概要
両人ともいわゆるお嬢様学校、「月ノ森女子学園」に通っており、同学園の一年生で結成したバンド「Morfonica」に所属している。八潮瑠唯はバイオリンと作曲を、倉田ましろはボーカルと作詞を担当している。
るいましは2020年にMorfonicaがデビューして間もなく注目されたカップリングである。そのデビューから一年後、2021年にガルパで公開されたMorfonicaのバンドストーリー第二章に当たる「fly with the night」において大きな関係性の進展を見せた。
二人の人物像を簡単に紹介しておきたい。
八潮瑠唯は感情を表に出さないクールな性格である。論理と効率を重んじ、感情に流されることを嫌う。大人顔負けの冷静さを兼ね備えた高校生離れした人物である。身長や体つきを見ても高校生とは思えない。
好物は白玉ぜんざい。ガルパのエリア会話を始めとして、様々な会話から白玉ぜんざいにかける思いが垣間見える。
瑠唯とは正反対に、倉田ましろは子どもっぽい性格をしている。嫌なことから逃げることもしばしば。嫌いな食べ物は「ほうれん草、グリンピース、にんじん、子どもが嫌いな食べ物は大体苦手」と紹介されている。
ましろは繊細な感受性を持った人物でもある。それだけに感情に揺さぶられることの多い人物であり、感情を表に出さない瑠唯とは正反対である。ネガティブ思考に陥りがちになるというマイナス面がある一方で、その感受性は作詞に大いに活かされている。ましろの憂鬱や希望は幻想的で美しい歌詞に昇華され、Morfonicaに欠かせない要素となっている。
大人っぽい瑠唯と子供っぽいましろ、感情に流されない瑠唯と感情に身を任せるましろ。
非常に対比的な関係であると言えるだろう。
身長についても、瑠唯は169cmであり、ましろは154cm。るいましは身長差カップリングとしての側面も持っている。
軌跡
出会い――Morfonica、輝く世界へ
瑠唯とましろの出会いは月ノ森女子学園の庭園。生徒会役員の瑠唯は教室使用の届け出の不備や「騒音」の苦情をMorfonicaメンバーに伝える。その後、瑠唯は生徒会の仕事としてMorfonicaの練習に立ち会うようになった。
ちなみにこの頃の呼称は、「八潮さん」と「倉田さん」である。「倉田さん」という呼び方は変わらないが、「八潮さん」はやがて「るいさん」へと変わる。
瑠唯とましろが二人きりで会う機会が訪れる。
ましろがバンドをやめた後のこと、二人は廊下でばったり出会う。そこでましろはバンドをやめるに至った経緯を瑠唯に話した。
瑠唯は「先が見えないものなら見切りをつけることは正しいわ」と言って、ましろの脱退を肯定する。瑠唯自身も幼い頃から習っていたバイオリンをやめている。コンクールでトップになったことはなく、自分にはバイオリンの才能がないからやめたのだと瑠唯は語った。正反対に見える二人だが、音楽をやめるという行動は一致している。
その後、ましろはMorfonicaに復帰する。
瑠唯は「わからないわね。あえて先の見えない道を選ぶなんて」とましろの選択を不思議に思い、才能がないのに音楽を続ける選択を「現実より感情を優先したということよ」と否定的に捉えている。
しかし、感情を優先した先にあるものを探すため、瑠唯はMorfonica加入を決める。感情より現実を優先すべき、自分の才能に合ったもので勝つべきという考えは変わらないものの、瑠唯は再びバイオリンを手に取る。
感情を優先するましろ、現実を優先する瑠唯。二人の物語がここに始まった。
瑠唯の歌詞——新たな旅立ちのアインザッツ
七深とましろがバナーを飾った本イベントだが、瑠唯とましろの関係性にも注目したい。
バンドとして目標にしていたライブハウスCiRCLEでのライブが決まり、新曲を作ることになったMorfonica。ところがましろは憧れのステージを控えて緊張してしまい、歌詞を書けなくなってしまう。広町家のアトリエでお泊り会を開催することになり、ましろ以外のメンバーも作詞に挑戦する。
「五人でモニカだからね」という七深のアドバイスに助けられたましろは一夜にして歌詞を完成させた。
その歌詞に瑠唯の歌詞が使われた。
瑠唯の歌詞は透子に「読んでて全然ワクワクしない」「景色の説明とかは細かく書いてるけど、全体的に何を言いたいのかよくわからない」と批判されてしまう。瑠唯も「桐ヶ谷さんの言う通りね。よくない歌詞だわ」と歌詞の不出来を肯定している。
ところが、ましろはサビ部分の歌詞を読んで目の前に景色が広がったという。
「キラキラ星が輝く世界の先に、もっとキラキラ輝く世界があって、私はそこに向かってる
そんな私の周りには、たくさんの流れ星が流れていて――」
七深は「次の旅立ちが始まるイメージが伝わってくるね」と言葉を添えている。具体的にどのような歌詞だったかは不明だが、星が輝く景色の描写や「旅立ち」という言葉はイベント楽曲「ハーモニー・デイ」の一番の歌詞を彷彿させる。
その後、自分の歌詞が新曲に使われたことを告げられた瑠唯は驚く。もっとも表情に変化はないが、本人曰く驚いたらしい。
「自分が無駄だと思っていたものが役に立つとは思っていなかったから
無駄の中にも、役に立つものがあるのね」
瑠唯が無駄だと思って切り捨てたものをましろが丁寧に拾い上げる。そんな関係性がほのかに見えてくるエピソードだ。
近づく距離――調和と変化のアナリーゼ
このストーリーで描かれるのはるいましの関係というよりは、瑠唯とメンバーの関係である。瑠唯が他のメンバーを、他のメンバーが瑠唯をそれぞれ深く理解していることが伝わってくる。
ストーリーでは、いつの間にかお互いの癖や好みを知ったMorfonicaの様子が描かれている。つくしと透子が瑠唯の好みを把握して紅茶を買ってくるのだが、ましろは瑠唯が好きなみたらし団子を買ってきている。
見逃せないのはましろが瑠唯のバイオリンの音色について語る場面である。
ましろは瑠唯のバイオリンについて「歌ってる時、るいさんのバイオリンが聴こえると落ち着くんだ。光の音符が、私の歌声を導いてくれる気がして」と語っている。本イベントでは瑠唯がピアノ奏者の橘先輩と演奏会に出るが、その橘先輩もまた「Morfonicaで弾いていた時は心地よい音だった。みんなの音に寄り添って、導いているように聴こえたわ」と瑠唯の音を評した。
イベント楽曲「Sonorous」はバイオリンが特徴的な楽曲に仕上がっており、歌詞の最後には「やさしくてなんて心地良い音」という言葉が入っている。作詞が倉田ましろであることを思い出すと、より味わい深く楽しむことができる。
あなたのようになりたい――fly with the night
バンドストーリーの第二章に当たる。瑠唯がMorfonicaを脱退する衝撃的なストーリーだ。その脱退理由は、瑠唯が感情を優先した先にあるものを探そうとしてMorfonicaに加入した第一章と繋がっている。
「感情を優先した先にあるもの
そこにあったのは『うぬぼれ』と『自己満足』よ」
脱退を告げて練習場所のアトリエを出ようとする瑠唯の腕を掴んだのはましろだった。
「嫌なところは直すから辞めないで」「輝く景色を一緒に見ようって約束したよ……?」とましろは瑠唯を引き留めようとするが、結局瑠唯は部屋を出て行く。ましろはショックを受けて学校を休みがちになってしまい、クラス内の発表会ではスピーチを最後まで読めずに終わってしまう。
ある日の夕暮れ、ましろと瑠唯は偶然にも河原で出逢う。ましろは瑠唯の脱退のせいでスピーチがうまくいかなかった、学校に行きたくないと言うが、瑠唯は「あなたの好きにすればいいでしょう」とにべもない反応を返す。
ましろは「……るいさんはいいよね。人望もあって頭も良くて才能もあって……私が持ってないものを全部持ってる」と瑠唯を羨む。
「私もるいさんみたいに生まれたかった」
「私はるいさんみたいに大人じゃないよ」と気持ちを吐き出すましろ。それに対して瑠唯は「……私はあなたが思うほど大人じゃないわ」とニュアンスのある言葉で応じる。
やがてましろはつくし達の言葉によって立ち直り、夕暮れの生徒会室で瑠唯と二人きりで対面することになる。二章の中でも屈指の名場面である。
瑠唯はバイオリンをやめた過去について語った。どれだけ音楽に没頭しても評価されなかった結果、瑠唯は感情よりも現実を優先するようになり、バイオリンをやめた。
冷静に過去を振り返る瑠唯にましろは優しく言葉をかける。
「るいさん、大好きなことで傷つくのが嫌だったんだね」
その言葉を聞いた瑠唯は目を見開いて驚く。一見冷静で感情に身を任せないように見える瑠唯の気持ちをましろは正確に見抜いたのである。瑠唯の音楽への想いを見つけることができたましろの言葉は
悔しさや失望があってもバンドを続けるのはなぜ?
瑠唯がそう訊くと、ましろは「自分を信じたいから」と答える。一方で瑠唯は今も昔も自分を信じられていない自分自身を振り返った。「るいさんは自分を信じてあげられる自分になりたくない?」とましろが瑠唯に問いかけると、瑠唯は再び目を見開いて「あなたは自分を信じることができるのね」と寂しげな言葉を零す。
瑠唯の気持ちに寄り添うようなましろの言葉は瑠唯の胸の奥深くに届いたようだ。
最後に瑠唯はMorfonicaに帰ってくる。その時、瑠唯は音楽への気持ちを肯定できなかった自分を、自分を信じられなかった自分を振り返ってこう言った。
「もし、なりたい自分があるのだとしたら……
倉田さん、私はあなたのようになりたい」
感情を肯定できなかった瑠唯にとって、感情を大切にしているましろは大きな存在になった。一方で二章のイベントストーリーを通じてましろは瑠唯の秘められた想いを見つけ、寄り添うことができた。二人の関係性が大きく動いた切なくも温かい第二章。イベント楽曲「fly with the night」と共にるいまし推しの胸に深く刻みつけられた。
ましろが瑠唯にしがみつく――あたしのためのカデンツァ
るいましの関係性が如実に表れたストーリーではないが、バナーにるいましが映り込んでいるので触れておきたい。
バナーは透子が主役だが、その後ろのガラスに映り込んでいるのは瑠唯の腕に抱きつくましろ。イベントストーリーによれば、百貨店の入口に設置してあるライオンの像にましろが驚き、瑠唯にしがみついたらしい。尊いことこの上ない。
瑠唯のさりげない優しさに触れて――アニメ「Morfonication」
これはイベントストーリーではなく、アニメ作品として配信・放送されたものだ。
「昔と変わっていない」とかつてのクラスメイトに言われたましろは、その言葉をマイナスに捉えてしまい、歌詞が書けなくなってしまう。
Morfonicaはましろの作詞を応援するために夏休み中の月ノ森女子学園で合宿を開催することに。
場面は月ノ森の図書室。瑠唯は一冊の本をましろに手渡す。タイトルは「作詞のための音楽理論」。瑠唯なりにましろの作詞を応援しているのだろうか。言葉や表情には表れない瑠唯の優しさは行動で示されるのかもしれない。
その後、歌詞がうまく書けないましろは合宿から逃げて部屋に引きこもるが、花火のためにやって来た河原でメンバーと和解する。ましろは号泣しながら七深とつくしに抱きついていた。
瑠唯は涙が止まらないましろに近づき、「倉田さん」と心なしか優しい声で呼びかける。瑠唯は微笑みながら、一本の線香花火をましろに差し出した。ましろはその線香花火で再び空想の世界を創り出す。
瑠唯からましろに向けられたさりげない優しさが胸に沁みる。