解説
MARVELの実写化作品シリーズであるMCUのフェーズ4に含まれる連続ドラマ。
ディズニープラス独占配信のドラマとしては5作目で、主役はムーンナイト。
これまでのドラマは映画で活躍していたキャラクターの"その後"が描かれていたが、新規ヒーローのオリジンが描かれるのは初。
主演は『スターウォーズ』シークエル・トリロジーで有名なオスカー・アイザック。『X-MEN:アポカリプス』でヴィランのアポカリプスを演じたこともあり、今回が2度目のMARVEL実写作品出演。
あらすじ
「現実か夢か、区別がつかない――」意味深なセリフを放つ彼の名はスティーヴン・グラント。国立博物館のギフトショップで働く温厚で、うだつの上がらない主人公。睡眠障害を持ち、夢の中で度々白いスーツを着た男と対峙するが、それが現実で起こっていることか、ただの夢か区別がつかない。
夜通し悪夢にうなされては、仕事場で「役立たず」と罵られ、スティーヴンはいつも幻覚に怯える日々を過ごしていた。 ある日、自室の見知らぬ携帯電話が鳴り響き、“マーク”と知らない名前を呼ばれ困惑する― 自分は誰なのか、何に怯えているのか。やがて自分の中に“自分以外の誰か”が潜んでいることに気づき始める。
コントロールできない“もう一人の自分”― それは、冷酷な暗殺者 マーク・スペクターだった。
マークに狂気が宿る時、ダーク・ヒーロー<ムーンナイト>が誕生する――。
(公式より抜粋)
登場人物
- スティーヴン・グラント / Mr.ナイト(オスカー・アイザック / 関智一)
本作の主人公。
ロンドンの博物館で、土産物コーナーの店員として働く男。
夢遊病と幻聴や幻視に悩まされており、気弱でオタク気質な性格も相まってか孤立気味。
古代エジプト文明に対して造詣が深く、その知識量は専門家並みで、立場を忘れて見学者に語ってしまう程。
彼がムーンナイトへの変身を行うと、真白いフォーマルスーツを纏ったMr.ナイトとなる。
身体能力は向上しているものの、格闘技能はからっきしな為、些か頼りない。
彼には彼自身にも把握出来ていない秘密が数多存在し、本作はそれを解き明かしていく物語としての側面も持っている。
- マーク・スペクター / ムーンナイト(オスカー・アイザック / 関智一)
スティーヴンの内に潜むもう一つの彼。アメリカ国籍であり、元傭兵。
口数が少なく、冷静沈着で冷徹。スティーヴンとは対照的な人格。
ムーンナイトとして戦うのは彼であり、傭兵稼業で鍛え上げられた戦闘スキルはかなりのもの。
どうやらマークはスティーヴンに纏わる秘密を知っているようだが……?
- レイラ(メイ・カラマウィ / 小松未可子)
考古学者にして冒険家。
マークの元パートナーにして妻。
ある日突然消息を絶ったマークを探していたが、スティーヴンと接触したことで彼の置かれている状況を知り行動を共にするようになる。
カルト教団の教祖である壮年男性。
エジプト神話の神アメミットを崇拝しており、そのアメミットから与えられたとされる力で現在、過去未来に罪を犯す、あるいは犯した者を、改心の余地すら与えず裁いていた。
ある目的の為にスティーヴン/マークをつけ狙うようになる。
- コンス(コンシュー)(金尾哲夫)
スティーヴンに囁く謎の声の主。
その正体はエジプト神話の神コンス本人。
『夜』を守護する神であり、罪を犯した者の裁きを担っている。
スティーヴン/マークにムーンナイトとしての力を与えた張本人。
コンス自身の目的の為に、スティーヴン/マークを利用している節がある。
戦いを拒否しようとするマークに脅迫まがいな言動をとるなど、非常に悪辣ながらも、アーサーひいてはアメミットの理念には強く否定的な立場をとっている。
ドラマ中の原語発音では、コミックの日本語訳などと同じ「コンシュー」だが、日本語字幕や日本語吹替では「コンス」と表記・発音されている。
ちなみに
MCUではやや珍しく、アメリカ国内ではない都市がホームタウンとなっているが、制作側によると「ニューヨークだと他のヒーローがたくさんいる」のが理由とのこと。
ただロンドンの博物館といえば、同じくフェーズ4で初登場したこのヒーローが近くにいた…かもしれない。(時系列は配信開始時点で不明だが)
関連動画
関連イラスト
関連タグ
以下、第5話までのネタバレあり
明かされた真実
第4話中盤、アーサー率いる教団からレイラを逃がすため囮を買って出たマーク/スティーヴンはその凶弾に撃たれ、命を落とす。
冥界へと魂が送られた二人は、精神科病棟を模した奇妙な空間で過去の記憶を紐解いていく。
そしてその中で明らかになった衝撃の事実とは―――
スティーヴン・グラントという人物はこの世に存在しない。
幼い頃、マークにはランドールという弟がいた。
ある日、雨が降る中映画の真似ごとで洞窟探検へと兄弟は繰り出すが、その過程でランドールは洞窟に入り込んだ雨水で溺死してしまう。
偶発的な事故であるのにもかかわらず、実母ウェンディはマークがランドールへの嫉妬から意図的に殺害したという妄想に囚われ、肉体と精神両方に壮絶な虐待を繰り返す。
スティーヴン・グラントはその虐待の苦しみから自己を守るためにマークが無意識的に発露した人格で、その名も憧れていた映画の登場人物から引用されている。
そうすることで自己を守り続けてきたマークだが、本編開始の二ヶ月前にウェンディが死去。
いつまでも払拭出来なかった、ランドールを殺してしまったという罪の意識と、家庭を結果的に壊してしまったこと、そして最後まで母を満たせなかった歪んだ後悔からマークとしての人格は破綻し、肉体の主導権は完全にスティーヴンへと移行してしまった。
本編序盤で何度か描かれてきた、スティーヴンと母親の電話は全て彼の幻想であり、その通話先に母親はいない。
円満な親子関係を保つことが出来なかったマークの悲しい夢想だったのだ。
このことを知りスティーブンは狼狽えるも、マークを、つまりは自分自身を赦し互いに互いを受け入れ、結束する。
この際、マークはスティーブンを指して「俺のスーパーパワーはお前だった」と吐露している。
そして最終話では―――
- ジェイク・ロックリー(オスカー・アイザック / 関智一)
マークの中にいた第三の人格。
最終話にて登場し、精神病棟に入院していたアーサーをリムジンへ拉致し殺害する衝撃のラストを飾った。
マークのセリフや劇中描写からするに物語の1話から行動していたことが推察できる。
何度か描写されていた『スティーブンが白目を剥き、画面と音声にノイズが入る』演出に着目するとおのずと答えが見えてくる。
スティーブンが『虐待からの防衛』であるとすれば、ジェイクは『罪悪感からの防衛』と見れる。
ちなみにマーク/スティーヴンはこの人格の存在に気づいておらず、コンスのみが気づいている。
また、終盤においてコンスがマーク/スティーヴンと契約を破棄する場面では「二人を解放する」と宣誓している為、ジェイクとの契約は継続しているものと思われる。
真の関連タグ
解離性同一性障害……虐待を受けたマークが患った病。実際に虐待被害者が罹患しているケースも多い。
多くの創作物では格好良さのアイコンとして使用されがちなこの疾患だが、実際はそれに苦しむ人々は世界中に存在している。
マークを演じたオスカー・アイザックはそれも踏まえ、アイコン的消費ではなく深刻な問題として扱うよう監修した旨をインタビューで語っている。
追加余談
後に本作のエグゼクティブ・プロデューサーであるグラント・カーティスは、「現在のMCUとの繋がりはありません」と述べている。
実際、最近はMCUのみならず業界全体で恒例と言えるほど常態化していた他ヒーローや作品の要素をあえて登場させず、小ネタ程度に留められており、単体の作品として成立していることは特筆すべきである。