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キャデラック・エスカレード

きゃでらっくえすかれーど

アメリカの自動車メーカー「ゼネラル・モーターズ」(GM)が企画・開発・製造し、「キャデラック」ブランドで販売しているフルサイズSUV。
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概要編集

1997年にフォードが自社の高級ブランド「リンカーン」で発売し、大ヒットを記録したリンカーン・ナビゲーターに対抗するべく、GMが刺客として送り込んだ大型高級SUV


派手な造形やメッキパーツをふんだんに使った豪華絢爛な見た目と、大排気量V8エンジンがもたらす高い走行性能で、アメリカのみならず日本や中国でも高い人気と知名度を誇る。


2000年代以降に、ジャンルの火付け役であったナビゲーターが皮肉にもエスカレードに大きく水をあけられた事も手伝って、エスカレードは世界的にも「メルセデス・ゲレンデヴァーゲン」や「ランドローバーレンジローバー」に並ぶ高級SUVの代名詞となっていった。


2010年代にはキャデラックのフラッグシップモデルを務め、2023年に同社が「セレスティック・コンセプト」を発表するまで事実上のアメリカ製最高級車として君臨していた。その頃は、かつて同社のエルドラドがそうであったように、「アメリカンドリームの象徴」としての呼び声が高かった。


「ワイルド・スピード」や「マトリックス」を始めとする創作物における出演も多々見られ、そのダイナミックな印象にそぐう悪役の車として登場する機会が多い。


なお、現行モデルは、2020年から販売されている5代目。


歴代モデル編集


初代(1999-2000)編集


1997年、フォードが自社のフレーム式ピックアップトラック「F-150」をベースとしてフルサイズSUVのエクスペディションを発表した。それをベースとして、並行して仕立てられた高級仕様を「リンカーン・ナビゲーター」として同社の高級ディビジョンであるリンカーンで販売した。これが見事に富裕層のアメリカ人の心を掴み、このジャンルのSUVとしては異例のヒットを記録した。


商売っ気のあるGMがこのブルーオーシャンを見逃す筈もなく、即座に高級SUVを企画。限りなくおいしいところを持っていきたいGMは、当時発売していた「GMC・ユーコン」をそのまま高級仕様に改造することで、早急にマーケットに自社製高級SUVを並べる事を目論んだ。


そうして僅か1年足らずで高級SUVを発売したのだが、あろうことかベース車であるユーコンの一グレード「ユーコン・デナリ」として、商用車向けブランドのGMCでそのまま発売するという暴挙に出た。


2002 GMC Yukon Denali

イメージは2代目ユーコン・デナリ


もっとも、ユーコン・デナリ自体はBOSE製ステレオシステムやレザー製のヒーター付きパワーシート、「OnStar」と呼ばれるテレマティクスシステムや、ウッドパネルといった豪華な装備を搭載するなど、外装部品から内装材に至るまでベースのユーコンとは一線を画しており、「なぜこれでキャデラックとして売らなかったのか」とアメリカ人が総出でツッコミたいところにGM自身がセルフツッコミをするかのように、1年後に満を持して発売した車こそが「キャデラック・エスカレード」だったのだ。


ただし、この初代エスカレードは、エンブレムをキャデラック・クレストに置き換えただけの、文字通りバッジエンジニアリングで生まれたユーコン・デナリそのもので、GMCとキャデラックといえば商用車ブランドと最高級車ブランドという真反対に位置するブランドだったこともあり、それはそれでどうなの?ということで「キャデラックのエンブレムが張り付いたGMC」とかなんとか言われたらしい。


因みに当時のエスカレードはユーコン・デナリより約3000ドル高価だった。


2代目(2002-2006)編集


2003 Cadillac Escalade


前作での暴挙を反省した(?)GMが2年越しに発表した真打。


ベース車こそ以前と同じユーコンだが、エンジンを始めとする多くの部品を専用設計とし、外観も21世紀のキャデラックのデザイン言語である「アート&サイエンス」に則った端正なものになった。内装もフルレザーは勿論、「ブルガリ」とコラボしたアナログクロックやウォールナットのパネルが使われた。


また、電装部品も進化しており、HIDヘッドライトや、デジタル式OnStar、「スタビリトラック」と呼ばれる車両姿勢電子制御システム、「XM サテライトラジオ」と呼ばれる衛星ラジオチューナーや、6連装CDチェンジャー、「DIC」と呼ばれるインフォメーションディスプレイが搭載された。


また、オプションでタッチパネル式のGPSナビゲーションや、左右独立のリアエンターテイメントシステムも選択できたりと、ベース車に対する大幅なアドバンテージを得て商品力を大きく向上し、キャデラックを名乗るに相応しい車となった。


派生モデルとして、この代からロングホイールベースのESVと、5人乗りピックアップトラック仕様のEXT、ESVを元に内外装を豪華にしたESV Platinumが設定された。


因みに、このジャンルの始祖にして、直接のライバルでもあるナビゲーターも、この年でモデルチェンジしている。


事実、この代のエスカレードが登場した2002年の販売台数は、エスカレードが約5万台に対して、ナビゲーターは約3万2千台であった。前年は両車共に約3万2千台であり、エスカレードのモデルチェンジを機に大きく差が開く結果となったが、これ以降もエスカレードはコンスタントに平均3〜4万台前後を売り上げているのに対し、ナビゲーターは特に大きく売上を伸ばすこともなく、特に2010年代以降は1万台を下回る年も出てきたりと、エスカレードに大きく水をあけられる結果となった。


因みにナビゲーターの最多販売年は1998年の約4万4千台である。また、2001年以降にエスカレードを販売台数で上回った年がない。


この代からは日本市場にも投入された。


3代目(2006-2014)編集


えすかれーどー


ベース車であるタホ・ユーコンのモデルチェンジに伴って、2代目の良さはそのままに、各部を大幅にリファインした。


2代目が採用していたGMT800プラットフォームは良くも悪くも古のアメ車としてのテイストが強く、大味な乗り心地や荒々しいエンジンの主張が強かったが、3代目が採用するGMT900プラットフォームはそれらに洗練度をもたらし、21世紀のアメ車としての立ち振る舞い方に方向性を持たせた。そういうわけで、基本的に2代目からキャリーオーバーされる部品はなく、パワートレイン、シャーシ、ボディ、内装の全てがやり直されている。


具体的に駆動系では、エンジンは6L V8からオールアルミ製可変バルタイ機構付き6.2L V8に、トランスミッションも4速ATから全段ロックアップ機構付き6速ATにそれぞれアップデートされ、最高出力403馬力、平均燃費約7km/Lを実現した。


足周りでは、オプションで最大22インチの大径ホイールまでに対応し、運転のダイレクト感に寄与する。後述するプラチナムに搭載される「マグネティックライドコントロール」はアクティブサスペンションに迫る応答速度で路面に合わせて柔軟に減衰率を変更できる。


他にも、リモートエンジンスターター、パワーテールゲート、トライゾーンエアコン、オーディオスイッチ付きのハーフウッドステアリング、メモリー付き14Wayパワーシート、2列目用シートヒーター、後席ラジオコントロール、プレミアムサウンドシステムといった、現在の高級車にも通じるモダンな装備が多数採用された。


この代に設定された「Platinum」は、専用大径ホイール、マトリックスヘッドライト、専用クリームグリル、リアエンターテインメントシステム、ナビゲーションシステム、温冷機能付きカップホルダー、バックビューカメラ、上級レザートリム、マグネティックライドコントロール、電動ランニングボードが搭載されるグレードで、先代とは違って標準ボディでも選択できる。


センシティブな作品

イメージはESVプラチナム


マイナーチェンジにより、2009年モデルからはE85のフレックスフューエルが使用可能になった。また、2010年モデル以降に搭載されるGM L94 V8では、「アクティブフューエルマネジメント」と呼ばれる新機構が搭載された。これにより、定速巡航やアイドリングといった低負荷時に燃焼する気筒を6ないしは4に絞り、より少ない燃料でエンジンを運転させる事ができるようになった。


この代のエスカレードは生産期間が長いこともあり、映画等での出演機会も特段多く、エスカレードと言われて多くの人が想像するのはこのモデルである事が多いと思われる。また、ピックアップトラック仕様のEXTが設定されたのもこの代までである。


余談だが、何故か2008年にハイブリッド仕様が販売された。価格はベース+1万ドルの約7万5千ドルで、燃費は約8.5km/L、システム最高出力は推定379馬力。さらに不思議な事に、2008年に販売されたエスカレードの二割はこのハイブリッド仕様とのこと。


また、プラチナムに設定されたマトリックスヘッドライトは、オバマ大統領の大統領専用車である「キャデラック・プレジデンシャル・リムジン」のヘッドライトそのものである。


4代目(2014-2020)編集


2018 Cadillac Escalade Platinum


2013年10月に、タホ・ユーコンに先立ってアンベールとなった。3代目のデザインを磨き上げて、ルーフまで突き上がるライトセイバーの様なテールランプや、縦長のヘッドライトといった、現在のキャデラックに繋がるアイコニックなデザインとなった。


内部の進化も見逃せない。エンジンはEcoTec3と呼ばれる第5世代シボレースモールブロックに移行。燃料の直噴化といった改良が行われ、燃費はそのままで出力を約20馬力向上させた。トランスミッションは発売直後の改良で8速に変更。電動可変パワーステアリングが搭載され、マグネティックライドコントロールも標準装備となったことで、ハンドリング性能が向上している。


エレクトロニクスの進化は目覚ましく、メーターは一気にフルカラー全面液晶になり、「キャデラック・ユーザー・エクスペリエンス」(CUE)と呼ばれるインフォテインメントシステムが備わった。また、年次改良で4G LTE通信アンテナやサラウンドビューカメラ、そしてレーンキープアシストが搭載され、高速道路ではアダプティブクルーズコントロールとの併用で一切の運転操作が自動となる(当然ハンズオフではないので、運転者は責任を持ってハンドルを握る必要がある)。同時に搭載されたセーフティシステムは、プリクラッシュセーフティやレーンディパーチャーアラート、ブラインドスポットモニターといった機能を備えており、ドライバーに危険が迫っていることを知らせてくれる。


内装は一部手縫いのセミアニリンレザーと本木目のパネルはそのままに、2列目用の独立エンターテインメントシステムに加えて、後席全体に向けられたオーバーヘッドモニターも備わり、ついに全席でAV(一応、オーディオビジュアルの略)が楽しめるようになった。ラゲッジルームにあるスイッチを操作することで、不要時には2・3列目を電動で格納できる機能が搭載され利便性も向上している。


キャデラックは2014年に15年ぶりにエンブレムをリファインしており、2016年モデルからは19代目のキャデラック・クレストがフロントグリルに鎮座している。


5代目(2020-)編集


センシティブな作品


2020年2月に発表。3代目CTSから始まった、縦長のドライビングランプを特徴とする最新の意匠を手に入れた。


歴代モデルの例に漏れず、確実に各部を時代に合わせてアップデートしている。大きなトピックの一つとして、エスカレード史上初のディーゼルターボエンジンの設定が挙げられる。流石のエスカレードでも時代の流れには逆らえず、環境性能で6.2L V8に大きくアドバンテージを持つ3L 直列6気筒ディーゼルターボエンジンが選択できるようになった。ディーゼル故に燃料は安価な軽油な上、燃費もV8に比べて30%程向上している。


V8自体は燃料噴射機構に僅かな改良が施されているものの、基本的に4代目からのキャリーオーバーと考えてもらって差し支えない。ATのギアは10段に増えた。


足回りでは、ついにリアサスペンションがマルチリンク式になり、四輪独立懸架を実現した。これにより、ハンドリング性能が向上するのみならず、ラゲッジルームや3列目の空間が広がったことで居住性も向上した。


室内には、このモデルチェンジの2つ目の目玉である、38インチ曲面有機ELディスプレイが搭載される。市販車に搭載されるディスプレイとしては世界最大で、車外から見るとキャデラック・クレストのイルミネーションの演出が拝める。キャデラックが「4Kテレビの2倍の画素密度を持つ」と主張する高精細ディスプレイはナイトビジョンを始めとする多彩な情報を表示でき、助手席側に位置するセンターディスプレイ部はApple Car PlayやAndroid Autoと連動することもできる。日本国内への正規輸入車(ディーラー車)では、ゼンリンと共同開発したクラウドストリーミングナビが表示できるが、本国仕様ではARナビゲーションも利用できる。乗車時にはエスカレードのロゴや、専用のウェルカムアニメーションを表示してドライバーをもてなす。


初代から続いたコラムシフトを廃し、より乗用車ライクなデザインとなったインテリアは、マッサージ機能付きのセミアニリンレザーシートやパノラマサンルーフを搭載し、極め付きにアメリカの音響ブランドAKGと共同開発した36スピーカー・サラウンドサウンドシステムも用意された。


また、「スーパークルーズ」と呼ばれるGMの自動運転システムをほかの車種に先駆けて設定。高速道路において、車線変更を含む完全なハンズオフを実現した。


エスカレード V編集


メイン画像のモデル。


2022年、キャデラックのハイパフォーマンスライン「V」が設定された。


より攻撃的なフロントデザインと、大径ホイールやクアッドエキゾーストが強く主張する外観の内側に秘める心臓部は、驚愕の680馬力を絞り出すGM LT4ユニットである。スーパーチャージャー搭載のこのエンジンは、本来コルベットZR1やCTS−Vといったスーパーカー顔負けどころかスーパーカーそのものに積まれる様なエンジンであり、エスカレードの2.8トンの巨体でさえ約4.4秒で時速100キロまで加速させる。


足回りもブレンボ製ブレーキや専用チューニングのサスペンションで強化されており、キャデラック・Vを名乗るに相応しいパフォーマンスを発揮する。


エスカレード IQ(2024-)編集


2023年3月に存在が明らかになった、エスカレード初のフル・エレクトリックモデルである。


先のリリックやセレスティックのように、LEDマトリックスによる全く新しい外観を持ち、これまでのエスカレードとは異なる様相を呈している。


その中身も最新そのものであり、パワートレインは最大出力750馬力、航続距離720キロを誇る、通称「ウルティム」と呼ばれるEVシステムである。


内装はセレスティックに次ぐ次世代キャデラックのフラッグシップとして、これまたかつてのエスカレードからは想像もつかない豪奢な物となっている。55インチのピラー・トゥ・ピラーディスプレイを始めとする各席の大型パーソナルディスプレイに彩られる車内は、2列目用のテーブルやコントローラーが備わり、1・2列目全てがマッサージ機能付きになる。3列目の三座シートは勿論電動で床下に収納が可能である。


2024年後半から販売が開始されるようで、価格は現地で約1870万円〜とのこと。


ただ、5代目エスカレードとは差し当たり併売される。

関連イラスト編集


登場作品編集


映画編集


・マトリックス リローデッド:ツインズが2代目EXTに乗る

・ブラックライト:ガブリエル・ロビンソンが3代目ESVに乗る

・トランスフォーマー/ロストエイジ:敵が3代目に乗る

・プレーンズ2/ファイアー&レスキュー:3代目がキャド・スピナー園長のモデル


ドラマ編集


・スーパーナチュラル:黙示録の四騎士の一人「ブラックライダー」が3代目に乗る

・悪霊狩猟団: カウンターズ:カウンター一味が4代目に乗る


ゲーム編集


・ニード・フォー・スピード/アンダーグラウンド2:2代目がプレイアブルマシンとして収録

・ニード・フォー・スピード/エッジ:4代目が収録

・グランド・セフト・オートシリーズ:アルバニー カヴァルケードのモデル

・フォルツァ・ホライゾン4:3代目ESVがプレイアブルマシンとして収録

関連タグ編集

キャデラック


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