みなさんお元気ですか?
みなさんおげんきですか
走行中のセフィーロの助手席から井上陽水が窓を開けて「みなさん、お元気ですか?失礼します」と言うだけの内容。
そのシュールさとインパクトの強さから志村けん、「仮面ノリダー」内の石橋貴明などの芸人や当時のギャグ漫画でもパロディにされた。
後述通りこのセリフ付きのCMが流れたのはほんの短期間にもかかわらず当時の多くの視聴者の記憶に焼き付き、長きにわたり井上陽水を象徴するセリフとして扱われている。
それから約30年後のCOVID-19による世界中が自粛体制にあった2020年にも、本人が「みなさん、お元気ですか。僕は元気です。(高齢者だけど)笑」とメッセージを残している。
タモリからも「あれほど珍しい車のコマーシャルはない」と言わしめたこのCMはどのようにして作られたのか。
国民が裕福でお金に困ることがなく日本がバブル景気真っただ中だったこの時代、食・睡眠・遊びを徹底し気ままに生きていこうというコンセプトのもと、セフィーロに「くうねるあそぶ(食う・寝る・遊ぶ)」というキャッチコピーが作られる。そしてこのコンセプトを定着させるにあたって最もふさわしいと白羽の矢が立ったのが自由奔放な性格で知られる井上陽水で、「あえて本人が車を運転せず、助手席から窓を開けて何か言うだけ」というスタイルが誕生した。
本人も「(日産自動車からオファーが来た時)『これはいいなあ』って思ったんですよ」と当時を振り返っている。
なお、この時井上陽水はすでに40歳の初老だったが、当時一度も自動車の運転免許を取得していなかった。自動車に興味を持ったのはその直後だという事で、学生時代に取ったバイク免許の再取得と同時に自動車免許を取得している。
だが、CM内でこのセリフが聞けたのはほんの短い期間だけだった。この時期、昭和天皇の容態が悪化し、危篤状態(翌年1月7日没、元号が平成に変わる)だったために「天皇が大変な時に『お元気ですか』とは何事だ」と難癖を付けてきたクレーマーが出てきたためである。このため、井上陽水のアドリブがカットされたバージョンに差し替えられる事態となってしまった。
当然アドリブに悪意は微塵もない。このような「不謹慎狩り」ともいえる事態になったのは、当時の天皇陛下に忖度しすぎるあまりの自粛ムードの異常さによるものが大きい。
ついでにとんちんかん:こちらは天皇関連の自粛で打ち切りになってしまった。