概要
少女漫画『風光る』に登場する斎藤一×富永セイのカップリング。
本編では主人公・富永セイを助けた沖田総司とのなかなか縮まらない恋愛模様が史実を再現しつつ進んでおり、いわゆる公式カップリングではない。
ただ、本編における斎藤とセイには様々な縁を作者が持たせている。
斎藤は作中でもメインを担う役柄でもあり、そのありようから固定ファンや隠れファンも多くいるが、公式カップリングが根強い人気があることから表立って騒がれることが少ないカップリングではある。
本編での関係
兄との接点
本編では富永セイが男装して新選組に入隊することから始まる。名前を「神谷清三郎」と偽り、自分を男であると偽る。入隊後まもなく、帰隊した斎藤一との会合に神谷は驚く。
斎藤の声が敬愛していた自分の兄に瓜二つだったからである。
死別した兄と重ね思わず抱きつくが、無論当時は無下にされている。
神谷清三郎の苗字「神谷」という名に聞き覚えのあった斎藤は自身の江戸での記憶を探る。
すると、懇意にしていた道場でセイの兄祐馬と知己の中だったという事実が判明する。
「無念桜」という名の斬首された人の首のように散っていく桜のことを祐馬から教えられていた斎藤は、同じく無念桜を兄に教えられたセイと思い出を共有する。
敬愛していた兄の友人であり同郷であり、兄に似た声である斎藤を「兄上」と慕いだすのも無理がない話である。
斎藤の気持ちの変化
当初、斎藤はセイを「友人の弟」として「後輩の隊員」として見ていた。
セイが「男である」ことは疑っていなかった。
沖田総司に懐き、どんなに厳しくされても血を流しても涙にくれても決して曲がることなく歩んでいくセイを認め始める。
努力を讃え師の沖田についていく姿に感銘を受ける。
「先生」や「兄上」と自分を慕い、自らを泣き場所としてくれるセイに斎藤は好意を抱き出すが、自分がで衆道でないことから、自分の心にあふれる恋慕に大きく戸惑う。
気持ちが肥大すると顔が真っ赤になり鼻血を出し始める自分を「平常心」と言って心を沈め続けたのは最早本編での大きな見どころのひとつでもある。
セイとの交流
セイを男と疑わない斎藤は、大きく膨らんだ袴越しのセイの股間に触れ驚く。
なんと立派な…!無論セイは女なので股間には何もないが、触った時偶然「お馬(生理)」がきてたことから詰め物をしていたため、斎藤を更に混沌に巻き込むことになる。
また、お馬の処置法を教えた遊女のお里は兄祐馬の婚約者であったこともあり、セイの正体を知っており、お馬の期間はお里の店で体を休めている。(新選組には女遊びに耽っていると思わせている)
そのため盲目となった斎藤には「体が小さくかわいいおなごのような体をしたかわいい男子」のように写っている。
己の衆道ではないという反目と彼は長い間戦うこととなるのである。
告白
史実でのとおり、斎藤は御陵衛士に間者として潜入するため、新選組を抜けることになる。
実際は副長の土方歳三と話し合い、役目を終えたら帰隊する運びとはなっているが、それを仲間内の誰にも告げていない。ちなみに沖田は察しているようだ。
その少し前、ついに斎藤はセイが女であると認識する。
自分が衆道でないという安心と、見たまんまなのになぜ気付かなかったのかという苦悶もあったが、心を決める。
脱隊が間近になったある夜、斎藤はセイを二人きりで呼び出す。
「神谷を借りる。二人きりで相談したいことがある」沖田とセイの恋(?)を応援している隊員は斎藤がセイを呼び出したことに狼狽える。
「困らせるとわかっているのに、それが永遠の別れを招くやも知れぬのに、時に闇雲に打ち明けてしまいたい衝動に駆られるのだ」
「向こうは俺の事などまるで眼中にないのだから」
それにセイは「どういう目をしているのですかその女は。兄上以上にいい男など滅多にいやしないのに」と返す。
そしてそれに「今俺の目の前にいる」と返しセイのファーストキスを奪う。
そう、セイのファーストキスは斎藤である。(ただ2回目のキスとなる沖田とのキスは数ページあとにあるというのもおもしろい)
斎藤が動いたこの巻は大きな波紋を産んだのもあり、ファンの記憶に強く影響を与えた。
御陵衛士
御陵衛士となり脱隊したことにセイは大きなショックを受ける。
自分を責めるが、沖田にそこは叱られる。
数ヶ月ののち、油小路の変のあとに「山口一」として帰ってきた斎藤を以前のようにキスのことを忘れたかのように「兄上」と呼び慕うセイに複雑な気持ちを抱く斎藤である。
斎藤の恋心は未だに消えてはいないが、沖田とセイの関係に進展が見られたことと史実が苛烈を極めてきたこともあり、この三角関係がどのように進展していくのかもファンの大きな楽しみの一つである。