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概要編集

物価の継続的な上昇(インフレーション、以下インフレ)が、急激に進行すること。


札束の山や券面にタップリと0が並ぶ紙幣は傍から眺めるには絵面が強く夢があるが、実際には二束三文の価値しか無いので、当事者にとっては悪夢であり地獄である。


一般的には特定の通貨のみで起こるので、「○○(通貨名)暴落」と表すことも。


解説編集

一般的に、インフレのうち経済発展が伴う緩やかで継続的なインフレ(マイルドインフレーション)は理想的であるとされる。例えば、5年間で生活費が額面で1.2倍になっても、同じ期間で賃金が1.5倍になればその分充実した生活ができるわけである。

インフレによる物価の上昇は、言い換えれば通貨の実質的な価値が下落し、貯蓄が時間とともに目減りする事でもあるが、先に述べたとおり経済発展が伴っていて年率数パーセント未満であれば大きな問題とはならない。

この場合は、むしろ通貨で貯め込んでいるよりも実質的な価値が変動しないモノや(投機的だが)株券などのほうがトクなので、消費投資を穏やかに促し、景気の拡大につながる効果が期待できる。


一方で通貨が通貨としての価値を持つのは、価値を担保する政府などが適切に管理している為に成り立つので、例えば経済基盤の脆弱な国で戦争災害が起きたり、厳しい経済制裁が課せられたり債務不履行のリスクがあるほどの多額の負債を抱えているなどの理由で通貨が信頼を失えばその価値は著しく下落する。

このような理由によるインフレは経済発展とは無縁であるため生活の向上は望めず、インフレ率が給与の上昇率を大きく上回って日々の生活に支障をきたすレベルとなると、人々は価値が落ち続ける通貨をできるだけ早く手放そうとする。もちろん、通貨を手放す≒何かを買うことであるが、この場合の「買い物」は価値の安定している外貨や、市井の人々であれば生活必需品など(買えるうちに買いたいという心理が働く)である。その通貨で運営されている自国の会社の株券や不動産、あるいは嗜好品や贅沢品といったものは選択肢から外れるため、景気の拡大は望めない。

当然、外貨や生活必需品なども供給量には限りがあるし、通貨の価値が外貨や品物の価値と釣り合わなければ値上げされるので「買えない人」があぶれるようになり、通貨の価値への不信感に拍車がかかるわけである。

結果として、通貨への信頼の失墜が更なる暴落(=信頼の低下)を招くという悪循環に陥り、通貨の供給量は増えても一般的な物価水準はさらにそれ以上に上昇するため、インフレが加速度的に進行する。


こうしてインフレが制御困難となった状態はハイパーインフレと呼ばれ、通貨価値が数日~数週間単位で目に見えて下落し続け、商店では数日おき~毎日値上がりを繰り返し、紙幣が紙屑呼ばわりされるようになって人々は札束を抱えて買い物に出かけるようになるのである。

増刷・高額紙幣編集

ハイパーインフレと呼ばれる状態となると、政府は価値を失った通貨でもなんとか国家を運営していくために、当座しのぎのために通貨を増刷することが多い。

通貨の製造は、例えば原価20円の1万円札を刷って市場に放出すれば、政府に9980円の利益をもたらす(シニョリッジ)が、無闇に増刷すると価値が下がるために先に述べた「価値の担保」が重要となる。

ところが、ハイパーインフレとなると、政府にとって市民が1万円札で何が買えるかよりも、とりあえず政府が「9980円」を確保することが目的となる場合すらあり、更にインフレが進むと"10万円札"を発行して99980円を確保しようとするような事態となる…が、当然原価も値上がりするので、確保できる「価値の量」にも限りがある。原価20円の1万円札であれば額面に占める原価の割合は0.2%だが、通貨の下落によって10万円札を発行する段階で原価8000円となってしまえば、実に8%になる。

当然インフレが止まらなかった場合は通貨に占める原価の割合は上昇し続け、これを補うため更に高額の紙幣を発行することとなる。


Wikipediaによれば、ハイパーインフレの基準は

  • 国際会計基準では、3年間で累積100%(年率約26%)…*(中略)*…米経済学者フィリップ・ケーガンの定義だと、月率50%(年率1万3千%)以上という定義もある。

とされている。


発生例編集

日本のインターネット上では、21世紀初頭から激しいインフレに見舞われたジンバブエ(ジンバブエドル)が有名である。

程度が甚だしかった為に著名になったものでは第一次世界大戦直後のドイツ(ヴァイマル共和国)のマルク、第一次・第二次世界大戦直後の2度に渡って発生したハンガリーハンガリー・コロナペンゲー(ペンゴ)が挙げられる。

このうち、ペンゲーは10ペンゲー紙幣が印刷される程で、額面が史上最高額の紙幣としてギネスブックに載ってしまった。


他には経済的混乱や国際的な経済制裁などが原因で、ロシアイラントルコ北朝鮮ベネズエラなど各地で度々発生している。

日本では第二次世界大戦敗戦直後に著しく物価が上昇した。戦後の物資不足と政府負債、軍発注物資の代金支払いによる通貨の供給過剰などを原因とするもので、敗戦から1949年にかけての物価上昇は約70~100倍に達した。このため戦時中に政府が大量に発行した戦時国債は紙屑となり、結果的に日本政府は戦費支払いの大半を免れることができた。


関連項目編集

経済

インフレーション デフレーション

ジンバブエドル

5000兆円欲しい!

愛の戦士レインボーマン…物語中、大量の偽札が引き起こした通貨の信用がガタ落ちで作中の日本はハイパーインフレを起こしてしまった。

ハイパーインフレーション…贋札によるハイパーインフレを主題の一部にした漫画作品。

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