あなたは、この家の異常さがわかるだろうか。(1巻)
これら、11の資料から何が読み取れるのか説明しましょう。(2巻)
あなたにはこの秘密を覗く勇気がありますか?(劇場版)
概要
ウェブライター・YouTuber・ホラー作家である雨穴氏のミステリー作品。
ノンフィクション風不動産ミステリーとして発表され、雨穴氏の個人チャンネルにて動画が公開。
YouTube再生回数1500万回を超える人気動画として知られている。
その後、小説版が飛鳥新書から発売され、一迅社よりコミカライズ版も登場。
原作小説は70万部を突破している。
そして2024年3月15日、実写映画として東宝系にて全国公開が決定した。また、『青鬼オンライン』とのコラボも行われた。
作風
家の間取り図からそこに秘められた恐ろしい真実を暴く、これまでに無い異色のミステリー。
間取りから感じた違和感から主人公達の推理が組み上がり、やがてゾクッとする真実に辿り着くのが特徴。
動画版ではYouTuberである雨穴氏本人、漫画版や映画版ではそのポジションとなるキャラの下に、「変な家」の間取り図や相談が寄せられる形で物語が始まる。
主に知り合いの設計士、栗原さんが安楽椅子探偵の役回りとなる。
その推理は単なる設計士の域を超えており、小説版2巻440ページの内、栗原さんの推理パートは100ページを超えている程。
あらすじ
1巻
知人の柳岡さんから「私」に相談が届く。
それは、新居として都内の一軒家を見つけたが、一階のリビングと台所の間に謎の空間があり、不気味さから「私」に相談したのであった。
「私」は知り合いの「栗原さん」と連絡をとり、この家には「謎の空間」、そして「窓の無い子ども部屋」という不自然な間取りで、ある妄想を話始める。
「謎の空間」、「三角形の歪な間取り」、「開かずのふすま」。
3つの「変な家」が、悍ましい真実を巡る事件の全容を明らかにする。
2巻
「私」の元に一通のメールが届く。
それは、「変な家」の投稿をみた根岸という女性であり、子どもの頃の自宅を歪さを思い出して相談してきたのであった。
当時の根岸さんの部屋の隣、そこには「行き先の無い廊下」があった。
何故か父親はこの廊下を作った理由を隠し、母親は娘に対する態度がどこか変であり、複雑な環境であった。
建設中の写真、そして謎の人形等、断片的な情報から推論を組み立てていく。
やがて11の変な家を巡り、ある共通点から1つの真実に繋がっていく。
登場人物
主人公。
動画版ではライターである雨穴氏本人が主人公。
漫画版もほぼ同様だが、紹介では「私」とされ、雨穴とは一言も書かれていないオカルト専門フリーライター。
映画版では「雨男」名義で活動するオカルト専門動画クリエイターで、売れないYouTuberとなっている。
変な家を取材していく中、それを動画にアップしては更なる謎と巡りあったりする。
なお、「雨宮」については実写映画版パンフレット等にて「雨宮トオル」というフルネームが明かされたが、作中で呼ばれるシーンは一度もない。
栗原に煽られて、「絶対謎を解いてやろう」と思う等、意外と負けず嫌い。
主人公の知り合いである設計士。
この作品における探偵役。
他愛もない会話から脱線してしまう程よく喋り、設計士としての経験と、僅かなヒントから違和感を見抜く洞察力、そして妄想と割り切るにはリアル過ぎる答えを導く推理力を併せ持つ。
雨宮と同じく実写映画版で判明した「栗原文宣」というフルネームが呼ばれることはなく、「栗原さん」とのみ呼称されている。
雨穴(私/雨宮)の投稿した「東京の家」の記事(動画)がきっかけで接触してきた女性。
どうやら殺害された「宮江恭一」の妻らしいのだが……
物語のキーパーソンとなる複数の事業で財を成した名家。
評価
全般
どの媒体でも評価は分かれており、基本的には現行の建築法では間違いなく成立しないであろう間取りなどに対して指摘が入ることが多い。
また、物語の後半からいわゆる「因習村」の要素に切り込んでいくため、本作品を単なる「変わった間取りを探るミステリー」だと思っている人ほど面食らう形になる。
本作の肝となるのは、作者オリジナルの因習やオカルト要素が、人間関係や間取りの背景に関わり、謎解きにより点と点が結び付く瞬間が醍醐味と言える(これは雨穴氏の他の作品も同様)。
漫画版
漫画版での主人公は「私」とのみ表記される。長髪で目の下にクマが少々ある若い容貌のオカルト専門フリーライター。性別が明確にわかる描写が一切無く中性のような見た目の人物であるため、(突っ込み的な意味で)「美形過ぎる」などと言われることも。
また、同作の栗原も俗に言う「イケオジ」の見た目であり、評価は分かれるようだ(同じく雨穴氏の作品『変な絵』の漫画版でも、若い頃の栗原はイケメンに描かれている)。
劇場版
劇場版では案の定というか物語に大きな改変が入っており、割合的にはホラーの要素が強い(なお、劇場版公式サイトにおいて川栄李奈が「ホラー映画ではない」とコメントしているが、一般的にはホラー映画に分類して差し支えない内容になっており、公開後のSNSでは怖かったという意見が散見された)。
それらを抜きにしても悪い意味での突っ込みどころも多く、原作を読み込んでいる人ほど「劇場版は変な家を理解していない」と捉える傾向にある。
一応擁護するのであれば、原作のような形式で劇場版を進めると見栄えの少ない会話劇になるのが目に見えているのだが……
それでも3日間の観客動員数34万4000人、興行収入4億7400万円と順調なスタートであり、各種メディア展開での改変はある程度は仕方ない部分もあるだろう。
最終的には劇場公開開始から約3ヶ月間上映が続いたシネコンも少なくなく、国内興収50億円突破という「実写の邦画としては年に1本の場合がほとんど」「実写映画版『キングダム』シリーズや『ゴジラ-1.0』の国内興収とほぼ同じ程度」というとんでもない事態になった。
製作費が「ゴジラ」「キングダム」シリーズより明らかに「桁からして違う」レベルで低い事やコアな映画ファンからはほぼ注目されていない映画である事を考慮すると、ある種の異常事態と言える。
他のものに喩えるなら「今年の人気アニメ」の1位か2位が、視聴率・配信での再生回数・グッズ売上などの統計上の数字だけならオタク層やコアなアニメファンが全く話題にしていなかった作品になるようなものである。
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