ブラジリアン柔術
ぶらじりあんじゅうじゅつ
1917年よりブラジルで前田光世から柔術を伝授されたカーロス・グレイシー(実際はプライベートレッスンを数回受けた程度ではないかなど、諸説あり)が拓いた「グレイシー柔術」から発展したとされる寝技主体のブラジルの格闘技。
現在「柔術」というとメディア露出の関係でこのブラジリアン柔術をさすことが多い。
カーロスの弟、エリオは小柄で喘息持ちであり、グレイシー柔術は体力に勝る相手にも勝てるよう護身術として考案され、その武道的な側面を競技として発展させたものがブラジリアン柔術と呼ばれている。
……とされたが、実際のエリオは比較的体格が良く、若い頃は水泳の有望な選手として大小さまざまな大会に出ていたことも分かっている。ブラジリアン柔術史は2010年代後半よりようやく第一次資料にあたって研究する機運が高まっており、それまで定説とされていた様々な事柄が再検証され始めている。
1993年、UFCの記念すべき第1回大会でホイス・グレイシーが圧倒的な強さで優勝したことから、ブラジリアン柔術が一躍世間の注目を浴びることになる。
その後も総合格闘技で柔術家がその有効性を示し続けたため、現在では選手のバックボーンを問わず総合格闘技をやる上での必須科目とまで言われていたが、柔術も競技としての成熟が始まると次第に両者の技術体系は解離していき、一方のトップ選手が互いの世界に本格参戦することは極めて稀になっている。
1996年以降はムンジアルという世界大会が毎年開かれている。
一時期の格闘技ブームも手伝って、近年では日本でもブラジリアン柔術を学べるジムが増加傾向にある。寝技という比較的敷居の低いジャンルを技術体系の基礎とすることから、10代の若者のみならず30代以上のシニア層から始める人も少なくない。
ただし格闘技であることには変わらないため怪我(特に腰や関節など)には注意が必要である。
著名人ではイーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、トム・ハーディ、玉木宏、岡田准一、ガリットチュウの福島善成らが達人級の腕前で知られる。
柔道とは事実上兄弟関係にある柔術だが、様々な相違点が存在する。
技術体系
柔道、特に講道館柔道は投げを主体とするが柔術は先述の通り寝技を主体とする。柔術の試合で完璧に投げ切っても2ポイントにしかならず、時間制限内での決着は関節技か締め技を決めるしかない。
また、掴める場所は柔道よりも遥かに多いため、柔術家ごとに自身の体型や身体能力に合わせたオリジナルの技を持っていることも多い。
帯制度
柔道では既定の基準を満たせば自動的に帯が上がってゆくが、柔術においては極端に言えば道場の代表に一任されている。道場主は練習生の実力、年季、練習への態度などを総合的に判断して帯の授与を行う。
一般的には年齢が若いほど試合での実績が重視される。