クリストファー・ヴァルゼライド
くりすとふぁーゔぁるぜらいど
「人々の幸福を未来を輝きを───守り抜かんと願う限り、俺は無敵だ。来るがいい、明日の光は奪わせんッ!」
「“勝つ”のは俺だ」
一言で表すならば“英雄”そのもの。その性格は質実剛健・公明正大・滅私奉公を体現したアドラー帝国軍人の理想像であり、権力や実績に驕りや堕落をすることなく、自らを含めて悪に厳しく、民草を愛し、如何なる地獄も国家と国民の繁栄の為に躊躇なく挑み勝利する。
不遇な出自、「劣等種」扱いによる数々の冷遇、過酷な戦場、腐敗した特権階級ばかりの不慣れな中央勤務。それ等を非才でありながら弛まぬ努力と凄まじい意志・精神力と、「こんな自分には勿体無い程の」友と共に乗り越え、国のトップにまで成り上がりアドラーに黄金期と実力主義と民の笑顔を齎した。
まるで御伽話の様な指導者であるが、一方で手が足りなければ恥を惜しまず助けを求め、自身の不足があれば部下や市民だろうと頭を下げる好感でもある。それ故多くの人物が彼に尊敬や憧憬を抱く。また、幼少期の頃から腐敗や悪への怒りや行動力を見せ、総統になった直後に粛清や人事の再配置を行って、悪党や分不相応な無能を排除しつつ、能力や精神は優良な者を引き上げた。そんな彼の威光により帝国軍は規律が正され志望者が絶えなくなった。
そんな彼だが自己評価は最悪。自らを破綻者と自虐し、そんな自分に協力してくれる者には感謝と尊敬を感じている。
「鋼の英雄」は今日も誰かのために戦い続ける。
壊れるまで、砕け散るまで、それが “勝者” の責務ゆえ。
幼少時代
アドラーが、質実剛健とは名ばかりの、血筋や家柄が大きく社会に影響し、人種や出自が良ければ怠慢や悪徳があろうと権力や贅沢を貪ることができ、逆に悪ければ成人に至ることすら困難で、生き残れても差別や貧困故特権階級に媚びるか犯罪に走るか恵まれないままの未来しかない、血統派時代。
彼の出身はそんな中の、犯罪が蔓延り明日の日を望むことも困難な帝都のスラム街の劣等種の孤児だった。そこでは幼馴染の少女がいたものの、成長しきる前に死亡。犯人として無実を叫びながら処刑された者はいたが、確証の高い噂として幼馴染は貴族の若い男どもに襲われたが、その為に罰せられることはない、とだけ耳に入った。
後にスラムに似合わぬ孤高で清廉な姿勢を妬んである悪童のグループのリーダーが接触。後日悪童のグルーブ同士での抗争発生時、クリストファーは何方にも義がないからと両方を相手取り喧嘩し、多勢相手であるのに勧誘したリーダーの悪童以外全員を倒して力尽きた。そうしてクリストファーの在り方に憧れ、その残った悪童は友達になることを望み了承した。成長後クリストファーは、スラム自体には無かった厳格に正義が満ちた世界を求め軍に友と入隊するが、その期待は裏切られた。
軍人時代
それでも彼は諦めず、最も苛烈な東部戦線に配置されてから、時に生身で戦車を含む一個中隊を、時にアドラー等の一般人に麻薬を売り込み戦力・財力・他国家の権力者の後ろ盾を備えて永きに渡って猛威を振るった組織を壊滅させた。また、本来安全な職場に行ける筈がその高潔さ故最前線に志願した万能の天才たる貴族の青年とも友情を結び、元からの友と3人で活躍し続けた他、喧嘩を売ってきて返り討ちにし、挑むべく軍に入隊した、親から虐待を受けている悪童とも仲良くなった。
その内英雄として兵士の信望を集める彼を、不穏分子と見なした軍の特権階級は、3人を中央に栄転させ、“腕っぷしだけが取り柄のスラムの劣等種”を内務勤務に落とし込め飼い殺しにしようと目論んだ。しかし彼らは現状に不満をもつ役人達を誘い込み、改革派として中央で社会を変えるべく拡大していく。そして、“何故か”軍事戦力の強化や科学技術の発展に有用可能な星辰奏者関連技術を出し、帝国と改革派は大躍進を果たした。
彼らは特権階級の最高位である「アマツ」の者たちの中の改革派も迎え入れ、血を流す抗争も増えて、最初の星辰奏者の大佐となった頃に、ある大事件が発生した。
そして、総統へ
マルスとウラヌス。そう名乗る謎の生体兵器が帝都に襲来。2体は星辰奏者と同様にして格上の異能を用いて血統派・改革派・市民と街に破壊と殺戮を齎した。将兵が挑んで犠牲になり、帝国軍トップクラスの星辰奏者たるあるアマツとその精鋭部隊が出てこず、ある脱走兵と少女が2体と遭遇し恐れながらも少女を守らんと決意した刹那、クリストファー大佐がその場に現れた。(上記2番目の台詞はその頃のもの)2対1の戦闘を始めてその脱走兵が恐怖を感じて少女を抱え逃走後、異能と武器・鋼の身体を激しくぶつけ合い致命傷を負うほど劣勢になるも、「覚醒」を果たし単身逆転。動きを見切り異能対策も習得して攻略し鎮めた後、当時諜報部隊の隊長となっているスラムからの親友の少将に対して、友でなく軍人として生存者の救助及び生体兵器2体の研究部隊への移送を頼んでその場を去った。
この功績と事件による上層部の多くの死亡により、帝国の頂点たる総統職に就任。以後国家の膿の除去と立て直しを完遂し、国是の一つである進軍制覇を邁進。帝国に黄金期を、下層の出自に明るく自由な未来を齎した。
しかし積極的過ぎる攻勢姿勢や事件に関する怪しさ、そして「星辰体を用いる強大な兵器へのカウンター」と呼ぶある少女への謎の動きから、周囲や潜む反抗勢力から疑心を持たれている。
尚潔癖ではあるがスラムは(治安も生活も著しく改善されているが)掃き溜めとして残すなど統治には妥協もあり、実質独裁的な権力構造を築くも、最精鋭の特務部隊と隊長には自身に問題があれば粛清する権利を認めるなど警戒は求めている。
作中での呼ばれ方は「ヴァルゼライド」「ヴァルゼライド閣下」「総統閣下」。親友からは「クリス」とも。
シルヴァリオヴェンデッタにおいては文字通りぶっちぎりトップで人気投票一位になり、ラグナロク発売後に行われた三作品全体におけるキャラクター人気投票ですらトップ獲得という絶大的な人気を誇る。
実は星辰奏者化前から、お酒については、上官のアルハラを返り討ちにするなどのザルだが、酔う感覚が苦手だからと、親友とバーに来た時はオレンジジュースかミルクを頼んだ。ちなみに星辰奏者は生理機能も人間離れになるため、さらにアルコールに強くなっている。
恋愛に関しては鈍感ではないが興味はない上、自分に愛し愛される資格はないと思っており、密かに無自覚で恋愛感情を抱く副官に対しては、自覚して拗れることのないよう対応している。また、作者曰く、幼馴染の少女が生きていても、色恋よりも帝国無双になるとのこと。
彼自身は間違いなく善人(本人は否定するだろうが)だがあまりにも優秀かつ強い精神力を持つが故に周囲に多大な影響を与えており結果としてそれが次作などでとてつもない厄ネタとなってしまっている。
「正しさという概念がもつ光と闇」をコンセプトにするシルヴァリオサーガ、それも負け犬の逆襲劇たる本作において、彼は決して主人公でも味方でもない。
基本的に上述の説明は何一つ間違ってないのだが、同時のこの作品における黒幕の一人。またのちの作品でも多大に問題となる「光狂い」の一人であり、その中でも突き抜けたものである「光の奴隷」と形容するべき精神性。
一言でいうと「あきらめるという機能が存在しない」「一度すると決めればどれだけの犠牲を生んででも成し遂げてしまう」精神性を持ち、加えてそういった精神性を本当に物理的な力として、困難を打倒してしまい人種。それだけ書くといい側面も多く思えるが、シルヴァリオサーガにおいては世界大戦を引き起こす要因の一つとも言え、事実ゼファーが逆襲劇を成し遂げなければ当人にとっても喜べない結果に終わることが作品内外で確信されている。
そういった精神性をヴァルゼライドは心の底から嫌悪しており、また想定内に行ったとしても自国の首都が壊滅的打撃を受けることが想定できたうえで、止まることなく決行を決めている。反面反対されても当然だと確信しており、チトセに己を討つ権限を与えてもいる。
本作開始前の大躍進も。旧西暦の日本が開発したバイオコンピューターを用いる星辰体運用兵器たるカグツチが、その精神性に予想外の価値を持つ協力者として見いだされたことが理由。
カグツチとヴァルゼライドはその過程で相応に暗部といえることもしているが、秘めた野心や悪意の類は一切ない。その目的が「己が母国の繁栄」にあるため、母国が違う以上は最後で対立することは確定だが、そのための手段である「第二太陽の掌握」が共通していることから「最終的に聖戦で決着をつける共犯」とでもいうべき関係。またカグツチは1000年間待っていた想定ラインを遥かに超える傑物であるヴァルゼライドに強い影響を受けていることもあり、互いが互いを「無二の超えるべき宿敵」とみなしている。そして互いの精神性や考えも理解しているため、「勝つのは俺だが負けたとしても決して最悪にはならないだろう」という想定で動いていた。
……が、その過程で最も重要なファクターが謎の機能不全を起こしており、それに対処するためにゼファーが必要になったことから、運命の車輪はゆがみ始める。
もとよりこの計画には多分な暗部を背負わざるを得ず、その過程で唯一といってもいい「悪逆」といってもいい所業によって巻き込まれたゼファーは、相容れない方向性もあって闇の冥王とかして逆襲劇を敢行。想像を絶する熾烈な争いとなり、最終的に相打ちに持ち込まれる。
結果的にこれは母国どころか太陽系消滅の危機から二人の守りたいものすら救うファインプレーだったのだが、ここにきて「決着はどちらかの勝利」という前提で動いていたことが相打ちという形で「勝者不在」になったこと及び、太陽系消滅の危機及び相打ちになった要因の存在が確認されたことで、誰かが勝っていれば二心なく力になっただろう元親友の暴走を誘発してしまう