概要
2011年-2015年にかけて東方創想話で発表された東方Projectの二次創作小説。作者は木質氏。
全13話。第8話で一度本編を終了した後、続編4話と後日談1話が投稿された。
妖怪の山を舞台に、シビアな天狗社会を生きる白狼天狗・犬走椛とその周囲の人妖を描いた一大群像劇である。
緻密に作り込まれた世界観、軽快なギャグと容赦の無いシリアスな展開を織り交ぜたストーリーで、当サイトに投稿されたSSでも評価が高い。
pixivでは白岩@氏によるコミカライズ版が投稿されている。
登場人物
◆天狗一派
本作における大きな特徴として、天狗の種族間で陰惨な差別・迫害があるという設定が挙げられる。東方Project原作においては鴉天狗/鼻高天狗/山伏天狗/白狼天狗の4種族がいるとされ、中でも白狼天狗は「下っ端」とされているが、本作ではこの部分がかなり拡大解釈されており、彼等の境遇は目を背けたくなるほどに悲惨。
そんな負の歴史を超えた主人公たちの関係性が大きな見どころとなっている。
主人公。白狼天狗の哨戒部隊に所属している。後半では隊を1つ受け持つこととなった。
本作においては上層部の陰謀により一族を虐殺され、消滅した白狼天狗の里でただ1人生き残るというこの人並に壮絶な経歴となっている。その後は大天狗直属の部下として汚れ仕事を請け負い、心身ともにボロボロになりながらも過酷な半生を生き抜いてきた。
百戦錬磨の古強者であり、白狼天狗でも桁外れの強さを誇る。代わりに極貧の中で生きてきたためお洒落や流行には疎い。
長いこと天狗社会の闇の部分に身を置いてきたため、当初の性格は極めて厭世的。しかし文やはたてとの交流を通じて少しずつ変わっていく。
準主人公。椛とは守矢神社が引っ越してきた頃に知り合った。
二次創作では食えない存在として描かれることの多い彼女だが、本作においては毒気はかなり薄め。かなり早い段階で椛に熱烈な好意を寄せるようになる。コメディリリーフ的な立ち位置でありギャグシーンが多いが、時折見せる聡明さは流石千年天狗。
原作でも実力者とされるようにポテンシャルは高く、身体能力は椛に引けを取らない。
作中後半では守矢神社が巡らす策謀に対して独自に立ち回り、続編では椛を救うため奮闘する。
準主人公。椛とは作中序盤で知り合う。
本作では古い因習と無縁の若い世代として描かれている。少々世間知らずなところがあるものの、純粋で誠実な性格。
バイタリティーは椛/文に及ばないが、過重力環境にも適応したり、モールス信号を判読できたりと無駄にポテンシャルが高い。中盤では秋姉妹から体術の稽古をつけてもらう一幕も。
当初は引きこもりで精神を病んでいたが、文と椛のおかげで社会復帰。交流を深めていくうちに天狗社会の闇と椛が置かれている状況を知り、彼女を助けるために奔走する。
終盤で秘められた能力、ひいては自身の複雑な生い立ちが明らかになる。
- 大天狗
本作オリジナルキャラクター。椛の上司。
天狗社会を統括する大ボスで、彼女自身も一騎当千の女傑。しかし見事な喪女で、ギャグパートでは婚活に邁進するも成功したためしが無い。挙句後半ではヤンデレめいた後輩にストーキングされるように…
実は椛を闇社会に放り込んだ張本人。両者の間には浅からぬ因縁があるのだが、同時に彼女にとって最大の理解者ともなっている。
作中後半で天狗社会の代表として守矢神社と対峙する。
なお、本作第1話が投稿された10年後に原作においても大天狗が登場することとなる。
- 天魔
本作オリジナルキャラクター。天狗社会の頭領。
幼い容姿をしており、嗜好も子供っぽい。しかし種族の長だけあって大変に聡明であり、天狗社会をまとめ上げるカリスマ性を持つ。
椛、文、はたての良き理解者であり、何かと目をかけている。
作中後半では大天狗と共に守矢神社と対峙する。
- 椛の先輩
本作オリジナルキャラクター。故人。
闇の任務の最中に椛を庇って命を落とした。
苦しい境遇の中でも常に希望を見失わない好人物として描かれており、死後も椛にとって人生の師となっている。
クライマックスでの邂逅は必見。
◆守矢神社
本作のヒール役。信仰獲得のために様々な策謀を巡らせ、天狗社会と衝突する。
守矢神社の主神その1。
本作では血も涙もない策略家として描かれており、計画の為なら早苗を利用する事も厭わない。
常に勝者となってきた彼女だが、そのせいで最後は足元を掬われることになる。
守矢神社の主神その2。
神奈子ほど表立って活動しないがやはり冷徹で、しかも椛を躊躇なく拷問にかけるなど残虐な性格の持ち主。
しかし早苗すら手駒として扱う神奈子に対しては思う所もあるようだ。
守矢神社の風祝。
二柱と異なり陰謀とは無縁。純粋無垢な性格の今作のヒロイン。
椛に好意を寄せるものの、二柱に対しては常に忠実。
◆その他
椛の友人。ちょっと臆病だが善良な性格。
自分の工房をダンジョン化させているほか、やたらアグレッシブなロボットをしょっちゅう生み出している。
要所要所で椛をアシストする。
山に棲む厄神。
本作ではどの勢力にも属さず、淡々と事態を見守っている。
チョイ役で登場。初登場時、地上を訪れた彼女を椛とにとりが急遽接待することになる。
少々無神経なところがあるが、根は悪くない人物。
河城みとりと共に地底へと逃れた椛を助けた。
余談
作者の木質氏は後にライトノベル「サイコパスガール イン ヤクザランド」を手掛けている。