※本記事は、劇場アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の重要なネタバレ情報を含みます。
「お主、死相が出ておるぞ」
「何を見ても逃げるでないぞ?」
CV:関俊彦
概要
TVアニメ6期のエピソード0として2023年に公開された映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の主人公で、幽霊族の末裔の男。
かつては妻と共に幸せに暮らしていたが、ある日妻が失踪したため、その行方を追って各地を放浪していた(ゲゲ郎の妻を知る龍賀家次男・孝三が心身喪失したのが10年程前との発言がある為、少なくともそれ位の時間は経過していると思われる)が、知己からの情報を得、妻の気配を追って哭倉村へと向かう。
劇中クレジットおよび映画公式サイト上での正式なキャラクター名は“鬼太郎の父”となっており、つまり後の目玉おやじである(そのため、TVアニメ6期以前の詳細については『鬼太郎の父』の記事を参照)。
このゲゲ郎というあだ名も、彼の姿を見たどこかで見た事がある少年が「ゲゲッ!?」と反応した事から、相棒の水木に付けられたものである。
人物像
一人称は現在と変わらず「わし」の老人口調。常に冷静沈着、博識と聡明な見解を兼ね備えているが、そして何よりも妻に関する事となると良くも悪くも人が変わるベタ惚れの愛妻家。平和主義で、不必要な争いは好まず、礼儀作法も弁えている。子供には優しく、時弥の事も「トキちゃん」と呼び可愛がっていた。
いかにも人ならざるものらしく、普段は達観した様子で物事を語るが、水木との運命的な出会いによってその姿勢も大きく変化する様になる。
実は中々の泣き虫であり、感極まったり酒に酔うと直ぐに泣いてしまい、妻からも「泣き虫」と言われる程。
またこの頃から風呂好きだったらしく、水木の監視の目を盗んでした事は天然の露天風呂に浸かる事だった(知り合いの妖怪から情報収集するという目的もあったが)。
回想によると、かつては幽霊族を迫害した人間を憎み嫌って関わらない様に生活していたが、妻となった人間を慈しむ幽霊族の女性の影響で、人間とも付かず離れず程度の交流をする様になった。
そのためか、都会で社交的に暮らしていた妻とは対照的に、長らく人里から離れた山奥で原始的な一人暮らしを送っていたと思われる節がある。
相棒「水木」の存在・交流
行方不明となった妻の消息を求めて、龍賀一族が支配する呪われし村『哭倉村』を訪れる途中、夜行列車の中で水木と出会う。
その後、目的地に着いて早々に哭倉村の権力者である龍賀家長男殺害事件に遭遇し、村内を探る怪しい余所者として連続殺人の容疑をかけられる。
捕縛された上で私刑により殺されそうになり、その事態に驚いた水木が思わず割って入った上でその場にいた克典にとりなしを頼んだため、監視と称して厄介払いされた水木共々、長田家の座敷牢へ放り込まれた。
野心塗れかつゲゲ郎を怪しむ水木と、元々人間を好いていなかったゲゲ郎では当然互いに信頼など無く、東京の話を聞きたがる時弥に明るい話ばかりする水木をゲゲ郎は「お為ごかし」と馬鹿にして彼を鼻白ませ、更には水木の口八丁に騙された事から初めは互いに険悪ムードだった。
そのため当初は水木に対する軽蔑から、「大人しくしていろ」という彼の頼みもまるで無視して気ままに行動していた。
しかし、危険だという禁域に向かうゲゲ郎を案じ水木が慌てて追いかけてきた事、逆にその水木が凶暴化した妖怪に襲われるところをゲゲ郎が助けた事をきっかけに、2人は手を組む事となった。
相棒となってからは、水木の良くも悪くも素直な人柄を知り、2人は本心を語り合う内に少しずつお互いに信頼を寄せていく。
容姿
愛息の鬼太郎とは一見瓜二つで、人間の犬歯にあたる部分には短い牙が生えており、四白眼を持つ。ただし、毛先がバサバサとした白髪で、耳を出しているのが大きな違い。
また、長身痩躯により飄々とした雰囲気が醸し出されているが、これはバディとなる水木と並んだ時に互いの個性が映えるよう、当時の平均的な日本人男性である水木の身長・体格に対してひょろりすらりとした身長・体格に設定されているためである。
服装は次縹(つぎはなだ)色の着物を着用しており、履物は下駄。先祖代々伝わる家宝として『霊毛組紐』を左手首に巻いている(下部画像参照)。なお髪に隠れて見えにくいが、両目とも存在している。
デザインコンセプト
『ゲゲゲの謎』はTVアニメ6期の前日譚として制作されたが、大人向けのホラーにしたいという監督の要望により、14話『まくら返しと幻の夢』に登場する夢の世界での大きな瞳を持つデザインから、水木しげる作品で多用される丸い目のデザインへと変更された。
この新たなデザインについて、キャラデザインの谷田部透湖は「(水木しげるによる)丸い目は、可愛らしさ、格好良さ、不気味な恐ろしさの全てを表現できる」とし、ゲゲ郎は「イケメンではないが色気がある男」であり、作画でもこの点を重視するよう依頼したという。
戦闘能力
基本的にはリモコン下駄や体内電気、髪を伸ばして敵に巻き付けるなど、息子と同様の能力を用いる、が息子と比べると荒々しい。特に身体能力は木製の柵を一瞬で握り壊せる程のパワーの他、多数の相手を翻弄するスピードなど凄まじい物がある。
- この場面は迫力を出すために、エースアニメーター太田晃博による手描きで制作された。太田はアクションシーンを自ら演じて撮影、その動画を基にして描き上げたという。モップを振り回しての大立ち回りであったらしい。
関連イラスト
関連動画
関連タグ
目玉おやじ 鬼太郎 鬼太郎の父 鬼太郎の母 水木(鬼太郎誕生ゲゲゲの謎)
夫として、父としての選択(ネタバレ注意)
※以下、映画本編の重大なネタバレを含みます。まだ視聴していない方や、ネタバレが嫌な方はスクロールする事をお勧め出来ません。
妻の行方、『M』の秘密と、互いの求めるものがこの村にあると睨み、手を組むよう持ち掛ける水木、「何を見ても逃げるでないぞ」と告げた上で承諾するゲゲ郎。本心を語り合う仲になった二人は、ついに村の秘密に辿り着く。そこには龍賀一族…すなわち欲深き人間の業と、そのダシに使われた幽霊族達の怨念が渦巻いていた。
そして、その怨念が妖怪狂骨となって哭倉村の奥地で蠢いており、相棒となる水木と共に狂骨を鎮めつつ、妻失踪の元凶となる黒幕を迎え撃つ事になった。
結末
闘いの最中に黒幕の時貞が放った言葉から妻の行方を知ったゲゲ郎だが、既に血桜の養分として吸収されつつあった。
そのため、時貞の相手を水木に任せつつ自身は妻を救出し、漸く再会でき、更に彼女が子供を身ごもっている事を知って束の間の喜びを噛みしめる。
しかし、水木が時貞を倒すために呪具を壊した事で、制御を失った狂骨が暴走する。このままでは日本中が漏れ出した狂骨の怒りと怨念によって滅びるため、ゲゲ郎は「自らが依り代となって狂骨の怒りや怨念を受け取める」事を決意する。
そして…、
「友よ、お主が生きる未来……」
「この目で見てみとうなった!」
こう水木に告げると、妻と腹の中の子、霊毛ちゃんちゃんこを彼に託し、再会を約束して別れる。しかし膨大過ぎる怨念を受けきれず、その体は腐り、醜く崩れてしまった。
「我が子よ……」
後日譚
彼のその後は、終幕後のスタッフロールにおいて、原作『墓場鬼太郎』のエピソードを取り込んだセリフのないカットで語られる。
- 崩れる全身に包帯を巻き、古寺で愛妻と2人、隠れる様に生活するゲゲ郎。
- 何かに導かれる様に古寺を訪れるが、村での記憶を失っているためゲゲ郎が分からず逃げ出してしまう水木と、追いすがるゲゲ郎。
- 息を引き取った夫妻と、妻の遺体を埋葬する水木。我が子を案じる執念から、目玉のみの姿となって見守り続けるゲゲ郎。
そしてスタッフロール後のラストシーン、墓から自力で這い出して来た赤ん坊の鬼太郎と、何かを悟った様に鬼太郎を優しく抱きしめる水木。ゲゲ郎はその姿を、遠くから見守っていた…。