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国債

こくさい

国家が他者から資金を借りるために発行する借用証書(債券)のこと。
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概要編集

国家が発行する債券

いわゆる「公債」の一種であり、都道府県・市町村が発行する「地方債」や会社が発行する「社債」などと対になる言葉でもある。また専門的には「ソブリン債」(国や世界銀行などが発行する債券)の一種となる。

株式同様市場が形成されており、一度発行された国債(既発債)は一般人でも自由に売買できる。


要は国の借用証書だが、ただの借用証書ではなく、経済をコントロールするための調節弁としても、また経済指標としても用いる点が大きな特徴である。

その例として、


  • 長期金利」…その国における、1年以上金を貸し借りする際の金利の基準のこと。既発の10年物の国債の利回りが指標として用いられる。もしある資産の長期の利回りがこれと同程度なら、比較的安全性の高い国債を買った方がマシと判断できる。
  • リスクフリーレート」…その時点で、ほぼゼロに近いリスクで得られる利回りのこと。高格付けの短期国債の利回りが指標として用いられる。リスクの高い資産がこの利回り以下ならば、投資すべきでないと判断できる。

などがあり、いずれもマクロの経済政策やミクロの投資・資産運用の判断材料によく用いられる。


また各国の国債の金利差はグローバルな為替の値動きと強く結びついており、すなわち企業業績や我々の生活にも直接影響がある。そのため、国が国債金利をコントロールする必要性に迫られる場面もままある。

「国債なんか買う気は無い」と言ってはばからない投資家でさえも、国債の金利にまつわる話題は避けて通ることのできない重要科目である。


こうしたことから国はたとえ経済が安定していても、いやむしろ安定している国ほど国債を発行し、市場における国債の流動性の確保に努める必要がある


投資家の視点から見ると「買って償還まで持っておけば、額面上は必ず収益がプラスになる」という性質ゆえに、株式不動産投資ではマイナスを計上してしまうような景気後退局面・デフレ局面では非常に心強い資産である。またそれ故、低リスクで安定した低リターンを求める富裕層に好まれる。

そうしたことから良く言えば手堅く、悪く言えば退屈なイメージがあるが、実際は非常に複雑な性質を持った金融商品である。発行体の破綻リスク/発行通貨/為替予想/手数料/税金/リスク許容度/償還までの期間/購入の形態/途中売却の可能性/将来の金利の変化/自分の期待する収益/インフレ率を考慮した実質の利益……など様々な要素を考慮しないと、銀行預金の金利に毛の生えたような利益にしかならないか、もしくは簡単に損失を出してしまう。

そのため国債への投資で満足の行く収益を得るには、豊富な経済知識・投資経験・資金力が求められる。


国債の種類編集

国債は主に利付債割引債の2種類がある。

利付債は基本的に償還額・償還期日と金利(元本に対しどれだけの利息がつくか)が記載されている。一般的な自動車や住宅のローンの返済は元本と利息を一緒に払うが、国債の場合は定期的に利息のみの支払いがされ、償還期日に元本が支払われて償還(完済)となる。

金利は発行時から償還まで一切変化がない固定金利と、政策金利に応じて変動する変動金利の2種類がある。また「物価連動債」と言って、償還額がインフレ率(物価上昇率)に応じて上下することで、貸し手のインフレリスクを回避できるタイプのものもある(ただし国債のメリットである、デフレ局面での強さは低減されてしまう)。


割引債(ゼロクーポン債)は定期的な利払いが無いが、逆に言えば償還まで税金を引かれることないため、見かけ上は内部での再投資を行っているのと同じこととなり、投資効率は同じ利率の利付債より良いのが強みである。償還額が100円の場合は販売価格は50円、というように、償還額から予め割引いた価格で発行・売買されるのでこう呼ばれる。

なお米国では利付債の利息の部分(クーポン)を切り離して割引債化し、利付債の流動性を高めた「ストリップス債」という国債もある。一見特殊に見えるが、実際はただの割引債として扱われる。


国債は償還までの期間によって複数種類が存在する。日本国債を例に取ると、利付債は2-3-5-10-20-30-40年、割引債は2-3-6-12ヶ月のものが発行されている。ちなみに豪州などでは100年という超長期のもある。

一般的には短期であるほど表面利率(新規発行時の利回り)は低く、逆に長期であれば高くなる。


短期国債と長期国債は償還までの期間が違うだけだが、短期国債は償還までの期間が短い分政策金利の影響を受けたものがすぐ発行されるのに対し、長期国債はそうではない上に遠い未来への不確実性が乗っかる分、商品性やマクロ経済上の性質・機能はほぼ別物に近い。

なお既発債は発行時の短期・長期ではなく、償還までの残り年数、つまり残存年数によって市場の要求する金利が異なる(後述)。


社債とは違う点として、何らかの事情で返済不可能となった場合、国家は差し押さえや強制的な弁済等を負う義務はなく、国家の信用のみが損なわれる点にある。このため社債では存在する「シニア債」「永久劣後債」などといった弁済優先順位ごとの区分は、国債では基本的に無い。


また国債は自国通貨建て外貨建てかによっても性質が異なる。

自国通貨建てで発行されている場合、ハイパーインフレが起きない程度に中央銀行に金を刷らせて大量の国債を買わせればいいので、返済についてはコントロールが効く。そのため、特に経済が安定している先進諸国の自国通貨建て国債は一般に安全性が高い資産とされる。


ただし外貨建て国債の場合はそうした手は使えない。外貨建ては資金調達のしやすさから世界の基軸通貨たる米ドルで発行されることが多いが、自国通貨がドルに対して弱くなりすぎて通貨危機に陥ると、返済時にドルを用意できなくなる可能性が発生する。

おまけにそれが政治・経済的に不安定な新興国の国債であればかなりハイリスクなものになり、「安全資産が欲しい」というニーズには全く合致しないものとなってしまう。

1997年のアジア通貨危機でこのリスクが世界的に顕在化して以降、各国はいざという時通貨を融通しあえる「通貨スワップ協定」を結んだり、外国債(主に米ドル国債)を普段から保有して外貨準備高を積み立てたりしながら有事に備えている。


歴史編集

この制度はヨーロッパで始まった。それまでは国王が公債を発行していたが、これは国による保証が存在するか、それとも国王の個人的な借金なのかがあいまいであり、割と頻繁にデフォルト(債務不履行)が発生した。そのために償還期間は短く、さらに金利は高く設定された。

このシステムが改められるのは欧州で議会制度が成立した後で、国王から徴税権および予算設定権を入手し、それらを裏づけにして長期かつ比較的低金利な国債が発行されるようになった。その起源はオランダにあるとされる。


現在世界中の多くの国で用いられる管理通貨体制においては、国債を用いた錬金術(中央銀行に直接国債を買い入れさせ通貨を発行、通貨の発行量を増やす)がある。ただし本来ならハイパーインフレを引き起こすリスクがある行為のため無尽蔵にはできず、基本的には一定の規制の元に行われる。

例としては日本は長年デフレに悩まされていることから、2001年から量的緩和の策として日本銀行による国債の買い入れを行っている(あくまで直接購入では無く入札という形であり、かつ大半は市中銀行へ売却している)。

アメリカでもリーマンショック後の2010年、長期金利上昇を抑制するために50兆円相当の国債買い入れを行っている。


米国は債務残高の上限が法で定められており、これを超えて国債を発行するには議会の承認が必要となる。もし議会が承認しなければデフォルトの危機に晒される。この議論はいつも共和党民主党の間で激しい折衝が行われた上で、なんだかんだで承認されることから「プロレス」とも揶揄される。

それでもこの議論は世間の不安を少なからず煽るため、格付けを下げられることもしばしあり、2011年にはこれとギリシャ危機による不安も相まって「米国債ショック」を引き起こした。


市場における国債の金利編集

国債を自由に売買できる市場では、需給やその時の購入者が抱えるリスクに応じて「金利」(投資額に対する年間の利益の割合。このケースでは「利回り」と言い換えてもよい)の相場が決定され、それに従って売買される価格も決まる。

国債は株式やコモディティなどと異なり、価格次第で買うというよりは、金利次第で買う(予算を決めておいて、想定の金利になったら買う)イメージの方が適切といえる。


一般には「金利上昇」と「価格上昇」は定義上、意味としては真逆になる(収益が同額の資産なら、低価格に買えた分だけ得になるため。高配当株式やREITなどにも通じる考え方である)。ただし市場金利の変動幅に対する価格の変動幅は、その国債の残存期間によって異なる。

残存年数を加重平均し、債券の元本回収までの回収期間を表したリスク指標を「デュレーション」と呼ぶ。これは各債券の市場金利の変動1%あたりの価格の変動率としてよく用いられる。一般に短期物や利払い額の大きい国債のデュレーションは小さく、長期物や利払い額の小さい国債のデュレーションは大きくなる。

つまり超長期かつ利払いの無い割引債(ゼロクーポン債やストリップス債)はデュレーションが理論上最大となり、値動きも大きなものになる。この特性から、売買で差益を狙う時に用いられやすい。


各残存期間ごとに市場で要求される金利の決定要因は、他の資産や他国の国債との比較、為替、発行体の信用リスク、インフレ率など様々であるが、中でも特に需給が大きく動くのが、次に述べる政策金利によるものである。


政策金利による国債金利の変動編集

国では物価上昇率(インフレデフレ)をコントロールするため、主に超短期の借金の金利を操作する(利上げ・利下げ)。

この時指定される金利を「政策金利」と呼ぶ。


ここでいう「超短期の借金の金利」とは国債のことではなく、国の中央銀行が市中銀行に直接金を貸し出す際の金利、もしくは市中銀行が中央銀行に金を預ける際の金利が指定されるのが一般的である(現在の日本は後者)。

政策金利が上下すると、市中銀行の資金調達コストも上昇し、そのコスト分は企業や民間に金を貸し出す際に転嫁され、国中で借り手が借金をするためのハードルが上がったり下がったりする。


そしてこの政策金利の変動は、国債市場にも大きな影響を及ぼす。

利上げされると、新発債も高い金利のものが発行される。そのため新発債より金利の低い既発債の人気は無くなり、価格が下がる。

逆にインフレ抑制が終わって利下げがされれば、それ以降に発行される新発債より既発債の方が利益が相対的に大きくなるため、既発債の人気が出て価格が上がることになる。


イールドカーブ編集

Q.あなたはどちらに100万円を貸したいか?

  • X氏「明日101万円にして返す!」
  • Y氏「30年後101万円にして返す!」

答えは言うまでもなくX氏だろう。

これはいわゆる「現在価値」の考え方、つまり返済に時間がかかる場合はそれに見合ったリターンが求められるわけで、従って一般的には長期国債の方が金利は高いことが要求される。

また同じ期間のうちに複数回短期国債を買い繋ぐのと、一つの長期国債を保有し続けるのを比較した場合も、後者の方が流動性や価格変動のリスクに晒されるため、そのリスク分だけ上乗せした金利が長期国債には要求される。これを「ターム・プレミアム」という。


しかし実際の市場においては、需給によって短期国債・長期国債の間の金利差は変化し、ときには逆転する場合もある。


横軸に残存年数、縦軸に金利を取って、市場における残存年数による金利の違いを折れ線グラフにしたものを「イールドカーブ(YC)」と呼ぶ。

残存期間が長期にいくにつれて金利が高くなるような右肩上がりのカーブを描く状態は「順イールド」、逆に短期物の金利のほうが高く右肩下がりの場合は「逆イールド」と呼ぶ。

逆イールドは需給の差によって局所的に起こることが多く、必ずしも長期側が綺麗に下がっているわけではない(例えば10年債は2年債より金利が低いのに、30年債は10年債より金利が高い、という状況は普通にある)。

全ての期間の国債を比べるのは面倒なため、長期・短期物国債の金利差の指標(長短金利差)としては、2年物と10年物の金利差のみを用いるのが一般的である。


政策金利がインフレ抑制のために段階的に上がると、償還までのサイクルが短い分政策金利の影響を直接受けやすい短期物国債の金利が上昇し、長期物の国債を上回るようになって逆イールドを形成する。この過程で短期〜長期物の金利差が少なくなり、グラフが真横に近い状態になることを「フラット化」という。

利上げは歴史的に1〜3年続くことが多いが、短期物国債の金利はこの間高止まりし続ける。こうした状況では長期物を持ち続けるより、短期物を買い繋ぐ方が利益が大きいと判断される。

やがてインフレ退治が完了し、利下げが間近と予想されると徐々に逆イールド状態は各所で解消され、順イールド状態へ戻っていく。この時に短期〜長期の金利差が拡大していき、傾斜がキツくなっていくことを「スティープ化」という。


逆イールドは一般的には不自然で好ましくない状態とされ、景気後退局面を控えている時に発生することが多い。

また逆イールド解消直後のスティープ化の最中は歴史的に見ても最も危険なタイミングと言われており、この時に国際的な金融ショックが頻繁に発生している(主にマクロ統計の数字の算出と実体経済の動向のタイムラグが原因で、金利引き下げが実は間に合っていないことに中央銀行が気づくことができず、経済を痛めつけすぎることが多いため)。


また古い事例となるが1990年代までのアメリカでは、短期の低金利な借金や預金で資金を集めて、それより少し高めの金利で長期貸し付けを行うことで利鞘を得る「貯蓄貸付組合(S&L)」なる組織が各地にあったが、急激な利上げによる逆イールドにビジネスモデルを破壊されて、破綻が相次いだ(S&L危機)。


上記は結果としてのイールドカーブの変化だが、国が意図的に直接操作して変化を起こすのが「イールドカーブ・コントロール(YCC)」である。

日本では2016年から2024年まで日本銀行が、長期金利の指標となる10年物国債のみを集中購入(指値オペ)することで、グラフ上では2年から10年物はフラット気味な直線で、10年物の地点だけ凹み、そこから長期側は急激に上がっていくという特殊な形状のイールドカーブを描いていた。これによりマイナス金利政策による『異次元の金融緩和』(アベノミクス)を維持しつつ、世界史上稀に見るマイナス長期金利※のさらなる低下を防ぐ狙いがあった(長期債を売買して資産運用をしている金融機関や年金基金は多く、マイナスのままだと金融システムや国民の将来計画が破綻する恐れがあったため)。

また米国でも1942年から1951年にかけて、戦時中の大量の国債発行時期に物価安定を目的に行われた。


※長期債の金利がマイナスになる状況とは、株式のような売買差益(キャピタル・ゲイン)を狙った投機的行動により、将来の値上がりを予想した大量の買いが発生している場合に起きる。償還時点の利益が100円となる国債を110円で買えばその時点で損失が発生する(=金利がマイナスになる)が、将来さらに値上がりして120円で売れれば問題ないというロジックである。

この時は日銀が長期国債の大量買い付けをすると聞いた人々により、日銀に売り付けるための買いが殺到したことが直接的な原因である。その後、前述の通り日銀は10年物国債の金利が0%程度になるように集中購入することにしたため、マイナスは解消された。


その他編集

  • 金利の単位は一般メディアでは分かりやすく%が使われるが、専門的にはbp(ベーシス・ポイント)が用いられることが多い。1bp=0.01%である。
  • 日米の為替(ドル円)の動きは国債の金利差の動きとかなり連動しており、特に2年債の日米金利差は相関が強い。特に為替ヘッジ付きの金融商品の場合、ヘッジに必要なコストは2年債金利差によって変動する。
  • 市場の株式の価格が企業業績や景気を予測して動くように、国債市場は政策金利の動きを予測して価格と金利が動く(これを織り込むという)。つまり「政策金利が○%下がりそうだ」と巷で言われ始めると市場の金利が上がり始め、実際に政策金利が○%上がる頃には不動もしくは(これ以上の金利低下が見込めなそうな場合は)逆に下がる、といった感じでタイムラグがあるのが一般的な動きとなる。
  • 新発の国債の金利が上がるということは即ち国の債務が増えるということでもある。インフレにブレーキをかけることに躍起になって金利を上げっぱなしにしていると、やがて債務超過により自国通貨を刷りまくる必要が生じ、却って将来のインフレの原因になってしまう可能性も考えられる(ただし日本のような万年デフレ体質の場合はその限りではない、という説が根強い。次項にて解説)。

国の借金としての国債(日本の場合)編集

日本においては特に戦争などの金のかかることが発生すると発行されていた。特に日中戦争および第二次世界大戦の際には残高が国内所得の2.5倍を超える金額という途方もない金額の国債を発行していた(これらは戦後のインフレによりほぼ無価値となったといわれる)。


その反省を受けて戦後においては赤字国債(赤字を補填するための国債)の発行が禁止され、建設国債(道路などの公共財の建設を目的として使用される目的を持つ国債)のみが発行されてきた。

ところが昭和40年以降は赤字国債の発行が再開され、平成元年までその状況は続いた。平成2年にはバブル景気の影響もあり赤字国債の発行はとまったものの、それ以降は税収の落ち込みもあり発行額は増大、2015年現在名目GDPの1.8倍を超えている状況となっている(これは名目GDP自体がそれまでのように上昇していないこと、不景気下におけるあまり有効でない景気対策などのためである)。


デフレ対策としての国債と問題点編集

しかし、日本の国債については(特に政治的に保守寄りの、「リフレ派」と呼ばれている)経済学者から「問題ない」「まだ少なすぎるぐらい」と言われてもいる。これはどういうことか。


それは2つ理由がある。

1つ目に、日本国債はすべて自国通貨(JPY)建てである点


国債のデフォルトは基本的に外国通貨建て(主にUSDやEUR)の際に起きる。その国の経済力が弱ったり、直近ではロシアなど経済制裁で国際金融システムから排除されたりすると、外貨が確保できなくなって額面通りの償還ができなくなってしまうからだ。

なので2022年5月に外貨建て債務の自国通貨(ルーブル)による償還を認める政令を発したロシア国債はその時点でデフォルトしたことと同義なのである。


だが、日本の国債はすべて自国通貨建てであるため、最悪自国のマネーサプライを上げて償還させてしまうことができる。

その副作用は当然インフレなのだが


今日本の経済で問題になっているのはデフレである


実は円高対策で2013年時点でのマネーサプライ(市場に流通させている通貨の総量)は2010年のにしている。にもかかわらずデフレは止めきれていない。

2022年にはいってからはロシアのウクライナ侵略により世界的な物価高が続いているものの、地下資源をほとんどロシアに依存していない日本のそれは、ヨーロッパ圏のそれに比べたらなんてことないレベルなのだ。


2つ目は、日本は世界的には債権国である点


日本は主にUSD建ての海外債権を大量に保持している。アメリカですら7000億ドルほど借りている


この状況で、日本が5000兆が一デフォルトしたとすると、日本から新たに借款することができなくなる国や地域が多発する。つまり通貨による市場経済が崩壊してしまうのだ。

このような通貨危機に備えているのが国際通貨基金(IMF)なわけだが、ここに出資している最大の国が結局日本。つまり日本に端を発する通貨危機はIMFには解決できない


もし本当に日本がデフォルトしてしまうと世界の経済市場が崩壊してしまう。こうなると通貨が貿易に使えなくなるため、金本位制度など現物取引となる。そして経済のグローバル化が進んだ現代そうなると最終的にどうなるかというと第三次世界大戦


これは自国通貨が基軸通貨となっている国ならどこでも起こりうる(一番可能性が高いのが日本)。なので三大基軸通貨であるUSD-JPY-EURはそれを防ぐために相互無制限通貨スワップを結んでいるわけだ。


逆にだからこそと言わんばかりに日本の国債はどんどん膨れ上がっており、2023年度末には国債の総額は1068兆円に上ると見込まれている(財務省発表)。

勿論国債とは借金なので返済義務があり、国債の発行とは言うなれば未来への負の押し付けでもあるが、経済政策は今ひとつうまく行っているとは言い難く、結果的に国民一人あたりの負担はどんどん増えてしまっているのが現状である。


リフレ派の主張どおり名目成長率が上がって、後から実質成長率がついてくるというのが理想的ではあるが、アベノミクスのような大規模金融緩和と社会保険料・消費税率の引き上げが併せて実施されるというチグハグさが頭が痛く、結局は少子高齢化という『エレファント・イン・ザ・ルーム』(存在が明らかなのに、それについては見て見ぬふりをせざるを得ないという厄介な問題のこと)を解決しないことにはどうしようもないという現実がそこにある。


その他のリスク編集

本記事でもたびたび触れているが、各国の国債の金利差は為替の変動に大きく影響する。そして金利の安い通貨は、通貨安が生じやすくなる。

日本国債は信用は高い分、比較的低金利でも通貨価値は守られてきたが、上記のようなデフレ対策のための大規模な金融緩和や、コロナ禍対策としての金融緩和を敷いていたところで、2022年に米国が政策金利を急激に上昇させたため日米国債金利差が一気に拡大し円安が加速。ここに海外投資家たちによる『円キャリートレード』(金利の安い円で借金して、その円を売って別の通貨のより利回りの良い金融商品を買う投機行動)による円安の掛け算が発生し、急激な円安とインフレが起きた。

円安それ自体は、日本の基幹産業たる自動車産業はじめ輸出で稼ぐ企業にとって物が売れるというメリットがあるが、短期的に急激に起きると労働者の収入の増加までのタイムラグにより庶民の生活は苦しくなる。加えて国内向けの商売が主力の企業にとっても悪い話である。


また低金利な国債発行が続くと、国内における安定的かつ効率的な資産運用の難易度が上がってしまうという点も見逃せない。世界第2位の銀行である農林中金は90年代から外貨建て国債で資産運用をするというリスクを負っていたが、想定外の急激な円安によってドル調達コストが金利を上回ってしまい、2024年に2兆円もの含み損を計上している。


このあたりに、国債が「ただの借用書」に留まらない難しさがある。


国債投資の注意点編集

上で述べてきたことを踏まえると、例えば同じ10年という期間でも、その間の政策金利の変動次第では、1年物を買い繋いでいくか10年物を持ち続けるかで利益に差が出る。そのためリスク・リターンのバランスを考えて、異なる期間の国債を分散して購入するのも一つの有力な買い方である。

広い残存期間のものを満遍なく同額づつ買い付ける(ラダー運用)、短期と長期を組み合わせて中期は買わない(バーベル運用)、特定の期間だけ集中して買う(ブレット運用)の3種類が代表的な運用法として知られる。


国の借金としての日本国債は前項目で述べてきた通りであるが、投資対象として見た場合の日本国債の旨味は良いとは言えない。個人向けの新発債は長期の10年債ですら、表面利率は税引き後で驚異のたった0.48%。3年債ならなんと0.22%である(いずれも2024年8月時点)。100万円を塩漬けにしながら毎年2200円の利子収入というのは投資としてはしょっぱすぎる。

しかし全く使いどころが無いわけでは無い。例えばこれをさらに下回る銀行預金の低金利(銀行にもよるが0.02%程度)に比べればだいぶマシではあるし、何より日本国債は前述の通りデフォルトリスクが極端に低い。またペイオフ制度(預金保険制度)における預金の保証枠は1000万円なので、それを超える分を日本国債に替えてしまうというのも意義がありそうだ。このように資産を増やすためというよりは、守りをさらに固める手段として一考の余地はある。


ただ資本主義経済が経済成長、つまり長期的に緩やかなインフレを目指すという前提に立つと、できればインフレ率を上回る金利の国債が望ましいかもしれない(デフレに備えるためならこの限りではない)。


海外に目を向けると新興国では10%を超えるものがあるが、これはデフォルトリスクの大きい国の国債は、それだけの金利を乗っけないと誰も買ってくれないためである。しかも金利を乗っければ国の債務は大きくなるわけでもあり、加えて為替の不安定さまで考慮するとハイリスク・ハイリターンになってしまうので、上級者向けと言える。


国債投資で最も人気があるのは世界の時価総額の過半数を占める経済大国であり、世界の基軸通貨たるドルを有するアメリカである。その市場規模は2024年5月時点で4180兆円にも及ぶ(ちなみに日本国債の市場規模は2022年時点で108兆円だが、そのほとんどは日本銀行の売買によるものである)。

米国債は為替や市場の状況にもよるが年間利回りは3〜5%程度で過不足は無く、デフォルトリスクも非常に低く、それでいて市場規模は非常に巨大で流動性も非常に高く、国家レベルでもドル調達のために米国債は大量に購入されているので安心感は高い。

ただしドル円の為替レートの動きに注意をしないと、購入から償還までの間に円高に振れてしまった場合利益が大きく削られてしまい、最悪含み損を抱えることになる。また最近はドナルド・トランプ大統領の減税政策やコロナ禍後の金融引き締めのための利上げによって債務が肥大化し続けており、2023年に米国債の格付けは一つ下げられている。米国債のデフォルトは、日本国債のそれ以上に世界経済を破滅させるリスクがあるため、無理やりにでもデフォルトはさせないはずだが、一応リスクが完全にゼロというわけではないことは押さえておきたい(ちなみに大昔のことだが、アメリカは1789年と1933年にデフォルトした歴史がある)。


売却リスク編集

国債のみならず債券全般に言えることだが、投資信託での購入には気をつけたい。基本的に償還の概念が無く、自分から売却をしないと元本が返ってこないためであるが、しかしこの売却タイミングが難しい。債券は自国通貨建であっても諸外国の金利差や為替、景気なども加わって複雑な値動きをするため、購入と売却のタイミング次第では簡単に損失を出してしまうのである。


また投資信託でなくても、換金するために市場で売却する場合も同様である。特に償還までに人生の半分を費やすことになる超長期国債は、将来に対する不確実性を鑑みれば償還まで持ち切るのは現実的とは言えないので、売却を常に意識しながら所有する必要がある。そのためうっかり高い利回りに釣られて手を出しても、窮余の際に売却した結果、利払い込みで良くてトントンか、最悪の場合マイナスが出る、というリスクは短期債よりも高くなる。

手堅くプラスにするつもりで買って、結局マイナスを出してしまうのは本末転倒と言わざるを得ない。


「国債だから元本割れは滅多にしない」というのはいわゆる"生債券"を償還まで持ち切る場合の話で、投資信託で買う場合や途中売却する場合についてはその限りではない。十分注意されたい。


いっそのこと最初から売買差益狙いで購入するのも手だが、国債の価格は株式のように青天井で成長するわけではなく、基本的には金利とデュレーションの範囲でしか上下しない点には注意が必要である。


投資を少し齧った人からは「株式と逆の値動きをするから保険として買うべき」と言われることもあるが、実際には逆の動きをする、と言い切れるほど逆相関になっているわけではない。しかも環境や下落要因によっては株式といっしょに下落してしまうことも多いため、保険と言い切るには少々心許ない。

上で述べた通り中短期での値動きの範囲は限定的なため、「株式だけを買うよりも、国債を組み合わせた方が資産全体の値動きはマイルドになる」というのが表現としては正確である。


英語表記編集

債券は英語でBondとなる。

そして日本国債は『Japan Government Bond』、略してJGBと呼ばれることもある。


では米国債はAGBやUGBかと思いきや、Treasury(米財務省)の頭文字からT-Bond(トレジャリー・ボンド)となる。

なお業界では1年以下の米国割引債はT-Bill(トレジャリー・ビル)、2〜10年の米国利付債はT-Note(トレジャリー・ノート)、10年以上の米国利付債はT-Bond、と呼称が分けられている。


注意事項編集

本記事は国債の説明を目的に作成されたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。

またその正確性、完全性に対する責任は負いません。


pixivにおいて編集

日本の国債について風刺画風刺漫画として扱ったイラストが多い。

関連項目編集

経済 国家 借金 債券


キャプテン・アメリカ グーフィー:アメリカ国債購入を宣伝したことがあるキャラ


外部リンク編集

国債 - Wikipedia

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