概要
『諸国百物語』に記されている怪異で、「ばけ物に骨をぬかれし人の事」という物騒なタイトルのお話である。
京都の七条河原(しちじょうかわら)あたりに化け物が出ると評判の墓地があり、若者たちがそこで肝試しをすることになった。
ある若者が墓地にやってきて証拠の杭を打ち、印の紙を張って帰ろうとしたところ、突如身長2mもあろうという煤けた顔の老人が現れた。突き出した手のひらには目が一つついており、物凄い勢いで走ってきた。
「ば、化け物だーッ!!」
若者はそう叫んで死に物狂いで逃げ、近くの寺の長持ち(衣服などを保存する長方形の箱)の中へと隠れた。寺の僧は何事かと思ったが、ただならぬ気配に自分も物陰に隠れた。
寺へとやってきた化け物を見れば、顔は老人だが二本だけ突き出た出っ歯が異様な怪物である。僧は震えながら見ていたが、やがて長持ちのあたりから犬が骨をかじるようなボリボリという音と呻き声のようなものが聞こえ、化け物はそそくさと去っていった。僧がおそるおそる長持ちを開けると、逃げてきた男が皮だけになって死んでいたという。
これは「手の目」の話の一つとして紹介されることもあるが、水木しげるは「手の目かじり」として別枠の妖怪としている(そもそも原典では名前の無い妖怪)。また、鳥山石燕は、この話を元にして「手の目」を描いたとされる。
というか、人を食べるという展開が強すぎて「手に目がある」という特徴が二の次になってしまっている。
創作における手の目かじり
水木しげる作品
- 妖怪画
伝承通りの特徴を持った老人の大男で描かれており、目が老人とは思えない程にらんらんと輝いている。