概要
略称の「APD」で呼ばれることが多い。また、ほぼ同じ意味の「聞き取り困難症(LiD)」という名称もある。
聴力(「音を感じ取る」機能)そのものは充分にあるのに、話し声や周囲の物音などの音を聞き取れない、情報として処理できない障害のこと。
例えば人混みのような音の多い環境で、特定の音だけに注意を向けて聞き取ることが難しかったり、対面で話しかけられているのにうまく会話の内容が理解できなかったりする。
「聴き取りづらい」という意味では難聴のような聴力障害と同じだが、難聴は耳の機能の問題で起こるのに対し、APDは神経伝達や脳の情報処理機能に何らかの問題があるために起こると考えられており、聞き取った音を処理する過程に生じる障害である。
日本では未だ研究の進んでいない分野のため、正確な患者数は分かっていないものの、海外の調査では学童期の子供の2〜3%がAPDの症状を訴えているというデータがある。
普通の聴力検査では異常が出ないためか、ある程度年齢を重ねてから、働くようになってから発覚することも多い。
発達障害が原因、あるいはその症状の一つとして起こることが多いと考えられており、発達障害(とグレーゾーン)の人に少なからずある「注意を向ける対象や強さが安定しないため、音として聞こえてはいるが内容が頭に入っていかない」という特性はまさしくAPDといえる。
また、脳卒中などの病気や外傷により(後天的に)脳機能障害を負った人や、うつ病や統合失調症のような認知機能が低下する精神疾患を抱えている人にも起こりやすく、強いストレスや不安、睡眠不足などでAPDに似た傾向を示すことも多々ある。
現状、明確な治療法はないものの、静かな、騒音や雑音の少ない環境に調整する(主に学校や職場などにおける合理的な配慮の一つとして行われる)、補聴器やレコーダー・書き起こしソフトなどを活用する、耳鼻科医と言語聴覚士のもとで聞き取りトレーニングを受けるといった対処法がある。また、カウンセリングなど精神的・心理的なサポートが効果をなすこともある。