概要
新撰組参謀伊東甲子太郎は熱心な勤皇家であり、局長の近藤勇とは思想を異にしていたとされる。
慶応3年(1867年)3月、伊東は前年に崩御した孝明天皇の陵墓を警護する「禁裏御陵衛士」を拝命。これを大義名分とし、また薩摩や長州の動向を探るためとして新撰組を離脱。以前より伊東の同志であった面々の他、数名の隊士がこれに加わる。
また高台寺を拠点としていたことから、高台寺党とも呼ばれた。
主な活動内容は、各地に出向いての情報収集、他の勤皇家たちとの意見交換など。
勘違いされやすいが朝廷直属の組織ではなく、あくまで幕府山陵奉行・戸田忠至の管轄下であった。
薩長の動向を探るための「新撰組の別働隊」という名目だったが、伊東をはじめ御陵衛士は逆に薩長と接触して倒幕運動に勤しんでおり、更に間者(スパイ)として潜り込んでいた斎藤一から、近藤の暗殺を目論んでいるという情報が届く(諸説あり)。
当然ながら新撰組からは敵と内通する裏切り者と見做され、11月18日に伊東が近藤勇の妾宅に呼び出されたその帰り道、油小路にて待ち構えていた大石鍬次郎らによって暗殺された。御陵衛士は伊東の遺体を引き取りに向かうが待ち伏せていた新撰組と戦闘になる。藤堂平助、服部武雄、毛内有之助が討死し、他のメンバーは薩摩藩邸などに逃げ込んだ。（油小路事件）
これにより御陵衛士は解散し、残党は戊辰戦争を新政府側として戦うことになる。
構成員
| 伊東甲子太郎 | 盟主。元新撰組参謀。油小路事件で暗殺される。 |
|---|---|
| 鈴木三樹三郎 | 伊東の実弟。元新撰組九番組長。後に赤報隊二番隊長。 |
| 篠原泰之進 | 伊東の江戸以来の同志。元新撰組監察方および柔術師範。新選組や御陵衛士に関する貴重な回顧録を残す。 |
| 藤堂平助 | 伊東の門弟で元試衛館(近藤)派。元新撰組八番組長。油小路事件で討死。 |
| 斎藤一 | 元新撰組三番組長。新選組の間者(スパイ)であったとされ、御陵衛士を脱走し新選組に戻る。 |
| 服部武雄 | 伊東の江戸以来の同志。元新撰組監察方および撃剣師範。沖田総司らに並ぶ剣の達人とされ、油小路事件では二刀流を使い凄絶な最期を遂げる。 |
| 毛内有之助 | 元新撰組監察および文学師範。油小路事件で討死。様々な特技に秀でていた。 |
| 加納鷲雄 | 伊東道場の門人。元新撰組伍長。流山で投降した近藤勇の正体を暴いた。 |
| 富山弥兵衛 | 薩摩藩出身。元新撰組伍長。墨染で近藤を銃撃した。斥候として黒田清隆に用いられるが、会津にて旧幕府方に捕まり殺害された。 |
| 阿部十郎 | 元新撰組砲術師範。芹沢鴨暗殺の前後に一度脱走したが、谷三十郎らの取り成しで復隊を果たす。しかし伊東に付いて再び離脱。 |
| 新井忠雄 | 伊東の「親しき友」。元新撰組監察および撃剣師範。維新後も斎藤とは交流が続いたとされる。 |
| 内海次郎 | 伊東道場の師範代。明治2年の御陵衛士墓碑建立に立ち会うが、その後消息不明。 |
| 橋本皆助 | 元天狗党員。御陵衛士から陸援隊に派遣される。油小路事件後も陸援隊として行動。明治4年に病没。 |
| 中西登 | 伊東道場の師範代。御陵衛士には加わらずそれより以前に脱走したという説もある。佐原太郎を殺害したという説があるが詳細は不明。 |
| 清原清 | 元新撰組砲術師範。伊東らより先に新選組を脱走し、御陵衛士に合流したと思われる。流山で投降した近藤の正体を暴く。会津白河口の戦いで戦死。 |
| 佐原太郎 | 伊東らより先に脱走し、御陵衛士に合流したと思われる。中西登に殺害されたという説があるが、詳細は不明。 |
| 江畑小太郎 | 伊東らより先に脱走し、御陵衛士に合流したと思われる。赤報隊に参加したとされるが、その後の消息は不明。 |
その他
| 佐野七五三之助 | 江戸以来の同志。当初御陵衛士には参加せず間者として新選組に残っていたとされる。後に合流しようとするが、脱走に失敗し自害。 |
|---|---|
| 茨木司 | 佐野とともに御陵衛士合流を図るが、失敗し自害。文武優秀で近藤にも気に入られていたという。 |
| 中村五郎 | 佐野とともに御陵衛士合流を図るが、失敗し自害。 |
| 富川十郎 | 佐野とともに御陵衛士合流を図るが、失敗し自害。 |
| 司馬良作 | 新撰組文学師範。伊東とともに離脱したとする史料があるが、実際には御陵衛士に加わっていない。海外留学が認められて離隊したという記録もある。 |
| 三井丑之助 | 戊辰戦争の途中江戸にて脱走した後、薩摩藩軍に用いられる。元御陵衛士らとともに大石鍬次郎捕縛などに協力した。 |
| [[]] |
創作
御陵衛士(伊東派)を主題にした作品
- ABURA NUMBER8(原著)、貘九三口造(イラスト)
