「・・・あーーーー死にたい・・・」
「・・・あーーーーまったく死にたくなるねぇ・・・」
「・・・ようやくだぁ・・・ようやく死ねる。」
CV:津田健次郎
概要
蜜月を除くと、蟲狩として初めて蟲奉行所に接触した人物である。
その実力は高く、仲間からも警戒されるほどである。
風貌
他の蟲狩のメンバーと同じ銀色の髪を持ち、斜めに切りそろえられた前髪で左目が隠れ、後ろ髪は腰に届くぐらい伸びている。白装束を身にまとい、その下には無涯や蟲狩のメンバーと同じく、独特の細身の鎧を装着している。丸まった背中に病人のように青白い肌、こけた頬、深い隈、光のない虚ろな目、そして常に携えた大きな鎌のような武器により、その容姿はさながら死神あるいは幽鬼を彷彿とさせる。
人物像
一言でいうと「死にたがり」。「死にたい」が口癖になっており、何かあればうわ言のように呟いている。「こんな不条理な世界で生きるなんて拷問」と体を打ち震わせながら訴えており、この世そのものに相当嫌気がさしているようである。本人曰く寂しがり屋で、「あの世への道連れは多いほうがいい」と言って、一人でも多く蟲奉行所の者を殺そうとした。そんな彼が蟲狩として生きている目的は「蟲奉行を殺すため」及び「常世の蟲を含めたすべての蟲を殺すため」。その目的につながる行動が成功に近づくと「もうすぐこの世とおさらばできる」と歪んだ笑みを浮かべる。一方それを達成するまでは死んでも死にきれないらしく、実際に殺されかけた時には「俺が死んじまったらどうするんだよ!!?」と怒り狂っていた。死にたがりの彼が死ぬのを我慢して遂行しようとしているあたり、その目的に対して並々ならぬ執念が感じられる。何に対しても無気力かつけだるげな彼だが、仲間からの指示には素直に従ったり、蟲狩のメンバーのことは大切に思っている。
元々は心優しく思いやりのある性格だった。上記のような死にたがりの性格も、「大好きだった死んだ人たちに早く会いに行きたい」という願いが歪んだもの。彼の行動はすべて、死んでいった人たちに大手を振って会いに行くためのものである。
戦闘能力
武器 | 極楽鎌→葬鎌(そうかま)→葬忌鎌(そうきかま) |
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武器は槍ほどの長さの多節棍の両端にそれぞれ大鎌を取り付けたような形状をしている。一見竹と鉄でできているようだが狩った蟲の素材で構成されている。そのまま使うことはなく、鎖鎌のように伸ばして近距離・中距離武器として使用する。その切れ味は蟲狩のメンバーも近くにいたら危険が及ぶほどで、初登場時には蟲奉行所の大型船を細切れにした。その後も新たな素材で改良を重ねており、蟲人の使用する大砲の砲身や砲弾も難なく切り刻んでいる。蟲狩特有の高い身体能力に加えて本人の実力も相当なものであり、無涯と互角に渡り合い、白榊夢久を圧倒して至近距離からの射撃もたやすく防ぐなど、高い実力を見せつけた。至胴、蒼顔との同時攻撃である「参連蟲殺し」という連携技も持つ。基本的に正面からの直接戦闘が主だが、船上の先頭において海上に事前に油をまいておき、戦闘中火をつけて敵を包囲するなど用意周到な一面もある。
過去
かつては無涯やほかの蟲狩メンバーとともに、大昔常世の神を斬った豪族・秦河勝の末裔である蟲狩の里、「小里村」に住んでいた。元々メンバーたちとはよく一緒に遊ぶ仲で、蟲狩参謀・鳰紫(かいつぶりむらさき)が講師を務める村塾に通っていた。村のことが大好きであり、暇さえあれば村中の畑仕事を手伝っては村民に感謝され、有虚には「菩薩か?」と突っ込まれたほど。おそらく仲間たちの中で一番、村や村人のことが大好きだった模様。
しかしある日突如村に「黒い蟲」が大量に襲来。村の全てを蹂躙し尽くしてしまった。本人は蟲からの直接的な被害は受けていないようだが、目の前で大好きな村が破壊されるのを見て慟哭を抑えられなかった。蟲がいなくなった後も地面に倒れながら泣き叫んでいた模様。おそらくこの時点で精神的に異常をきたし、上記のような「死にたがり」につながったと思われる。その後紫の提案で仲間とともに村に伝わる秘薬を服用。壮絶な苦痛に耐え抜き、髪の色が黒から銀に変貌、蟲狩としての力を手に入れる。そして蟲をこの世から根絶することを誓った。
本編終盤において(ネタバレ)
真田幸村を討ち取り、江戸に平穏が戻ったかに思えた冬、江戸郊外に大量の黒い蟲と常世の蟲が蟲奉行を伴って襲来。市中見廻り組と蟲狩は共同戦線を張ることになる。その際、蟲奉行が自身を天羽久斬剣で貫き、常世の蟲は滅ぶかに思われた。しかし常世の蟲は蟲奉行に預けた力を取り戻し覚醒。市中見廻り組と蟲狩は一気に劣勢となる。
そこで紫が語り始める。自分が常世の蟲信仰教祖「大生部多(おおうべのおお)」であること、目的が常世の蟲の復活であったこと、そして蟲狩を利用するための動機付けとして村を黒い蟲に襲わせたということ。激昂する蟲狩の面々だったが、大生部多と取引をして蟲の力を手に入れた蟲狩の一人・骸骨に圧倒され、次々と殺されてしまう。未那蚕も至胴とともに斬りかかるも押し負け、至胴も殺害される。かつて蟲により失った顔を取り戻すために仲間を裏切り、それを何とも思わず顔が戻り喜ぶ骸骨。有虚は怒りすら忘れ、かつての仲間のむごすぎる仕打ちに涙を流し呆然とする。その姿を目にして未那蚕は激怒し、骸骨に再び斬りかかり顔に傷を負わせる。しかし新たに得た蟲の力により傷口から大量の毒液が放出。危険を察知した未那蚕は咄嗟に有虚を突き飛ばし庇う。大量の毒液を全身に浴びた未那蚕はその場に座り込んだまま絶命してしまう。亡くなった蟲狩の中では最後に死んだメンバーだった。
その後最終決戦前に、生き残った真白の手により死んだ蟲狩たちの骨は無涯に託され、塵外刀を鍛えなおすために使用される。この時未那蚕の頭蓋骨は半分溶けた状態になっていた。
余談
ちなみに彼が蟲狩になってから初めて手にした武器は鎌であった。そして村が滅ぶ前、村中の畑仕事をしながら常に握りしめていたものも鎌であった。彼にとって鎌とは本来命を奪ったり戦いに使用するものではなく、大好きな村人たちの役に立つための思い出の品だった。