概要
アニメ「SK∞ エスケーエイト」に登場する、愛抱夢(神道愛之介)×菊池忠のBLカップリング。表向きは政治家とその秘書という主従関係にある。「愛菊」と表記することも多い。
プロフィール
本名 | 神道 愛之介(しんどう あいのすけ) | 菊池 忠(きくち ただし) |
---|---|---|
"S"ネーム | 愛抱夢(ADAM) | スネーク(SNAKE) |
誕生日 | 5月1日(おうし座) | 11月22日(さそり座) |
イメージカラー | レッド | グレー |
職業 | 若手人気政治家 | 秘書 |
CV | 子安武人 | 小野賢章 |
演 | 小波津亜廉 | 石渡真修 |
<年齢>作中の回想内容から忠の方が年上と考えられる。最終話時点で具体的な年齢は不明だが、アニメ本編の時期は「愛之介が高校生だったときから8年後」ということになっている。
<身長>共に180cm台前半であり、愛之介の方が高い。(アニメディア2021年5月号付録「せいくらべポスター」より。具体的数値は不明。)
関連イラスト
表と裏の顔を持ち過去回想場面も多いため、二人のビジュアルデザインは幼少期~成人期と主人公よりも種類が多い。
二人の歩み
※作中で断片的に描かれている二人の過去エピソードを時系列順でまとめる。未視聴の方はネタバレ注意。
元々、政治家の息子と使用人(庭師)の息子である二人。伯母たちからの虐待を受けて一人隠れて泣いていた幼い愛之介を、忠がスケートに誘ったことが二人の関係の始まりである。愛之介が忍んで忠に会いに来るようになり、二人は一緒に過ごすようになった。忠と過ごす中で愛之介は笑顔を取り戻していった。
高校生になった愛之介は『愛抱夢(アダム)』という二つ名を使って、ジョーやチェリーたちと共に夜の街でスケートを楽しんでいた。しかし、息子の夜遊びに業を煮やした父・愛一郎によって愛之介のボードが燃やされてしまう。焼却炉を見つめたまま何も言えない愛之介の後ろで、忠は愛一郎に何かを言い掛けたが、このときの忠は愛一郎の秘書となっており、主人の側につく他なかった。
愛之介にとって忠は幼少期から手を差し伸べてくれた唯一の相手であった。心の支えであった。そんな彼に裏切られた愛之介の心の傷は計り知れなかった。彼が忠の立場を分かっていたとしても……。
これを機に『愛抱夢』としての愛之介は危険なスケートを始め、他のスケーターを次々と潰していった。その噂を聞きつけたジョーとチェリーも彼の変化を知る。チェリーたちは危険なスケートを止めるように訴えたが、愛之介は譲らなかった。代わりに明日にもアメリカに発つため、チェリーたちとのスケートを卒業すると言い放った。近くに停めていた車の中で、忠もそのやりとりを聞いていた。
数年後、アメリカから戻ってきた愛之介は父親の地盤を継いで若手国会議員となる一方で、廃鉱山を舞台にした極秘レースの"S"を主催し『愛抱夢』としての存在感を高めていく。忠も昼は愛之介の秘書として、夜は"S"のスタッフであるキャップマンたちをまとめる立場となって愛之介を支えていた。
二人の関係は、昔とはすっかり変わってしまった。忠とやりとりをする度に、愛之介は彼を犬呼ばわりした。政治家としての活動に支障をきたさぬようにという忠の配慮に対しても、「差し出がましい、犬のくせに」と憎々しげに言い放つ。そんな愛之介に忠が反論することはなかった。
政治家としての愛之介の活動も綺麗事だけでは進まなかった。先輩議員・高野のために虚偽答弁を行ったことで、ダム建設の談合疑惑を追っていた警部補・鎌田貴理子に目をつけられていたのだ。やがて高野が逮捕され、愛之介自身にも危機が迫る。神道家が不安に包まれる中、愛之介は忠に自身の罪をかぶるように命じる。「不服か?」「いえ、私に意見はありません」二人のやりとりは、かつて父親にボードが燃やされたときの出来事を思い起こさせるには十分だった。
一方の"S"においては、トーナメント予選が始まるが、この予選に忠が参加していることに気が付いた愛之介は激高する。だが忠は怯まず、自分が参加したのは愛之介と戦うためであり、自分が勝ったらスケートをやめてもらうと言い返す。彼は悔やんでいた。自分が愛之介に間違った選択肢を与えてしまったと。他の趣味であれば愛之介はきちんとした家柄の子と友達になれたかもしれず、父親が止めさせることもなく、愛之介を傷つけることもなかっただろうと。だが、忠の行動に愛之介が納得するはずもなかった。
「今更お前がそれを言うのか!やってみろ、犬は主人には逆らえないとその体に教えてやる」
こうして"S"の世界における二人の関係も大きく変わろうとしていた――。
アニメ
※各回における愛忠に関する場面まとめ。補足説明含む。
1話
二人で夜の事務所内にいるのが初登場。忠が事務所のロッカーを開けると、その中に愛抱夢のボードが納められているのが分かる。
3話
※議員としての日常が窺える回。
愛之介が忠を伴い、MIYAがインタビューを受けている体育館を視察する。また、月曜からの通常国会の予定を告げる忠に「日曜の夜には外せないパーティーがある」と飛行機の時間を当日朝に変更するよう言い渡す愛之介の場面もある。
この回で愛之介は『愛抱夢』として暦たちの前に初めて姿を現し、暦とビーフを行うことになる。
※現実の地方選出の国会議員は、通常国会の期間中(おもに1~6月)の平日は東京に滞在し週末は地元へ帰るという者も多い。愛之介も同じような生活を送っているならば、アニメ本編が始まったのは春であり、二人が多忙な日々の中で"S"を行っていたことが推測される。
4話
※対暦ビーフ回。この回より急激に二人の存在感が増す。
この回で愛之介の3人の伯母たちが登場。愛之介の父親の存在も明かされる。自宅に戻ってきた愛之介に伯母たちが彼にもそろそろ嫁をという話題になった際、画像が目を伏せる忠の顔に切り替わる。(なぜ嫁の話で秘書の男をクローズアップするのか。)
明日の予定のためにビーフの延期を勧める忠に対して、愛之介は「差し出がましいな、犬のくせに」と憎々しげに言い放ち(作中初めての『犬』呼び)二人の関係に不穏なものを感じさせる。愛抱夢がビーフを行う間、忠が"S"のスタッフに指示を出す場面がある。
また、5話の次回予告には愛抱夢が登場し「僕は愛されるより愛したいタイプ」「僕は尽くす方だよ、存分に甘やかそう」「ちょっと束縛してしまうかもしれない」という発言がある。(ちなみにその相手はランガなのだが、暦と電話をしているという設定なのか愛抱夢の言葉は聞こえていない模様。)
5話
※対ランガビーフ回。
国会議事堂の中で愛之介に話しかける先輩議員・高野や彼らを見張る警部補・鎌田貴理子が登場。夜の空港に戻ってきた愛之介を忠が迎えに来る。「よくやった。ご主人様の言いつけどおりにな」と、ここでも愛之介が忠を犬扱いする発言がある。
ランガとのビーフが始まるも、彼に必殺技の「ラブハッグ」を破られて唖然とする愛之介と忠。そんなランガに対し愛之介は「見つけた、君こそが僕のイヴだ」と呟く。(作中初めてのイヴ発言)直後、鉱山に警察がやってきてビーフは中断。忠は愛抱夢を拾い車で現場から逃走する。その道中の会話から、愛之介が警察に手を回して鉱山を巡回から外させていたことが分かる。
6話
※暦たちの楽しい宮古島温泉回(表向き)
先日の取締が鎌田によるものと知る愛之介と忠。EDにも登場する神道家のプールでスケートをする愛之介とそれを見守る忠。この回で愛之介が忠を名前で呼ぶことが発覚。愛之介は再びランガと戦うために"S"でトーナメントを開催することを決める。
7話
※愛忠メインストーリーの始まり回。ここから、愛忠に関する過去回想が大幅に増える。
談合疑惑のある先輩議員・高野のために議会で虚偽答弁を行っていた愛之介は鎌田に目を付けられていた。その状況下でも"S"に行くという愛之介に忠は戸惑うが、愛之介に睨まれるとすぐに用意すると答える。愛之介はそんな忠に向かい「犬が」と短く吐き捨てる。
"S"の参加者の前にパラシュートで降下した愛抱夢が、トーナメント開催を知らせる。このときヘリコプターの操縦を忠が行っている。
高野の任意同行のニュースに不安がる神道家の使用人たちだが、忠が姿を現すと慌ててその場を去っていく。(忠に敬語を使っていたことから、彼の神道家の中での立場は低くはない模様。)高野の件を受けて、自分が偽証罪を問われた際はお前が泥をかぶれと忠に命じる愛之介。驚く忠だが「不服か?」と問われると「いえ、私に意見はありません」と返す。
※直後の回想で、高校生の愛之介は「今まで目こぼしてやってきたが、こんなお遊びはそろそろ卒業しろ」と、父・愛一郎にボードを燃やされていたことが判明。焼却炉の前で何も言えずに立ち尽くす愛之介の背後で、忠は愛一郎に何かを言いかけるも「私に意見はありません」の一言で終わってしまう。その過去を思い出したのか「だろうな、お前は昔からずっとそういうヤツだよ」と言う愛之介は忠に背を向けたままだった。
また、この回のチェリーの回想において、愛之介は高校生の頃から『愛抱夢』を名乗り、チェリーやジョーとも知り合いだったことが判明。その中で変わってしまったことを問いつめられた愛之介は、明日アメリカに立つことと、彼らとのお遊びを卒業することを告げる。このとき、近くの車の運転席には俯いている忠の姿がある。(つまり同時期から愛之介と忠も付き合いがあり、当時の忠が18歳以上であることが分かる。)
愛之介が変わってしまいチェリーやジョーを困惑させた原因が、この7話に詰まっており、愛之介と忠の二人も8年前から関係を拗らせていることが分かる。
一方で、8話の次回予告は愛之介と忠の仕事上のやりとりだったはずなのだが、「褒めろ!」「愛之介様は素晴らしい」「もっと!」「情熱的かつ大胆不敵」「もっと!!」「圧倒的な技量と美しさで他の追随を許さぬS界のカリスマ」「もっと!!!」と、ヒートアップしていく。本編での二人のやりとりを考えるとコミカルな作りになっており、二人が楽しそうで何よりです。
8話
高校生の愛抱夢は岩山のコースで危険なスケートを行い、他のスケーターに怪我を負わせていた。彼らを残念に思いつつ、愛抱夢は上弦の月を見上げて「どこかにいないかな、僕だけのイヴが」と呟く。
トーナメントの予選で同じグループになったMIYAに対し、自分はいつも滑る相手を愛していると言う愛抱夢。直後、幼少期の愛之介が伯母たちから虐待を受けていた回想が入る。あなたを愛しているからこうするのだと言う伯母たちに対し、「愛してくださってありがとうございます」と答える愛之介。
その後の予選において、『スネーク』という名前で参加した一人のキャップマンが愛抱夢の記録を抜き会場を沸かせる。彼の正体は忠だった。参加を許可した覚えはないと激高する愛之介に、忠は自分が愛之介に勝ったらスケートを止めてもらうと告げる。このとき愛之介にスケートを教えたのは忠であること、二人が幼少期から付き合いがあったことが判明する。(公式による愛忠燃料増し増しですが、この時点でも序の口です)苛立ちを隠せない愛之介は忠の髪をつかむと「犬は主人には逆らえないとその体に教えてやる」と言い放つ。(やはり犬呼ばわりは続くのだが、この時点で愛之介は忠と直接対戦するつもりだったのだろうか?)
高野の逮捕を受けて騒ぎ出す伯母たちを愛之介がなだめている頃、忠は一人プールの底に描かれたハートを模したマークを撫でていた。プール内を滑り出し宙を舞った忠の背後には下弦の月が浮かんでいた。
※冒頭の高校生だった愛之介が見上げていた上弦の月と対照的な演出であり、愛抱夢が探しているイヴとは忠なのではという憶測が一部視聴者の間で流れた。
9話
※愛抱夢VSチェリー回
チェリーの回想によれば、高校生の愛抱夢はチェリー、ジョーたちと共に夜の市場や街中でスケートを行っていた。「毎日が祭りのようだった。皆お前に魅入られて引っ張られて、時を忘れた」というチェリーの台詞から、愛之介は当時からカリスマ性を発揮していたのかもしれない。(しかし、パトカーに追われるような行為であることに変わりはない。)
二人の対戦を見ていた忠の「愛之介様は変わってしまった。私のせいだ、だから……」というモノローグとともに幼少期にバラ園の中で共にスケートを楽しんでいた愛之介と忠のカットが入る。(※必見です)
9.5話(総集編)
シャドウとMIYAの語りで1~9話を振り返る内容。
8話で突如現れたスネークについて「今度会ったら最初から全力で行く!」と喚くシャドウに対しMIYAは「正体不明、不気味なスケーター」「あいつの滑り、何となく愛抱夢に似てる気がする」と分析している。
また、愛抱夢についてシャドウは「派手な部分に目が行きがちだが、基礎がしっかりしてねぇと、ああはいかねぇ」、MIYAも「体幹も正確さも世界クラスだよ」と発言していることから彼を強敵と見なしているのがわかる。
10話
※忠メイン回
忠の回想。子供時代、神道家の夜のプールで一人スケートをしていた忠は庭の隅で泣いている愛之介に気づく。使用人の子供である自分が愛之介と親しくなるのはタブーだったが、子供だった忠はそこまで難しく考えていなかったのか、「一緒に滑りませんか」と愛之介をスケートに誘った。その後も、たびたび忍んで来るようになった愛之介と一緒にゴミ袋を運んだりスケートを教えたりといった忠の様子が描かれている。愛之介への伯母たちからの虐待の事実を考えると、「スケートは愛之介様の唯一の息抜きというより、命綱だった」と語る忠の言葉は重い。
だが、その後のボード焼却事件を受けて、他の趣味ならば自分ではなく、きちんとした家柄の子と友達になれたかもしれず、愛之介の父親が止めさせることもなかったと忠は悔やむ。愛之介に間違った選択肢を与えてしまったと考えた彼は、愛之介に勝って彼からスケート奪うため、"S"トーナメントに参加を決めたのだった。
負傷したシャドウの状況を確認するために病院に向かった忠は、道中、飛び出してきた暦とぶつかってしまう。忠は暦をラブホテルに運ぶと、札束の入った封筒を彼に差しだし示談を持ちかける。訴えたりしないと部屋を出ていこうとする暦に対し、忠はスケートなど止めておけとデメリットを語るも、暦は反論。「スケートをやる理由なんて一つしかないだろう。楽しいからだ!」と言い切る暦を見て、忠の中で幼少期の愛之介との楽しかった日々が思い起こされる。
11話
※愛抱夢VS暦
忠の回想。楽しそうにスケートをする子供時代の二人。10話の回想内容と比べて愛之介のスケートスキルが上達している。また、愛之介が乗馬を習っていること、忠を呼び捨てにしていること、プールの底と愛之介のボードにハートを模したマークが描かれているのが分かる。
現在の神道家で伯母たちに囲まれて朝食をとる愛之介と、少し離れたところから見守る忠。伯母たちの話から見合い話は進められている模様。高野の逮捕を受けて愛之介が所属する政党の沖縄県本部では、まだ若い愛之介を県連会長に推す声があがる。愛之介は父親亡き後、周囲から求められる存在となっており、そんな彼の唯一の安息であるスケートを奪ってよいものか悩む忠。だが、スケーター潰しが明るみに出れば愛之介は今の立場を失うことになるため、やはり自分が止めなければならないと強い意志を抱いてもいる。
ビーフ開始直後は優勢だった愛抱夢。だが、雨を味方につけた暦に先行され、ぬかるみに足を取られて転倒してしまう。これを観客と見ていた忠は絶句する。愛抱夢は自身の転倒が信じられず、水たまりに写る泥まみれの顔に自分の顔に衝撃を受ける。
ゴール付近で暦への歓声があがる中、忠は愛之介が負けるという可能性に愕然となる。直後、レジェンドとしての本気を見せた愛抱夢が猛追し勝利を得るが、彼を囲んだのは観客による暦コールだった。負けたにもかかわらず「スケートって超楽しい!」と叫ぶ暦の姿を見た忠は、同じように楽しんでいた幼い愛之介を思い出し、愛之介からスケートを奪おうとしたことは間違いであり、必要なのは、もう一度彼にスケートを愛してもらうことだったと気づく。
怒り心頭の愛抱夢は自身の前に立ちはだかる忠に、お前は次で片付けてやると告げるが、忠が棄権したことで愛抱夢とランガの決戦が決まる。
この回のみEDの愛之介の場面に変更があり、忠が画面をふさぐように手をひろげていた「NO PHOTO(撮影禁止)」の部分が、プールの端でバランスを崩した愛之介の元に、忠が素早くかけつけて抱きとめる「CATCH ME」になっている。
※CATCHとは主にキャッチボールなどでいうところの「つかむ」という意味があるが「つかまえる、逮捕する」という意味もあり、鎌田の追及も迫っていたことから最終回で愛忠はどうなってしまうのか、彼らを見守るファンは不安な気持ちのまま一週間を過ごすことになった。
12話(最終話)
<重要>EDが終わっても最後まで視聴すること。
嵐の影響で"S"のコースは使えなくなり、愛抱夢とランガの決戦ビーフは"S"が始まった当初使われていたという危険なコースに変更される。現地に着いたランガを待っていたのは、棺のボードと共に死神を思わせる衣装に身を包んだ愛抱夢だった。
ビーフが始まり、危険な応酬の中で滑り続ける二人。加速する中で愛抱夢はゾーンという極限の集中状態にランガを引き込むことに成功する。それこそが愛抱夢の言っていた、俗世のことを忘れスケートのことだけ考えていられる「二人だけの世界」だった。だが、スケートでゾーンに入ることは、周りが見えなくなる危険な行為であり、ランガはルートを踏み外して崖下に転落してしまう。
一方、ランガが付いてきていないことに気づいた愛抱夢は、やはり最初からイヴなどいなかった、自分のそばには誰も……とうなだれる。直後、正気に戻ったランガによって現実世界に引き戻される愛抱夢。スケートは仲間と滑るから楽しいと訴えるランガだが、ボード焼却事件の忠の裏切りを思い出した愛抱夢は、仲間になどいずれ裏切られるとランガを子供扱いする。だが、その愛抱夢自身が「二人だけの世界」にランガを連れて行こうとしたのであり、本当は誰かを求めているのだろうとランガは指摘する。これを受けて愛抱夢は激高し、両者は空中で激突、コース上に倒れ込んでしまう。
起きあがろうとする愛抱夢と、息をのんで彼を見守る忠。愛抱夢に「滑ろう、一人じゃ楽しくない」とボードを渡そうとするランガ。その姿を見た愛抱夢は自分をスケートに誘ってくれた幼少期の忠の姿を思い出す。その後も異次元すぎるスケートを続ける二人。愛抱夢は「楽しさなど何の役にも立たない、勝たなければ認められない!愛されない!」と喚くが、ランガと共に障害物を越えた瞬間、彼の脳裏には忠と共にスケートを楽しんでいた幼少期の光景がよみがえり、観戦していた忠も思わず身を乗り出して愛之介の名を叫んでいた。愛抱夢とランガは最後まで拮抗するも、先にゴールしたのはランガの方だった。
沸き立つ観衆から一人離れる愛之介は、彼を待っていた忠に呟いた。「とっくに捨てたと思っていたんだがな。教えられたよ、かつてお前が僕にそうしたように」その言葉で愛之介の変化に気づく忠。二人の頭上には満月が輝いていた。(7話の二つの半月が一つになった瞬間であろうか。)
EDの後日談。ランガの優勝祝いのパーティーに白昼堂々、パラシュート降下する愛抱夢。ヘリにはこれまでになく穏やかな表情の忠がいた。
一方、警部補の鎌田は転属を理由に愛之介の捜査から外されてしまう。実は、高野の情報を警視庁にリークしたのは愛之介本人であった。多少の火の粉はかぶらなければ疑われると、愛之介は自身が偽証罪に問われる可能性を放置していた模様。この事実を初めて知った忠が、ならばなぜ自分に泥をかぶれと言ったのかと愛之介に問うと、彼は振り向いて言った。
「首輪を外してやると思ったか?お前は、一生僕の犬だ」
この言葉に忠は目を見開いて驚きつつ、作中最高の笑みを見せた。
「はい!」
この瞬間、愛忠を見守っていた人々には聞こえてきたであろう、鳴り響くウエディングベルがね!
雑誌
キャラクター造形に関して
・「愛抱夢というキャラクターを考えていく際、その隣にもう一人、愛抱夢の真実=愛之介を知っている人間が必要だった(菊池がいなければ愛抱夢は独り言ばかり言っているキャラになってしまうし、Sの運営も一人では難しい。)あの愛抱夢が隣に置いておく人物としてのキャラクターや、隣に居続ける理由を考えた。」(2Di vol.72/大河内氏)
・「愛抱夢というキャラクターを描くにあたって彼がどうしてこうなってしまったのか、それを語る絶対に必要な人として『菊池忠』が生まれ、二人の関係性について詰めていったときに今の主従関係になった。愛抱夢がああいう人格に変わってしまった経緯を軸に決まっていった。」(アニメージュ5月号2021/内海監督)
※上記の雑誌インタビューより、監督、脚本家共に、愛抱夢を描く上で忠が生み出されたという点は一致していると思われる。「アダムとイヴ」の逸話の一つとして「アダムの体の一部からイヴが作られた」というものがあり、この話をなぞらえたようなキャラクター作りのエピソードである。
◆オトメディアSPRING2021(内海監督)
・(ボード焼却事件において)忠は愛之介を裏切ったことは理解していたが、あの頃は彼の父親の秘書だったので逆らえなかった。愛之介もそれをわかっていたが、それでも忠を信じていたからああいう表情をしていた。
・愛之介にとって忠は唯一手を差し伸べてくれた人で心の支えだったと思う。そんな存在に裏切られた心の傷は計り知れず、チェリーやジョーへの態度の変化も、その傷の大きさに関係している。
・幼少期に伯母たちから間違った愛を植え付けられているので、それが真実の愛だと思っている。スケートで対戦相手を潰しているという自覚は、本人に全く無く、愛ゆえの行為。
・(暦をラブホテルに運んだのは)忠は理にかなった行動しかしない気がするので、単純に人目につかない場所を選んだだけのことだと思う。
◆アニメージュ5月号2021(内海監督)
「イヴはすぐそばに」という特大の見出しと共に、愛之介と忠のこれまでの関係ついて特集が組まれている。「愛憎渦巻く物語を展開していた」「複雑な想いを抱えた主従」という紹介もあり、まさに「ようこそ、二人(愛忠)だけの世界へ!」状態。
・(二人に関して)最初ははっきり描き方が決まっていなかった。ストーリーを作る中で徐々に構築されていき、後半にようやくはっきり決まった気がする。
・愛之介には政治家としての表の顔と"S"での愛抱夢の顔があるが、忠に対するときはそのどちらでもない。「犬が」とか吐き捨てるような言い方は他ではしないが、そこが一番素が出ている。
・主人公ではないので(視聴者に)順序立てて見せていけるわけでない。断片的に見えてくる二人のシーンを観ていくと、だんだん紐解かれていくようになっている。
◆アニメディア5月号2021(内海監督)
・(将来設計がしっかりしているキャラは誰かという質問に対し)見た目的にしっかりしてそうなのは忠。愛之介ありきなので、彼が成功した上での自分の人生、という感じで考えていると思います。ただ、しっかり設計はすれど、その通りにいかずにダメになって目が濁っていく生き方な気がします(笑)
・(菊池にとっての愛之介について)かつての愛之介にとって菊池の存在は大きかったけれど、菊池にはその自覚はなかった。それは愛之介の特殊な境遇から生まれたものなので、菊池には想定できなかった。菊池にとっても愛之介は大事な存在ですが、愛之介とはまた違う思いなのかな。過去シーンでも秘書という立場上のラインから越えきれていない。
◆spoon.2Di vol.73(内海監督)
・(12話で「はい!」と言ったときの忠の表情に関して)あれが彼にとっての幸せだったというのが分かる表情だと思っていたので、(描く上で)ここの迷いは一切なかったそうだが、後で監督が周りに聞くと意外な反応をされた。菊池自体が語られるシーンがかなり限られていたこともあり、なかなか掴みづらいキャラクターだったせいかもしれない。
・(愛之介と忠の物語を最後まで描いてからの感想を問われて)もうとにかくややこしいな!というのが正直な感想です(笑)大人になってよりこじれているので非常に描きづらい。
・(愛之介が忠に「泥をかぶれ」と言った件に関して)「結局、愛之介は忠のことを試していただけ」
・主人の危機には必ず駆けつける忠。愛抱夢はそれに慣れている様子なので、割と何度もやっているのかもしれない。
◆アニメージュ6月号2021(内海監督)
・(愛之介と忠が)二人だけのままだともしかしたら、一生こじれたまま終わっていたかもしれません。暦やランガと出会ったことで絡まっていた紐が解けたような……完全には解けていない、玉がいくつか残っていそう。
・大河内氏によるシナリオ初稿によれば「お前は一生、僕の犬だ」に対して忠が「わん!」と答えていた。困惑した内海監督が大河内氏に尋ねると「え?違いましたか?」と言っただけで、どういうつもりで書いたのかは不明のまま。忠は無表情なキャラクターで設定にも笑っている表情がひとつもないので、あの満面の笑みはとても特別な表情。忠にとっては、あれが彼の幸せの形だったのかなと思っている。
・(忠はなぜ暦をラブホテルに運んだのか。)真相は脚本を書いた大河内氏のみぞ知る。(監督の解釈では)事故現場から一番近くて目立たない場所があそこだったのかなと。菊池は理にかなった行動しかしない人なので、もしかしたら秘密の隠れ家的な場所として、よく使っていたのかもしれないですね。
・(11話EDの愛之介を忠が受け止めるという流れはどのようにして生まれたのか。)愛抱夢は本編で大転倒していたので、違いが出る方が楽しいかなと思った。同じようにキャッチする動画を見つけて「これだ!」となった。菊池の失敗集があったら、きっと愛抱夢が止めるんでしょうね。ケガをされても困るから(笑)
◆アニメディア6月号2021
付録「もうそう婚姻届」キャラクター8人の簡単なプロフィールと結婚前アンケート(どんなプロポーズをしたいか、新婚旅行の行き先etc)、内海監督からの推薦文が掲載。
◆アニメージュ9月号2021
・(忠のネクタイの色について)最初は紺とか普通の色にしたが本当に地味で、何か差し色をと思い、ご主人様の色を入れたらいいかなと考えた。愛之介のネクタイの色を薄くしたピンクにした。愛抱夢の秘書という意味を込めた。(色彩設定担当・後藤氏)
・(このネクタイを選んだのは愛之介と忠、どちらなのか)少なくとも菊池の自分の趣味ではないとは思う。皆さんの想像にお任せします☆(内海監督)
◆アニメディア9月号2021(内海監督)
・(忠のカバンの中に必ず入っているものは?)愛之介のための物をいろいろ持っていそう。ヘアワックスや洋服クリーナー、鏡、リップクリーム、タバコを吸ったあとの匂い消しグッズなど、愛之介が必要なものを何でもすぐサッと取り出せるようにしているはず。
・(忠の私服に関して)プライベートは無難にファストファッションで買い揃えていそう。だだ、愛之介にそんな格好を見られたら、いろいろとうるさく言われるでしょうね。
◆アニメージュ11月号2021(内海監督)
「主従のあり方」というテーマで「物語を通して変化していく主従の二人を特集!」する同雑誌5月号以来の愛忠メイン企画。二人が吸血鬼と狼男に扮した描きおろしハロウィンイラストの付録ポスターがファンをざわつかせた。さらにこのイラストは、同誌2月号2022において応募者全員サービスのアクリルスタンドとなった。
◆アニメージュ12月号2021(内海監督)
犬系男子特集において、暦と共に忠が取り上げられる。
・(忠を実際の犬に例えるなら)主人のイメージからだとドーベルマンが浮かんだが、筋肉質な体つきや攻撃性のイメージがないので、黒の柴犬。「忠」は忠実なところからついた名なので、まさにぴったり☆
・(忠が犬化した場合、愛之介はどんな接し方をするか)ちょっと動揺しそう。自分が毎日ネチネチ言ったせいかもって。最初は受け入れられなくて遠ざかるが、謝罪はしない代わりに面倒はしっかり見そう。ご飯が豪華すぎてお腹こわす忠までがセット。
・(11月号のハロウィンイラストについて)構図の発注は雑誌社の方からで、鈴木Pからも「本当にこれやるのか」と確認が来たくらい、現場でもざわついた。本編において互いに主と犬の認知関係があるし、いいんじゃないかと軽率に判断できた。愛之介と忠の版権以来は、雑誌社からは初めてだった。
◆アニメディア12月号2021(内海監督)
・幼少期の忠なら(クリスマスに)お菓子をもらったら愛之介に分けてあげそう。
書籍
コミック「SK∞エスケーエイト チルアウト!」
ヤングエースUP(Webコミックサイト)に連載されていたトリヤス氏によるスピンアウトギャグ漫画。全1巻。アニメ本編の愛抱夢関連のエピソードに忠が関わるといったネタが多く、元々秘書なので違和感がない。
「SK∞エスケーエイト official guide book」
初の公式ガイドブック。A4フルカラーで見やすく、ハマったばかりの方におすすめしたい一冊。ストーリー&キャラクター紹介、設定集などがコンパクトにまとまっている。愛忠のプロフィール(年齢や好物など)も掲載されている。
「SK∞ design works」
bones storeより発売された公式設定資料集。線画、カラー、原案などの資料を500ページを越えるボリュームでまとめた一冊。愛忠のキャラクター原案、幼少期と学生時代の年齢や身長の設定、さらに神道家の屋敷やプールなどの詳細な美術設定もこれまで発表されたものの中で最大の掲載量といえる。
BD&DVD(完全生産限定版特典)
全6巻。各巻に2話ずつ、全12話が収録されているが、総集編である9.5話は収録されていない。また、各巻にドラマCDや資料集などの特典がついており、公式サイト及びTwitterにおいて試聴や特典BOOKの紹介の動画が配信されている。
以下、愛忠に関する見どころを紹介する。放送時のものに比べて二人に関する作画の修正も多いことから、是非実物の購入をオススメしたい。
第1巻
・ドラマCD「シンデレキ」
シンデレキ(暦)という娘が、ランガ王子と運命の出会いを果たすという、いわゆる「シンデレラ」の話に沿った謎の童話パロディ。愛抱夢は物語のナレーションとして、忠はランガ王子に仕える侍従長スネーク役として登場するのだが、終盤、この二人がまさかの展開を迎える。
第2巻
・特典BOOK1(絵コンテ・原画集)
絵コンテの製作者インタビューに愛忠の二人の体格差についての言及がある他、11話EDの"その後"について内海監督のコメントがある。
第4巻
7話8話が収録されている巻であり、オーディオコメンタリーには忠役の小野氏が参加(=忠の話が多め=愛之介の話も多め)。また、描き下ろし四コマのチルアウトも愛忠メインの内容となっている。
・特典BOOK2(キャラクター設定資料集)
主要キャラクター8人のプロフィール(好物、趣味・特技など)や、一日の過ごし方(監督のコメントつき)が紹介されている。※フルカラーです。
第5巻
待望の神道邸の背景設定が掲載。サンルームや愛之介の部屋の詳細を知ることができる。
・ドラマCD「ホストクラブSK∞」
No.1を夢見るホスト・暦が、自身が勤める「SK∞」に転校生のランガを誘ったことから始まるストーリー。愛抱夢は店のNo.1として、忠は店の黒服として登場するのだが、二人の中の人による過去回想部分など、聞き所の多い作品である。
第6巻
・特典CD
暦、ランガ、愛抱夢役の声優3人による座談会が収録。子安氏による「一生僕の犬」収録時の裏話が聞ける。また、12話劇中歌「Behind the Mask」のフルVer.と子安氏が歌う日本語詞Ver.も収録されている。
・描き下ろしB2タペストリー(愛之介&菊池)
Amazon.co.jp限定商品のBD&DVD全巻購入特典。赤いバスローブを羽織った愛之介とタオルを持ったスーツ姿の忠の二人がバスルームの鏡に映っているイラスト。
舞台『SK∞ エスケーエイト The Stage』
2021年12月2日から上演された舞台作品。愛之介を小波津亜廉、忠を石渡真修が演じた。
アニメ1~6話の内容に基づく第一部(The First Part ~熱い夜のはじまり~)と7~12話の内容に基づく第二部(The Last Part ~俺たちの無限大~)の二部構成。
第一部は予定通りに上演され、内容的に愛之介と忠の登場が多いと思われる第二部の上演も心待ちにされていたが、新型コロナウイルス感染症流行の影響で中止となった。
その他
「SK∞エスケーエイト」∞の日スペシャルイベント
2021年8月に開催、配信もされた。事前に行われた名シーン投票で12話の「一生僕の犬」の場面が第3位に選ばれた。その際、イベントに登壇していた大河内氏本人によって、どのような考えであの場面の脚本を書いたのかという制作裏話が披露された。