概要
一般に高額商品を購入するにあたって一括払いだと購入できない場合、金利を上乗せしたうえで分割払いで購入する方法がある。これがローン[や[借金]]と呼ばれるものである。
しかし慢性的なデフレに悩まされる現代日本では給与所得が低迷する一方で高額商品の価格上昇が続いてしまい、通常のローンだと支払い1回当たりの負担が大きすぎて、ローンそのものを組みづらくなってしまっていた。
そこで1回当たりの支払額を抑える新たな方法として、数年後のその商品の売却価格(残価)を算出し、本来の価格から売却見込価格を差し引いた差額をもとにローンを組む残価設定クレジット(残クレ)が誕生した。
たとえば300万円の商品を60回の分割払いで購入するとした場合(わかりやすいよう利息等は考慮しない)、通常のローンだと300万円を60回で割った月5万円の支払いを要求される。しかし残クレの場合5年後に180万円で売却すると見込んで、購入価格から売却見込価格を差し引いた差額120万円をもとに60回で割ることから月々の支払いは約2万円済む。
つまり形式上では月3万円も安く手に入れることができることから、新品購入の心理的ハードルは大きく引き下げられることになった。
メリット
購入者側のメリット
- 月の支払いを安く抑えて新品を購入できる。
- 買い替えの周期が決まっている場合、残価保証のあるプランを選べば、売却時の損失を抑えられる。
販売側のメリット
- 多くの販売店で課せられている新品販売のノルマを達成しやすくなる。
- 自動車の場合は購入した販売店のメンテナンスパックとのセットである場合が多く、この場合は素性の分かっている良質な中古車を入手しやすくなる。またメンテナンスパック分の収益も発生する。
- 予め設定する残価は、顧客の納得の範囲で販売店側が自由に決められる。
- 実際の売却時の査定額も、ある程度販売店側が決められる。
問題点
今となってはだいぶ普及が進んでいる残クレであるが、実態としては購入者にとってデメリットのほうが大きいとされている。
- 所有権は販売店(または信販会社)にあり、利用者はローン期間終了後に売却価格分を支払わない限り自分の所有にならない。つまり販売店または信販会社の許可がない限りカスタマイズはできないし、当然勝手に売却することもできない(売却可能の場合もある)。中には商品価値安定のため利用制限があり、制限を超過した場合追加料金を求められることもある。
- 売却価格はあくまで見込であり、実際の売却時に商品価値が下がった場合、追加差額を一括して支払わなければならない。一方で見込より商品価値が上がっていた場合でもその利益は所有権のある販売店のものとなり、利用者に還元されることは一切ない。残価保証プランを設定してくれている場合もあるが、実際にその保証価格で売却できる条件が限られていることも多い。
- 残価判定は販売店が行なうため、良心的な販売店を除き理由をつけては残価を低く見積もられて差額を上乗せされることが多い(中古屋査定のほうが高くても所有権は販売店にある以上、このような交渉もできない)。
- 所有権は販売店にあることから、販売店が指定した保険やサービス利用が必須になる。当然割高で、結局通常のローンと変わらない金額になるケースもある。
- 金利は本体基準であって、差額基準ではない。たとえば金利5%で30万円の商品を1年後20万円で売却すると見込んだ場合、利息額は差額の10万×5%=5000円ではなく本体価格の30万×5%=15000円が上乗せされる。また残クレは販売側が系列に持つ金融会社のプランであり、一般に金利自体が銀行系ローンより高めに設定されることが多い。
- 途中解約をする場合、違約金や各種手数料を請求される場合がある。
- 損傷や故障等の修理は当然利用者負担である。当然修理によって商品価値も下がるが、販売店によっては実際の差額以上の支払を吹っ掛けられることもある。
- 自動車の場合、自動車税や車検費用は利用者負担である。
- 盗難に遭った場合も支払いを免除されることはなく、支払期間終了後残りの金額を一括して支払わなければならない。
これらデメリットを説明しない販売店が多く(もしくは契約書に小さく書かれている文言を盾に、「説明済み」と主張するケースもある)、残クレ利用後にトラブルになるケースが後を絶たない状況になっている。
残クレで販売するケースが多い例
元々は自動車販売用であったが、次第に対象が拡大している。
残価設定クレジットの別名
残価クレジット設定は以下の別名が存在する(残価設定「型」としているものもある)。内容はほぼ同じである。
- 残価設定ローン(金融機関がよく使う名称。)
- 残価設定プラン(自動車ディーラーがよく使う名称。クレジットやローンという名前を使わずにプランとすることで借金のイメージを和らげている。)
- 携帯電話キャリアは残価設定という名称を使わず以下の名前を使用している。