概要
その圧倒的な引きの良さから「人力TAS」や「ロムハッカー」の異名を持つさ技師による、桃太郎電鉄のハンデ戦。最初の一定期間を最弱COM「まめオニ」に任せ、どん底のビリに落とされた状態からの逆転劇がテーマになっている。
今回題材になったのは「桃太郎電鉄USA」であり、通常は日本列島が舞台になる本シリーズでは珍しく北米大陸が舞台となっている。
プレイヤーは以下の通り。
- さ技師:「さっちゃん」名義
- あしゅら:「あしゅら」殿下名義。九段、攻撃系カードは原則使わないが、貧乏神(後述)が大嫌い。
- さくま:「らいじん大佐」名義。鉄人、最強COMかつ運にチートあり。もともとは他作品で攻撃カードを得意とする「らいじん」というCOMキャラを使う予定だったが、本作にらいじんCOMは実装されていないため、「さくまをらいじんと名付ける」形でエントリーさせた。そのため、本記事でもらいじん表記として解説する。
- えんま:「えんま以下略」名義。名人、通常の範疇では最強クラスのCOM。
うp主や視聴者人気がダントツのあしゅらとは異なり、視聴者からの評判が悪かったえんまであったが、雨にも負けず風にも負けず、さ技師による干渉にも負けずに堅実なプレイングを続け、87年目終了時点で収益額31億4092万ドル・総資産600億6967万ドルをあげていた。さ技師に次ぐ2位につけていた。首位・さ技師とは既に約850億の差がついているため逆転優勝の可能性は極めて低かったが、それでも実力者の貫禄を示すには十分…かに思われた。
ところが88年目、さ技師の本気の前にえんまは文字通りの地獄を見ることとなる…
えんま破滅への道のり
基礎知識
以下、桃鉄を知らない方向け基礎知識を少しだけ。詳しいことは桃太郎電鉄の記事を参照。
- 桃太郎電鉄は双六の要領で指定されたマス(目的地)を目指しながら道中の物件駅で物件を買うなどして一定期間内に資産を最大化することを目的とするゲーム。
- 誰かが目的地入りすると一番遠いプレイヤーに貧乏神がとりつき、物件売却やカード破壊などの妨害を行う。貧乏神を回避する方法は、①目的地に入る。②他のプレイヤーが止まっている駅を通過してなすりつける。③あっちいけカードを使う。④貧乏神直撃カードを成功させる…の4択。
- 貧乏神は時折「変身」でパワーアップする。この事件ではハリケーンボンビーとキングボンビーが出てくるもので、どちらも短期間で資産に甚大な被害を与えてくる。
- ハリケーンボンビー:ロボットのようなボンビー、取り憑いたもの及びその画面内のプレイヤーの物件を無作為に手当たり次第吹き飛ばす(所有権を放棄させる)、一応対象にならない物件は存在するが極少数である。。序盤〜中盤は大した物件を持っていない事、現金の方に比重が置かれるためさほど脅威ではないが終盤に近づくほどプレイヤーの資産は物件に偏るので凶悪度が跳ね上がる。88年目ともなればぶっちぎり1位がたった1ターンで最下位まで叩き落とされる可能性も充分存在するほど
- キングボンビー:言わずと知れた貧乏神の王、手持ちカード枠を全てデビル系(毎ターン数百万から数千万、最高峰では数億奪う)に変えたり、数十億の現金損害を1〜3回浴びせてきたり、と結構洒落にならない被害を与える。ただ物件にまで被害が及ぶことは(借金の返済で売るハメになる以外)ではほぼないため、物件資産が主流になる終盤は「シャレにならないで済む」と一応言い張れる。…嫌な予感がした人は正しい
- つまり、目的地を目指しつつ、物件を購入して収益をあげ、貧乏神を避けながら、どれだけ資産を最終的に稼いだかで勝負する作品である。
87年目末
目的地はダラス。
えんまはハリケーンボンビーをあしゅらになすりつけて同じマスに居た状態だったが、さ技師はこれをえんま攻撃の布石に利用できると判断し、テレポートカードであしゅらの側に移動。
あしゅらからなすりつけられることを計算の上で、ハリケーンを担いでえんまへパスするつもりだったのである。そして実際あしゅらからハリケーンを付けられたさ技師は、多少の損害覚悟でこれをえんまへなすりつける作戦へと動く。
88年目4月
さ技師は狙い通り、ハリウッド付近にいたえんまにぴったり重なり、ハリケーンの押し付けに成功。
するとさっそくえんまはサイコロ運に見放され(急行カードを切ってなすりつけを試みるもピンゾロで失敗)、しかも到着したカード駅で「とりかえしカード」を掴まされてしまう。これは自発的に捨てられないうえ、カード売り場で売却しないと5〜7ターン後に多額の現金被害に襲われるもので、破滅へのタイムリミットに迫られる形となった。
しかもえんまはこの後数ヶ月にわたり、ハリケーンボンビーの攻撃を受け続けることになる。
88年目5月
さ技師は、ハリケーンのなすりつけには成功したものの、いつまでも近くに居るわけにはいかない(もう一度なすりつけ返されるリスクだけでなく、隣接マスでハリケーンの攻撃が発動すると自分も物件をいくつか失ってしまうため)。そこで、さ技師は2枚目のテレポートカードを使い、あしゅらの近くへワープ。すでにあしゅらとえんまはこのターンまでに距離を離していたため、えんまはハリケーンを担いだ状態で孤立するという桃鉄における敗北のテンプレみたいな状況へ追い込まれていた。
ハリケーン押し付けを諦めたえんまは物件駅デンバーに到着、そこの物件を独占。独占することで、1年(12ターン)に1回訪れる「決算」で該当物件からもらえる収益が2倍になるうえ、また貧乏神やハリケーンボンビーの攻撃で物件を処分される優先順位も後回しになるメリットを持つため、資産額を増やす堅実な方法である。つまり孤立した状態で打てる最善手を探っていたのだった。
88年目6月
さ技師はカード駅で「オナラカード」を獲得。これは、他のプレイヤーを道のりと無関係に一定距離強制ワープさせるという、移動関連の攻撃系カードである。
ここであしゅらが目的地ダラスに入るが、最も遠いのはえんまだったためハリケーンもそのまま残留。しかも次の目的地はナッシュビルで、えんまにとっては距離があり、孤立してボンビーを抱えるプレイヤーにとっての逆転手段である目的地到着が遠のくという運の悪さに見舞われた。
そこでえんまは、先ほど購入したデンバー駅の物件増資に精を出す。増資とは、自分の物件を再購入する形で、物件資産額とそれに伴う決算収益額を跳ね上げるもので、資産を増やす重要な手となる。
一方でハリケーンから受けた被害もかなり大きく、ついに優先順位の低かった独占物件に被害が出始める。
88年目7〜8月
7月、さ技師はカード駅で「牛歩カード」を獲得。これは指定相手のカードを数か月間封印し、さらに数か月間1マスずつしか動けなくさせる攻撃カード。
このターンに目的地・ナッシュビルをらいじんが獲るものの、次の目的地ヒューストンもえんまにとって距離があり、えんまにとって状況打開できる出目が一行に回ってこない。しかたなくえんまは、再びデンバー駅の物件増資を行い、総資産の増額を狙う。
また、ここでハリケーンボンビーの活動期間が終了し、元の貧乏神にもどったことで今後の被害もとりあえず抑えられる見通しがついたように見えた。
だが、実はデンバー周辺は「物件駅→ゼロ駅(止まると問答無用で所持金が「0」になる。黒字が全滅するのはもちろんだが、仮に止まった時に借金していても完済できる)→通常駅→ゼロ駅」のループ構造になっていた。
つまり、ここでさ技師の「牛歩カード」を受けると、次の行動でゼロ駅に突っ込まざるを得なくなることに、えんまは気づいていなかった(というよりは、CPUのAIの都合上、誰かの攻撃を喰らうことまで想定した行動を取れていなかった)。
えんまは手元にある「特急カード」でサイコロ3個移動を行えたにも拘らず、「ここから逃げ出すという選択を取らなかった慢心」(本人談)は、この後あまりにも高い代償となって襲い掛かってくるのだった。
そして8月、さ技師はすかさず「牛歩カード」を発動。攻撃は見事命中し、えんまは先述のループ構造によってゼロ駅に突っ込み、多額の所持金が一瞬にして0になってしまった。さらに貧乏神の悪行で勝手にカードを買ってこられ、所持金のないえんまは赤字転落。
桃鉄では所持金が赤字になると、物件を半額で売却してでも借金を返済しなければならない。そのため、多額の赤字を背負うと、総資産は一気に滑り落ちていくのである。
88年目9〜10月
さ技師はカード駅で毎ターン小額の現金被害を受ける損害系カード「リトルデビルカード」を引く。本人曰く「罰だ」といいつつ完全な甘噛みである。
ここでらいじんが目的地・ヒューストン入り。ヒューストンから一番遠いのは依然えんまだったため貧乏神も残留したのだが、次の目的地はまさかのデンバー。隣マスにいたえんまはデンバーに到着して、目的地到着金を獲得したが、デンバー駅の物件は最大まで増資されていたため所持金の使い道がなく、次のターンには所持金0のマスに止まらざるを得ないため、この到着金は全額フイになった。
この時、他のキャラから貧乏神直撃カードを受け、いったんは自分の元を出て行った貧乏神を押し付けられそうになるも、拒否代金を支払えたことだけが不幸中の幸いか。
88年目11月
そろそろ4月に掴まされた「とりかえしカード」のリミットが迫る中、えんまは先述のループ構造から脱出に成功し、最寄りのカード売り場まであと1マスまで迫っていた。しかしそれを見抜いていたさ技師は、6月に入手していた「オナラカード」を発動させ、えんまをカード売り場から遠ざける。そればかりか、この時の移動でえんまは貧乏神所有中のあしゅらの近くに飛ばされてしまい、あしゅらによって貧乏神を押し付けられた挙句遠くに逃げられてしまう。
牛歩カードの効果が未だ切れないえんまに打つ手はなく、そしてこの完璧なタイミングで貧乏神がキングボンビーに変身した。
この月末には、毎年恒例の「感謝祭イベント」が月末に起こる。本来ならこれは商業物件所有者に臨時ボーナスが入るラッキーイベントなのだが、ここで何と発動確率わずか5%の「大不振」が発生。これにより利益イベントのはずが損害を出してしまい、えんまは所持金ゼロなのに1億7600万ドルの支払いを余儀なくされ再び赤字転落、返済のため物件を手放す羽目になった。
88年目12月〜3月
えんまの破滅はここからが本番である。
まず、えんまに貧乏神をなすりつけたあしゅらは「西海岸カード」で地域単位の長距離移動を行ったため、えんまは地理的に完全な孤立状態へ置かれた。
さらに、処理に失敗した「とりかえしカード」の爆発とキングボンビーの攻撃によるヘビー級のダブルパンチが炸裂し、かつてない多数の物件処分に追われることとなる。そのうえ、翌月にはキングボンビーの変身が解除されるまでなすりつけ自体不可能となる悪行「気に入った!」の餌食となり、坂道を転がり落ちるような転落から逃れるすべを完全に失ってしまう。
牛歩カードの効果からようやく解放されたのも束の間、キングボンビーの攻撃で「ボンビラス星」へと拉致される。この特殊マップではカードが一切使えず、所持金が奪われるマスしかない三つ又の道を進み、正解のゴールを選ばないと戻ってこられないまごうことなき地獄。
直後の決算では、えんまの収益高が半減、総資産にいたっては1/3に低下。どうしてこうなった。これでも一応2位は守ったものの、わずか1年でここまで盛大に転落していった様は視聴者の笑いと涙を誘い、「デンバーの悲劇」と称されるに至った。
後述の関連動画ではここまでだが、実はここで終わらないのがデンバーの悲劇だった。
89年目
ボンビラス星でもえんまは運に見放されていた。3回のトライで何度目に脱出できたかで大まかな総被害額が異なるのだが、不幸にも3回目のトライでやっとゴールできるという最悪の目を引いてしまう。
一応、ボンビラス星から帰還した場合はキングボンビーが必ず貧乏神へと変身解除される計らいがされているものの、元に戻って一安心させたところでほどなく再びキングボンビーに変身するというまさかの二段構えが待ち受けていた。
この攻撃に耐えられる資産はもはや残っておらず、売却できない農林物件を残して全物件を手放すという惨憺たる状況へ追い込まれ、180億265万ドルもの借金を背負ってしまい、遂に最下位に転落してしまった。
90年目
目的地に到着し、到着ボーナスで借金を帳消しにすると共に、さ技師にキングボンビーをなすりつけることに成功する。
しかし次の目的地にあしゅらが到着したことで再び貧乏神を押し付けられ、同年の終盤にキングボンビーがまたまた復活、そのキングボンビーの攻撃で農林物件まで失い(キングボンビーの攻撃の一つに「特定のジャンルの物件を全て消し飛ばす」というレア攻撃がある。もはや農林物件しかないえんまにこれがヒットすると言うことは…)ついに正真正銘全物件を消失=収益高もゼロというすっからかんになってしまった。
関連動画
以下の動画に、えんま破滅までの顛末が克明に描写されている。僅かな隙も見逃さない広い視野でのプレイングに加え、絵に描いたようなデスティニードローを現実のものとした奇跡が重なったことが、この事件の知名度を高めたといえそうである。