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一つの花

ひとつのはな

今西祐行による文学作品。1975年発行。戦争の悲惨さを伝える戦争文学の典型例の1つとして著名であり、文部科学省により選定され、日本の小学校の国語の教科書にも採用されている。
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あらすじ編集

大東亜戦争が激しかった時代に生まれた幼い女の子、ゆみ子が主人公。


ゆみ子は父親・母親とともに暮らしていたが、戦時中なので食料などは簡単に手に入らない。ましてそのころは、おまんじゅうだの、キャラメルだの、チョコレートだの、そんな物はどこへ行ってもなかった。育ち盛りなのにお腹いっぱい食べられない戦時中の生活は、幼いゆみ子にとって苦痛そのものでしかなかった。そんな状況下、ゆみ子は「一つだけ、一つだけちょうだい」を口癖に、戦時中は簡単に手に入らない食料などの物資を、本能的にねだるのであった。

そんな気の毒な娘を見た父親は「高い高い」をするなどしてゆみ子を少しでも元気付けようとするが、ある日父親自身が兵隊として戦地へ向かわざるを得なくなってしまう。(体が丈夫でない父にまで召集令状が来たということは、戦況の悪化を意味していた。)


出征の日、見送りに来た母とゆみ子。ゆみ子は父のカバンの中にはおにぎりが入っている事を知っていた。それは母が出征する父のために家に残っていた貴重なお米で作ったおにぎりだった。

自分にとって大切な優しい父親が出兵する事を知らないゆみ子は「おにぎり一つちょうだい」と言った。ゆみ子は何度も「一つだけ」「一つだけ」と言い父のおにぎりを全部食べてしまった。ゆみ子はその後もおにぎりを「一つちょうだい」とねだったが、もう彼女にあげるおにぎりは無かった。

父親は、ゆみ子を悲しませたくないと言う思いと、戦場へと向かって愛する娘と離れ離れにならざるを得ないという気持ちなどが葛藤し、困惑したが、最終的に駅のホームで「一輪のコスモスの花」を摘み、それを娘のゆみ子に渡した。その際、父は「ゆみ。さぁ、一つだけあげよう。一つだけのお花、大事にするんだよ。」と発したのであった。そして、それがゆみ子と父との最後の会話となったのであった。


10年後、母と二人暮らしになったゆみ子はおつかいも出来るしっかりした女の子になっていた。

家の庭には、たくさんのコスモスの花が咲いていた。


関連項目編集

児童文学 教科書 大東亜戦争


戦争がテーマの児童文学編集

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