概要
天罡星三十六星の天傷星の生まれ変わりで、序列第十四位の好漢。
あだ名は「行者(ぎょうじゃ)」。由来は彼が修行者(=行者)の姿をしていたため。
精悍な顔つきで2mを超すほどの大男で、非常に喧嘩が強い拳法の使い手。行者に化けてからは二振りの戒刀を得物とし戦場では二刀流を使う。普段は物静かで理もわきまえ弁も立つ人物だが一旦スイッチが入ると激変する。また非常に酒好きであるため、それがもとで揉め事を起こすことが多い。
『水滸伝』の中では非常に人気がある好漢の1人であり、彼が活躍する第二十三回~第三十三回は「武十回」と呼ばれる。
この「武十回」序盤から分岐したのが水滸伝と同じ四大奇書の一つである『金瓶梅』であり、こちらにも登場し梁山泊関係者では唯一の主要人物になっている。
来歴
水滸伝
当初、武松は清河県で暮らしていたが、酒が原因で役人を誤って殺してしまったため、滄州の柴進のもとに身を潜め宋江と出会っている。あとでその役人は実は気絶していただけと知ると、すぐに清河県に戻ろうとした。しかし道中において陽穀県の景陽岡で虎と遭遇し、酔った勢いもあり素手で虎を殴り殺した。偶然にも虎退治したことで陽穀県の人々から英雄視された武松は知県から県の都頭に任命される。
陽穀県の都頭になった武松は、そこで偶然にも兄の武大と出会い、そして彼の妻の潘金蓮とも知り合う。しかし、武大は潘金蓮と彼女の浮気相手である大商人の西門慶によって毒殺される。それを知って激怒した武松は2人を殺すとすぐに自首し、流罪となった。
その後、流罪先の孟州で再び騒動を起こすと、以前知り合った居酒屋夫婦の張青や孫ニ娘の勧めで行者に変身し魯智深や楊志がいる青州の二竜山へ向かいそこに住み着いた。そして、二竜山討伐に来た呼延灼率いる軍を梁山泊や他の青州の山賊達と協力して撃ち破り、その勢いで青州城も落とすとそのまま梁山泊に合流する。その後は梁山泊軍の歩兵軍頭領の一人として官軍との戦いや四寇(遼・田虎・王慶・方臘)討伐でも活躍した。
しかし、睦州城攻めで方臘軍の道士・包道乙の妖術により左腕を失い戦線離脱。都への凱旋軍にも加わらず魯智深や林冲の墓がある杭州六和寺で80歳まで過ごし生涯を終えた。
金瓶梅
こちらでは西門慶を討つつもりが他人を誤殺してしまい西門慶の策略によって孟州に流される。ここからは水滸伝と大きく異なりのち恩赦に浴して帰郷。西門慶と金蓮を狙うも西門慶はすでに病死していたため金蓮を討つことを考えた。その後、西門家を追い出されていた金蓮が売りに出されていたので買い取る。しかしこれは策略でありのちに金蓮や手引した王婆を討ち果たし、その後梁山泊に上るところで物語から消える。
まんがグリム童話版では金蓮のライバルである李瓶児に利用されたり金蓮に謀殺されそうになっている。