概要
かつてオスマン帝国を中心に広く被られていた円筒状の帽子。名前の起源はモロッコの染物と革製品で著名なフェズから来ている。
ほとんど被られることがなくなった現在でも、トルコ象徴する代表的なアイテムとしての地位を持つ。
歴史
その起源は古く、古代ギリシアの時代には存在し、中世の時点でキプロスの民族衣装でもあった。
19世紀に啓蒙君主マフムト2世による近代化の一環として、公人の服装を洋装へ改める際にターバンにとってかわる形で採用された。フェズ帽はつばがなく、額を地面につけて礼拝する必要があり帽子をとる習慣がなかったイスラム教徒にとって都合がよく近代化の象徴として広く受け入れられ、非イスラム教徒にも愛用された。
しかし、トルコ革命により、急進的な近代化を推し進めるトルコ共和国が成立すると、フェズ帽は皮肉にも旧体制の象徴として扱われ、ムスタファ・ケマルの意向で着用した者には逮捕を伴うほどの厳しい禁止措置がとられ、シルクハットやソフト帽にとってかわられた。
現在トルコ国内では、土産物点店や観光サービス業に従事する人が被る姿で見かけるにとどまっている。