概要
ジンバブエの公用通貨。通貨の記号は「$」だが、他のドルと区別するため「Z$」が一般的に使用された。通貨コードは、「ZWL」であるが、旧コードとして「ZWD」などもある。
そして、近年では史上最悪のハイパーインフレ通貨でもある。その惨状は、まさに『ケツを拭く紙にもなりゃしねぇってのによぉ!』状態である。
なんと3回ものデノミが行われ、最終的に10^25分の1まで価値が下落した。一応セントもあったが、誰も使わなかった。
2009年1月には100兆ジンバブエ・ドル紙幣が発行されたが、同年2月18日、政府は公務員に対して米ドルによって給与を支払うと発表。これによりジンバブエ・ドルは公式には流通しなくなった。さらに4月12日にはジンバブエ・ドル自体の発行が停止。
そして2015年には公式に通貨としての廃止が決定、同年6月から回収を開始し同年9月には回収を終えた。
銀行によって回収されたジンバブエ・ドルは米ドルと交換されたが、この際のレートは17.5京ジンバブエ・ドル以内の預金=5米ドル(日本円で約600〜700円)という呆れたものであり、この回収作業をもってジンバブエ・ドルの歴史は正式に幕を閉じた。
要するに、現在では商取引に使用できない。コレクターズアイテム(古銭)としての価値以外は存在しない。
また創作やネット上のやり取りでは、上記メイン画像のように「大金かと思ったらジンバブエ・ドルだった」、「給料はジンバブエ・ドルで払おう」などといったネタとして扱われることが多い。
現在の通貨について
ジンバブエ・ドル廃止後、ジンバブエ国内ではアメリカ合衆国ドル、ユーロ、ポンド(イギリス)、ランド(南アフリカ)、プラ(ボツワナ)、人民元(中国)、ルピー(インド)、オーストラリア・ドル、そして我ら日本円などの外貨が用いられていた。
RTGSドル
2019年6月以降、ジンバブエで新たに制定された公用通貨「だった」。RTGSは即時グロス決済(Real Time Gross Settlement)の略称である。ジンダラー(Zimdollar)やゾラー(zollar)とも呼ばれる。新通貨の制定と同時に外貨の使用は禁止される(新通貨導入は政府保有外貨が少なかったことが一因)。
しかし、あっという間にインフレ率300%に達してまった事を受けて、2020年3月に外貨のドルの使用が認められるようになった(7月現在のインフレ率は800%以上)。ちなみに、日本政府では「ジンバブエ・ドル」として扱っている。まあ、またインフレーションしてる点で言えばその通りである。
その後、後述のジンバブエ・ゴールドを制定した事とそれに伴う発表が結構唐突だったようで、結果的に市民はある日突然に使っていた通貨が「紙」になったとか何とか。
ジンバブエ・ゴールド
2024年4月以降、ジンバブエで新たに制定される公用通貨。略称はZiG。2度の制定からの廃止の繰り返しで、通貨としての信用がガタ落ちであり、「金を裏付け」する事で通貨としての信用を取り戻そうと苦心している。
ドルと言う単位を捨てており、金が裏付けされている事で「ジンバブエ・ゴールド」と言うネーミングとなっている。そのネーミングは、ある意味では日本人にとってなじみある単位の通貨とも言える。
余談
ちなみに、第一次世界大戦後のドイツも敗戦後の多額の賠償や経済制裁による影響で1922-1923年の期間に激しいインフレを起し、100兆マルク札が発行される程までになったが、インフレ収束を目指してレンテンマルクという通貨を発行してデノミを行い、インフレは奇跡的に収束した。
このインフレの収束は、“レンテンマルクの奇跡”と呼ばれる。この際の交換レートは1兆(10^12):1であった。
同様のハイパーインフレを起した通貨には、
- ユーゴスラビアのディナール(динар / dinar)(ハイパーインフレ期間:1990年-1994年)、
- ハンガリーのペンゲー(pengő)(ペンゴーとも読む。ハイパーインフレ期間:1945年-1946年)
などがある。
関連動画
- ジンバブエドルの軌跡(ニコニコ動画)
関連タグ
ペンゲー:史上最高額である1垓紙幣を出したハンガリーのかつての通貨。
銭:第二次大戦後の経済混乱期ハイパーインフレを起こす寸前に実施された日本のデノミで廃止された通貨単位。
ゴルゴ13:2010年9月公開の『標的は陽気な悪魔』というエピソードでゴルゴことデューク・東郷は13,000,000,000,000,000,000(1300京)ジンバブエ・ドルで依頼を引き受けた事がある。数字の桁は多いが当時のレートで米ドルに換算すると100万ドル程度であり、仕事を終え出国する時には価値が10分の1に下がってしまうという代物だった。