サンキューピッチ
さんきゅーぴっち
少年ジャンプ+で2024年9月3日から連載中の野球漫画。作者はハイパーインフレーションの住吉九。毎週火曜日更新。
甲子園を目指す神奈川県立横浜霜葩高等学校野球部に入部したワンポイントリリーフ投手の活躍を描く。
ジャンルとしてはもちろん高校野球漫画に該当するが、いわゆる青春ものや熱血スポ根ものとは様相が異なり、「高校野球という舞台・ルールの中、最強リリーフの決め球が一日3球までという厳しい制約の下で、強烈にヘキが強いキャラクターが高度な頭脳戦を繰り広げる漫画」というのが実態に近い。
また前作から顕著な、真面目な真剣勝負をしているのに奇妙な設定や独特のセリフ回しのせいで変な笑いが生まれるというシュールギャグの側面も健在である。
横浜霜葩高校野球部
霜葩は「そうは」と読む。
- 桐山不折
ワンポイントリリーフ。長髪長身。
「勝負」と聞くと居ても立っても居られなくなり、強敵が相手で逆境であるほど興奮する勝負ジャンキー。落ち着くときにはよくロジン(滑り止め)をイケない薬のように吸って落ち着く。
中学時代に硬式野球リトルシニアで活躍するも、右ひじ負傷により引退。主治医には完治は難しいと診断を受け、一日に三球しか全力投球できないイップスに陥っている。その代わりに、全力を出せば鉄製のストラックアウトの的をねじ切る程の豪速球を投げることができる。
野球への未練を捨てきれず、高校球児の元に押しかけては3球勝負を挑む『野球部狩り』として活動していたが、へいたに見込まれてワンポイントリリーフの切り札として野球部にスカウトされる。
急降下するような角度で曲がるフォークナイアガラフォークを決め球として持つ。
しかし、全力投球以外ではヘロヘロのスローボールしか投げられない(一応キャッチボール程度はできる模様)。
- 小堀へいた
キャプテン、セカンド。愛嬌ある童顔眼鏡。
選手としても優秀だが、マネージメントやコミュニケーションの能力が高校生離れしており、練習メニューの考案や他校との折衝と試合組みまでこなしている他、交友関係も非常に広い。
キレると普段の様子からは想像もできない形相となり、一番怒らせてはいけないタイプとして恐れられている。野球素人である阿川監督に代わって実質的に野球部を取り仕切っており、人望もある。
粒揃いな選手が集まりつつも勝ちきれない現状に苦慮していた所に『野球部狩り』の噂を聞き、広瀬と一計を案じて桐山を野球部に引き込むことに成功する。
一見すると常識人だが、その本性は目的のためならば計算づくで味方を陥れることも厭わないレベルのサイコパス。そのため、作者の前作ハイパーインフレーションを読んでいたファンからは、フラペコの皮を被ったグレシャムと呼ばれている。
- 広瀬洋二
キャッチャー。色黒ツートン黒白。
野球部の4番を張る強肩強打の名選手だが、自分の野球人生の限界を理解しており、進学してスポーツ科学の研究者を目指している。
頭脳面も優れており、小堀と共にチームの戦術の中核を担う。
ちなみに、白髪は染めている訳ではなくストレスによるものでかなりの苦労人。
ピッチャーの三馬とは幼馴染のバッテリーで、正ちゃん、洋ちゃんと呼び合う仲だが、同時に主なストレスの原因でもある。
- 三馬正磨
エースピッチャー。童顔オールバック。
速度だけでなく高いコントロールも備えたピッチャーで、多彩な変化球を操る。
幼い容姿に反して短気で非常に気が強く、自分を慕っている1、2年を三馬軍団としてコキ使っている。物事を深く考えない気質で頭脳面はほぼ広瀬に頼り切りだが、エースとしての自負は強い。当初は桐山の入部に激しく反発し、入部を取りやめさせようと勝負を挑んだ。
調子に乗りやすい一方で逆境に非常に弱く、何かの要因でプレッシャーを感じると幼少期の自分が現れて気分を落ち込ませてしまう悪癖を抱えている。
投手としては甲子園に十分通用する実力を持っているが、精神状態にパフォーマンスが極端に左右されるため、小堀からは「彼の機嫌を取れるか否かが勝敗に直結する」と言われている。
桐山が野球部に勧誘された目的は、桐山自身の実力によるチーム強化もあるが、それ以上に強力なリリーフを加えることで三馬の精神を安定させることの比重が大きい。
- 伊能商人
補欠、野球歴2ヶ月。黒髪ポニテ。
野球部の中でも随一の変人で、何にか難しい目標を立ててそれを攻略する過程を楽しむことを生きがいとしている。野球部に入ったのも、甲子園を攻略して本を出版したいからに過ぎず、野球そのものへの夢や情熱は皆無。性格はお世辞にも良いとは言えず周囲への愛想も悪いが、一応本人なりに筋は通すタイプ。
しかし、自身の現状を把握したうえで作戦立てできる思考力と行動力は本物(広瀬曰く「サイコパス診断テストでわざとサイコパスっぽい答えしてそう」)で、桐山との勝負に勝つために、100球全てファウルにできるまでカット打法の練習をしていた。
まだ1年生だが、公立で甲子園出場経験のない横浜霜葩高校で今年ほど優秀な選手が揃うことは自分の在学中にはもう無いと理解している。そのため、何としてでも今年レギュラー入りするために盗み聞きした桐山の秘密をだしに、レギュラー入りを賭けて半ば脅迫する形で桐山への勝負を持ちかける。
野球歴が短いながらも細かいルールもきっちり把握しており、監督なのにまるで知識のない阿川への解説役になることも多い。
女性監督。ホームラン王に勘違いされる体躯の持ち主。
普段は古典の先生で、一応野球部の監督ではあるが、極度の酒飲みであり、しょっちゅう酔っ払っているため監督としてほとんど機能していない。
野球のルールをまともに理解しておらず(ヒットとホームランの区別もついていなかった)、勘違いしたり初歩的な疑問を持つ場面が多いが、野球に詳しくない読者に代わって質問する立ち位置のキャラクターでもある。
なお、その体躯に違わぬパワーの持ち主であり、暴走した桐山を抑えることができる数少ない人物だったりする。
伊勢原聖テレーズ学園
- 轟大愚
横浜霜葩高校が練習試合を組んだ聖テレーズ学園のエース。
「千年に一度の高校球児」とも言われており、1年でありながら日本で最もプロから注目されている選手。自他ともに認める天才で打ちも投げも高い実力を誇っており、聖テレーズ学園の実力は殆ど彼によるもの。1番打者としてホームランを打った後、残りの回を投手として全て0点で抑えるというのがお決まりの勝ちパターン。
表向きには「強豪校に強い選手が集まることに疑問を持ち、あえてそこそこの学校に入った」と英雄視されているが、本人の性格は非常に傲慢で、本当の入学理由も「野球を個人競技に変えるため」。
自分の実力に絶対的な自信をもっているが、練習には不真面目なため投球は暴れ気味であり、時折甘いコースを投げてしまう欠点もある。
本人はメディアでアイドルのように扱われる現状に強い不満を持っているが、周囲がその本性がバレることを全力で阻止している。
- 真澄賢悟
キャッチャー。1年生。中学の頃はピッチャーの経験もあり、強肩かつバッターとしての実力も高いオールラウンダー。聖テレの隠れたもう一人のエースで、轟の暴れ球に唯一対応できる捕手。
彼もまた傲慢な性格で、「自分に指図していいのは自分より野球が上手いヤツと妹だけ」という持論を掲げ、実力が劣る先輩への敬意はまるでない。
轟とは中三の頃からバッテリーを組んでいるが、彼にエースピッチャーの座を奪われた過去がある。
上述の経緯の他、轟にとっても真澄の存在は「野球を個人技に変える」という目的の邪魔になりかねないため、両者の関係は一見かなり険悪。
しかし、真澄自身は轟の実力が自分より上と認めているため暴言に本気で怒ることはなく、寧ろ妙に息が合ったプレーを見せることもある。
夏の大会に向けて「聖テレは轟のワンマンチーム」というメディア戦略を立て、自らは轟の陰に隠れている。そのため、普段は地味なプレーに徹していたが、横浜霜葩高校との練習試合では桐山の秘密を抱える横浜霜葩と記録や映像を残さない取り決めが行われたため、その実力を遺憾なく発揮することになる。
なお、轟曰く妹は中学の頃から一度も試合を見に来たことが無いとのこと。