概要
本編のメインキャラクター、宮田司郎の義母。病弱な女性であったようで、本編時点では既に故人。『宮田医院』の院長夫人であると共に、宮田の病んだ精神を形成した張本人でもある。
外伝『羽生蛇村異聞』に登場し、彼女の主な行動の一部始終は、兄・牧野怜治と義理の息子・司郎の視点から語られる。
27年前、牧野家から宮田家に嫁いでいった涼子だが、体の弱さもあってか、彼女は子が出来ない体質であり、跡取りが産めない嫁として婚家では重圧を強いられていたようである。
その後待望の第一子・司郎を授かるが、難産でもあったのか、司郎の誕生と引き換えに涼子は二度と子を望めない体になる。ようやく得た跡取り息子ではあるが、女性としての機能を無くした事実は涼子を甚く打ちのめした。代償行為として司郎へ注がれる愛は周りから見ても痛々しいほどであったという。
そして運命の8月2日、儀式の失敗によって羽生蛇村は大規模な土砂災害に見舞われる。丁度その時司郎は乳母の家に預けられていたものの、乳母の家が土砂の下敷きとなり、司郎の生存は絶望的となった。
儀式を仕切っていたのは当然求導師である兄・怜治であり、その兄の失態で家屋敷は疎か愛する我が子まで失い、涼子は完全に精神を病む。悲しみに暮れる間も無く神代の遣いを言い渡され、涼子は兄に会いに来たものの、そんな惨めな妹の姿に怜治は掛ける言葉も無かった。
跡取りを無くした涼子と、儀式失敗による代替わりをしなければならなかった怜治。思い詰めた車上の兄妹の前に、ふと天から車と男が降って来る。例えではなく本当に降って来たのである。男は怜治の車のフロントガラスにぶち当たりずり落ち、怜治は目の前の唐突な出来事に対処できず、ずり落ちた男を車で轢き殺してしまう。
慌てる怜治を余所に、涼子が車を覗いた中には男の妻と思しき傷ついた女性と、彼らの子であろう双子の兄弟がいた。女性は正気を失っており、支離滅裂な譫言を残して息絶える。
後には兄弟だけが残るが、涼子は兄に「彼らを引き取って自分達の跡取りにしよう」と驚愕の提案をする。
当然困惑する怜治だが既に涼子の意思は固く、泣き出した片割れを女性から奪い取り、猛然と駆け出していった。
この時涼子に引き取られた赤子が、後に彼女の死児の名である『宮田司郎』の名を与えられて育つ吉村家次男・克昭である(残る片割れの長男・孝昭は怜治に引き取られ、牧野慶という名を与えられて育つことになる)。
その後の彼女の様子は『司郎』となった克昭の口から語られるが、彼女自身の精神は異常をきたしていた事もあり、自分の都合で引き取っておきながら、「お前は悪い子だから宮田の家に来た」「残った子は良い子だから教会の子になった」と無関係の孝昭まで引き合いに出して呪詛する、完全に「毒になる親」としての育て方をしていた。
克昭と親しくする人間の気配があると躊躇いなく仲を引き裂き、彼のお気に入りだった人形も取り上げて捨ててしまうなど明らかに異常な振る舞いを見せており、こうした涼子の心理的虐待によって克昭の精神は抑圧され、母や兄への憎悪で密やかに捻じ曲がっていくことになる。
兄・孝昭が怜治の死に伴って代替わりをする頃には、既に寝たきりになるほど弱っていたため入院していたが、最後まで“司郎”に対する認知は歪んだままだった。
なお、晩年の彼女に関する詳細(最期の様子)は不明。
リブート版『SIREN ReBIRTH』では、詳しい説明はなされていないものの、兄・孝昭が怜治の死に伴って代替わりをするようになる前から認知症(若年性アルツハイマー病)を患っており、それが原因で入院生活を送るようになった(口封じを命じられた克昭に抹殺された挙句ホルマリン漬けにされた)設定がなされている。
さらには、『司郎』となった克昭には「しつけ」として心理的虐待のみならず、「爪で刺し傷を負わせる」「平手打ちをする」などの身体的虐待を受けさせていたため、彼とは歪な親子関係(共依存)で繋がっていた(一部のファンから「克昭への躾の度を越えた虐待は、旦那であった宮田真一郎からの仕打ち(DV)を再現したもの」だと考察されている)。
その一方、克昭に「宮田家の闇のすべて」を教えた人物であることもあり、克昭は「母」としての愛情を僅かながらも与えてくれた彼女には思うところがある節を見せていた。