概要
『エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~』(エイルン・ラストコード かくうせかいよりせんじょうへ)は、東龍乃助による日本のライトノベル。MF文庫Jより、2015年1月から刊行されている。
特徴としてロボの活躍シーンを連続挿絵化という独自の掲載方法をとることによってより躍動感のある表現を展開。
また、
- みことあけみ(イラスト・メカデザイン)
- 汐山このむ(メカデザイン)
- 貞松龍壱(ロボ作劇・メカデザイン)
と、デザイン担当が他よりも多いのも特徴。
『このライトノベルがすごい!2016』では新作ランキングの第1位、作品ランキング第4位を獲得した。
2019年からコンプエースでのコミカライズが始まる予定。
あらすじ
西暦2070年。人類が謎の敵性生物「マリス」から襲撃を受けて億人単位の犠牲を出しながら半世紀以上の年が流れた。マリスに対抗できる巨大兵器「ネイバー」の一つ、デストブルムのパイロット・セレンは日本での絶望的な戦いに精神を疲弊しきっていた。そんな戦いの日々が続くある日、所属不明の謎の戦闘機が出現。この世界には存在しない技術体系による兵器でマリスを蹴散らす。だがこの戦闘機から出てきたのはこの世界での大人気アニメ「ドール・ワルツ・レクイエム」の登場人物・エイルン・バザッドにそっくりの少年であった。
主要人物
- エイルン=バザット / 氷室 夏樹
本作品の主人公。18歳。作中世界でアニメとされているもう一つの世界から愛機であるエルフィーナと共に突如転移してきた少年。アニメの世界では主人公ではないが重要なサブキャラクターという位置付けのキャラで、劇中劇のアニメファンからは実力こそ主人公に引けを取らないがここぞという所で実力を発揮できず、見せ場を主人公に譲る場面の多いかませ犬伝説キャラとして知られており、世界を転移してからは便宜上、氷室夏樹と名乗っている。
筋肉繊維の95パーセントが人為的に強化された人工筋肉、骨は鉄以上の強度を誇る進化殻骨格、感覚器官と神経系の伝達速度が敏化処理、内蔵の強度が強靭なゴム素材のように変質など、人体を構成するあらゆる部分が人工的に改造されており抜群の身体能力を誇る。また、感情が昂ぶったり、精神を集中させると毛髪と網膜の色素が赤色に変わり、身体能力を更に7.5倍に引き上げることが出来る。性格は堅物な優等生タイプ。融通が利きづらく自分が元いた世界の常識をこちら側の世界にも当てはめようとしてトラブルを起こすこともしばしば、特に元の世界では万年食糧難ゆえに食堂で暴動を恐れる・食事を粗食で済まそうとしてセレンに心配される姿も。
- セレンティーナ=エングヴィス
本作品のヒロイン。15歳。特別なヘキサであるネイバーフッドでフランス人。親しい間柄での愛称はセレンだが関係者からは特務と呼ばれることが多い。8歳の頃ヘキサを発症してしまうが父がそれを隠匿。14歳の時に日本の第弐富士へと亡命。数ヶ月は通常のヘキサとして生活するが二つ目の刻印がうなじにあることが後に発覚しネイバー・デストブルムのパイロットに選定される(通常ネイバーフッドの刻印は両手の甲にあるのだがうなじだったために発見が遅れた)。しかし本編開始の7ヶ月前、そのデストブルムが大事故を起こし彼女の精神状態が不安定なものとなり、身の回りの環境に暗い影を落とすことになった。寡黙で独特な言葉遣いをするほか、独占欲が強い。「シロ」と自身が呼んでいる白いアザラシのぬいぐるみをとても大事にしている。
- 一ノ瀬 葵
本作のヒロインの一人であるヘキサの少女。17歳。機兵部の二代目部長。元は第一独立小隊の隊長だったが、先代部長である神無木緑の死に伴い部長に昇格した。緑の代わりを務めるべく機兵部と、妹のように思っているセレンの命を守ることに全てをかけようとしているが部長という立場もあるためかみ合わないことも。性格は現場主義の姉御肌で管理の立場である紫貴と対立することも多い。兵器産業分野では氷室と双璧である一ノ瀬重工の重役を両親に持つ。以前は緑や紫貴と共に第四保管領にいたが氷室雷鳥の手引きで第弐富士に異動した。【テンナンバー】の一人「炎の一(フレイム・ワン)」。【ノンギフト】ではあるが卓越した戦騎装操縦の腕を持っており、戦騎装単機での戦闘が認められている。
搭乗機は当初こそ前述の緑の死をきっかけに別の機体を使用していたが、吹っ切れた後は再び【鬼灯】に搭乗する。
- 九重 紫貴
本作のヒロインの一人であるヘキサの少女。18歳。氷室義塾生途会会長。作戦中は地を出さないようにしているが、プライベートではコスプレをしたりグッズを収集したりするアニメオタク。義塾に入った当初の上手く周囲に馴染めないセレンとかつての自分とを重ね合わせ面倒を見るようになっていった。セレンに冷たい態度を取ることもあるが基本的に自身が泥をかぶるような策を使ってでもセレンを守ろうとする。
【テンナンバー】の一人「氷の九(アイス・ナイン)」。戦闘時、平常時共に氷室義塾の頭脳部分を仕切る、雷鳥の腹心の部下。10個先を見据えて動くことを信条としている。
専門用語
- マリス
「悪意」を意味する1999年9月9日にこちら側の世界108箇所に同時発生した災厄である敵性生物たち。人間の捕食を基軸としており、人の言葉を発しこそはするものの、獲物として見る言葉しか発さない。1999年から15年間は通常兵器と戦術で対処可能だったが、2015年にバース7と名付けられた最初のクイーン種7体が世界各地で出現し大被害をもたらす。その後、ヘキサ、ネイバーの出現によりそれらを利用し人類は一応の抵抗は行えているが未だ抜本的な解決方法を持つことが出来ていない。足を持って動いてる生物に見えるが、肉体構造の68%は植物と同様で、体内に莫大な栄養素を含んでおり、死んで土に帰ると120時間で植物が生えていく作用を持っている。
- ヘキサ
マリスに優先的に狙われる優先被虐対象者である人間。発症原因は不明。外見上の特徴としては右手の甲に文字通りの六角形の紋章を有していること。マリスに優先的に狙われるという性質から、各国ではヘキサを囮にする等して通常の人間を生かしている。そのためにヘキサへの人権弾圧は凄まじく、見つかったら即座に保管領送りになってしまう。ただ恩恵も存在し、身体能力や頭脳の強化などの様々な才能開花を発現する。個々人により何の才能が開花するかはバラバラだが大まかに分けて【能力変化分類(ブレイン)】、【身体変化分類(フィジカル)】、【複合変化分類(ハイブリッド)】の三つに大別される。何の変化もきたさない【無変化分類(ノンギフト)】も存在するが非常に稀なケースとされる。発症は若年層が多く20代後半から発症することはまずない。現在ヘキサの人権をまともに扱っているのは氷室義塾のみ。
- ネイバーフッド
紋章が二つある特殊なヘキサ。ネイバーの操縦はネイバーフッドでなければ不可能。ネイバー規格適合者とも呼ばれ、ネイバーの操縦適性がある者、又は現ネイバーパイロットの総称となっている。通常は右手に加えて左手に紋章が現れるが例外も存在する。被虐体質の優先度合いが通常のヘキサよりも強い。登録したネイバーに応じてヘキサの刻印の中にネイバーに対応した数字が刻印される。氷室義塾のセレンや英雄とされている武蔵以外のネイバーフッド達はネイバーを動かす部品としてのみ扱われているために、人格を抹消されたり不要と見なされたら即座に殺害されるということが通常となっている。
- 氷室義塾
静岡県東部の南方100キロ洋上に位置する、総人口7万人の巨大人工浮島、第弐富士に存在するヘキサ特別教導軍事学校。若年層ヘキサの育成と、マリス戦を専門にする戦闘組織。ヘキサの人権を認めるべく尽力しており、実際にここでのヘキサの扱いは外国や他の日本国内の保管領と比べてかなり良好なものとなっている。小・中・高(5年)の一貫制を採っており高等科制は適性判断の後に主に「戦闘科」と「非戦闘科」に分かれる。
氷室義塾内のヘキサの中でも規格外の才能を持つ10人はテンナンバーと呼ばれており、元々は身内の遊びで付け合った称号だったが戦闘等での実績により公的文書にも記載されている。
塾長は氷室財閥の総帥にして第弐富士の最高責任者である氷室 雷鳥。
- ネイバー
突如として世界の各所に現れた謎の兵器。本作のヒロインの1人であるセレンの機体デストブルムもこれの1種。
クイーン種を撃破することが可能なため、対マリス戦用機動決戦兵器として運用されている。2070年現在は11体までのネイバーが確認されている。数十年、数百年は科学を先進させなければ開発・製造できないような武装や機体スペックを有している。タロットカードの大アルカナに沿った番号が刻印されている。「ノルブリンカ」と呼ばれる核融合炉を凌駕するエネルギーを生み出す動力炉を搭載しており半永久的に自立稼動が可能。更にはスリープモードに入れば機体の修復を自動で行う超兵器。動力(とそれによる無尽蔵エネルギー)と自己修復機能は共通しているが外観、兵装、操作仕様、大きさや機体特性は各機体で大きく異なる。登録されたネイバーフッドにしか起動・操縦は出来ないが多くの機体は10個以上の登録スロットを持つ。(逆に一人しか登録できない機体も存在する)。ただし、一度ネイバーにネイバーフッドを登録すると当人の死亡以外スロットを開放させる手段が現在は見つかっていない。そのため、心身に異常をきたし戦えないと判断された場合、殺処分されることもある。どの国でも、ネイバーの運用はパイロットチームを編成するのが通例となっている。
- 戦騎装
正式名称は戦闘用騎乗型巨大装備。通略が【戦騎装】となる。米国では、Huge Battle Suit Equipment が正式規格名で【BS】と呼ばれる。2015~2016年、バース7大敗を契機に人類の劣勢が始まる。事実上の航空戦力の無力化も相まって、人類はマリスに対応できる兵器規格の必要に迫られる。多局面に対応でき、かつ多様性に富んだ作戦行動を可能にする戦術陸上兵器の形が模索され、現在の【巨大人型兵器】へと帰結していく。2015年にプロジェクトが本格化し、2017年に記念すべきファーストシーズン機体が随時、ロールアウトされていく。戦騎装開発はUN各国間の技術協力で開発が推し進められ、2022にセカンドシーズンが生まれるに至る。戦騎装開発にはネイバーの存在が大きく影響しており、セカンドシーズンが生まれるまでの2017~2022は、現代兵器水準が20年以上進歩したと専門家は言う。2030年にサードシーズン。2065年にフォースシーズン(現行規格)へと進化する。
- ドール・ワルツ・レクイエム
2066年から2068年まで放送され、現在は2期が放送中の大人気ロボットアニメで、要は劇中劇 。
本来なら単なる作中に登場するアニメ作品だったのだが、突如エイルンそしてシュプリームドール(同アニメの起動兵器のカテゴリ)の1機エルフィーナ・ルインレーゼが現れ、ネイバーに匹敵する性能を持つ上にネイバーと同じくクイーン種の撃破が可能というスーパーロボット故に大きな波乱となる。
実はこのアニメ、原作者は不明。あるアニメ会社に身元不明の脚本データが届き、それが面白かったために製作されたアニメであり、最期まで送られてくると作者と一切連絡が取れなくなる、それだけではなく、17話以降の外注ライター制作ではないオリジナルの脚本データには過去にマリスが引き起こした事件と作中の出来事にいくつか一致する部分があるというトップシークレット級の裏が存在する。
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Re:CREATORS:劇中劇の登場人物が現実世界に影響を及ぼすと言う類似箇所あり。