見返り美人図
みかえりびじんず
見返り美人図は、江戸時代の画家、菱川師宣の代表作。
絹本著色によって描かれた肉筆浮世絵。緋色の衣装をまとった女性がふと振り向く(見返る)様子を描いた作品。
衣装の鮮やかな緋と、その対比となる濃緑の帯、さらにそれらを着ている人物、これら全てを余す事無く魅せる振り返り。そうした演出が見いだした色彩の妙に多大な評を得た作品である。
現在は東京国立博物館蔵。列品番号60番。膨大収蔵量を誇る東京国立博物館の収蔵品においても、かなり早い時期に収蔵保管された作品と言える。
日本郵便(郵政省・日本郵政公社)による切手の図案に採用された事がある。しかも複数回。
特に1948年の切手趣味週間に発行された記念切手は戦後すぐの事で発行枚数が少なかった。何よりも物資(特にインク)不足のため茶色単色で刷られた。元絵の最大の特徴である鮮やかさを棄てたかのごとき所業は当然、当初は賛否両論となった。しかし、鮮やかさを捨てた事により師宣が見いだした構図やタッチの妙が強調され、その優秀さが際立ち証明される結果となった。そして本作は名画とは色彩にのみ依らないことを証明した逸作となった。
そして切手趣味者の国内人口も往時より少なかった(要は多くの人が買ってもすぐに普通の切手として使われた)事も手伝い、翌年発行の「月に雁」もろともバブル期などには(無論、未使用である事や完品シートである事や経年劣化および保管状況による劣化が無い事、など様々な厳しい条件の下でだが)非常識な高値がついていた事で知られ、現在でも切手収集趣味を代表する切手、昭和期の切手少年の憧れ(要は郵便趣味系おっさんorじいさんホイホイ)として知られている。
なお、価値に関してはバブル崩壊の余波やネットオークション&ネットフリマによる個人売買の活発化、かてて加えてネット社会の隆盛による個人郵便規模の縮小に伴う郵便趣味の市場規模の縮小によって暴落とまではいかない(まぁバブル期当時に投機目的で買ったような人にしてみれば大暴落と言っていいかもしれない)ものの、それなりの値段にまでは落ち着いており、シートではなかったり美品でないものに関しては結構(下手すりゃ二束三文で)出回っていたりする。
ただし、そういった意味でも有名な切手なのでカラーコピーによる偽物も多く出回っていた時期もあったのでご注意(あと切手のコピーは犯罪です)。ネットオークションやネットフリマに関して言えば、もう素人は手を出さない(あるいは価値の無いサンプル品を、あえて買うつもりで購入する)のが無難(あとネットフリマに関しては、そもそも切手を出品禁止物品にしているサイトやアプリもあるのでガチに注意が必要である)。
平成時代に複数回(1991年、1996年)記念切手として図案採用されたのも、そういう(人気による)経緯によるものであったりする。こちらでは戦後の物資(インク)不足のリベンジを果たすかの如く、ガチの自重無きフルカラーで刷られている。
1991年の記念切手は郵便事業120周年記念切手として出されたもの、1996年の記念切手は郵便の歴史を振り返る記念切手(郵便切手の歩みシリーズ)の第6弾として「月に雁」とのセット印刷で出されたもので、それぞれ1940年代発行のオリジナルを意識した単色カラーとフルカラーと2通りずつ4種で出された。