制に対する表現者側からの勝利宣言」という見方も可能であろう。
- ほんの一瞬だけだが「トランスジェンダーの子供を守れ」と書かれたポスターが映るシーンが有った為、イスラム圏の国の中には本作が上映禁止となった国も有る。中には、劇場公開直前になって上映禁止が決ったケースまで有る。
関連タグ
:ライバル会社の、同じくマルチバースを主題とした実写映画。こちらは日米同日公開だが、それが原因で日本での公開日が被ってしまっている。
大いなる力には、大いなる責任が伴う:スパイダーマンを象徴する名言。今作(ならびに続編)は、それに至る「とある経緯」がストーリーの根幹にある。そして、それはマイルスも思い知っており、各ユニバースを監視しているミゲルも、それは既知である筈なのだが…。
本篇の内容を踏まえた上での余談
以下、ネタバレ注意
- 前作の時点で、マイルスにスパイダーマンの力を与えた蜘蛛は、別世界から来た存在である事が示唆されている。(他の世界から来たスパイダーマン達の身に起きたのと同じ現象が、マイルスにスパイダーマンの力を与えた蜘蛛にも起きている)
- マイルスの出身世界であるアース1610と同じ番号が振られている世界がコミック版にも登場しているが、コミック版では、この世界は消滅してしまっている。
- なお、本作の劇場公開とほぼ同時期に、コミックで「アース6160」として復活したが、「正史世界であるアース616と似た歴史を辿る筈のだったが『主要なヒーローが存在しない』ような歴史への介入が行なわれた世界」という元の姿から、かなり歪んだもの(例:アイアンマンになっているのが、トニー・スタークではなく父親のハワード・スターク、キャプテン・アメリカは氷漬けのまま、ソーは弟に王位を奪われ投獄中)と化している。
- なお、復活したアース1610に「スパイダーマンになったマイルス・モラレス」が居るかは不明。(本来のアース1610の「スパイダーマンとなったマイルス」は現実改変により、最初から「正史世界」であるアース616に存在している事になった)
- また、本作の劇場公開後に復活したアース1610のスパイダーマンは本作のピーター・B・パーカーに近い「中年ヒーロー」となる事が発表された。
- もう1人のマイルスが居る世界であり、マイルスにスパイダーマンの力を与えた蜘蛛の出身世界はアース42だが、アメリカのプロスポーツにおいて「42」は永久欠番になっている事が多い背番号である。
本作でミゲル・オハラが言っていた事を踏まえると、「1610」「42」ともに、かなり不吉な数字と言える。
- よく見ると、主人公の方のマイルスが「42」の番号が書かれたバスケットボールのユニフォーム風の服を着ているシーンが有る。(おそらくは地元のバスケットボール・チームの選手の背番号と思われる)
- 偶然にも日本公開日が重なった「ザ・フラッシュ」と良く似たテーマを扱いながら、主人公の最終的な選択は正反対となっている。
プチ予告詐欺
- 予告でのマイルスとグウェンが並んで座っているシーンは、実は、スパイダーマンとしての能力を使って逆さに座っている。
- マイルスの父親のジェファーソンが転落死しかけているように見えるシーンでは……あっさり、助かっている。
- スパイダーマンが別のスパイダーマンに精神カウンセリングを受けているシーンは予告ではギャグ調だが、本篇では、スパイダーマンになったピーター・パーカーがベン伯父さんを死なせてしまうのは避けられない「基準事象(カノン・イベント)」である事が明かされた直後。