『LaLa』(白泉社刊)に連載されている可歌まとの漫画作品。
2019年8月号から連載開始、2021年5月号にて完結。
著者の前作である『狼陛下の花嫁』から世界観が、がらりと変わった、タイトル通りのロー・ファンタジー魔法少女(いわゆるエブリディ・マジックのバトルヒロイン系魔法少女)もの。前作からのファンが見たら「作者は頭でも打ったのか」と心配になるレベルの新境地作品。なお、主役の魔法少女はれっきとした社会人(OL)である。
企業のOLが業務の一環で魔法少女になる、という作品で、いわゆる公式ロリ化を前面に押し出している作品と言えない事もない。
あらすじ
玩具メーカー「ドリームメーカー星形」(以下、DM星形)に勤める総務部のスマートかつクールなOL、安槻鳩子(22歳)。
彼女が務めるこの会社、実は表の顔の玩具メーカーの他に、人知れず町の平和のために努めている「本業」があった。そして鳩子は、その本業のために常に「残業」に忙殺される日々であった。
一方、DM星形の在する白鳥市は、9年前に隕石がとある小さな建物を破壊した事をきっかけとして、人間の生命エネルギーを吸い取る未確認生命体「マジャポン」が出没する土地となっていた。
正体不明のマジャポンを相手に人間の科学力は無力であり、人々はなす術なく未確認生命体の餌食となり白鳥市は人の住めぬゴーストタウンになり果てるかと思われた。しかし人々の無力の中、立ち上がった者たちがいた。
「魔法少女」と呼ばれる、謎の力「魔法」を使う少女たちである。
彼女たちの魔法のみがマジャポンに対抗できる唯一の力。その力を人々のために奮う姿に、街は希望を取り戻す。
そして街の人々を守る「魔法少女ラピスラズリ」と「魔法少女パール」、2人の魔法少女はあれよあれよという間に世の人々の憧れにしてマジャポンに対抗する偶像(アイドル)デュオ「ラピパル」と称されるようになっていった。当然のように、鳩子も人知れずラピパルのファンであった。
その2人の魔法少女の活躍という輝きの裏で、別の魔法少女が赤き流星の如く街の夜を駆け抜けていた。彼女の名こそ「魔法少女ルビー」。2人の魔法少女が討ち漏らしたマジャポンを掃討する、もうひとりの魔法少女。
実は―――DM星形の「本業」とはマジャポンの白鳥市内からの排除であった。そして鳩子こそ、そのための実働要員だった。つまり、鳩子の「残業」とは、ほかならぬ魔法少女ルビーに変身して人々の生活を脅かすマジャポンを殲滅する事であったのだ。
いい歳こいた子どもにも嫌われるドクールOLがロリ化して魔法少女……世の人々に知られたら大恥かつ大爆笑この上ない業務内容。さらには世間様へと身バレをすれば会社からどんなペナルティが来るか解らず最悪クビ(=生活の危機)も頭をよぎる。そもそもがモノホンの魔法少女たちであるラピパルに、あまりにも申し訳がなさすぎるっ!
そんな事情を抱えつつ、ラピパルの活躍や、隣人のイケメン和田原氏の存在に癒されながら自らを奮い立たせ、鳩子さんは時々魔法少女として正体バレ(業務命令として正体バレは禁止されている)と隣り合わせの残業を戦い抜くのであった。
登場人物
- 安槻鳩子(あづき はとこ)/ 魔法少女ルビー
- 玩具メーカーDM星形に勤務する22歳OL。基本的にやぶにらみな氷点下系ドクール。ラピパルの信者級ファン。社長の長話にスルースキルと脳内ツッコミで対処する猛者。何の因果か業務命令で「魔法少女ルビー」となってマジャポンの討伐を行うという残業をするハメに。あまりにも恥ずかしすぎる業務内容に常に辞職の二文字がアタマをよぎる日々。
- しかし「魔法少女」となった事で、そこそこ良いマンション(実質上の社宅)に好条件で住まわせてもらえることとなり、しかも隣の部屋に住んでいたのがイケメンであったりするため、本人的には役得にも恵まれており悩ましい日々を送っている。
- クールは学生時代からの筋金入りで、意味もなく動物には嫌われ子どもには泣かれるという青春時代を過ごしてきた。そのためクラスメイトからの評価も「かわいげがない」「なんかこわい」「とっつきにくい」と散々なもので、ぼっちになりながら「そう思うなら思っとけ」と言わんばかりに、それらに反発するように生きてきた過去がある。
- 魔法少女としての必殺技はステッキでマジャポンを直接撲殺する「ルビー・インパクト」。
- アレク(後述)いわく「いるはずのないもの」「いてはいけないはずの魔法少女」であるらしい。のちには無愛想で粛々と仕事をこなす姿勢から、魔法少女ファンより「血まみれの紅玉(ブラッディ・ルビー)」という鳩子さん的に全く嬉しくないサツバツとした尊称を奉られる事に。
- ラピパル
- マジャポンを退治している「ラピスラズリ」と「パール」による二人組の魔法少女。ルビー(鳩子)と同じくDM星形の所属であるが、指令系統が違う(ラピパルは表側だが、ルビーは基本的に裏方要員。そして鳩子さんはDM星形の正社員だが、ラピパルはそうではないらしい)らしく当初は互いが互いの事を知らなかった。鳩子さん視点での素直な感想では、二人そろって純粋な天使。二人そろって銀星学院中学の二年生。
- 風間真子(かざま まこ)/ パール:ショートカットの活動的な少女。パールの姿ではポニーテール。ラピパルのフォワードポジションでタイミング合わせや作戦の立案などを担当。浄化魔法であるバタフライ・サイクロンを使う。
- 和泉るり(いずみ るり)/ ラピスラズリ:セミロングの大人し目に見える少女。ラピスラズリの姿ではロングヘア。ラピパルのディフェンダーポジションで作戦の進行に伴うフォローアップを主に担当。拘束技であるアクア・チェインを使う。
- 社長
- 鳩子さんの残業部署の上司。すなわちDM星形の社長。夢と希望を熱く語るノリのいい大らかな勢い爆裂のボケ野郎。ノリと勢いで使い勝手の悪すぎるファンシーグッズを開発しちゃうチャレンジャーなお方。「任務中は私の事は社長ではなく司令官と呼ぶように! 」「心の宝石が輝くなら君は何にでもなれるしキラキラの愛と勇気に目覚めるんだよ! 」など、漢のロマンが爆裂した台詞を満面の笑みで堂々と鳩子さんに放てる(ある意味KYで強心臓な)お人。
- 自社所属の魔法少女たちでキャラクタービジネスを目論んでいる描写も多々ある。
- コハくん
- ルビー(正しくは社長配下)に付いているネコ型モフモフ。マジャポンが残す魔石が大好き。
- 鳩子さんいわく、仕草がいちいちあざとい。しかし、現状「可愛いからよし」らしい。
- マジャポン/M・M(モスキート・モンスター)
- 和田原 青舟(わだはら せいしゅう)/ アレク
- 鳩子さんの隣人。穏やかな超イケメン。鳩子さんは「和田原さん」と呼ぶ。なぜか動物に絡まれやすく多くの群体に群がられる事も多々。ナチュラルにTPOをわきまえた甘い言葉を吐ける天然タラシ。出勤時間がかち合う事も多く、鳩子さんにとっては日々の癒し要因。
- しかし、裏側ではマジャポンに関わる何らかの陣営(DM星形社長いわく「悪の組織」)の一員であるらしき描写があり、第9話で鳩子さんの残業を邪魔する謎の魔法少年であるアレクの正体である事が明らかにされる。
- アレクとしては残業(マジャポン退治)に勤しむ鳩子さん(ルビー)の前にイキナリ現れた謎の魔法少年として、ルビーの前に登場。マジャポンを冷静に退治しつつ、自分をクール(見方によっては邪見)にあしらうルビーの姿に「か…可愛かった……」という衝撃の一言を放つ。またルビーの姿は「昔の知り合いに似ている」らしく、その知り合いは「街に溶かされて消えた」という。時折、それらしき過去を悪夢に見ることがある。ちなみに「アレク」とは略称で、本来は「アレクサンド=ライト」という名であるらしい。
- マジャポンが残す魔石を狙い、ルビーをはじめとする魔法少女らとは「商売敵」として敵対する可能性のある間柄。「魔法少女が戦わなくても(存在しなくても)いい世界」を目指しているような言動が見られる。
- 可愛いルビーが戦闘で危ない目に遭ったりするのを見ていられず、上述の目的も相まって「ルビーに戦ってほしくない」と思うようになっていく……が、生活がかかっているルビーがソレを聞き入れられるワケもなく、結果として「ルビーに戦って(傷ついて)ほしくないから、自分がルビーより先に魔獣(マジャポン)を倒して魔石を手に入れる」という理由と手段を取り、心ならずもルビーらと敵対する道を選んでしまう。
- 宝石騎士(ビジュー・シュヴァリエ)
- 和田原さん(アレク)が所属している「組織」が、魔法少女の代替物として用意・結成させた魔法少年によるグループトリオ。ヒスイ、コクヨウ、ザクロの3人。気がつけばショタ好き・男性アイドル好きのおねーさまを中心にファン層を急速に拡大させている。(売り出し方もそういった方向性だったりする)しかし実力はラピパルに今一歩及ばず、ルビーのメンチ切りに思いっきり震え上がるレベル。なお向上心とそれゆえの生意気盛りは、いっちょまえ。