以下、作品のネタバレ注意!。
概要
団龍彦の小説『スーパーロボット大戦』に登場した悪のマジンガー。
パリアッチョ(あしゅら男爵)が製作し、保存していたDr.ヘルの脳髄を組み込んでいる。
元は兜十蔵が設計し、開発した機体である。が、あまりに凄まじいパワーにより自ら封印してしまったもの。
当初は「人間の感情」をエネルギーにする想定だった。正義感が強ければ強いほど強力になり、十蔵博士もそれを望んでいた。
しかし現実には、怒りや恨みといった負の感情の方が強く、搭乗者が少しでもその感情を有していたら、その力をフィードバックさせてしまう作用が出てしまった。そうなると乗り手の負の心と機体とが干渉し、増幅し、肥大化して実体化する『悪魔のマシン』になってしまうのだ。
それに気づいた十蔵博士により、全ての研究資料は破棄し、存在ごと封印された。
しかし、一部だけ手元に残しておいたものが、十蔵の死後に行方不明になっていた(あしゅらはそれを発見し、製造したものと思われる)。
武装
Zのプロトタイプであるが、搭載された武装はZ、およびグレートと共通するものは少ない。
劇中で判明した武器・装備は下記の通り。なお、名称は全て仮名。
- マジンガークロー(主に用いていた武装。超合金ニューZですら簡単に引き裂く事が可能な爪)
- マジンガーファング(マジンガーの顔、口部分の格子状パーツが下がり、その下に内蔵された牙のある口で噛みつく。七大将軍の首も簡単に噛み切れる)
- マグマハリケーン(口から放つ火炎光線。格子パーツが下がって、直接口から吐く)
- デビルブレストファイヤー(胸部パーツから放つ白熱光線)
- デビルサンダーブレーク(手をかざして放つ強力な電撃。グレートと異なり、腕をかざすのみで放つ事が可能)
- デビルスクランダーウイング(背中に内蔵された悪魔の翼。胴体の三倍ほどの大きさで、飛行能力を付与させる)
顛末
ギャラハン=闇の帝王に対する兵器として、パリアッチョ=あしゅら男爵が密かに開発。あしゅらによりDrヘルの脳髄を搭載させられ、起動する。
再生された暗黒大将軍、および七大将軍と戦うが、一方的に殲滅。
さらにグレンダイザーに憑依した闇の帝王とも戦い、グレンダイザーと互角以上の戦いを繰り広げる。
グレンダイザーから出て、本性である巨大な炎と化した闇の帝王自身に包み込まれるが、その際にエネルギーを吸収、ボディの各所も肥大化させパワーアップしてしまう。
しかし同時に、あしゅらが搭載していたヘルのコントロール装置も破壊され、ヘルの自我が戻ってしまった。
あしゅらに炎で致命傷を与え、現代に戻り、最終決戦を。
グレンダイザーのボディも破壊し、ボディから出て来た闇の帝王自身の最後の攻撃も無力化。そのまま、炎である闇の帝王そのものをエネルギーとして吸収し、あっけなく消滅させてしまう。
(この時、宿敵のあまりにあっけない最後に、鉄也は呆然としてしまった)
その直後。ヘルの自我とともに襲い掛かるデビルマジンガーに、Z、ダイアナン、ビューナス、グレートが挑むが、全く歯が立たなかった。Zは破壊され、ダイアナンとビューナスも一蹴。グレートも腕をもぎ取られ、その腕で突き刺す事で、山肌に磔にされてしまう。
さらに、ゲッタードラゴンの放ったシャインスパークの直撃を受けるが、それすらも無力化し吸収。ゲッターGもエネルギー切れで行動不能にさせた。
最後に、Zを改造したゴッドマジンガー(スーパーロボット大戦(小説))と対決し、キャパ以上のエネルギーを吸収させられ爆発、ようやくその活動を停止させた。
形状
※下記の名称は便宜上の仮称であり、正式なものではない。
- 第一形態
パリアッチョ=あしゅらが、ギャラハン=闇の帝王の前にお披露目した姿。この時点で、「胴体部がくびれ、既に悪魔や獣に近い形状」という、マジンガーZとは似ても似つかぬ姿になっている。
※劇中の描写
「(前略)巨大なロボットがそこにいた。背丈はギャラハン、すなわちグレンダイザーとほとんど変わらない。ただ、なんといっても目を引くのは、そのフォルムだ。恐ろしく巨大な翼を背負っていた。それもコウモリを思わせる、皮でできているかのような翼だ。手足が異様に長く、胴がくびれている。全体的なフォルムはしなやかで、ロボットというよりも獣、あるいは悪魔を思わせる。
(中略)
マジンガー。まさにその顔はマジンガーのものだった。口もとに特有の縦の溝が刻み込まれている。そして鋭い目、そのフォルム。まさにこれはデビルマジンガーと呼ぶのが一番ふさわしい。(後略)」
これが元からこういう設計なのか、あるいはあしゅらが手を加えたのかは不明。しかし、背中には既に翼=スクランダーも装備しているため、「十蔵が当初に設計した姿とは異なり、既にある程度はあしゅらが手を加えた」可能性が高い。
ギャラハンに反旗を翻したあしゅらに従い、ギャラハンが再生させたミケーネ七大将軍および暗黒大将軍のコピーと対戦。歯牙にもかけずその全てを破壊した。
グレンダイザーに宿っているギャラハンとも戦い、火炎となった姿に巻き込まれるが……、
- 第二形態
ギャラハンの身体からエネルギーを吸い取り、炎に包まれながらその形状を変形させた。
「(前略)変形といっても、ロボット的な意味のそれではない。腕が、脚が、肩が、どんどん太くなっていく。肉、と言っていいのなら、身体全体の筋肉が、加速度的に盛り上がっていく」
「腕が、脚が、肩が、身体全体が異様にふくれあがっていた。バランスが妙だった。それでも野獣的な印象は変わらない(後略)」
大きな変化は見当たらないものの、悪魔のような姿をより強調するかのように、肩や手足が第一形態よりも膨れ上がり、力強くなっている。
ギャラハンの火炎の身体に包まれた為、あしゅらが内蔵したコントロール装置が破損。ドクターヘルの自我が戻り、あしゅらに火炎を放ち致命傷を与えた。
やがて、開発した『時間砲』で、現代に戻ろうとするギャラハンの船に襲い掛かるが、時間砲の直撃を受けて消える。しかし、時間跳躍をしようとした矢先に現れ、船をそのまま破壊してしまった。
現代で、マジンガーに乗った甲児たちに襲い掛かるが、時間砲を破壊され、時間跳躍技術を失い激昂したギャラハンに逆襲される。しかし……
- 第三形態
グレンダイザーのボディを破壊し、内部から出てきたギャラハンが、火炎で構成された龍の姿になり、その身体を奪わんと包み込んだ。しかし……
「(前略)デビルマジンガーの身体に変化があった。盛り上がってくる。身体の各部がさらにふくれあがり、たくましくなってくるのがわかる。とりわけ翼が変わった。コウモリのような形はそのままだが、皮を思わせる材質から明らかに金属的なものに変化していく(後略)」
火炎龍の姿になったギャラハンを、エネルギーとしてあっけなく吸収してしまった。
赤熱化させつつ、その身体の各部も更に変形させ、完全なる悪魔のような姿に変貌。
Zやグレート、ゲッタードラゴンと相対する。
Zを破壊、グレートも戦闘不能に、ゲッタードラゴンのシャインスパークも吸収してエネルギー切れにさせ、光子力研究所を破壊せんとする。
だが、オリジナルのマジンガーZを改造した、ゴッドマジンガーと相対。対決する。
- 最終形態
ゴッドとの対決はほぼ互角だが、次第にデビルがゴッドを押し気味に。
ゴッドの「スーパーノヴァ(ブレストファイヤーに相当する武装)」を受けるも、そのエネルギーを吸収。
「(前略)その姿が変わっていた。顔が、さらに凶悪なものになっていた。頬当ては完全に下がり、より大きくなった口がむき出しになっている。おぞましいほど鋭い牙が、そこにある。
(中略)
身体中から突起が飛び出している。体そのものもさらに巨大になっている(後略)」
どんなにエネルギーを受けたところで、そのエネルギーを吸収しつつ、より変形していく。
それでも甲児は諦めずに戦い、デビルにキャパシティ以上エネルギーを放ち、自壊させる事に賭け、ゴッドのスーパーノヴァを放ち続けた。
そのエネルギーを吸収し、デビルは更に変貌。無数の人面をその表面に浮かばせていった。
「(前略)顔が歪んだ。目が吊り上がり、口がさらに大きくなり、牙がのびてくる。それは悪魔。まさに悪魔の顔でしかない」
(中略)
「顔が、できていた。肩や、胸に、顔が浮き出ていた。恨みと憎しみに満ちた、おぞましい顔だ。人とも悪魔ともつかない、忌まわしい顔だ。それが大きくなっていく。どんどんふくれあがり、デビルの顔と変わらない大きさになっていく(後略)」
一時は怯んだ甲児だが、十蔵と剣造の事を思い起こし反撃。更には鉄也も半壊したグレートのブレストバーンを一緒に放つ。
体の各部を大きく膨れ上がらせ、勝利を確信し、哄笑したドクターヘルだったが……。
※なお、メイン画像はゴッドと相対した時の第三形態。
余談
「スーパーロボット大戦(小説)」のカラー挿絵には、ゴッドと戦うデビルマジンガーが描かれている。
なお、「スーパーロボット大戦F」のアンソロジーコミックには、この小説版の作者である団龍彦氏がストーリー原案として参加した、「マジンカイザー」の読み切りコミックが掲載されている。
同コミックにもデビルマジンガーは登場。
小説版スーパーロボット大戦よりも先に発表されており、
「マジンガーZより先に、十蔵博士により作られた」
「マジンガーZを遥かにしのぐパワーを有する」
「ドクターヘル(の脳髄)がパイロット」という点は共通。
さらに、後から作られた、甲児が駆るマジンカイザーと対決するという点も同じである。同作のマジンカイザーも「Zを元に改造強化した機体」であり、F版のマジンカイザー、および本作におけるゴッドマジンガーとほぼ同じ存在である。
このコミックの原案を、小説本編に流用したと、団氏本人はあとがきにて記している。
しかし、小説でゴッドマジンガーを登場させるにあたり、これ以外の設定は思いつく事は出来なかったとの事。
これは、没になったマジンガーの完結編としての「ゴッド・マジンガー」が実現しなかった事の心残りがそうさせたもので、この小説を以て没案のゴッドマジンガーを描きたかった、と述懐している。
なお、「スーパーロボット大戦α」版のカイザーが持つ「マジンガーZより先に作られたプロトタイプ」という設定もまた、ここから流用されたものと思われる。また、αにおけるカイザーのテーマソングの歌詞、その一部では、カイザーを「デビルマシン」と称している。
関連項目
:上記の通り、「スーパーロボット大戦α」版のカイザーが有する、
「マジンガーのプロトタイプで、最初に製造された機体」
「形状を自ら変化させた」
という設定が共通している。このためデビルは「実際に悪魔になったマジンガー」とも言える。
また、ゴッドもマジンガーZの改造強化機体という点から、デビルとゴッドはそれぞれ「α版カイザー」「F版カイザー」の原型とも言える。
:永井豪の漫画。「巨大な悪魔の肉体を、人間が有する」という点では、ダンテとはある意味同じ存在。ここからデビルは「魔王ダンテに先祖返りしたマジンガー」という見方もできる。