概要
SF映画『スターウォーズ』(以下、SW)シリーズの、レイを主人公とした三部作のこと。
続三部作とも呼ばれる。
2015年~2019年にかけて公開された。
SWシリーズはエピソード3をもって、生みの親であるジョージ・ルーカスが構想していた物語のすべてが描かれ、完結していたが、その後ルーカスフィルムをディズニーが買収したことで、同社によって新たな物語が展開されることになった。
この三部作はその新展開の中でも主軸となるものであり、エピソード6のさらに未来の物語となる。新たなメインキャラとしてレイ、フィン、ポー・ダメロン、カイロ・レンなどが物語の中心を担うが、ルークやレイア、ハン・ソロといった旧三部作の大人気キャラ達もオリジナルキャストで数十年ぶりに出演している。
SWシリーズとしては初めて、ルーカスの手をほぼ完全に離れて製作された作品であり、彼の構想とは違う物語となっている(一応ルーカスにもエピソード7以降の展開のアイデアがあったようだがディズニーは採用しなかった)。
また、都度監督や脚本は違えどあくまでルーカスが構築したストーリーラインに沿って展開されていた旧三部作と違い、今作は完全にリレー小説形式で製作されている。
エピソード7~9に当たる作品群であり、冒頭のあらすじ紹介でもそのように記載はされているのだが、映画のタイトルにはエピソード表記が含まれていない。
シリーズ一覧
- フォースの覚醒(エピソード7)
2015年公開。監督は『M:I-3』や『スタートレック』リブート版のJ・J・エイブラムス。
- 最後のジェダイ(エピソード8)
2017年公開。監督は『LOOPER』や『ナイブズアウト』のライアン・ジョンソン。
- スカイウォーカーの夜明け(エピソード9)
2019年公開。監督は再びJ・J・エイブラムス。当初は『ジュラシックワールド』のコリン・トレボロウが起用されていたが、スケジュールの都合(?)で降板した。
製作経緯
先述の通り、今シリーズの製作にシリーズ生みの親であるルーカスはほとんど関わっていないが、たびたびまことしやかに語られる「ディズニー社がルーカスフィルムを買収できたのをいいことにルーカスの意思に反して続編を作った」という経緯は正確ではない。
何かにつけ「エピソード6のあとに語るべき物語はない」などとシリーズ完結を強調してきたルーカスだが、報道されている内容を総合すると、実際のところエピソード3公開からほどなくしてエピソード7へ向けて動き始めていた(ただし、どうも彼自身の意向というよりは、ルーカスフィルムの経営のためというのが大きかったようだ)。
とはいえさすがにまた三部作を監督するだけの体力も時間もなかった彼は、ルーカスフィルムの経営をキャスリーン・ケネディ現会長に任せ、新作映画の製作はディズニーと連携するという道を選んだ。
直接監督を務めたり、実質的な監督として携わっていたこれまでと比べ、もう少し距離を置いた形で新作に携わろうとしていたのだが……初めてのパートナーであるディズニーとの協業はやはり上手くいかず、また自身のプロットにディズニー側が難色を示したこともあって、ならいっそ完全に手を引こうと決めた、というのが、今作の製作発表前までに起こっていた一連の流れであると言われている。
もっともルーカスとしてはやはり吹っ切れたわけではないらしく、ディズニーへの売却に対して後に「奴隷商人に売り渡してしまったような気分だ」とこぼして炎上したりしている。
一方で、『最後のジェダイ』公開時に、「フォースの覚醒は懐古趣味の映画を求めた。それが気に食わない。自分が映画を作る時は、それぞれが異なる作品になるように作った。最後のジェダイは」とも語っており、挑戦的な姿勢自体は良く評価しているともとれる。
なお、スターウォーズサーガは当初から9部作構成であること自体は最初から構想されており、80年代には1977年以降の作品がそれぞれ1980年、1983年と3年ごとに公開されていたことからその流れで2001年までに完結することが噂されていた。
評価・人気
興行面に限って言えば、特にEP8以降は完全な竜頭蛇尾に終わってしまった失敗作である。
もちろん三作合計43億ドルという累計興収は十分なメガヒットであるが、その半分近くを1作目=エピソード7が稼いでいると言えばその後の失速ぶりがわかりやすい。当時好調だったMCUやそれこそ旧三部作のように、回を重ねるごとに新たなファンを獲得しさらなる大人気コンテンツへと成長していくポテンシャルを十分に持っていたことを考えれば、期待外れの結果に終わったと言わざるを得ない。
トリロジー第1作『フォースの覚醒』は、プリクエル・トリロジーの時代からさらに進歩したVFX技術、オリジナル・トリロジーで人気を博したキャラの復帰、そして何よりもう望むべくもなかったはずの「スターウォーズの新作」とあって熱狂を持って迎えられ、全米だけで9億ドルを超えるすさまじい興行収入を記録した。これはあの『アバター』や『タイタニック』、『アベンジャーズ/エンドゲーム』、『ブラックパンサー』さえも及ばなかった前人未到の大台であり、2022年現在も歴代1位の座を保持している。日本でも興行収入100億円を突破する大人気で、世界累計では20億ドルというシリーズ最高記録となった。
内容的にも、エピソード4の焼き直しにとどまっているという批判もあったものの、これまでにない設定や残した伏線はおおむね好評であり、最高の形でスタートを切れたと言ってよい、上々の幕開けとなった。
が、次作『最後のジェダイ』で評価が一変。
『ジェダイもシスも最早時代遅れ』という思想をテーマに、良くも悪くもかなり攻めた内容となった同作は、前作の伏線を放置するような流れ、監督の交代もあって熱心なファンを中心に激しい賛否両論の嵐を巻き起こし、「シリーズ最高傑作」と絶賛する人もいれば「史上最悪のSW」「監督のエゴがシリーズを破壊した」「SW以前に伏線無視で物語として成立していない」とまでこき下ろす声も上がるというカオスな状況が生まれ、挙句の果てに本作をスターウォーズシリーズから除外する方に署名運動が起こるほどの事態に至った。
その結果か、同作は全米で6億ドル・世界累計で13億ドルという興収にとどまり、数字自体は俄然凄まじいが前作に比べると3~4割減という失速ぶりに陰った。
そしてその影響はスピンオフにも影響したのかは不明だが、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の興行的失敗を経て完結編『スカイウォーカーの夜明け』が公開される頃には、観客側の熱はすっかり冷めており、また上記のテーマを引き継いだまま(半ば強引に)王道へと戻った内容は再び賛否を読んだ。結果、全米興収は前作をさらに下回る5億円、世界累計ではギリギリ10億ドルと、『フォースの覚醒』の半分程度の記録にとどまった。
このように、続三部作の興収は右肩下がりの尻すぼみであった。
その後、2021年にはEP7、EP9の監督であったJ・J・エイブラムス監督により「計画をきちんと立てて作品に臨むことが大切と学んだ」と、シリーズ全体の構想を無計画で製作が進行していた事を認めるような発言もされている。
早い話が、新しいことに挑戦した意欲作ではあり、演出の技術は大幅に向上したが、一部を除いて描写、演出が適当になり、旧作のキャラクターと設定を活かせずに失敗してしまったといえる。
「フィンなどの斬新設定を持ったキャラクターを生かせれば確実に成功した」、「カイロ・レンなど一部を除いて魅力を感じない」「新キャラも旧キャラもほとんどが活躍していない」といった声も多い。
これには、度重なる監督交代の影響も大きかっただろう。EP7はJ・J・エイブラムス監督が制作していたが、その後はライアン・ジョンソン監督が制作し、その後降板、別の監督がついたがそれも降板して結局エイブラムス監督に戻るという制作陣のゴタゴタも影響した。
なお、撮影や作風に影響したのかは不明だが、レイア・オーガナ役のキャリー・フィッシャー氏が2016年の年末に亡くなったためにEP9ではそれ以前にお蔵入りとなった映像を流用するなど想定外の出来事も発生した。
加えて、ジョンソン監督が本作をほぼ全肯定しており後悔していないと公言していることも拍車をかけているのかもしれない。
ジョンソン監督はミステリーやサスペンスで高く評価されている監督で、良くも悪くも観客の予想の斜め上を行く展開を得意とする性質が、スターウォーズと噛み合わずに悪い方向へ作用してしまったという意見もある。
尤も、「新三部作と同じ路線にしたらそれはそれで失敗の繰り返しを描くだけ」との声もあり、仮にルーカス監督が作っていてもいい作品が出来た保証もないため、ディズニーが関わらなくても成功したのかは不明である。
また、無計画な件もエイブラムス監督の責任というよりも、「スターウォーズは可能性に満ちているから、何も先に決めてしまう必要なんてない。そんなことしたら、他の可能性や検討事項に触れられなくなる」と、ルーカスフィルムCEOのキャスリーン・ケネディ氏の意向であり、決してエイブラムス監督の意向ではなかったことは留意すべきである。
続編?
2023年に開催された「スター・ウォーズ セレブレーション」にて、エピソード9の15年後にジェダイマスターとなったレイを主人公にした、新作映画の製作が発表された。
監督はパキスタン出身で、MCU版『ミズ・マーベル』を手掛けた新進監督のシャルミーン・ウベード=チナーイが起用される。2026~2027年に公開予定。
立ち位置的にはエピソード10に当たることになるが、新たな三部作になるとは発表されていないため、ナンバリングされるかは不明。
流用された設定の一例
シークエル・トリロジーでは多くの設定やシチュエーションがレジェンズに降格されたディズニー以前のスピンオフから流用されている。
その一例を挙げると……
・メインキャラの子供がダークサイドに堕ちる
レジェンズではハン・ソロとレイア・オーガナ・ソロの第一子であるジェイセン・ソロがダークサイドに堕ちて「ダース・カイダス」となる。
・ハン・ソロの死
レジェンズではハンではなく相棒のチューバッカがユージャン・ヴォング戦争で壮絶な死を遂げる。
・「ベン」という名前
レジェンズではルーク・スカイウォーカーとマラ・ジェイド・スカイウォーカーの息子がベン・スカイウォーカーという名前。当然ながら、ルークの師であるベン・ケノービから名前を貰っている。
レジェンズでのハンとレイアの子供は双子のジェイセン(男)とジェイナ(女)、末子のアナキン(男)。
なお「ジェイセン」の名前は正史では「反乱者たち」に登場したヘラ・シンドゥーラとケイナン・ジャラスの息子の名前に流用された。
・スターキラー基地
レジェンズではデス・スターからスーパーレーザー砲のみを取り出した「ダーク・セーバー」や、第三デス・スター(ディズニーランドの旧スター・ツアーズで破壊されるもの)があった。
また「超空間を通して遠隔地を攻撃する」という特徴はレジェンズの「ギャラクシー・ガン」によく似ている。
・パルパティーンの子供
レジェンズのジュニアノベルではパルパティーン皇帝の息子「トライクロップス」がおり、トライクロップスは父に似ず善良な青年だった。
さらにトライクロップスとケンダリーナという女性の間に生まれたケンは強いフォースを持ち、「ジェダイの王子」と呼ばれていた。
・フォースで空を飛ぶ
レイがやっていた「フォースで自分を持ち上げる=空を飛ぶ」技は、レジェンズでルークが一度やっていた。しかしかなり無茶苦茶な技なので一回きりの登場だった。
・ファースト・オーダー
レジェンズでは帝国は反乱同盟軍に敗北した後も、支配圏は縮小したものの軍政的な政治体制で新共和国と統合して銀河同盟自由連合となるまでの数十年の長きにわたって存続していた。
これは新共和国側からは「インペリアル・レムナント(帝国の残党)」と呼ばれていたが、帝国自らは「銀河帝国」と呼んでいた。
・パルパティーンの復活と末路
レジェンズでもパルパティーンはたびたび復活している。
若いクローンの身体で蘇ってルークをシスの弟子にしたり、霊体として蘇ったりもしている。
最期はエンパトジェイオス・ブランドというジェダイの自己犠牲により完全に消滅している。
・皇帝の秘密基地
シークエル・トリロジーのシスの秘密基地はアンノウン・リージョンのエクセゴルだが、レジェンズではディープ・コアの惑星ビィスであった。
エクセゴルにはスノークのクローンがあったが、ビィスには皇帝のクローンがあった。
・シス・エターナル
銀河帝国ではジェダイもシスも古い御伽噺程度に軽んじられていたが、EP9で突然登場したシス・エターナルはシーヴ・パルパティーン皇帝のもとシスの教義を信奉するカルト集団であった。
レジェンズでは詳細は長くなるので省くが、銀河帝国が再編されたフェル帝国では皇帝がフォース・センシティブで、さらにフェル帝国を乗っ取ったダース・クレイトのシス帝国はそのものずばりシスによる支配を旨とするカルトだった。
この様に全く以前のシリーズを無視していたというわけではなく、EP8でのルークの死も、ルーカス監督が事前に予定していたことである。
とはいえフォースの使い方やパルパティーンの復活に関しては、レジェンズ作品まで網羅しているファンばかりではないので、今までの映画本編と比較して違和感を覚えてしまう人がいるのも、無理からぬことではある。
設定無視とされている点の一例
一方で、設定を無視したとされる点、もしくは明らかに説明不足な点も少なくない。
多くは小説版や設定資料集などの別媒体で補完されてはいるが、映画内だけだとしっくり来ない部分が多く、批判点の一つとなっている。
・ハイパードライブ特攻
ハイパードライブはリアルスペースに重力井戸があると強制的にリアルスペースに戻る様にできており、スターウォーズ世界には敵艦がハイパースペースで逃走するを防ぐため、巨大な重力井戸発生装置を搭載した「インターディクター艦」という艦種まで存在する。
またハイパースペースは亜空間で、リアルスペースの物体に衝突しても影響を及ぼさない(ハイパースペースにいる宇宙船の方は壊れるので、それを避けるため航法コンピューターによる精密な計算が必要になる)ので、新・旧三部作の設定のままではハイパードライブ特攻はできない。
もしハイパードライブ特攻ができるのなら、反乱同盟軍は最初からデス・スターに無人機を一機差し向けてハイパードライブ特攻させるだけで勝てたはずで、この攻撃方法は物語の根幹を揺るがしてしまったと言っても過言ではない。
一応、「成功率は1/1,000,000以下」「ラダスは特殊なシールドを試験的に搭載していたから敵艦にダメージを与えられた」といったフォローが小説版などでされているが、EP9でもエンドアの近くでハイパースペース特攻らしき攻撃で撃沈されるスターデストロイヤーが描写されているため、詳細は不明。
それはそれで「なら劇中のタイミングで成功させるのは無理がある」「衝突を避けるための計算ができるなら、精密に計算した上で大量の無人船を特攻させれば実用に足るのでは」といった声もある。
そもそも銀河帝国に存在したインターディクター艦を、ファーストオーダーが保有していないのも不自然である(代わりにハイパースペースに入った敵艦を追跡できるトラッキング装置があるものの、敵艦の逃走先を突き止めたいならともかく、殲滅したいならインターディクター艦で逃走を阻止する方が合理的である)。
・主要人物ほぼ全滅
首都惑星に集まっていたり、ホーム・ワンに搭乗していたりした新・旧三部作のメインキャラがあっけなくほとんど全滅させられた。
・フィンの不自然な活躍の理由
フィンがただの兵士にしてはやたらと活躍したり異様に生命力が強かったりする理由は、映画完結後に「実はフォース・センシティブだった」という設定で解決されたが、後付け感を感じるファンも少なくなく、「それをメインに描けばもっといい作品になったのに」という声もある。
・ドロイドの記憶消去の重さ
基本的に管理下にあるドロイドは余計な個性が生まれないように定期的にメモリーワイプするのが当たり前であり、新三部作のラストでもレイマス・アンティリーズ船長に「ドロイドの記憶は消せ」と言われた時にC-3PO自ら「そんなぁ」と軽いリアクションだったのだが、続三部作では「メモリーワイプ=死」のように異常に重く描かれている。
余談
本作に登場する青のライトセーバーは、ルークエピソード、アナキンエピソードから引き続きするが、技術の都合上アナキンエピソード同様に濃い目の青色となっている。
関連項目
ルークエピソード」エピソード4~6を指す。「旧三部作」、「オリジナル・トリロジー」とも。
アナキンエピソード:エピソード1~3を指す。「新三部作」、「プリクエル・トリロジー」とも。