概要
ドストエフスキーの長編小説。日本では五大長編の中で罪と罰と並ぶ人気作品で、1879年連載開始、1880年単行本が出版された。数多くの日本語訳、メディア作品、関連書籍が発表されている。
人類文学史における最高傑作のひとつとも称され、特に日本の文化・文学・芸能に大きな影響を与えた作品であり、手塚治虫や黒澤明と言った歴史的文化人を初め、村上春樹と言った現代の作家ですらも未だにこの作品に影響を受けている。
ドストエフスキーの後期五大長編の中でも最後に執筆された作品であり、この作品の発表後にドストエフスキーは世を去っている為、ドストエフスキーの遺作でもある。
日本では2013年にフジテレビによって、舞台と登場人物達を日本に置き換えてテレビドラマ化された。
あらすじ
成り上がりの大地主・カラマーゾフ家は、当主フョードル・カラマーゾフの強欲で色好みな性格のために、父子の間では終始いがみ合いが絶えなかった。ただ一人、僧侶の道を歩んだ末息子アレクセイだけは、家族の和解を願っていた。そんな中、フョードルが何者かによって殺害される事件が起こる。兄弟全員に父を殺す動機がある中、それぞれが互いの心情を探り合いながら犯人探しが始まる。
三兄弟とその周囲の人々の愛憎と思惑が交差していく中、果たしてフョードル・カラマーゾフを殺したのは、一体誰なのだろうか────?
キャラクター
地主フョードル・カラマーゾフの息子たち。
3人ともお互いに性格が全く異なっている。
長男ドミートリイ・フョードロウィチ・カラマーゾフ(愛称はミーチャ、ミーチカ)は、フョードルの前妻の子である。退役軍人で、放埒で堕落した生活から抜けきれない直情型の性格をしている。父親とは一番仲が悪く、作中では女性を巡って争っている。
次男イヴァン・フョードロウィチ・カラマーゾフ(愛称はワーニャ、ワーネチカ)は、フョードルの後妻の子である。理科大を出た知識人で、合理主義・無神論を気取っている。しかし、中には完全に信仰心を捨てられない部分もある。
三男アレクセイ・フョードロウィチ・カラマーゾフ(愛称はアリョーシャ、リューシェチカ)は、フョードルと後妻の子である。修道僧で、純情で真面目な美青年である。神の愛によって肉親を和解させようとする。家族思いではあるが、時おりカラマーゾフ家特有の残忍な性格が見え隠れする。
フジテレビドラマ版
2013年にフジテレビによって放送されたドラマ版では、舞台と登場人物達を日本に置き換えられている。
カラマーゾフ家は黒澤家と変更されているが、これは恐らく本作に影響を受けたとも語る黒澤明へのオマージュも入っていると思われる。
長男は、黒澤 満(くろさわ みつる)。
次男は、黒澤 勲(くろさわ いさむ)。
三男は、黒澤 涼(くろさわ りょう)。
評価
内容としては表題の兄弟たちと父親間の確執を中心に物語が展開され、最大の特徴と言えるのが、ミステリー、哲学、恋愛、群像劇、兄弟愛、そして人生の悲劇と言った小説において様々な要素が詰め込まれていること。
その為文学の中でも特にジャンル分けの難しい作品だが、大まかには「三兄弟がそれぞれの視点から父親を殺した犯人を探し出す」というストーリーがメインとなるため、ミステリーものと解釈される事が多い。
とにかく多彩な要素が詰め込まれている為、並の腕前を持つ作家であれば収拾がつかない内容を上手く取りまとめてしっかりと最後まで書ききっている点は、人類史に名を残す文豪であるドストエフスキーの手腕あっての物であると言える。
ドストエフスキー自身は、構想として、三男のアレクセイを主人公に本作の13年後の物語を書くつもりであったが、それに対して周囲の人間が完成度の高すぎる本作での完結を望んだという逸話があり、その後にドストエフスキー自身が逝去したこともあって、結局構想は構想のままで終わった。
また、本作は単体での研究が行われるほど文学史において残した影響が大きく、村上春樹は「世の中には二種類の人間がいる。『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人と、読破したことのない人だ」と言い切っている。
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