概要
生活保護制度の保護費を正しくないやりかたで受給することである。十分な資産があるのに資産がないと嘘をついて生活保護を受給する行為などがある。
昨今の報道などにより、生活保護の不正受給が目立つようになり、生活保護受給者=不正受給者という風潮がみられるが、実際は全生活保護世帯に対し、不正受給が見られた家庭は、平均して2.5%前後である。金額ベースでは0.5%である。
つまり、97.5%の生活保護受給者は不正など行っていない。大半の受給者は何らかの事情を抱えながら保護を受け生活しているし、99.5%の金銭は保護費として真っ当に支出されているのだ。
しかもその2.5%も、生活保護制度について誤解した結果年金や家族のバイトなどの収入を告知していなかった例も含まれている。
最初から保護を受けられない者が悪意を持って保護費をだまし取ろうとしたという例はさらに少ない。
もし、身近に生活保護受給者がいても色眼鏡で見てはいけない。ましてナマポなどの蔑称を使ったり、不正をして金を貰っていると差別しては決していけないことを心にとどめて置かなければならない。
そもそも、国家予算による福祉の割合は、たった1%しかあてられておらず、その1%という僅かな予算からさらに生活保護費が出ており、生活保護が国の財政を圧迫するなどあり得ない。
天涯孤独ではなく親族がいるのに生活保護を受給していることを不正受給とする考えもあるが、毒親など連絡を取れない・とりたくないケースもあり、また親族の生活も豊かではない場合、生活困窮者の面倒を見る事で共倒れのリスクもあるので、一概に不正受給とは言えない。
「外国人が生活保護を受けているのはおかしい」「年金を払っていない人が生活保護を受給するのはおかしい」などと主張し、これらを全て不正受給扱いする人がいるが、生活に困窮した外国人を強制送還するのは現実的には難しいし、現役時代に年金を払わなかった・払えなかった老人が困窮しているのを放置するのは現実的ではないだろう。
そうした困窮者を放置すれば、犯罪の増加や事故物件の増加を招くことになる。
安易に不正受給と決めてかかって差別する声は、本当に困ってしまった人にまで生活保護を思いとどまらせてしまう。
役所での心無い担当者の言動に耐えかねて生活保護を受けることをあきらめ、困り果てた末に罪を犯し、あるいは自殺・孤独死してしまう人の例もあるのだ。
余談
「国民年金はどうせもらえない」「老後は生活保護を受給しよう」と主張し国民年金不払いを奨める向きもあるが、これはオススメしない。年金を払わなかった人が生活保護を受けるのは、上で述べたように不正受給というわけではないが、年金生活に比べてもかなり生活に干渉される。
国民年金や厚生年金には掛け金だけではなく私たちの税金が入っているから、受給者にとっては「おトク」でもある(公的年金保険料を払わず民間の保険に入るなどは論外)。「失業した」「ワーキングプアなので生活が苦しい」という人は国民年金保険料の免除・納付猶予制度もあるので、社会保険労務士などに相談しよう。