概要
ニャルラトテップの仮面(TRPG)とは、1989年にアメリカのRPG出版社であるケイオシアムより発売されたクトゥルフ神話TRPGのサプリメントである。原語タイトルはMasks of Nyarlathotep
シナリオの著者はラリー・ディティリオ氏で、TRPGとしての調整はサンディ・ピーターセン氏、校正と当時の時代考証はリン・ウィリス氏が担当している。日本でもホビージャパン社より日本語版が販売されていた。(現在は絶版)
1920年代の世界各国を股にかけるスケールの大きいシナリオや、これでもかとばかりに盛り込まれた殺意のあるトラップやSAN値直葬ポイントの多さなどの歯応えのある難易度から、今もなお人気の高いシナリオである。本国ではゲーム業界での優れた仕事に対して与えられるオリジンズ賞を受賞している。
ニューヨーク、イギリス、エジプト、ケニア、オーストラリア、中国の全6章で構成されている。(ホビージャパン社の邦訳版ではオーストラリア編はカットされた。)
2018年には最新版が販売されており、前日譚ともいえるペルーを舞台にしたシナリオが追加され、人種面やジェンダー面に関する配慮がされた表現となっている。(邦訳は未定)
また、これをベースにしたボードゲームも販売されている。
ストーリー
1925年のアメリカのニューヨークにて、友人であるジャーナリストのジャクソン・エライアスから1919年に行方不明になったカーライル探検隊の捜索隊を結成するので参加して欲しいとの電報を受けた探索者達だったが、エライアスは何者かによって惨殺されてしまっていた。カルト教団を追って世界を飛び回っていた彼が残したメモに残された名前を追っていくうちに、ニャルラトテップとその信奉者達の大規模な神話的な陰謀に巻き込まれ、世界を股にかけた冒険が始まる……
主要NPC
ジャクソン・エライアス
主人公達の友人で、世界各国にカルト教団に関する本を出版しているジャーナリスト。探索者達を呼び出すも、ホテルで何者かによって惨殺されてしまう。前日譚のペルーでの冒険では、彼と探索者達との冒険が描かれている。
ロジャー・カーライル
1919年に出発し、アフリカのナイロビにて行方不明になったカーライル探検隊のリーダーで、金持ちのプレイボーイ。人当たりは良く、気のいい性格で人に好かれるタイプであるが、浪費家だったり、優秀な妹のエリカにコンプレックスを持っていたり、気が弱く不安定な一面もある。また、探検に出発する頃には何らかの悪夢に悩まされていた。
ロバート・ヒューストン
カーライル探検隊のメンバーで、一行の医者役を担当。ユングとフロイトにも学んだ経験を持つ精神科医で、ロジャーの主治医だった事からメンバーに加わった。優秀な精神科医との評判と裏腹に治療費の高さや女性問題などの悪評もある。
オーブリー・ペンヒュー
同じくカーライル探検隊のメンバーで、ウィリアム王の時代にまで遡る由緒正しいイギリスの貴族でありサーの称号を持っている。エジプトの考古学の発掘分野では知られており、豊富な財力を駆使し、ペンヒュー財団を設立して世界各地に邸宅を所持している事業家でもある。
ヒパチア・マスターズ
カーライル探検隊の紅一点。兵器関係の商売で成功したマスターズ家の令嬢で、スイスやフランスに留学した経験などから複数の言語を駆使する。カメラが趣味で一行の記録係も担当していた。探検隊に参加する前に酷く傷心する出来事があった模様。
ジャック・ブレディ
カーライル探検隊のメンバー。中国やアラブを転戦した元海兵隊員のタフガイで、一行の用心棒的な存在。探検の際は現地民との交渉役も担当していた。かつて殺人事件の容疑者とされたところをロジャーに助けられており、それ以来忠誠を誓っている。
ヤレシャ
ロンドンのブルー・ピラミッドというクラブのアラブ系のベリーダンサーの女性で、KPによってはヒロインポジションにも昇格できる貴重な女性NPC。
マフムッド
カイロに住む10代初めくらいの少年で、そこそこ英語が話せるため、探索者達のガイド役を買って出る。
クライブ探検隊
ヘンリー・クライブ博士率いる探検隊で、ペンヒュー財団の資金提供を受け、ピラミッドに隠された秘密の部屋であるエジプトの女王のミイラを発掘している。リーダーのクライブ博士を初め、霊媒体質の老婆のアガサなど他のメンバーも一癖ある人物が多い。
シェフィラ・ロアーシュ
旧市街に住む大金持ちの女性で、滅多に人の前に姿を現さない。ペットにコブラを何匹も飼っている危ない趣味のある女性。
ネシム・エフティ
カイロのイブン=トゥランというモスクで何かを守護している男性。不思議な雰囲気の三日月刀を所持している。
ジョンストン・ケニヤッタ
ケニアで登場するエライアスの知己の黒人男性。植民地政府に黒人の代表を認めさせる活動を行なっており、白人からは疎まれ気味だが、黒人からは尊敬されている。カリスマ性と人望に恵まれたどこか将来の大成を感じさせるような人物。
ブンダリ老人
アフリカ呪術を使う東アフリカ1と言われる魔術師。知識の獲得の為意識を次元旅行をさせているので、話を聞くためには呼びかけてから別の次元から意識が戻ってくるために長時間彼の前に待機していなければならない。
フー
ブンダリ老人のペットのカメレオン。本当の名前はフー・イズ・ノット・ホワット・ヒー・シームス。ハエが好物で、不思議な力があり、彼の側には蚊やハエなどの虫が寄ってこないという特性がある。ただし彼に虫を食わせずに腹を空かさせてしまった場合…
ムゥェルウ
ケニア人の黒人の少女で、ニューヨークで暮らしていた事もある美しい女性。新版では彼女への“Nワード”が修正されている。実はとあるクトゥルフ神話の小説に登場している。
リー・ウェンチェン
上海においての探索者達のガイド役。裕福な農家の四男坊だったが、学校でキリスト教に出会い改宗した結果実家から勘当されてしまった過去を持つ。
磯毛太郎
上海で出会う日本人で、何やら鋭い雰囲気を漂わせる謎の男。ブレイディの名前に反応したり探索者達を監視するような振舞いを見せる彼の正体とは?
リン・タンユ
中国人の金持ちで、とある書物と人物を探している模様。女好きで美人には目がないスケベジジイ。猿の飼育が趣味で双子の猿を自身の傍に侍らせている。
カウレス教授
シドニーで先住民のクーリ(アボリジニ)の文化を研究している考古学者。自分の好きな分野に関しては非常に多弁。エヴァという自慢の娘がいる。
ジョン・ロックフェラー
アメリカの石油王。慈善家としても有名。世界各国を遊説しており、シナリオ中にはオーストラリアを訪問している。
ダッジ博士
オーストラリアの考古学者で活動的な人物。遺跡の発掘隊のメンバーを募集している。戦闘用ブーメランやリボルバーを使うなど武闘派の一面も。
デスアダー
オーストラリアでの最大の強敵ともいえる存在。強力な毒に非常に高い隠れると忍び歩き技能で奇襲して探索者達を屠ってくる恐怖の毒蛇。
カカカタク
オーストラリアの章での囚われのヒロイン的な存在。
カール・スタンフォード
アメリカで銀の黄昏教団という団体を主催している男性。別キャンペーンのヨグ=ソトースの影にも登場しておりそちらではラスボスクラスの大物だが、今作ではとある場所で意外な形で出会う恐れがある。例の“杖”や“箱”は健在で敵にするには恐ろしい相手。何かを探しているようだが……
ニャルラトテップ
このシナリオの黒幕たる這い寄る混沌。探索者達は世界各地でかの神の化身を信奉する信者達と戦う事になる。今回の計画はわりと本気モードのようで、日本のシナリオでよく見られる『常に退屈しており遊びを求めている飄々としたトリックスター』というイメージとは少し違い、自身の“ゲーム”に対しての公正さは薄く、直接出くわす場合にはデストラップを仕掛けてきたり、儀式を邪魔したりとある敵を殺すと怒り狂って報復に来たり、戦闘になると容赦無く殺しにかかってきたりと邪神ぶりを全開にしてくる。
メイン画像にもある千の貌の一つである膨れ女はこのニャルラトテップの仮面が初出。