概要
MARVELコミックのキャラクター。
1980年の『Avengers #195』で初登場した傭兵のスーパーヴィラン。
本名:アンソニー・"トニー"・マスターズ(Anthony "Tony" Masters)。
特定の組織やチームに属したり個人的な野望は持っておらず、活動は純粋に金銭目的。主に傭兵を生業としているが、"Taskmaster"「実業家・親方・中間管理職」を名乗る通り非常に優れた育成能力を持っており、悪の組織に戦闘教官として招致されることも多い。基本的に金さえ手に入れば仕事は選ばないし遺恨も覚えていないタイプであり、正義と悪のどちらに肩入れしても恥じることは無い。時に政府やヒーロー側に雇われたりもする。
メタ的にも特別な主義主張がなく誰にでも雇われ、能力的にも何でも出来るため、使い勝手が良いキャラクターなのだろう。
そういう性質上、同じように金で動くデッドプールやエージェントXとは交流があるほか、かつて技を教えた弟子とも関係が深い…といっても、彼の場合殺し合ったり共闘したりする程度の仲という意味だが。
外見
多少デザインに差はあるものの、青系統の服にフード、ドクロを模したマスクが基本。
マスクは死をテーマとするメキシコの民族カトリック系のお祭り「サンタ・ムエルテ」に着想を得ているとのことで、なんとあのレッドスカルを負かしベストスカルコスチュームを3年連続で受賞している。
素顔は割と普通の白人のおじさんであるが、変装用具を色々と持っているため、マスクを外した顔が本当の素顔かどうか定かではない。
能力
- フォトグラフィック・リフレクシズ(写真的反射)
相手の技や身のこなしを見ただけで覚えることが出来る能力。スーパーパワーにも対抗出来る、或いはそれ自体がスーパーパワーと見做されるほどの超絶技巧すら、早回しのビデオ映像程度の情報でもある程度は模倣出来る。
戦闘以外でも声帯模写からギターの演奏まで、学問や知識の習得においても活用出来る。
ただしあくまで生身の人間に再現出来る技のみであり、ミュータントのような先天的な能力はコピーできない。例えばウルヴァリンのヒーリング・ファクターは使えず、爪を模した武器があれば彼のように戦えるが直接爪は出せない。
スーパーパワーやミュータントパワーを模倣する力の持ち主はMarvel世界にそこそこいるので、技術しか覚えられない彼は地味といえば地味だが、裏を返せばどんな技術も模倣可能で、且つ(少なくとも戦闘においては)自身が行使する際のリスクもない、という利点がある。
また自身の能力の特性を知るまでには苦労もあったらしく、幼少期には「泳ぎ」の前に「飛び込み」を覚えて実行してしまい、死にかけている。
- 武器
よく長剣、盾、弓を使っており、それぞれブラックナイト、シルバーサムライ、ソーズマンの剣術、キャプテン・アメリカのシールド投擲術並びに防御術、ホークアイの弓術ということになる。銃器はあまり携行しないが、一流の射手であるパニッシャーやウィンター・ソルジャーから銃器やナイフ、近代兵器の扱いを覚えている。
ただ武器がなくともスパイダーマン、デアデビル、ブラックパンサーの身体動作や(デアデビルからは棒術も)、エレクトラ、アイアン・フィスト、シャン・チーの体術を使えるし、そもそも爪楊枝を投げて人を殺せるブルズアイの投擲暗殺術を持っているので、その場にあるものは何でも武器に出来る。
最近は四代目ゴーストライダーのドライビング・テクニックをゴルフ用カートで披露している。バイクにもよく乗っているので初代や二代目の技能も覚えているかもしれない。
例外的に精神が不安定で動きが予測出来ないデッドプール、人間の身体動作セオリーに当て嵌まらないジョキャスタ、それと理由は不明だがエージェントXの動きも習得出来なかった。また、ムーンナイトはあまりに痛々しい戦い方から「真似出来るけどしたくない」部類に入るそう。
- 総合評価
また、ただ相手の動きを覚えるだけでなくその応用として、相手の動きを見切る事にも長けており、それまでに覚えた技術を複合的に使うことも出来るため、個人としての戦闘技術もトップクラスの技巧派である。
具体的には公式の能力表において、戦闘技術の項目が最高値の7(同じ項目でデアデビルとブラックパンサーは5、キャップが6で、7の領域にあるのは100年レベルで歴戦の戦士であるウルヴァリンぐらい)。ちなみに知能も4(征服者カーンやスパイダーマンレベル)と地味に高い。
結果、身体的に全くの常人であるにもかかわらず(名もないモブキャラとはいえ)片方は素手でアスガーディアンの兵士2名を瞬殺したり、(相手が油断していたとはいえ)Marvel版スーパーマンともいうべきハイペリオン相手に食い下がったり、銃弾を鉄鎖で弾き返したりと、本当に常人か疑うような戦いをしている。
- 真骨頂
そして覚えた技術を他人に教授出来ることも彼の特長の1つ。
とあるエピソードでアベンジャーズとの戦いで収監された際に「直接戦うよりも人に教えた方が楽かも」と気付き、試しに同房の囚人達に自身の技を教えてみたところ、非常に上手くいってしまう。これに味をしめたらしく、優れた戦闘教官としてヒドラやA.I.M.等の悪の秘密組織の戦闘員育成にも携わっており、さらにその名も「タスクマスター・アカデミー」という教習所を複数開設、有名無名問わず多くの生徒を訓練した(目立ち過ぎたためかヒーロー等の襲撃で強制閉校したけど)。
また人間であるタスクマスターには再現できない技術も教え子側が似たような能力の持ち主なら教えられるため、何度か自身の覚えた技を人に教えることでアベンジャーズの偽物を作ったことがある。
その教官ぶりはアメリカ政府にも招致されるほどで、後にU.S.エージェントとなるジョン・ウォーカーはキャプテン・アメリカの代役を務めるに当たって彼からシールドの扱いを教わったとされている。現在のジョンのシールド技能は本家本元に勝るとも劣らないレベルにあり、そのレクチャーの凄さがわかる。
シビルウォー期後のイニシアチブ時代には体制側に雇われて、キャンプ・ハモンドに勤務していた。
欠点
最近の個人誌ミニシリーズの中で、フォトグラフィック・リフレクシズで技を覚えるとそれに応じて過去の記憶が失われていくというデメリットが後付、もとい発覚した。
元々優れた記憶能力を持つS.H.I.E.L.D.エージェントだったが、ナチス残党との戦いで敵の作った薬品を取り込んだ結果、現在のレベルまで能力が増大し、代償として慢性的な記憶喪失障害(ある種の健忘症)を負うことになってしまった。描写を見る限りでは新しい記憶ほど喪失する可能性が高いらしく、技能を覚えた際には別の技能を忘れるのではなく自身の人生の記憶を忘れていくようである。
これによって彼は自身の生い立ちや経歴、結婚歴、その日に何時に起床し朝食に何を食べたかさえも忘れてしまっており(前述の幼少期のエピソードも今となっては覚えているかどうか…)、常に自分が何者かわからない感覚の中で生きていることになる。
この事実はごく一部の人間にしか知られておらず、その中に本人は含まれていない。というより、仮に知らされても忘れてしまう。
本人としてはある組織の指示に従っているとされたが、この指令は専属のエージェントを介してある人物により下されており、この組織は存在しない。即ちこれまでのヴィランとしての振る舞いは、ほぼ全てその人物の指令に従って行動した結果だったのである。
現在この人物は地球外だか別次元だかへ引退したわけだが、ちゃんと引き継ぎ出来たのか(メタ的に言えばこの設定がちゃんと生きているのか)は不明である。
交友関係
複数の女性とロマンスがあったりするのだが、やはり前述の記憶障害がネックになっているのか、特定の相手と長続きはしないらしい。
- ウェイド・ウィルソン / デッドプール
前述の通り腐れ縁のような間柄。一時期は同じ事務所に所属するという形でチームを組んでいたこともあり、タスキーというあだ名も付けられた。
- フランク・ペイン / コンストリクター
同じく元S.H.I.E.L.D.エージェントの傭兵で、数少ない友人らしい友人だったが現在は死去しており、息子である二代目とは特に絡みはない。
- エリック・オグレディ / ブラック・アント
同じく元S.H.I.E.L.D.エージェント。彼が三代目としてアントマンを継ぐにあたり先代の技を教えたことが縁となり、近年では行動を共にすることが多い。
割と双方友情を感じてはいるらしいのだが、「スパイダーマン以外にも動物系の超人捕まえたい」とか言い出したクレイヴン・ザ・ハンターに報酬目当てで身柄を売ったりしている(一応後で助けはした)上、「お前も立場が逆なら俺を売ったろ?」と開き直っていてどうしようもない。それでも友好関係が続いているのは…似た者同士ではあるためか。
- ジャンヌ・フーコー / フィネス
アベンジャーズ・アカデミーの1期生。
殆ど同じような写真的反射能力を持つことから実子と目されており、実際主義主張より利益を取るちゃっかり者な性格もよく似ている。記憶を失っているせいで認知こそされなかったが、流石に思うところがあったのか自身の弱点ともいえる秘密を明かした上で「娘かもしれないけど本当に覚えていないし、今後も覚えていられるかわからない」と吐露した。
他メディア
『MARVEL VS. CAPCOM 3 Fate of Two Worlds』
割とマイナーなキャラであったためか日本での知名度はさっぱり無かったが、今作への参戦により一気にアップ。
空中での特殊移動を持たず、コンボが比較的高火力であり、ある程度使いやすい。フォトグラフィック・リフレクシズの再現として、彼は持ち技の多くが(立弱・屈中がリュウ、屈弱がキャプテン・アメリカ、等々)他キャラを見て覚えたものになっている。ゲーム中は未登場である弓の達人ホークアイの弓術、同じく剣の達人であるブラックナイトの剣術もコピー済み(ホークアイはアルティメット版で登場している。流石にブラックナイトは出なかった)。
シールドがエネルギー式になっている他、矢やロープが固形エネルギーになっているなど、微妙に芸が細かい。そこまでするなら剣も日本刀に変えてやればいいのに。
勝利メッセージではしきりに弟子入り(有料)を薦めたり商売敵のデッドプールに毒づいたりと商魂たくましい様を拝むことが出来る。
あと、何故か一人称が我輩で、妙に「~である!」のような尊大な口調でしゃべる。これは前述の単独誌の邦訳版にて部分的に逆輸入された(自覚的にタスクマスターというヴィランを演じている時に使う。逆に素の時は普通の口調)。
アレンジコスチュームはUDON版。
アニメ『アルティメットスパイダーマン』
声優:斉藤次郎
第1シーズン第6話「体育教師の正体」にて初登場を果たした際、ピーターたちの高校に体育教師として潜入した。なお、体育教師としてふるまう際は変装用のマスクをしていたことが話の終盤で判明しており、最後まで素顔は明かされなかった。
その後、第2シーズン第41話「アルティメット・デッドプール」にて再び登場し、第3シーズンでは有能な人材を集めるべく暗躍した。
口調はマヴカプ3とは異なる。
MCU
映画24作目『ブラック・ウィドウ』にてヴィランとして登場。
ナターシャ・ロマノフの古巣であるレッドルームの教官として君臨しているとされ、予告を見るだけでもキャプテン・アメリカのシールド投擲術、ホークアイの弓術、ブラックパンサーの体捌きらしき動きを見せており、片手剣も携行している。
MCUの例に漏れずコスチュームのデザインにアレンジが加えられており、特にマスクがドクロを模しているのは同じだが、目の部分がワンピース・レンズのゴーグルとなっており、表情が窺えない。更に素顔も声も公開されていないため、ある種不気味で異様な存在感を放っている。
以下、ネタバレ注意!
演:オルガ・キュリレンコ / 吹替:中村千絵
その正体はレッドルームの支配者であり物語の黒幕ドレイコフの娘、アントニア・ドレイコフ。
ナターシャが自身に課せられたS.H.I.E.L.D.への入隊テストの最終試験「ドレイコフの殺害」を達成するためにやむなく爆発の巻き添えとなり、その影響で顔面の皮膚は引き攣ってしまっており、右目の虹彩は白濁化。生命維持のために埋め込められたチップによって他のウィドウ部隊同様ドレイコフの命令に従う殺人兵器と化しており、人間らしい感情を抑制されている。
フォトグラフィック・リフレックスは健在だが、先天的なものなのか、怪我の影響によるものなのか劇中では語られていない。劇中で確認できた限り
- ブラック・ウィドウの体術
- キャプテン・アメリカのシールド投擲術
- ホークアイの弓術
- ブラックパンサーの体術
のほか、
- スパイダーマンのスイング
- ウィンター・ソルジャーのナイフ捌き
を模倣しているらしきシーンも見られる。また、アイアンマンのマスクのインターフェイスと降下姿勢もコピーしているという意見もある。
最終的に父の支配下から解放され、エレーナ・ベロワらに連れられてナターシャと別れる。
そして映画第36作『サンダーボルツ*』に、エレーナとともに再登場予定。