ヴィクター「ホームズの名に誓う。僕たちは必ず、この事件の謎を解き明かす 」
アイリーン「そんな小細工が私たちに通じると思ったの?ホームズの名を甘く見ないでほしいわ」
概要
『月刊少年ブラッド』(SBクリエイティブ)および『FlexComixブラッド』(フレックスコミックス運営のYahoo!コンテンツ)に連載されていた推理冒険漫画。
著者は、シナリオ工房月光(原作担当)と、辻野よしてる(作画)が、それぞれを担当。
うち文芸担当(設定構築および主幹原作執筆者。アニメに言うところのシナリオ構成)は、当時シナリオ工房月光に所属していた赤松中学が担当している。(最終回シナリオのみ日野光里が担当)
いわゆる『シャーロック・ホームズシリーズ』に材をとったホームズ・パスティーシュの一種で18世紀末のロンドン、特にホームズシリーズにおける大空白紀の時期(つまり「最後の事件」~「空家事件」に至るホームズ不在の英国)が舞台。
実は掲載紙が満を持して連載を開始させたはいいが、そのまま紙雑誌の廃刊およびWeb連載に移行してしまったため、そのゴタゴタのせいでわずか4回(前後編があるため話としては3話)で打ち切りになってしまった作品でもある。
ある意味『緋弾のアリア』の前段階、ともいえる作品。
あらすじ
1891年、「最後の事件」においてモリアーティ教授という災いとの戦いの末、相打ちを果たしてライヘンバッハの滝に沈んだシャーロック・ホームズ。ロンドンの誇る偉大なる正義の使徒の殉死に街は平穏を取り戻すが、同時にかの騎士を喪い自分たちを守る者がいなくなったという現実によって深い絶望と悲しみに沈んだ。
そんな静かな平穏の中、ジョン・H・ワトソンは悲しみを紛らわすため、もはやいない友の思い出を次代へと語らうために知人の少年少女たちをティータイムに誘うも、馬車渋滞に巻き込まれ、そして遠くからの銃声を聞く。
銃声に弾かれたように、ワトソンの年若い友人たちは馬車を飛び出し、その音のもとへと向かう。そこにはすでに同じく銃声を聞きつけていたスコットランド・ヤードが捜査を始めていた。馬車を飛び出した二人の少年と少女はヤードの制止を振り切り、ほぼ強引に事件現場へと歩みを進め、それぞれ自らが「偉大なる叔父」より譲り受けたパイプや虫眼鏡を各々手にして、独自の捜査を開始する。
手にパイプを持つ少女の名は、アイリーン・ホームズ。
手に虫眼鏡を持つ少年の名は、ヴィクター・ホームズ。
彼らこそは、かの名探偵シャーロック・ホームズの甥と姪たる、ホームズ家の双子(ホームズ・ツインズ)だった。そして、この事件を通じて彼らはロンドンに、いまだかの「犯罪界のナポレオン」の残滓がくすぶっている事を知る。
なれば、アイリーンとヴィクターにとってみれば、ホームズの名に誓い、負うべき使命はただひとつ。愛する叔父シャーロック・ホームズが愛したロンドンの街を、今度は自らが幼き折より叔父によって鍛えられ受け継がれた力で守る事。
こうしてホームズ・ツインズは、モリアーティ教授が作り上げた「組織」の残党一派「スコーラーズ」を相手に戦いを繰り広げる事となったのであった。
登場人物
ホームズ・ツインズ(ホームズ家の双子)
シャーロック・ホームズの甥っ子・姪っ子(兄の子)である双子の少年少女たち。
- ヴィクター・ホームズ
- ホームズ・ツインズの弟で、インテリジェンス担当。心優しく大人しい少年で、根っからのインドアであり論理派。恐ろしいほどに体力が無く、馬車から飛び降りて数歩走っただけで息が上がり白目を剥きかける。血生臭い事は大嫌いで、事件に対しては「現場や死体とかじゃなくて、そこから得られた情報と証拠品だけをよこしてほしい」とのたまい嘆くことが多い。叔父のシャーロックと異なり、タイプ的には安楽椅子探偵。観察力・洞察力に優れている事により叔父から虫眼鏡を譲り受けている。
- アイリーン・ホームズ
- ホームズ・ツインズの姉で、アクティブ担当。スイーツをこよなく愛する、おてんばツインテールで、すがすがしいまでのまな板。考えるより、まずは行動、口より先に手が出る。探偵としては、足で地道に証拠を積み上げていくタイプ。ヴィクターには一歩劣るが洞察力と論理の組み立ても、その家名に恥じぬ程度には活用できる。しかし落ち着きがない(あとゴシップ大好きである)事から、叔父より落ち着くための頭脳活性化ツールとしてパイプを譲り渡されており、普段はこれをシャボン玉の吹き出しにして遊んでいる。
- 幼いころより叔父からバリツを教わっており、荒事(乱闘)では一級品の冴えを見せる手練れ。事ある毎にヴィクターに投げ技・組み技を仕掛けては技の実験台にしている。さらにツインテールを縛る紐は実は非常時用の火種導火線で、持ち歩いているパイプには奥の手として爆薬と火打石が1回分詰められている。どこの武偵だアンタ。
- かくて濃いファンからは「むしろ、どこぞの未来の独奏曲のご先祖、アンタなんじゃないか?」とか言われる始末。(設定上は一応、否定されている)
双子の周りの人々
- ジュード・W・ハルヴィッツ
- ヴィクターの学生寮におけるルームメイトかつ親友。本作のワトソン役にして凡人代表のメガネ男子。つまり本作は基本的に彼の視点から語られる物語である。
- 実は、ヴィクターとは悪い意味で似た者同士(体力が無い・心優しい)であり、実質的にはヴィクターの下位互換を務める事の出来る人物でもある。
- ジョン・H・ワトソン
- 双子の叔父の親友であり、双子から「(もうひとりの)おじさま」として慕われている、おなじみの紳士。双子にねだられて、親友との想い出をおもしろおかしく語る事多々。本作では肝心のワトソン役はジュードに譲っている一方、双子の保護者のひとりとして、年若く経験の足りない彼らのバックアップを行っている。
- レストレード警部
- 原典シリーズではおなじみな、スコットランド・ヤードの警部。双子と面識があり、ワトソンと共に双子の保護者役。ホームズを喪った事で、失われたモノの偉大さを思い知ってしまったのか、原典よりもさらに物分かりの良いヒトになっており、双子の能力を素直に評価していてヤードや現場の警察官へ双子の口利きをしている。
- ウィンスラー刑事
- ヤード所属の刑事でレストレード警部の部下。警部から双子の事を口利きされ、彼らの守り役として世話を焼くことになる。人付き合いが良く世話焼き気質の、気のいいお兄さん。
- エドワード生徒総代
- 双子が属する、イントレイ学園の生徒総代。全校生徒男女問わず憧れのイケメン。物腰柔らかでありながら、力強いカリスマの持ち主。頭も切れ、ある意味ではヴィクターよりも冴えているお人。
物語一覧
凡例)「月刊=月刊少年ブラッド(紙雑誌)」「WebFC=FlexComixブラッド(Yahoo!コンテンツのWeb漫画)」
話数 | タイトル | シナリオ担当 | 掲載 |
---|---|---|---|
1 | The HOOK | 赤松中学 | 月刊2006年10月 |
2 | 不幸を呼ぶ予言詩(前) | 赤松中学 | 月刊2006年11月 |
3 | 不幸を呼ぶ予言詩(後) | 赤松中学 | WebFC2007年3月 |
4 | 人食い辻馬車 | 日野光里 | WebFC2007年5月 |
関連タグ
赤松中学:実質上の作者
緋弾のアリア:同作者作品。本作と同じく「ホームズ家の人間」が出てくる。
シャーロック・ホームズ:オマージュ元