「ふん、世の中には知らなくていいこともあるんだよ…」
概要
『名探偵コナン』のエピソードの一つ「黒の組織との再会」におけるゲストキャラクターで、組織と関わりがあり、収賄容疑で逮捕寸前だった議員・呑口重彦射殺事件の真犯人である。
本名は枡山憲三(ますやま けんぞう)。表の顔は「経済界の大物」と称される大手自動車メーカー会長だが、その正体は黒ずくめの組織の幹部の一人。
与えられているコードネームは「ピスコ」(Pisco)で、ペルー原産のブドウ果汁を原料とした蒸留酒が由来。
人物像
あの方に長年仕え、組織の力を借りる形で現在の地位にまで伸し上がった老齢の人物。No.2であるラムと直接の面識があったかは不明。年齢は71歳。
黒づくめの組織のメンバーだけあって基本的に敵対する者には冷酷である。だが、ある程度の親交があった者に対しては、僅かながら情を見せる様子もある事から、完全に冷血な人物という訳でも無い様で、実際に同じくコードネームを持った組織のメンバーであるアイリッシュからは父親の様に慕われ、後にそれに起因する行動に出ていた程。
老齢ながら熟練した狙撃手である上に驚異的な視力の持ち主で、ライフルでもない拳銃(しかもサイレンサー付き)の銃口にハンカチを被せた状態で、暗闇から蛍光塗料を塗った鎖の輪を正確に撃ち抜く程の腕前(地味に現実には不可能と言われる程の所業)。しかも、この時は目暮警部率いる警察が介入して来る(偶然組織の暗殺計画を知って事件に介入した江戸川コナンが工藤新一として通報する形で呼び出した)という場合によっては犯行を延期せざるを得ない極めて危険な状況でありながら殺害に成功している為、その精神力も並外れている。
組織内での明確な地位は明かされていないが、コードネームを与えられている以上、少なくともジン達と同格なのは確実で、それに表向きの役職による影響力やジンとの会話のやり取りの内容、そして若い頃より長年あの方(烏丸蓮耶)に仕え貢組織に献してきた事実も考慮すると、側近のラム程では無いが組織内でもかなり高い地位にいたのではないかと思われる。
宮野明美とシェリー(宮野志保)の両親である厚司・エレーナ夫妻とはとても親しい仲にあったらしく、開発中のAPTX4869の事はよく聞かされていたとの事。
そして、その薬の効力によって大人から子供の灰原哀の姿になった志保の姿を目の当たりにした際は「素晴らしい!」「でもまさか君がここまで進めていたとは…事故死した御両親もさぞお喜びだろう…」とまで評していた点からも、APTX4869が生み出された真の用途に関しても、毒薬としか認識していないジン達よりかなり知っていたのは間違いない。
赤ん坊だった志保とも面識があったそうだが、志保は赤ん坊の頃の事など当然覚えておらず、名前は聞いたことがある程度の認識だった。一方、ピスコの方も成長した志保が組織の正式な構成員となりコードネームも与えられていた事実までは知らなかった様で、ジンからシェリーの存在について聞かされた際も顔が分からなかった点から、その事がう伺える。
なお、明美との関係については言及されていないが、両親である宮野夫妻や妹の志保と関わりがあった以上、数回の面識はあったと思われる。再会した志保に話しかけた際に彼女を「志保ちゃん」と呼んでいた事からも、宮野姉妹の事は孫の様に思っていた節もあるが、組織からの命令に逆らおうとはせず、詫びを入れながらも組織の裏切り者となる彼女を容赦無く射殺しようとした。
本編での動向
組織の情報が流出するのを阻止するため、議員の吞口を暗殺する計画における実行役を担当。杯戸シティホテルで行われた「映画監督・酒巻昭を偲ぶ会」の会場内で、目暮警部率いる警察の介入という想定外の事態に陥りながらも、呑口を誘導したところで天井のシャンデリアの鎖に発砲し、シャンデリアを落下させて事故に見せかけ始末することに成功した。その混乱の中、偶然目撃した哀の姿にシェリー(志保)の面影を感じ取り、彼女をホテル内の酒蔵(会場での呑口殺害失敗時の予備として確保した部屋)に拉致・監禁する。
その後、酒蔵で幼児化していた志保が元の姿に戻っており(白乾児を飲んで一時的に戻ったとは知らない)、再び志保の身体が縮む(=哀の姿に戻る)瞬間を目撃して、「素晴らしい!」「でもまさか君がここまで進めていたとは…事故死した御両親もさぞお喜びだろう…だがこれは命令なんだ…悪く思わんでくれよ…志保ちゃん…」と迷わず射殺しようとするが、現れたコナンに真相を暴かれる。尚、作品を通して数少ない状況証拠と消去法のみで特定された犯人でもある。
その上、自身の銃撃で打ち抜かれた木箱に入っていた酒「スピリタス」(アルコール度数96%)が漏れ出して気化している事に気付かず、その傍でタバコを吸っていた為に引火。酒蔵が大炎上する中で2人の脱出を許した上に、酒蔵には火災報知器を頼りに目暮警部率いる警察が駆けつけてくる(銃刀法違反で即逮捕可能)袋のネズミ状態になってしまった。
その後、呑口を殺害するための発砲の瞬間を偶然カメラマンに撮影されていたことに気付かなかった結果、その写真が翌日の朝刊の1面に掲載されるという大失態を演じていた音が発覚(しかも、撮影時に使用されたカメラはフラッシュ撮影式であり、司会がカメラ撮影に関して言わなくても十分撮られてしまった可能性に気付けた事である為、完全にピスコの失態と言わざるを得なかった)。これによって「逮捕されるのは時間の問題」となってしまった為、あの方に見限られてしまう事になり、ジンに射殺命令が下される。
本人はこれらの事態に露とも気付かず犯行を暴いたコナンを志保の監禁場所である酒蔵内で捜索していたが、コナン達と入れ違いで煙突から酒蔵に侵入してきたジンに銃口を額に当てられて「耄碌したなピスコ」と嘲笑われながら、自らが犯行時に侵した失態を指摘された。ようやく現状に気付き、「よせ…私を殺すとシェリーを捜せなくなるぞ…」「あの方に長年仕えた私を殺すとお前の立場も…」と命乞いをするが、「悪いな…これはついさっき受けた…あの方直々の命令だ…」と宣告されて驚愕し、「組織の力を借りてここまでのし上がったんだ…もう十分いい夢を見ただろ?続きは向こうで見るんだな…」と射殺されてしまった。
撤退時のジンからは「あの老いぼれ」と評され、警察の疑いを逸らす為にアメリカから来日してまで手助けをしたベルモットにも「死んで正解だったわね」と酷評されてしまった。
そして事件後、証拠隠滅の為に、自宅は組織の手の者により跡形もなく全焼し、ピスコに殺害された呑口の家族は全員蒸発。あまりの不可解な事件の顛末に捜査を担当した目暮警部も困惑を隠せず新一(コナン)に電話で問い質したが、当人からは「まだ話せない」と伏せられている。
『シェリーが子供の姿になっている』『組織を独自に追跡する江戸川コナン(実はジンが殺し損ねた工藤新一がAPTX4869で変貌した姿)の存在』等、組織側からすれば非常に有益な情報を握っていた為、仮にこれらの情報を死ぬ前にジンに一言でも言っていれば、2人の居所が組織にバレるのは時間の問題だったという紙一重の展開であったのは想像に難くない。
ジンがピスコを始末する際、その理由について本人に丁寧に説明するだけで時間を消費し、麻酔針でシェリーの逃走を援護した謎の人物のことを何か目撃したりして知らないか質問しないまま殺してしまったため、結果的に事なきを得たことになる。
もっとも周囲が(物理的にも捜査の手的にも)炎上している最中なので、先に麻酔針を喰らって体調が悪い状態のジンも逃げなければいけない以上、殺す理由くらいは説明できたが弁明を聞いたりする余裕は無かったと言えるが。
この場面は、仮にコナンがピスコに対して馬鹿正直に「江戸川コナン!!探偵さ…」と言っていなかったとしても、シェリーの協力者が子供であることやシェリー自身も子供と化していることがバレかねなかったので、コナン達にとっては非常に危うい状況だったと言える。
劇場版
直接登場していないが、『漆黒の追跡者』と『黒鉄の魚影』に姿のみ登場。特に前者は物語の根幹となっており、ピスコの死を発端とするアイリッシュとジンの因縁が描かれる。