ムーンナイト
むーんないと
初登場は1975年の「Werewolf By Night#32」。その5年後に個人タイトルがスタート。
本名はマーク・スペクター。元傭兵。エジプトで仕事に就いた際に、雇い主に騙されて瀕死の重傷を負わされる羽目に。生死の境を彷徨うマークだったが、古代エジプトの月の神・コンシューと出会い、契約を交わす。そして、新しい命と復讐の化身・ムーンナイトとしての役目を授けられた。
白いフードと大きなマント、モノトーンで統一されたコスチュームと三日月の意匠がトレードマーク。デッドプールの腐れ縁で有名なヴィラン「タスクマスター」と誤認されることも多いが、骸骨マスクの有無で区別しよう。
白い覆面に白い3ピーススーツの服装で描かれることもあり、この時は「Mr.ナイト」と呼ばれる。
元傭兵だけあって武器や格闘術のエキスパートであり、ヘリなど乗り物の運転も得意。三日月型の手裏剣のような武器・クレセントダーツをはじめ、多彩な武器を使用する。特徴的なマントはグライダーケープと呼ばれ、滑空飛行が可能。
基本的にチームプレイを好まない一匹狼のヒーローではあるが、能力自体はアベンジャーズ上層部(キャプテン・アメリカ、アイアンマンことトニー・スターク)からもそれなりに高く評価されている。特にキャプテン・アメリカからはアベンジャーズ内部でも機密性の高い案件を扱う極秘特殊部隊「シークレット・アベンジャーズ」を結成した際、その一員としてムーンナイトを選ぶなど、一定の信頼を得ている。
トニー・スタークなどには及ばないものの、傭兵時代に稼いだ金を元手に投資や美術品売買で財をなした資産家であり、活動資金に困った様子は見られない。「ムーンコプター」と呼ばれるヘリや「エンジェルウイング」という小型ジェット機など、専用の乗り物も多数所有している。
ゲームや国内媒体では月の満ち欠けによってスーパーパワーを発揮する能力が紹介されることがあるが、これは一時期だけの設定であり、基本的には徒手空拳とハイテクアイテム、そして後述の狂気を武器として戦うクライムファイターである。
ブライアン・マイケル・ベンディスがライターを務めた2011年個人誌の邦訳『ムーンナイト/光』『ムーンナイト/影』では、ヒーローのいないLAに拠点を移したムーンナイトの活躍が描かれる。
そこで『コンシューの伝説』という自分の過去を題材にしたドラマ製作をプロデュースする一方、ムーンナイトとして活動していた彼は、ふとしたきっかけから何者かがウルトロンのボディを入手しようとしている事を知る。
ウルトロンの頭部を確保したことでその企みを頓挫させたムーンナイトは、同じくLAに潜伏していた女ヴィジランテのエコー、元SHIELDのバック・ライムらと共に黒幕を突き止めるため戦いを始める。
しかし彼らの敵はかつてマイティ・ソーをも打ち負かした強大なヴィラン、カウント・ネフェリアであった。
既にLAの暗黒街を完全に手中に収めたネフェリアに対してアベンジャーズを招集すれば、間違いなく逃亡されてしまうと判断したムーンナイトは、たった一人のアベンジャーとしてカウント・ネフェリアへと挑む。
その後ムーンナイトは、自身の脳に巣食った症状が多重人格ではない事を認識する。
かつて死に瀕した際、脳に損傷を負ったマーク・スペクターは、何らかの超常的存在によって蘇生され、
同時にその何者かの依代となるべく、「拡張」を受けたのだ。
そしてこの超常的存在の介入をマークの脳が理解できるように作り上げたものが、様々な人格だった。
やがてかろうじて正気を取り戻したムーンナイトは、ニューヨークへと舞い戻る。
そして新たに覆面私立探偵Mrナイトという顔を作り上げ、NY市警の猟奇殺人専門捜査班「フリークビート」に協力。
フリント刑事の支援を受けながら、ニューヨークの様々な狂気じみた殺人事件へと立ち向かっていく事になる。
(『ムーンナイト:フロム・ザ・デッド』)
ムーンナイトの大きな特徴は精神的な不安定さにある。
そもそもムーンナイトが契約を交わしたという月の神コンシューは実在するかどうか極めて曖昧な存在で、上記のオリジンも全ては彼の妄想に過ぎないという可能性も示唆されている。(コンシューというエジプト神種族自体は存在するが、ムーンナイトの見ているコンシューが実際のコンシューその人であるかは明言されない。)
加えてムーンナイトことマーク・スペクターは多重人格者(後注)であり、社交的な大富豪「スティーヴン・グラント」、気さくな下町のタクシー運転手「ジェイク・ロックリー」など、複数のアイデンティティを使い分けてヒーロー活動を行っているが、他人格が脳内会議を繰り広げる解離症状が度々(あるいは常に)起こることは彼の悩みの種となっている。
一時はなんとキャプテン・アメリカ・スパイダーマン・ウルヴァリンという3大ヒーローの人格を脳内に作り出しており、妄想の3人と脳内会議を繰り広げる様は「ひとりアベンジャーズ」などとファンの間で揶揄されることも。
一方で、人格を切り替えることで様々な状況に対応できることは彼の強みでもある。ムーンナイト自身が精神的に打ちのめされ、混乱に陥っても、常に彼に冷静なアドバイスをする人格が備わっているのだ。また(彼自身に特殊能力はなく、ハイテク装備で擬似再現したものに過ぎないが)各々のヒーローの能力を再現して、次々と戦術を切り替えるスタイルは幅広い状況に対応できる。
また人格を切り替えることで、特にサイキック系パワーによる洗脳やマインドリーディングへの抵抗力は高い。
そしてムーンナイトは自分の精神の混乱を客観的に理解しており、決して妄想の中で生きているわけではなく、その狂気を巧みに乗りこなして現実に適応し、犯罪者と戦い続けている。
近年はバイオレンスさでも悪名高いヒーローであり、ヴィランへの執拗な暴行や残虐な拷問、時には殺害を厭わない姿勢に関してパニッシャーと並べて語られることも多い。これにはムーンナイトがマーベルの中では比較的歴史の新しいヒーローであり、スーパーパワーを持たない常人がマントを纏い如何にして戦うか、というアンチヒーローストーリーとしての側面もあると思われる。
パニッシャーのように「必ず殺す」という方針があるわけでも、あるいはデッドプールのようにビジネスとして殺しを請け負うわけでもなく、脅すため・事態の収拾を図るため・生き残るため・あるいは激情に駆られてなど、常人故の不安定な暴力性が見受けられる。
長らくマーベルユニバースの中でもマイナーなヒーローという位置づけだったが、2014年の個人誌の人気をきっかけに評価が進んでいる。日本国内でも1979年に桜田吾作氏による翻案『月光騎士ムーンナイト』連載されて以降は忘れ去られていたが、アニメ「アルティメット・スパイダーマン」への出演や、「ひとりアベンジャーズ」ことベンディス期の個人誌が『ムーンナイト/光』『ムーンナイト/影』として邦訳されるなど、徐々にその知名度は上がっているようだ。
(注)ムーンナイトの多重人格の表現に関して
登場イシューごとに描写が異なるためこの項では単に多重人格と表記しているが、個人誌における見解としては「解離性同一性障害(英: Dissociative Identity Disorder ; DID)」と表現するのが適切と思われる(「多重人格障害(英: Multiple Personality Disorder ; MPD)」という診断名は現在使用されていない)。混同されがちな「統合失調症」とは病態が全く異なるため、二次創作を行う際には注意。
彼がクレイジーといわれる所以は主に彼自身の攻撃的で断固とした性格や、自他の命を顧みない行動によるものであり、病そのものではない。彼に限ったことではないが、ヒーローコミックは現実世界と共通する属性への表現に関して誠実であることを求められる媒体であることには十分留意されたし。まあ本国でも扱いは雑なんだけどな!
演:オスカー・アイザック / 吹き替え:関智一
2019年8月、ディズニープラス限定配信ドラマとして製作されることが発表された。
演じるのは『STARWARS』のシークエル・トリロジーの主要人物の一人を演じたオスカー・アイザック。MARVEL作品には『X-Men:Apocalypse』のアポカリプス役やアニメ『スパイダーマン:スパイダーバース』のスパイダーマン2099役に続き、今回で3役目の参加となる。
また吹き替え版の声優である関智一は上記のスパイダーマン2099と同じくアイザックの担当となる他、MCUには『アントマン&ワスプ』のヴィラン側、『ブラック・ウィドウ』のヒーロー側でそれぞれ脇役ながら参加しており、MARVEL作品では初の主人公役となる。
ムーンナイト
初登場作にして初主演作。オリジンが描かれる予定。
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