概要
『STARWARS』シリーズの最新作。
正式タイトルは、 “Rogue One: A Star Wars Story” (邦題は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』)。
これまで、本編シリーズで語られてこなかった出来事や内容を補完するスピンオフ「アンソロジー・シリーズ」の第1弾作品となる。
時系列では『エピソード3/シスの復讐』と『エピソード4/新たなる希望』の間の時期、『反乱者たち』の後(より厳密にはエピソード4の開始直前)にあたり、エピソード4冒頭でも語られた、銀河帝国軍の要塞:デス・スターの設計図奪取の様子が描かれる。
監督は、ハリウッド版ゴジラ(2014)を手掛けたことで有名な、ギャレス・エドワーズが担当する(なお、ギャレス監督が幼少時に『スター・ウォーズ』を観たことがきっかけで映画監督を志したことはファンの間では有名であり、そう考えるとなかなか感慨深い人選である)。
前作『エピソード7/フォースの覚醒』公開の1年後である2016年12月16日にロードショーした。
しかし、日本国内ではフォースの覚醒同様、映画『妖怪ウォッチ』に首位の座を奪われ、さらには『バイオハザード ザ・ファイナル』にも抜かれてしまい苦戦が続いた。
ストーリー
銀河帝国の超兵器「デス・スター」がついに完成した。
科学者ゲイレン・アーソは帝国将校オーソン・クレニックに拉致されて無理やりデス・スター開発へ協力させられていたが、デス・スターの秘密を貨物船パイロットのボーディー・ルックに託し、旧友の反乱軍指揮官ソウ・ゲレラのいる惑星ジェダへと送り出す。しかしソウ・ゲレラは情報を信じずにボーディを捕らえてしまう。
その噂を知った反乱軍は凄腕の情報将校キャシアン・アンドー、彼の相棒である元帝国軍ドロイドK-2SOを送り出し、ゲイレンの娘にしてゲレラの義理の娘でもあるジン・アーソを帝国軍収容所から救出する。彼女がいればゲレラやゲイレンと接触できると考えていたからだ。しかし両親を帝国に奪われ、ソウの元から脱走し、一人で銀河を生きてきたジンはすっかりならず者(ローグ)となっていた。
ジンはキャシアン、K-2と共に惑星ジェダへ赴くが、そこでソウ・ゲレラ一味と帝国軍の戦闘に巻き込まれてしまう。盲目のフォース僧チアルート、その親友であるベイズによって救われた一行は、ボーディを救出し、ゲイレンからのメッセージを受信する。彼は自分がいなくても帝国は兵器を完成させるだろう事から、あえて協力することで密かに弱点を作っていたのだ。
「リアクターモジュールを破壊すれば連鎖反応を起こしてデス・スターは破壊される。設計図を手に入れろ!」
クレニックによってデス・スターの試射標的とされた惑星ジェダの首都が壊滅するのを目の当たりにしながら、脱出に成功した一行はゲイレン救出のため惑星イードゥの研究施設へと向かう。
惑星イードゥの研究施設では、情報漏洩の事実に気づいたクレニックによって科学者達の粛清が行われようとしていた。実はゲイレン救出ではなくゲイレン暗殺の命令を受けていたキャシアンは、ゲイレンにブラスターの照準を向ける。しかしゲイレンがジンの父であること、ゲイレンが身を挺して科学者達を守ろうとしていることから撃てない。そして直後にキャシアンからの情報を受けていた反乱軍による空爆が研究施設を襲い、ゲイレンは致命傷を負ってしまう。助けに駆けつけたジンの腕の中でつかの間の親子対面を果たした後、ゲイレンは息絶えた。
一行はヤヴィン4の反乱軍基地に帰還して情報を伝え、何としても惑星スカリフの公文書保管庫に潜入してデス・スターの設計図を入手しなければならないと訴える。だがゲイレンは帝国の科学者、ジンはその娘、他のメンバーもいずれ劣らぬならず者ばかり。戦い続けるか降伏するかで会議は決裂し、作戦は却下されてしまう。
「どんなに不確かでも、希望があるから戦える」。決意を胸に単独で向かおうとするジンへ、K-2、ボーディー、チアルート、ベイズが同行を決意する。さらにキャシアンが同じ境遇の工作員仲間たちを連れて現れ、ここに十数名の兵士たちが集結した。無断で出撃しようとする彼らを反乱軍航空管制が呼び止め、所属を明かすよう要求する。通信を受けたボーディは、自分たちをならず者部隊――ローグ・ワンと名乗った。
登場人物
ローグ・ワン
科学者ゲイレン・アーソの娘にして反乱軍ソウ・ゲレラの養女。父からデス・スター破壊を託される。
反乱軍の情報将校。6歳の頃から工作員として育てられ、反乱軍の掲げる大義を微かな希望として戦い続けてきた。
惑星ジェダの寺院を守っていた盲目の僧侶。フォースを篤く信奉し、棒術を駆使して帝国兵をいとも簡単に蹴散らす。使う武器はカイバークリスタルを仕込んだ杖と、ウーキーのボウキャスターに似たライトボウ。パンフレット等によるとフォース使いではないとされているが、フォースを強く信じることにより、盲目の身で飛び道具まで使いこなせる。
惑星ジェダの寺院を守っていた衛兵で、チアルートの親友。性格は正反対だが友情に篤く、特注の連射ブラスターを駆使して共に戦う。
惑星ジェダ出身の元帝国軍貨物船パイロット。臆病者だがゲイレンと出会って勇気を振り絞り、正しいことをするために反乱軍に身を投じる。
キャシアンの相棒である元帝国軍ドロイド。フォーマットされた影響で率直すぎる発言が目立つようになってしまった。
反乱軍
反乱軍を率いる女性議員。民主主義の復興を旨としているため、ジンの立場を理解しつつも、反継戦派を抑えることができない。
反乱軍からも恐れられる、パルチザンと呼ばれる過激派の指揮官。ジンを戦士として育て上げた。アニメ『クローンウォーズ』では若い頃の彼が登場し、故郷の惑星オンダロンを独立星系連合から奪回するために戦っていたが、この時に妹を失っている。クローン戦争中に拷問を受けたことなどが原因で疑心暗鬼に陥っており、モスマらの元を離れ独自にパルチザンを率いて戦っている。
反乱軍に参加している元議員にして、惑星オルデランの総督兼王配。ローグ・ワンの活躍から重要性を悟り、「信頼できるメッセンジャー」を「友人のジェダイ」の元へ送り込もうとする。
反乱軍艦隊を率いるモン=カラマリの将軍。主戦論者。ジンたちのもたらした情報を重要視して惑星スカリフに軍を動かすことを主張するが、ジンが帝国軍要人の娘という事実から罠があることを懸念する反対派に押し切られ出撃を断念。しかし、ジンと仲間たちが独自に動いたことを知り、麾下の艦隊を率いて救援に駆けつける。同族のアクバー提督と肌の色が違うのは母星の北部出身のため。
銀河帝国
帝国軍を率いるシスの暗黒卿。デス・スター情報漏洩を防ぐため、独自に動き出す。
帝国軍技術将校。デス・スターの開発責任者であり、情報漏洩に伴う事態解決のため奔走する。デス・スター計画の手柄を独占しようとするターキンに強い不信感を露わにしている。
- ウィルハフ・ターキン(グランド・モフ・ターキン)
帝国軍を率いる大総督(グランド・モフ)。パルパティーン皇帝に次ぐ実権の持ち主であり、デス・スター計画全体を総括している。クレニックを信用していないばかりか、彼の失敗を利用して功績を独占しようと目論む。
評価
アナキン・ストーリーの「エピソード3」からルーク・ストーリーの「エピソード4」までのエピソードをつなぐストーリーとして充分に機能している。「なぜレイア・オーガナが帝国の最高軍事機密であるデス・スターの設計図をもっていたか?」、「なぜレイアが帝国軍に追われ、ダース・ベイダーに追われているのか?」「なぜレイアがオビ=ワン・ケノービに助けを求めたか?」という伏線が見事に張られているだけでなく、「ローグ・ワンメンバーが「エピソード4」に登場しなかった」理由も説明されており、「STAR WARS」のスピンオフという枠にとどまらず一本の映画としても完成度が高く、評価が高い。
また『自由のために戦う反乱同盟軍』の中で汚れ仕事を担当するキャシアンら特殊部隊員、徹底抗戦か降伏かで分裂する反乱軍幹部たちなど、今までのSTAR WARSシリーズでは描かれなかった面を描いた点でも評価されている。
余談
- 『反乱者たち』に登場したドロイド・チョッパーと、主人公たちの乗る宇宙船ゴーストが一瞬ではあるが登場している。また反乱軍基地のシーンで「シンドゥーラ将軍」なる人物を呼び出すアナウンスが流れるが、ブルーレイの特典映像での解説によるとこれも同作の主要人物ヘラ・シンドゥーラとのこと。
- なお、ヘラ本人は登場しないが、ヘラの中の人は登場してたりする。スター・デストロイヤーに向けてイオン魚雷を発射した女性Yウィングパイロットウォーナー・ゴバンがそれで、彼女の声だけヘラ役のヴァネッサ・マーシャルが当てている(演者自体は別人)。日本語吹き替え版でもヘラの吹き替えを担当している宮島依里が声を当てている。
- 本作のオーソン・クレニックは主人公たるジンの仇敵であり、非道な行いをし、かといってベイダーやかつてのドゥークー伯爵のようなカリスマ性や存在感もない。
- 本来なら救いようのない悪役なのだが、「失態を打ち消そうと奔走するも全て後手に回ってしまう」「心血注いだプロジェクトの手柄を上司に奪われる」など、中間管理職の悲哀が滲み出る人物でもあり、同情する視聴者も多い。
- 「新たなる希望」でグランドモフ・ターキンを演じたのは、英国俳優界の多大な功績を遺した稀代の名優、ピーター・カッシング氏なのだが、残念なことに同氏は1994年に亡くなってしまっている。そのため、今作でターキンを「再演」するにあたり、演者であるガイ・ヘンリー氏の表情や動きをキャプチャーすることで、カッシング氏の表情を再現。また氏の特徴的なクイーンズ・イングリッシュ風の言い回しについても演者のヘンリー氏は旧作を何度も見返して、彼の言い回しに近づけたという。その苦労の果てに至った、ターキンの「You may fire when ready(準備出来次第撃て)」は鳥肌ものである。
- より詳しく話すと、最終盤の惑星スカリフへの砲撃を指示するこの台詞、実はデススターが破壊される直前の、彼の最期の台詞と同じなのである。言い回しも完全に一致しており、これを聞いて鳥肌が立ったファンも少なくない。
- スターウォーズが大好きなギャレス・エドワーズ監督の手掛けた作品だけあって、作品のそこかしこにファンを「ニヤリ」とさせる小ネタが仕込んである。
- 冒頭のアーソ一家の食卓に、「新たなる希望」でルークたちが飲んでいたブルーミルクが置いてある
- ジェダの街で、後にルークに因縁をつけた結果オビ=ワンに成敗されることになるコーネリウス・エヴァサンとポンダ・バーバでジンにぶつかって「おめえ気に入らねえな」と難癖つけてくる
- スカリフの戦いで中隊を率いているゴールドリーダーとレッドリーダーは「新たなる希望」と同一人物である。これは、時系列でいうとスカリフの戦いのあと1週間もしないうちにヤヴィンの戦いなので、同じ人物であるのが妥当と言えるからであり。では映像はどうしたのかというと、「新たなる希望」撮影時の未使用カットを使用した。加えて、ゴールドリーダーを演じたアンガス・マッキネス氏が収録に応じてくださったため、ゴールドリーダーには新規台詞が追加された。(レッドリーダー役のドリュー・ヘンレイ氏はすでに引退を宣言されていたので収録できず。そのまま公開翌年に亡くなった)
- 本作で数多のエース級パイロットを擁する部隊として活躍する「ブルー中隊」だが、実はこの名前は「新たなる希望」の初期プロットでルークが所属する予定だった中隊に由来する。だが本編を見ればわかるように、ルークが所属するのは「レッド中隊」である。これには、映像の合成加工に使用するブルーバックと競合してしまうため、泣く泣く「レッド中隊」に変更されたという背景があり、それを踏まえ本作で「ブルー中隊」を復活させたのである。
- なお、艦隊護衛に回ったレッド・グールド両中隊に対し、ブルー中隊は惑星表面への援護を命じられたため、シールドゲート閉鎖後はろくに味方の援護を受けられないまま最前線で戦う羽目になり、中隊長であるメリック将軍以下多数のパイロットが戦死。閉鎖時に宇宙空間に取り残されたメンバーも敵軍との激しい格闘戦のせいで多くの犠牲を生じたことから、部隊を解散せざるを得ないほどの被害を被ったため、ヤヴィンの戦いには参加できなかった、という理由づけがなされた。
- ブルー中隊がスカリフの地表に向けて突入するシーンで、閉鎖したシールドに衝突して爆散したXウィングが数機あるが、これは「ジェダイの帰還」での裏設定を拾ったものである。「ジェダイの帰還」では、エンドアの戦い冒頭で第二デス・スターが展開している強力なシールドを回避しきれず数機のスターファイターが爆散しているという設定があるが、該当のシーンは映像化されていなかった。本作ではその裏設定をオマージュする形で活用したといえる。
- などなど様々な小ネタが仕込んである。なお、エドワーズ監督自身も「タナヴィーIV発艦の際レバーを引く反乱軍兵士」としてカメオ出演している。
- ……一方、実は作品の半分近くが『ボーン・アイデンティティー』シリーズのトニー・ギルロイによるものであり、実質的にはエドワーズとギルロイの共同監督とみなされている。現地メディアの中には、ギルロイこそ真の監督であると評するものさえある。
- これは、いったんエドワーズが完成させた映画をディズニー社が気に入らず、ギルロイを招いて追加撮影を行い、大幅に作り替えたため。
- 試写の反応を踏まえて追加撮影を行い内容を修正することはハリウッドでは珍しいことではないが、今作の場合は撮影に1か月もかけ、上述の通り作品の半分近くを作り直し、しかもそれを公開のわずか半年前に始めるという、さすがにハリウッドにおいても異例の無茶であった。エドワーズの初期バージョンに対してディズニー社が相当な不満を持っていたことがうかがえる。
- 追加撮影を行うのであれば公開も延期するのが普通のところ、ディズニーがそうしなかったのは、続三部作を隔年で公開しつつその間を埋める形で今作とハン・ソロ単独作を公開する…というロードマップを既に発表済みだったことも影響していると思われるが、おかげで製作現場はまさに殺人的スケジュールとなり大混乱だったそうだ。
- なおエドワーズによる初期バージョンの詳細な内容は出ておらず、今のところ世に出る見込みもない。報道によれば、ただ出来が悪かったというよりは「戦争映画として生々しすぎる」「ハードすぎて娯楽要素が薄い」内容だったと言われている。
関連イラスト
関連項目
クローンウォーズ 反乱者たち:同じくスピンオフのアニメ。上記の通りこれらの作品に登場する人物や宇宙船が本作にも登場している。
これより先、「ローグ・ワン」最終盤のネタバレ注意
- ダース・ベイダー
ターキンからの命令を受け、反乱同盟の奇襲にあった惑星スカリフに急行。デス・スターの設計図を受け取ったラダス提督の旗艦以下反乱同盟艦隊が撤退を開始した直後、乗艦「デバステーター」で撤退経路を塞ぐように戦場に現れ、敵旗艦に最大火力での砲撃を敢行し行動不能に追い込む。だが、地上から設計図のデータを受け取ったらしいという報告を聞くや敵旗艦に直属部隊を率いて乗り込み、設計図を持って脱出しようとする反乱同盟軍兵士たちを追い詰める。兵士たちは「怯むな、撃て!」と気持ちを奮い立たせ応戦するもベイダーの前にブラスターの銃弾は跳ね返され、テレキネシスで強制的に武装解除され、ついにはいとも容易く体を天井や壁に叩きつけられるなど次々に倒れてゆく。だが、兵士たちの決死のリレーと抗戦により間一髪でドッキングしていた高速宇宙船の発進に成功。ベイダーは設計図を取り戻し損なうこととなる。
- この一連のシーンはファンの間でも「(本編の素晴らしさはもちろんだけども)このシーンだけでも見る価値がある!」「歴史が変わった」と語られるほどのシーンであり、本作のフィナーレを飾るにふさわしい名シーンとして語り継がれている。
- なお、このシーンは撮影中は最高機密とされ、多くの出演者やスタッフは試写会ではじめてこのシーンの存在を知ったそうな。
- ちなみにこの一連のシーンの終盤、「発進しろ!」の号令を受けてドッキングアームを解除するレバーを引く兵士を演じているのがギャレス・エドワーズ監督である。
そして...
ベイダーから逃れた宇宙船のコックピットに佇むかたちで登場。
船長からデス・スターの設計図が入った記録媒体を受け取った。船長から受け取った通信の内容を聞かれ、「希望です」と答えた。その直後、パイロットがハイパードライブを起動し、彼らの乗る宇宙船はハイパースペース航法に突入、本作は終幕となる。
もはや言うまでもないかもしれないが、ベイルがモスマに語った「彼女」の正体であり、「友人のジェダイ」に加勢を要請するために派遣された特使である。
- この一連の流れでわかるように、「ローグ・ワン」という映画はシリーズ第一作「新たなる希望」の前日譚どころか開始直前までを描いた作品だったのである。どのくらい直前かというと、「新たなる希望」冒頭のスター・デストロイヤーに追いかけ回されるシーンの僅か十数分前レベルである。あえて言おう、誰がここまでやれと言った...
- なお、これを踏まえコミック版では最後の最後に「新たなる希望」のオープニングクロールの全文が掲載されて終わるという非常に憎い演出がなされている。
- なお、レイアが乗っているということはこの二人も乗ってるというわけで...そのため、反乱軍艦隊がスカリフに向けて緊急発進する際に「スカリフ?なんだってスカリフに行くんだ?なんで誰も言ってくれないんだろう、R2...」とぼやくC-3POに対し、今後の展開を知るファンからは「お前らも行くんやで」と怒涛のツッコミがなされることに。