概説
大日本帝国海軍にて、「阿修羅」(悪夢)夕立と並び称される、綾波の異名である。これとは別に「黒豹」とも呼ばれる。
ガダルカナル島飛行場の砲撃を目的とした戦艦「霧島」以下射撃隊の前路警戒に当たるため、その掃討隊(川内・敷波・浦波・綾波)は、目的地手前に位置するサボ島近海の哨戒に川内・綾波が西側、敷波・浦波が東側へと2隊に分かれることになる。
その後、東側隊の浦波が敵艦らしき艦影を発見し、追尾を開始する。その支援のため川内が分離し、綾波は単艦でそのまま西側哨戒を続けることとなった。何事もなければ、そのまま川内達と合流するはずだったのだが…
サボ島南水路へ出たところで、綾波の見張り員は右方向・距離8000に単縦陣で航行する敵艦隊を発見する。これは浦波達がさきに発見、追尾していた米艦隊(戦艦2,駆逐艦4)であったのだが、このとき既に川内達は交戦しており、しかも形勢不利と見て後退した直後であった。また川内からは交戦に入るさい全艦隊に向けて「敵艦隊発見」の報が発せられていたのだが、この時点ではサボ島のちょうど影になる位置取りになり受信できなかったのか、綾波には届いていなかった。それら複数の事情が重なり、結果として綾波は単艦で敵艦隊と対することになってしまったのだ。
しかし鬼神伝説はここから始まる
綾波艦長は即座に右砲戦、右魚雷戦を下命、「敵は駆逐艦4隻、重巡1隻」と報を発して30ノットに増速し、突撃を開始する。
綾波に気づいて米艦隊が発砲し始めた距離5000の位置で、綾波側も砲撃を開始。
初弾が三番艦・駆逐艦「プレストン」、一番艦・駆逐艦「ウォーク」に命中し2隻とも炎上。
綾波は米艦の反撃により第一煙突に被弾、魚雷発射管のうち1番連管が故障して旋回不能となり、内火艇のガソリンタンク火災で発射管に装填されたままの魚雷が炙られる事態になるも、残った2,3番連管から魚雷を発射する。
この魚雷のうちウォークと二番艦「ベンハム」の艦首部に1本ずつ命中、ウォークは前部主砲弾薬庫が誘爆し沈没。ベンハムは艦首が潰れて航行不能、艦隊から落伍(この損傷が元となり後に沈没)する。
魚雷命中とほぼ同時刻、戦艦「サウスダコタ」へ与えた命中弾が、人的ミスも加わって同艦の電気系統を損傷させることになり、副砲とレーダーのほとんどが機能を喪失する。
だが奮戦虚しく戦艦「ワシントン」の副砲他より集中砲火を受け、2番砲塔が被弾沈黙、さらに機関室へ2発被弾し航行・操舵共に不能となり、火災も消し止められていないまま戦場の海で漂流し始めてしまった。
と、ここで射撃隊の直衛隊(長良、五月雨、電、白雪、初雪)が到着、戦闘に加わり、綾波の生存者は駆けつけた浦波によって救助されることになる。
綾波のその後
喫水線下への被弾が無かったため浸水しておらず、また爆雷へ安全装置をつけて投棄、浮遊物を事前に散々投げ込むなど、退艦に当たって安全策をとることができたこともあってか、乗員の8割以上が生存(収容後に死亡した者も含め戦死42名)し、全員の避難が終了したのを見守っていたかのように魚雷が誘爆、2度の大きな爆発を上げて沈没した。
なお、このときサウスダコタが受けた損傷は、後に発生した戦艦霧島との対決に大きなハンデとなった。