概要
株式会社ヤナセとは、自動車のディーラー。
「いいものだけを世界から」「クルマはつくらない。クルマのある人生をつくっている。」のキャッチコピーをはじめ、取り扱い車種のリヤウインドに貼られる黄地に青文字の『YANASE』ステッカー(メインイラストの右上に描かれている)で知られる。
伊藤忠商事傘下の企業であり、自動車の販売以外にもトラック・バスをベースとした特殊車両の車体架装を手掛けるコーチビルダー(系列会社のヤナセテックが業務を担当)でもある。
1915年創業の「梁瀬商会」を前身に、1920年に外車の輸入販売の会社として「梁瀬自動車」を設立。現在の社名には1970年に変更されている。
第二次大戦中は一時自動車輸入事業を停止していたが、終戦後は創業時からのキャデラックやビュイックなどGMに加えてメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン、アウディと取り扱い車種を増やし、国産車ディーラー並みの全国に広がるネットワークと顧客に対するきめ細かいサービスのノウハウなどが高い評価を受け、日本最大手の輸入車ディーラーの地位を確立した。
過去にはボルボやオペルをはじめ、プリンス自動車やいすゞと国産車も取り扱っていた。
1990年代以降、欧米の自動車メーカー各社が自ら設立した日本法人で輸入業務を行うようになったことから取り扱い車種の輸入権を各メーカーの日本法人に譲渡し、2005年までに自動車輸入事業から撤退。現在はメルセデス・ベンツをはじめとする複数ブランドの新車・中古車を扱う輸入車ディーラーとなっている。
2021年現在、新車販売店174店舗、中古車販売店31店舗を持っている。
幻の軽自動車
前述のキャッチコピーに「クルマはつくらない。クルマのある人生をつくっている。」とあるが、1955年に「YX360」と呼ばれる4人乗りの自社製軽自動車の開発が行われた。丸みを帯びた外装デザインに360ccの空冷水平対向2気筒エンジンを搭載するFF方式を採用し、「ヤナセ・ジャイロ」の車名での市販化を視野に入れて計画されたが、試作車が1台製作されたのみだった。
…YX360は市販化こそされなかったものの、ウインドーの形状やグリルなども上級クラスを意識した流麗なスタイリングは、コーチビルダーでもある同社の矜持を感じて取れる。