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概要
アメリカ合衆国最大の都市・ニューヨークの一街区で、マンハッタン島の北部(アッパー・マンハッタン)に位置する。
アフリカ系アメリカ人が多数居住していることから、「黒人の街」という文脈で語られることも多く、実際に20世紀前半の「ハーレム・ルネサンス」を始めとするブラックカルチャーの発祥の地としても広く知られている。セントラル・ハーレムに所在する「アポロ・シアター」は正しくその代表的なスポットの一つと言えよう。
とはいえ、ハーレムがこうした黒人の街へと変化していったのは、そこまで古い時期のことではない。20世紀初頭までは後述するオランダ人入植者を始め、むしろヨーロッパ系の移民が住む街の一つであり、メトロ・ノース鉄道を始めとする交通機関の整備を追い風に発展を見せていたものの、過剰投資によるビル建設の濫発はハーレムの地価暴落を招き、これがアメリカ南部から逃れてきた黒人たちの移入と、「黒人の街」としてのハーレムの形成に繋がったのである。
このような経緯から、世界恐慌以降の不景気や、20世紀後半の公民権運動の活発化なども相俟って、ハーレムは長らく住民たちの貧困に起因した、治安の悪化・荒廃化が深刻な街の一つに数えられており、観光客は言うに及ばずニューヨーカーの間でも、立ち入りをためらうほどの危険な場所と認識される時期が長きに亘って続いていた。
とはいえ1990年代に入ると、時のニューヨーク市長による徹底的な治安改善政策や、好景気の到来に伴う再開発の波が押し寄せたこともあり、ハーレムも一頃に比べると安全になりつつあるとの見方が大勢を占めつつある。
一方で、ハーレムの中でもドミニカやプエルトリコからの移民など、所謂ヒスパニックが多くを占める「イースト・ハーレム(スパニッシュハーレム)」については、今なおマンハッタンで最も治安が悪い場所であるとする声も散見される。
地名について
しばしば誤解されやすいが、一般にイメージされる「ハーレム(Harem)」、即ち一人の男性に対して多数の女性が取り巻くような状況とは全くの無関係である。
この街の名の由来となったのは、オランダ西部の都市であるハールレム(Haarlem)であり、17世紀前半にこの地区に入植してきたオランダ人たちが、このハールレムにちなんで自分たちの居住地を「ニュー・ハーレム」と名付け、それが後に英語化する形で「ハーレム(Harlem)」として定着に至ったという経緯がある。
関連タグ
マルコムX:アメリカの宗教家・活動家の一人。若かりし頃にハーレムに居住し、その最期の地もハーレムに程近いオーデュボン・ボールルームと、少なからずハーレムと縁のある人物の一人でもあり、現在でも彼にちなんだ「マルコムX通り」がハーレムに存在する
ビル・クリントン:アメリカの第42代大統領。大統領退任後にハーレムにオフィスを構えている