以下、『機動戦士ガンダム水星の魔女』第17話「大切なもの」のネタバレ相当記事になります。未視聴の方は注意してください。
概要
第16話「罪禍の輪」終盤にて、スレッタが母親であるプロスペラの操り人形同然となっている状態に怒りを覚え、糾弾に向かったミオリネ。しかしながら、プロスペラからある事実を明かされた後に「ベネリットグループの次期総裁になる」のを条件に協力を要請される。
後日、スレッタから先日の発言について自分でもおかしいと気づいており、ミオリネに謝ってきた。そこで「私が言うなら、エアリアルを捨てられるか?」と問い掛けるもスレッタからは「エアリアルは家族なので捨てられない」と告げられる。
その後、温室にてスレッタとグエルの会話を陰ながら聞いていたミオリネは「あの子には幸せになってほしいの、ガンダムとか何にも縛られない世界で」とのスレッタへの想いで、彼女をエアリアルから降ろす為に〈決闘〉による強硬手段を決意。
「ジェターク社の立て直しに自分がスポンサーになる」条件とプロスペラの本性とスレッタの現状を伝えた上で、グエルに「スレッタと〈決闘〉して勝利し、賭けとしてエアリアルを奪う」ように頼み込むのであった。
また、ミオリネはプロスペラに対しても同様に、エアリアルの緊急停止ソフトを受け取るなど根回しをしていた。
そして、ミオリネの誕生日当日にスレッタとグエルの〈決闘〉が行われ、スレッタのミオリネへの想いに呼応するかのようにエアリアルのパーメットスコアも上昇していき、勝利も秒読みかと思われた直後、突如エアリアルが機能停止(この時、エアリアルの中にいる彼女の声をスレッタは聞いており、エアリアルによる意思も少なからず作用していたと考えられる)。その隙にエアリアルのアンテナがダリルバルデによって切断され、スレッタは敗北してしまった。
その直後、ミオリネはスレッタの前に姿を現しスレッタは自らの敗北を謝罪するも、当のミオリネは「グエルに〈決闘〉をするように仕向けた」「スレッタを負けさせる為にエアリアルを機能停止させた」等々、今回の〈決闘〉の真相を明かし冷たく言い放った。
「貴方はいい弾除けだったわ。今日までご苦労さま。さようなら、水星のお上りさん。」
花嫁もホルダーの地位も泡と消え、家族からも突き放されたスレッタは、生まれて初めて「進んだのに全て失う」現実に対してどうしたらいいのか解らず、玩具を取られた幼子のように泣くのであった。
ミオリネが押し殺している、本当の想いに気づきもせずに……。
備考
今回の一件はミオリネ、グエル、プロスペラの三者の思惑が一致した結果、スレッタ本人は正に蚊帳の外の状態で引き起こされた。ミオリネはスレッタと、グエルはジェターク社とそれぞれの「大切なもの」を守る為に、スレッタの「大切なもの」を手放される真逆な結果となった。
ミオリネは当然ながらスレッタを思ってこの計画(停止ソフトのボタンを押す時も指が震えている有様だった)を実行していたため、一連のスレッタに対する台詞はあくまで彼女を敢えて突き放す、本心からのものではない点にも留意したい。このようなやり方は奇しくも、娘を大切に思いながらも不器用故に忌み嫌われてしまった父と重なるところがある。
その一方でミオリネの行動自体は、何も知らないスレッタからしてみれば一方的な裏切りであり、一部の視聴者からは「より一層母親への依存を悪化させたり、プロスペラの手法が不明瞭な中で手玉に取られている状況を悪化させているのでは?」「この荒療治は悪手だった」などとする見方もある。
そしてスレッタにはミオリネもエアリアルもいなくなったこの状況で、更なる事実や「自らは何者なのか?」とする根源的問題を突きつけられる可能性がある点からも、彼女の今後が懸念されている。
またグエルもこの計画に賛同し実行したものの、ミオリネの「何にも縛られない世界」の思想に対しては地球での一件から否定的であり、自分の心からの好意を伝え初めて友人としてスレッタと交流を交わした直後に、それを踏みにじるような形で罠に嵌めた八百長的な勝利でもあったからか、決闘勝利後も彼女の再戦を乞う悲痛な声を聞きながら苦い表情を浮かべていた。
しかし、スレッタの母親への依存は最早言葉でどうにかなる程のものではない上、またスレッタ自身もこれまでの行動に加え、同17話のグエルとの〈決闘〉でも下手をすれば彼を死なせるか、学園を破壊するかにもなりかねなかった戦い方を自覚なく行なっていた様子から、皮肉にも彼女自身でその危うさを露呈してしまっていた。
いずれにせよ、ミオリネが採ったこの行動が正しかったのかどうかは、第18話「空っぽな私たち」以降で明かされるのだろう。その前に総集編を挟むのだが。
余談
第1シーズン末期でミオリネは「半死半生に陥った父の真意を知り、独り立ちを余儀なくされた」のに対し、スレッタは「周囲に知己がいながら彼等の意図・思惑を知らされず否応なく孤立に追い込まれる」と、近似しつつも真逆の様相を見せている。
上記の通り『「自らの意思で進んだ」にも関わらず、不本意な結末を迎えた』スレッタだが、酷な指摘をすれば進むのは至極当たり前の行いで、それを選んだだけで自分の望む結果を得られないのも当然であり、見方によっては今更になってスレッタは現実を思い知らされたようでもある。
関連タグ
スレッタ・マーキュリー ミオリネ・レンブラン グエル・ジェターク
ダブスタクソ娘:第17話のミオリネはまさにコレである。