キリストの絵
このひとをみよ
スペインのボルハにある小さな教会に描かれたイエス・キリストのフレスコ画が、湿気によりボロボロになっていた。それに心を痛めた80代の一人の女性セシリア・ヒメネス(幼少期から絵を描いて来たと称しているが、描いていたのは風景画であるうえ絵画修復に関しては全くの素人)が名乗り出て、その真摯な姿に心を打たれたのか教会が修復を依頼。
しかし修復後の絵が猿や雪男と評されるほどのあまりにもひどい出来だったため、世界中で話題になってしまう。
ところが、この絵のことをニュースで知って爆笑した人々が、実際にこの絵があるボルハに押し掛けたことで(一時的な効果とは見られているものの)思わぬ経済効果を生んだ。
今では市のあちこちに例の修復画が掲げられ、修復後のフレスコ画の著作権収入の49%をヒメネスが、残りを教会が受け取る契約すら結ばれており、絵をこのままにするべきか元通りに修復するべきかで議論が巻き起こっている。
元々は画家エリアス・ガルシア・マルティネスが、休日をボルハで過ごしていた縁により寄贈した絵画(1910年)。「慈悲の聖母 (Virgin of Mercy) への祈りの気持ちを込めて2時間で書き上げたもの」で、構図もオリジナルではないらしく、芸術的価値は大して無い作品であった。マルティネスの子孫たちが教会に修復費用の寄付を申し出ていたものの、おそらく教会側は修復に乗り気ではなかったと思われる。
子孫たちは復元するか今の絵を別の場所に移すことを求めるなどしているが、ボルハ市とヒメネスの弁護士は共に、著作権収入に関する契約を子孫たちにも拡大する用意があるとしており撤去する気はあまり無いようである。地元住民からも復元反対の署名運動が起きている。
実は修復後とされていたものは修復途中の下地段階で、一旦休暇に出かけていたところで運悪く(?)拡散されてしまった模様。またそもそもセシリアが修復を始めた時には元の絵がほとんど消えかかっており、修復というよりは記憶を頼りに描き直したという方が近いらしい。